57 あえてそうするふりもすれば
…‥‥怪物たちを焼き払い、発生した紫色の霧。
その霧に俺達が飲み込まれて十数分ほどで、何者かが歩んできた。
離れた場所から静観していたのか、それともあの怪物たちを操っていたのか‥‥‥そのどちらなのかは分からないが、こうなることが分かっていたのか、あの霧を防ぐような道具を全身に身につけていた。
地面に倒れ伏している俺たちの元へ、それなりの人数が集まってきたところで…‥‥この倒れたふりを中断する。
「皆、一斉捕縛攻撃!!」
「なにっ!?こいつ起きているぞ!!」
「馬鹿な!!あの霧を喰らっ、」
「「「「遅い!!」」」」
その者たちが俺の動きに驚愕するが、何という事もない。
霧だがなんだか分からないが、素早くノインが分析した結果を皆に伝え、カトレアが即席で対応できる薬草を作りつつ、ゼネが魔法で補助し、ルビーが高機動力を生かして馬車の隅々まで全てを届け、被害を防いだだけなのだから。
‥‥‥何者かは知らないけれども、霧の中の動きまでは見えてなかったようだ。
念のために、これを作ったやつらが現れるかもしれないと思い、わざと倒れたふりをするように伝えていたが…‥‥見事にかかってくれたようである。
とっさに動こうとしていた相手達だが、既に攻撃態勢に移っていたノインたちの動きに抗うすべはない。
装備しているものもそれなりの重量なのか、動きも鈍く、あっという間に彼女達の手によって捕縛されたのであった。
「…‥‥さてと、結局こいつらは何だったのだろうか?」
「ふむ、この防護服、マスクなどは中々の性能ですが、これだけのものを用意しているという事は、背後の方もそれなりに資金がありそうデス」
カトレアの手で育てられた頑丈な蔓で相手をしっかりと縛り上げ、その装備を俺たちはきちんと奪い取る。
もちろん、この手の輩たちの自害の可能性も考慮して、できないように検査もしている。
‥‥‥こういう時に、諜報志望でもあるから、その学んだ知識を生かすことが出来たのは良かっただろう。
馬車の方に関しては、他の生徒たちは待機させつつ、現在ルビーに前後の学科の馬車へ連絡に向かわせ、副生徒会長たちのいる方へも向かわせている。
今は、生徒会所属という立場を有効利用して、こいつらをしっかりと見張りつつ、尋問作業へ移りたいが…‥‥
「でもな、ノイン、カトレア、ゼネ。お前らのそれはアウトだと思う」
「エ?」
「そうですの?」
「そうかのぅ?」
揃って首を傾げられるが、尋問どころか拷問になりそうなものを用意するのは流石にツッコミをせざるを得ない。
「まずノイン、お前のソレ何?棺桶のようなものの内側に、鉄の棘がびっしりあるんだけど」
「アイアンメイデンという道具を参考に、作って見た即席のものデス。まだ耐久性などに難はありますが、こちらで十分効果があるカト」
「血の海ができるわ!!」
「で、次のカトレア。さっきからシャゲシャゲ言って居るその小さな植物群、何だ?」
「即席育成した、ちょっと吸血植物『プッチ』ですわ。じわじわと吸い取り、血の量を減らしてあげて、考えを緩くさせる効果をもつのですわ」
「貧血で相手が倒れて気絶するわ!!」
「そしてゼネ、お前の方は杖を構えて何をする気だ?」
「ん?御前様、儂の種族『ナイトメア・ワイト』のナイトメアにふさわしく、悪夢を見せるだけじゃ。夢であれば精神的なダメージのみを効率的に与えられるからのぅ」
「…‥‥まだ、穏便に済むのか?それなら」
「ついでに内容としては、グールにゾンビ、スケルトンコングに、マッドイーター等、アンデッド系盛り合わせ24時間耐久逃走劇にするつもりじゃ」
「それはそれで辛すぎるだろ!!」
…‥‥ああ、でもゼネの案の方がまだ良いか?
「ひええええええ!!それはやめてくれぇぇぇぇぇl!!」
「出来れば1番目の侍女服の方が、まだ死ねそうな分ましだぁぁぁぁ!!」
「なんでも話すから、何でも話すから!!拷問はやめろぉぉぉぉぉぉ!!」
「あっさり話すんかい!!」
施す前に、相手の方が先に心が折れたのか、恐怖で青くなりながら、ベラべらべら話してくれたのであった。
さらに十数分後、先に戻って来たルビーに続き、馬に乗って生徒会長と副生徒会長が来たので、得た情報について報告をする。
「‥‥‥なるほど、大腐敗時代の残党‥‥‥その中でも、更に濃密な一派が悪事を働いていたのか」
「いくつかあるようだけど、今回はそのうちの一つだけかぁ。いっその事、全部まとめてくれば楽なんだけどなぁ」
「その話しを聞くと、その通りになってほしいように思える」
情報によれば、どうもこの先通過予定の神聖国、そのかつて大腐敗時代と呼ばれていた時に一掃された者たちが今、再び集結し始め、色々とやらかし始めているらしい。
過去の栄光というか、その腐敗していた時の甘い汁が忘れられずに求め、迷惑をかけまくっているようである。
とはいえ、その輩たちの共通の目的が、過去の甘い汁を今再び手にというものではあるが、そんな馬鹿が全員一枚岩という訳でもなく、いくつかの派閥に分かれてしまったらしい。
そして今回は、その派閥の一つ、思いっきり嫌な類のものが動き、俺たちのいた馬車へ襲撃をかけて来たようなのだ。
「あの怪物は、攻撃手段を得るために開発したものでもないらしいね」
「何処かで生み出され、それを購入しただけのようだ」
ついでに判明した、火にあぶられると、どうも弱らせる毒やマヒの霧を発生させたあの怪物たち。
ブレス対策でもなんでもなく、単純に燃やすと危険な類なだけだったようで、正式な処分方法は水をかけるだけでよかったらしい。
どこかの組織で生み出されたらしいが‥‥‥これ以上は分からないようだ。
「下っ端での尻尾切りデス。重要な情報、この事件を起こした輩との接触は、どうも無いようデス」
「とりあえず後でしかるべきところへ引き渡すとして‥‥‥どうも隠れ家とかあるらしいね。ディー君たちを襲撃したのは運が悪かったようだけど、他にも人がいるのか」
「襲撃して、人を集めてどうする気だったんだ?」
話を聞くと、どうも完全に殺害とかではなく、弱らせて人をこいつらの隠れ家へ貯めていき、ある程度経過してから何処かへ引き渡すつもりだったらしいが‥‥‥何にしても、被害に遭った人たちがいるならば、どうにかした方が良いだろう。
「生徒会として、先ず向かった方が良さそうだよね。本当はある程度の人を集めた方が良いかもしれないけど…‥」
「遅ければ、その分危険性は増す。今から向かうべきだろう」
戦力的に見れば、十分現在のメンバーで成り立つが…‥‥危険性はそれなりにある。
生徒会に入っているし、俺たちも向かうことにはなるが、できれば危険は避けたいところ。
「いっその事、さっきの怪物を一体ぐらい残して、風上から放出して、敵がいたとしても駆除できている状態にできればよかったなぁ‥‥‥」
「あ、儂ならそれ可能じゃ。悪夢の霧を出して、流して眠らせられるのじゃ」
「わたくしもできますわね。強制睡眠効果のある植物を咲かせれば、数分ほどで済む話ですわ」
「ピンポイントスタンガン連射で、駆逐可能デス」
「拙者は‥‥‥あー、無いでござるな。羽ばたきで、皆の攻撃をより拡散させることぐらいならできるでござるか?」
「…‥‥思った以上に、できるのかよ」
「というか、ディー君の召喚獣たちって割かし物騒なことができるよね」
「なんというか、王族という立場上国民を脅かす輩は許せないが…‥‥こいつらを襲ったやつらの運の無さには、ひどく同情する」
‥‥‥そこの王子二人、呆れたような目で見ないでくれないかな?俺だって、彼女達のその無茶苦茶ぶりに気苦労を背負っているからな…‥‥
海へ向かう前に、まずは邪魔者の退治である。
面倒な輩たちは片付けて、気兼ねなく遊びたいという本音もあるからな。
でもなぁ、本当に襲撃者たちに同情したくなるというか…‥‥彼女達の主という立場だけど、襲ってきた相手は運が悪すぎるだろう。
‥‥‥なお、怪物関係については終わってないけど、まずは購入者を叩き潰す方が早いので、そちらから行こう。




