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04 だからどうしてこうなるのだろうか

‥‥‥朝早々から食に関するツッコミをしつつ、いや、放棄しつつ、授業の時間となった。


 適性学園では、各々の発現した職業に合わせた学科へ振り分けられる。


 俺の場合は、召喚士学科‥‥‥『異界の召喚士』とかついているし、どう考えても色々おかしい召喚獣のノインもいるが、それでも召喚士学科へ振り分けられた。



「‥‥‥召喚士となって、召喚をしている人が大勢いるようだが‥‥‥」


 教室へ入り、あらかじめ決められた席についてぐるっと見渡すが、誰も彼もやっぱり召喚士となった以上、初めての召喚を早くしたかったらしい。


「グゲーイ!」

「キュルルルル!」

「ウィッポーン!」


 呼び出される召喚獣がどのぐらいのサイズなのか、最初では分からない事もあるため、実はこの教室の広さは他よりもやや広めに作られている。


 ゆえに、各自一体ずつ程度召喚していたとしても余裕はあるが‥‥‥光景が、ここだけ何処か異世界じゃないかとツッコミを入れたくなるような状態になっていた。


 キングハブ(巨大な蛇に見せかけて実は足の無いトカゲモンスター)、タコマンドラゴラ(蛸とマンドラゴラが混ざったモンスター)、メタルスライム等、普通は見る事が無いような生物まみれである。


 そんな中で、人っぽい容姿のノインは目立つが…‥‥個人的には、他の人達の召喚獣の方がより召喚獣らしくて、羨ましくも思えた。


「おい、あれが適性検査時の‥‥‥」

「召喚して女が出るとは‥‥‥良いなぁ」

「だが、侍女なのは意味があるのか?普通に将来稼いで、雇えば良いようなものなのにな」

「ぶるんっとしていて、色々と触り心地は良さそうだけどね」


 ひそひそと離す声が聞こえてくるが、たいしたことではない。


 うん、最後の奴だけちょっと警戒したほうがいいかなぁと思うが…‥‥そうこうしているうちに、授業開始となったようで、教員が教室内に入って来た。


「こらー、お前たち一旦静まれ!!授業を始めるぞ!!」

「ハジメルゾー穀潰シ共ー!」


 入ってきた教員は見た目的にはどこにでもいそうなおっさんだが、召喚士らしく、肩に乗っている鳥が召喚獣らしい。


((((というか、口悪っ!))))


「さーて!!適性検査を終え、無事に召喚士となった諸君!!まずは自己紹介から行こうか!」

「自己紹介トイコーカ!!」

「わたしは、今年よりお前たちの担任となった、召喚士のデッボルバーネ。そしてこの肩に乗っているのは、召喚獣の」

「ダンスバード、ヘルール、ダ!覚エロ穀潰シ共!!」


――――――――――――

『ダンスバード』

肩に乗る中ぐらいの大きさの鳥モンスター。

人の口真似をしているように思えるが、実はすべて本心を話しているだけ。

口の悪さが共通しているが、実はそれなりに考えて叱責していることが多い。

――――――――――――


「でも口悪いな‥」

「叱責というよりも、ただ悪口を言っているだけだよな」


「はいはい、そこのひそひそ話はやめておけ―!真面目に聞かないと、こいつが」

「ウルサイ黙レー!」


 デッボルバーネが言い終わる前に、その鳥は大きなくちばしを開き、ひそひそと話していた生徒たちへ狙いを定めた。


「チキチキ鳴ッテ、ドッカァァァァァン!!」

ボンッ!!

ベチャ!ベチャ!!

「おうっぷ!?」

「ふげっ!?」


 何かが飛び出し、話していた奴らにベちょっとくっついた。


「なんだこれ、つばか?」

「いや、なんかすっごいねっとんねっとんするんだけど!?」


「あー…‥‥ヘルール、彼らはまだなり立ての召喚士なんだ。いきなりそんなことをするな」

「ウルサイカラ黙ラセタダケー」


 やれやれと呆れたように召喚主であるはずの先生が言うが、ヘルールはプイッとそっぽを向く。


「ダッテ、注意デ生徒ニカマウト、召喚主様疲レル!静カニシテアゲル!」


「‥‥‥割とまともそうな理由で驚きましたネ」

「いや、まともかアレ?」


 ノインが口に手を当て、わざとらしく驚いているような顔になり、俺はツッコミを入れる。


 このぐらいの小さなツッコミであれば、まだ許容範囲内で対処できるからね。




 っと、そのやり取りが聞こえたのか、ぐるっとヘルールがこちらへ顔を向けた。


「ソコ!漫才ウルサイ!チキチキ鳴ッテ、ドッカァァァァァン!!」


 どうやら今のも対象になるようで、さっきと同じように唾を飛ばしてきた。



‥‥‥だが、それは既にノインが見切っていた。


「この程度であれば、問題ありまセン」

ガシャコン!


 妙な音が聞こえたので見れば、彼女の右腕が変化し、長細いような筒状のものが、いくつも付いたような形状になっていた。


 それを素早く構え、飛来してくるつばへ向けて‥‥‥


「除去」

バシュッ!


 何かが発射され、向けられていたつば2発をたった一発の何かで消し飛ばす。


 その行為にクラス内が唖然とし、飛ばしてきたヘルールも驚いたようにしている中、ノインの二発目が放たれた。


「ご主人様へ害を加えようとした、お仕置きデス」

バシュッ!!



 先ほどとは違うモノが発射され、それは真っ直ぐヘルールの大きく開けたままのくちばしの中へ入り込む。



べちょん!

「ン?何コレ‥‥ッ!?甘ァァァァァァァァァァァァ!?」


 入り込んだものが何か首傾げた数秒後、ヘルールが絶叫をあげる。


「鳥には辛さは余り通用しないそうですからネ。なので、真逆でも強烈だと辛い、甘味弾を撃たせていただきまシタ」

「甘サツラァァァァァァ!!」


 ふっと、その筒からでる煙を吹き消しながらノインが説明するが、ヘルールはその甘さとやらに悶え苦しむ。


「ヨクモヤッタナー!!」

「そちらが先にやられましたヨネ?」

「ウルサーイ!!チキチキ鳴ッテ、ドッカァン!!ドッカァン!!ドッカァァァン!!」


 ようやく復活したようだが、ノインに怒りの目を向けるヘルール。


 今度は2発ではなく、より多くの攻撃を与えることで、対処し切れないようにしたらしいが…‥‥ノインには通用しなかった。


バシュバシュシュン!!

「数を増やしても、同じ手は愚策デス」

「キィィィ!!」


 ふっと笑うような笑みを見せるノインに、ヘルールの怒りがますます募っていく。


「おい!!ヘルール!!生徒の召喚獣への攻撃を止めろ!!後そっちの召喚獣の主であるお前も、その挑発を辞めさせ」

「ウルサイウルサイウルサイ!!チキチキシナイデ、アタァァァック!!」


 先生の言葉が言い終わる前に、ヘルールが動く。

 

 ばっと翼を広げて、肩から飛び降りて上昇し、急降下。


 一直線にノインめがけて、その鋭いくちばしで攻撃したかった…‥‥らしいが、相手が悪かった。


 いや、着弾予定地が悪かったというべきか。



ズボン!!

「ア」


…‥‥ヘルールの考えでは、おそらくそのまま急降下の勢いで、くちばしで相手を刺すように攻撃したかったのだろう。


 だがしかし、生憎というか、ノインには別の凶器と言えるようなものがあった。


 確かに、人体であれば心臓ある位置を目掛ければ、かなりやばかっただろう。


 だがしかし、ノインはメイドゴーレムであり、人体とも多分構造が違うはずであるが‥‥‥それよりも前に、豊かな胸部装甲というべき部分があった。


 大きな塊の間に、まさかそのままずぼっと入り込むとは、誰が予想できただろうか。




 頭から盛大に突っこんで潜ってしまい、しかもバックできない状態。


 抵抗するようにじたばたもがいたようだが、何の意味もなさず…‥‥1分ほどで、沈黙したのであった。



「‥‥‥もう、ここはご主人様の場所ですから、あなたが眠る場所ではありまセン」


 呆れたようにノインがそう言葉にした途端、クラス中の男子生徒たちの目が一斉に向けられた。



 あの、聞いてないんですが…‥‥しかも、すごい痛いというか、怨嗟や嫉妬が混じった目が刺さるんですが。






 授業初日から、教員の召喚獣を撃沈させた召喚獣。


 その話しが広まりつつ、ついでに出たその発言のせいで、他の男子生徒たちの敵になったような気分をしばらく俺は味わされるのであった‥‥‥‥俺が何をしたって言うんだよ…‥‥


勝手に周囲から恨まれるというか、怨嗟を買うというか

自分ではなくこのメイドが引き起こしたのに、何故かとばっちりを喰らう

ああ、何をしたというんだろうか…‥‥




…‥‥連載中の別のメイドとは大違い。でもなんか寒気が‥

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