52 テスト方法はかようなもので
‥‥‥いよいよ始まった、中間テスト。
最初は、各学科共通の座学のテストであり、これまで学んできたことをぶつけ、問題を解いていく。
とはいえ、ただ計算などを解くだけではなく、きちんと応用ができるかどうかという問題であったりして、適当にやっているとかサボっている人たちはここで撃沈させられるようなものもある。
ディーの場合は真面目にやっていたので、そのあたりの不安は無かった。
というよりも、応用の方に自信が持てていた。
(‥‥‥良し、皆との勉強の成果が出ている‥‥‥のかな?)
正直、勉強の成果というよりも、ここまで召喚獣たちを召喚してきた日々の中での、ツッコミに対する応用力が勉学に表れたような気がしなくもない。
いやまぁ、利用できるのであれば問題ないのだが…‥‥まじめに勉強し、応用などもやっていたけど、やはりそのツッコミ部分に根幹があるのではないかと思うと、ちょっと複雑である。
何にしても、まずは最初のテストは無事に終えた。
回答が回収され、生徒たちはぐったりと机に倒れ込む。
頭を使う問題な分、精神的な疲労の方が大きいだろう。
だがしかし、ここでテストが終わるわけではない。
次は、各学科ごとに異なるテストであり、学園から移動していく。
騎士学科は王城の騎士の元へ、魔法使い学科も同じく王城の魔導士長とか、そのあたりの場所へ。
武闘家学科は武闘大会の場所へ出向き、タンクマン学科は耐久大会…‥‥どのような内容なのかは実は秘匿されていることも有るらしいが、聞いても無駄なのであろう。
その他医師学科なども治療施設へ出向き、俺が所属する召喚士学科は‥‥‥‥
「…‥‥テスト内容は開始されるまでは秘密であったけれど‥‥‥いくつかあるのか」
「テストなので、ひとつ調べるだけではないようデス」
召喚士学科の生徒たちが集められたのは、森の方にダンジョンの中。
広い階層を利用してのものであり、モンスターなどが時折襲撃してくるが、撃退すればいい話しという訳で、ここに試験会場が設けられたらしい。
ある程度の敷地を確保して、なおかつ階層も分かれるこの場所で行われるのは、様々なテスト。
内容は、現地で配布されたプリントに書かれていた。
「『召喚速度テスト』、『基本能力テスト』、『最大火力テスト』、『身体検査』など‥‥‥思いのほか、結構あるな」
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『召喚速度』
召喚体勢から、どのぐらいの速度で召喚獣を呼びだせるのか。
出現ポイントなどの調整がどの程度可能なのかを測定するテスト。
『基本能力テスト』
全力を出さない普段の状態で、どの程度の力があるのかを調べるテスト。
加減ができるかどうか、自身の制御ができているのかなどを把握するためのものでもある。
『最大火力テスト』
最大の力でどの程度の事が可能なのか調べるテスト。
ただし、ダンジョン崩壊の危険性もあるので、できればその微妙な調整もできれば調べるテスト。
『身体検査』
単純明快に、健康状態を調べるテスト。
召喚士たるもの、召喚獣の健康状態を把握し、正常に保たせるようにし、太らせたり細らせ過ぎたりしていないかを確認するテストでもある。
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「いや、最後の身体検査はテストと言うのかのぅ?」
「火力も少々、難しいでござるな」
テスト内容を確認して、皆がそう口にするが‥‥‥まぁ、やらないとな。
個人的には、召喚速度テストの中にある、出現ポイントの部分が不安でもあるけどね。前例があるからなぁ‥‥‥。
何にしても、召喚士学科の担任の立ち合いのもと、各自がそのテストを受け始める。
召喚速度の方では、呼び出されるまで遅かったり、呼び出した場所が悪くて潰された者なども出たりするが、まずはここを乗り切らないとな。
「えっと、召喚獣の数でも変わるのか‥‥‥1体、2体‥‥‥やってみるか」
まずは通常通りの、1体召喚。詠唱を省けるので楽ではあるが、一人一人を呼ぶ分、時間もそれなりにはかかる。
「召喚、ノイン!」
「了解デス!」
「召喚、カトレア!」
「お呼ばれいたしましたわ!」
「召喚、ルビー!」
「拙者参上でござる!」
「召喚、ゼネ!」
「ただ今ここに、見参いたしましたかのぅ」
…‥‥まとめて召喚よりも、やはり時間はかかる。
というか何気に皆、召喚時の登場格好つけてない?ポーズとか決める必要あるか?
あ、他の生徒たちの召喚獣も同じか。召喚獣にとって、召喚される時のポーズとかそれなりにこだわりがあるのだろう。
2体同時召喚、3体同時召喚、4体同時召喚も、難なくできた。
いや、2体の時だけ、ノインとカトレアの組み合わせで喧嘩が起きたが‥‥‥ルビーとゼネが加わっても、この二人、やっぱり相性が合わないのだろうか。
気を取り直し、次の基本・最大火力の方のテストを行ったが…‥‥こちらは少々、難航した。
というのも、基本能力は良いとして、最大火力が個人で異なり過ぎたのだ。
「そもそも、ごみ掃除用の道具ですし、最大火力…‥というのもちょっと違いますネ」
「荷電粒子砲とか良く分からないけど‥‥‥先ずこれ、ゴミどころか部屋そのものを消し飛ばすよね?」
「わたくしの場合、ご主人様の血も必要になりますけれども、少々量によって変動しますわね」
「木の根での攻撃だから、ちょっとわかりにくいな…‥‥」
「焼き払うでござるよ!」
「あっつぅぅぅ!!空気がまず触れたら不味い状態になっているじゃん!!」
「儂、そもそも火力そこまでもないのじゃ。ナイトメア・ワイトゆえに幻術系統の方が得意じゃしなぁ‥‥」
「あの一帯全部がモヤッとしているんだけど‥‥‥何の魔法だ?」
「『ナイトメア・ガス』じゃ。触れた瞬間に命を取ってしまう死の魔法じゃな」
「火力云々以前のヤヴァイものじゃん…‥‥」
…‥‥この面子、火力という定義がまずバラバラ過ぎた。
一番正統派なのはルビーで、その次にノイン、ちょっと微妙がカトレアで、方向がおかしいのがゼネだった。
うん、どうしようこの結果。テスト基準としてはどう判断されるのやら。
取りあえず、そのあたりの判断は教師たちに投げ出してしまえ。
なにはともあれ、それらのテストを乗り切り、最後のテストとなった。
最後に行われるのは身体検査‥‥‥要は健康チェックである。
「ですが、その前にしばらく待つ必要があるようデス」
「まぁ、当り前と言えばそうか‥‥医師学科のテストが終わらないと、来れないからな‥」
‥‥‥最後の身体検査。
本来であれば、召喚獣を見る医師学科の人などがいるのだが、ノインたちの場合見た目が美女なので、相手が男だと色々と問題がある。
故に、女性医師がここへ来るまで、少々待機させられる羽目になったのであった…‥‥
「‥‥‥ところで、身体検査で健康を調べるけど、そのあたりの基準とかどうするんだろう?」
「私は部品の状態でしょうカ」
「わたくしは葉っぱや木の皮かしら?」
「拙者の場合は鱗などでござろうなぁ。逆鱗は流石に触れて欲しくないでござるが‥‥‥」
「あの、儂の場合そもそもアンデッドでもあるんじゃし、健康チェックとかは意味あるのじゃろうか?」
「「「「あ」」」」
‥‥‥アンデッド一名、そのあたりどうするんだろうか。非常に気になる。
そう言えば、血肉あるけどゼネ一応種族的にナイトメア・ワイト‥‥‥死体じゃん。
死体の健康状態って、どのような基準があるのだろうか?
まぁ、そこは調べる人たちに丸投げしてしまおう。そうしよう。
‥‥‥B・W・Hなども調べるだろうけれども、そこは聞かない方が良いかな。




