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36 人(でなくても)には得意不得意があるようで

 放課後、生徒会の一室にて、ディーたちはグラディにある要件で呼ばれた。


 その要件とは…‥‥


「‥‥‥召喚獣たちの内、誰かと対戦したい?」

「ああ、そうなんだよね」


 いわく、この目の前の副生徒会長グラディは騎士学科にいるのだが、現在の同学年での模擬戦に少々物足りなさを感じており、上級生の方に対戦を挑んでみたいのだが、現在彼らは別の場所に出向き、いないらしい。


 その間待っているのも良いのだが…‥‥その前に、手軽に対戦を頼めそうな相手として、俺たちの事を思いついたようだ。


「君の場合、召喚士として諜報の方に就きたいと思っているだろう?でも、諜報の任務とは言え、戦闘がないわけではない。場合によっては危険にさらされる場合もあるし、その前にちょっとは対人戦を経験しておいたほうがいいんじゃないかなと思ったんだよね」

「そう言う理由か‥‥‥まぁ、確かに彼女達の場合対人戦は‥‥‥」


‥‥‥いや、ちょっと待てよ?対人戦経験って0ではないな。風呂覗き魔爆散とか、前のタンクマンの戦闘とかあるからな。


「‥‥‥対人戦闘経験、思ったよりあるのか?」

「まぁ、それなりに実践してますネ。データにもありマス」

「吸血する種族でもありますからね、暴れられた時の対処法などは共有していたりしますわ」

「拙者の場合は…‥‥特にないでござるかな」


 っと、どうやらルビーの方には対人戦闘経験がないのか。


「じゃぁ、ちょっと僕と模擬戦をしてみないかい?放課後で自主練する人が多い分、戦闘用の場所は確保できているからね。今からやってみようか」

「ぬぅ…主殿、よろしいでござろうか?」

「やってみたいなら、やってみようか」




 そんなわけで、各学科の模擬戦用の練習場へ俺たちは移動した。


 あくまでも模擬戦なので、グラディの方は真剣ではなく木刀を握り、ルビーの方も木刀を握らせてもらう。


「ルビー、一応聞くけど大丈夫か?」

「白兵戦が得意なわけでもないでござるが、それなりに行けるはずでござる」


 ぶんぶんっと木刀を振りかぶって、具合を確かめるルビー。


 グラディの方の実力を知らないが、まぁ、いい試合になってくれればいいな。



「それでは、審判は私が務めさせていただきマス」


 公平性と万が一に備え、自衛も可能なノインが審判役になる。


 俺とカトレアは少し離れて、その様子を眺める。



「それでは、両者構えヲ」

「「了解」」


 互いに木刀を構え、正面から見合う。


 副生徒会長グラディは騎士学科なので、構える形も騎士のような物なのだが、ルビーの方は騎士ではない。


 構えがやや異なるが、それでも素人目でも隙は無さそうに見えた。


「では…‥‥始メ!!」


ダァァァァァァァン!!

「うべぇぇぇぇっ!?」



‥‥‥開始の合図と共に、何故か奇声をあげ、グラディの姿がその場から消えていたのであった。





「‥‥‥本当に済まなかったでござる。思った以上に、ふっ飛ばしたでござる」

「だ、大丈夫……ごふっ」

「全然大丈夫じゃないだろ!!ノイン応急処置、カトレア薬草供給!!」

「了解デス!」

「了解ですわ!!」


 数十秒後、天から落下してきたグラディを、素早くカトレアに根っこを伸ばして受け止めさせ、直ちに俺たちは手当てに入った。


 一国の王子が模擬戦の事故で逝ってしまうのは最悪過ぎる。


「というか、ルビー!何をどうしてこうなった!!」

「それなのでござるが…‥‥」


‥‥‥いわく、彼女は木刀を使って、ただ単に突きを入れただけらしい。


 と言っても、真正面から入れたのではなく、あの一瞬で背後に回り、やや上の方へ向けて突きを放ったそうなのだ。


 ルビー自身にとっては、そこまで力を入れたつもりは無かったのだが、それが甘かった。


 ノインたち同様美女に見えるが、元をただせばドラゴンの仲間でもあるヴイーヴル。


 見た目が人に近いからといっても、その力までもが人レベルではなく、軽くと言っておきながら、かなりの馬鹿力を出してしまったらしい。


「それだと日常生活が困りそうなんだけど、大丈夫だったのはなんでだ!?」

「そこはそれなりの感覚でござるよ」


 要は、普段の生活は自分でも無意識な程度に力を落としており、こういう模擬戦時にうっかりその落した分の力を戻し、本来の状態で振るってしまうらしい。


 しかも、こういう模擬戦の機会が無かったがゆえに加減もいまいちわからず、これで良いだろうと油断した結果が、今回の王子ふっ飛ばし事件につながってしまったのであった。



‥‥‥ああ、ルビーよ。お前のポンコツ具合にまともさを感じていたのに、こういった方面で発揮してしまうとは…‥‥まともじゃなかったのか。


 何にしても今は、天高くまでふっ飛ばされ、落下して受け止められても、しっかり痛い目を見てしまった王子の治療に専念するしかないのであった。

希望とは、案外あっさりと潰えるものである。

その事を学びつつ、王子の処置をしなければならない。

一国の王子を殺害したら、それこそシャレにならないからな…‥‥


…‥‥王子の吹っ飛び具合は、ビリヤードでボールを突いた感じに似ている模様。横ではなく縦、上空へふっ飛ばしたが。

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