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35 もしかして、まだまともな方?

「ふふふふ‥‥‥拙者の目はごまかせぬでござる!!これは一番のお宝で」

「残念ながら、外れてマス。レプリカの絵画デス」

「え”っ」


…‥‥自信満々に言おうとしていたルビーの言葉に、無慈悲にもノインがはっきりと告げる。


 その言葉に、彼女はまた(・・)硬直した。


「そ、そんなはずはないでござろう?これが一番、質が良いように見えるのでござる」

「質が良いからデス。精巧に模すために、より良い材料が扱われているがゆえに、騙されてしまうのデス」

「そ、そんなぁ…‥‥」


 がっくりと肩を落とし、地面に手をつくルビー。




 現在、俺たちは授業で出された3つの課題の内、まずは早く終わりそうなルビーの課題‥‥‥学園の貴重品鑑定から取り掛かっていたのだが、速攻で挫折を味わっていた。


 お宝をため込むドラゴンの性質のように、その種類に当てはまるはずのルビーもまた、宝に関しての鑑定眼に自信を持っていたのだが…‥‥既に10点以上の鑑定を行い、ことごとく外れまくっていた。


 ノインがほぼ正確に答えられているというのも、それはそれで驚きだが‥‥‥‥


「あ、主殿に面目ないでござるよ!!自信満々にやったのにもかかわらず、ここまで醜態をさらしてしまうのは愚の極み!!ゆえに拙者、ここで自決して詫びるでござるよぉぉぉ!!」

「早まるなよ!?」


 ドバっと涙を流し、自決に至ろうとする彼女に、必死になって抑える羽目になったのだった。






「えぐっ、えぐっ、申し訳ないでござる…‥‥」

「いや、鑑定眼がほとんど外れていたことで、そこまで落ち込まなくても良いよ」


‥‥‥何と言うか、醜態どころかポンコツぶりを発揮して見せられたけどな。もしかして、異界の召喚士の称号のせいで、「ドラゴンの仲間なのにポンコツ過ぎる」という非常識な部分で召喚したのではなかろうか?


 そうだとしたら…‥‥あれ?ちょっと待てよ?あまり困る事は無いのか?


 ノイン、カトレアのように非常識すぎるような物とかそういうのはそこまでないように見えるし、今回ばかりはある意味当たりなのかもしれない。


 欠点らしい部分もあの二人は見えないけど、ルビーはこのポンコツな欠点があるという、なんか安心感ができているのかもしれない。



「どうしたのですか、ご主人様?」

「いや、何となく思ったことがあって‥‥‥まぁ、良いか」


 召喚士として、初めてまともそうなやつを召喚獣に出来たのかもしれないと、俺は密かに歓喜するのであった。


‥‥‥でも、課題が終わらないんだけど。


「ノイン、お前も鑑定眼とかあるなら手伝ってあげてくれ。このままだとルビーの課題だけで一日が潰れそうだ」

「了解デス。見る目だけはある程度あるようなので、後はそこからどう判断すべきか、叩き込めばいいだけのようですので、楽デス」

「見る目だけではないでござるよ!拙者はきちんとやって」

「連敗している身なのにデス?」

「…‥‥ううっ」










…‥‥ディーたちがルビーの課題で苦戦している丁度その頃、副生徒会長のグラディは、騎士学科で頭を悩ませていた。


「うーん……いやね、僕第2王子だけどここだと一生徒として、加減無しでやってほしいんだけど‥‥‥」

「すいません、グラディ様。ここにいる全員、本気を出して相手をしているのですが‥‥‥」


 グラディに頭を下げるのは、騎士学科の担当教師。


 そしてその周囲には…‥‥


「ぐえっふ…‥‥お、王子、強ぇぇ‥‥‥」

「ほ、本気を出してもまだまだだったか‥‥‥」

「ああ、川が見える、死んだばあちゃんがおいでおいでと」

「「「行ったら逝くぞ!!」」」


‥‥‥死屍累々と、騎士学科の生徒たちが倒れていた。


 本日の騎士学科の授業は単純明快に模擬戦の連戦。


 相手を変え、最後まで勝ち残ればいいだけの者であったが、どういう訳かグラディが非常に強かったのである。


 連戦連勝し、気が付けば皆ぶっ倒れていたのであった。


「うーん、できれば相手が欲しいんだけど…‥‥上級生とか、まだ相手にできないっけ?」

「ただ今、皆様は騎士合宿として遠方に出かけてますからね‥‥‥相手を用意できそうなのは、しばらく後になるかと」

「そっかぁ」


 手加減を学ぶためにやるのも良いのだが、それだといま一つ体を動かしきれない。

 

 かと言って、自分の騎士としての腕を上げるために模擬戦をしたいが、そう相手がいないというのも困る。


「‥‥‥兄上とも学科が違うし、他の学科に模擬戦を申し込むのも良いけど今一つだし‥‥‥あ、そうだ!」


 相手を務めてくれそうなものを求める中で、ふとある考えがグラディの頭の中に閃いた。


 とはいえ、場合によっては圧倒されて意味ない可能性も考慮すると、少々難しい所もある。



「とりあえず、放課後の生徒会室の方で話し合えばいいか。互に研鑽を詰めるような話でもあるし、そう悪い事もないと思うけど‥‥‥念のために、きちんと準備をしておこう。ああ、ついでに兄上に対しての牽制という感じで、交流を深める名目でもできるかな?」


 ふふふふっと、腹黒い笑みを浮かべて企み始めるグラディに、教師は少し後ずさりをした。


 この国の王位継承権争いは、他国に比べて穏やかな方ではあるが、王子たちの腹黒さの企みあいには引くモノがある。


 ああ、また何か良からぬような事を考えているなと思いつつも、王子を止める手段を持っていないのであった。


 あえてましだと思えるのは、この王子たちはまともな倫理的思考を持つ方々なので、その他の国にいるようなロクデナシ共のような真似はしないと言えるぐらいであろうか…‥‥‥


ノインの場合超人メイド、カトレアの場合最初の印象串刺し美女。

ルビーのそのまだまともなポンコツ具合に、ちょっと安心感を覚えてしまう。

ああ、これが希望というやつなのだろうか…‥‥



…‥‥企みがなされているようなのは、気にしない方針でいきたい。

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