345 人の悪意はこうもあるのか
…‥‥遠く離れた、とある国。
その国内にて今、悪意は渦巻いていた。
かつて得ていた力を、再び得ようとしつつ、その悪意を持つ者たちは蠢いていく。
ああ、なぜ彼らは理解しないのか。情報を得ているのであれば、そうやすやすとコントロールできる物でもないのに。
いや、悪意を得た愚か者だからこそ、理解もせずに都合のいいように解釈を歪め、何も考えていないだけなのかもしれない。
「‥‥‥これで十分か?」
「そのはずで、ございます」
一人の問いかけに他敷いて、作業を行っていた一人が返答する。
用意してきたものはこれで十分なはずだが、それでも確認をして置きたい。
しっかりと再確認するほど、考えはするのだが‥‥‥‥それでも、色々と抜けている。
だからこそ彼らは、自分達が踏み入れようとしている領域が、生者が侵してはいけないということに気が付かない。
「では、始めろ。成功すれば…‥‥その時こそ、我が国は再び大いなる力を得られるからな」
「一度は滅びたが、再び力を得て蘇る様も利用できるだろう」
「必ず成功させ、我々の力を示すのだ!!」
やるべきことを確認し終え、彼らは行い始める。
それを止めることは叶わず、彼らは地獄のふたを開いてしまったことのだが…‥‥すぐには理解しないだろう。
まぁ、理解した時にはもう遅いのであるが‥‥‥‥
「‥‥‥アンデッド系の、禁忌?」
「そのようじゃな…‥‥とは言え、儂も方法は知っておるとは言え、そんなものを知るすべは常人には不可能なはずじゃ」
王国の屋敷内にて、帰って来たゼネはディーたちに対して説明をしていた。
魔道具などによって伝える事もできたが、こういうとことは直接自分の口で話したほうが早く、ルビーたちの力も借りて超高速で戻って来たのだが…‥‥これでも下手をすると、時間がないのかもしれないとゼネは言う。
「‥‥普通は並大抵の人間が知ることがない、代物。けれども、知るすべはあるのじゃよ」
「それはどのような方法で?」
「その方法を知るような…‥‥儂が言うのも何じゃが、高位のアンデッド系のモンスターの類じゃがな」
人のできることは限られているが、そてはあくまでも生きている間の事であり、死後の状態はそうではない。
いや、普通はアンデッドになるようなこともなく、成ったとしてもゾンビやグールなど、そこまでの者ではないアンデッドになる程度であり、そんなに変なものを学ぶようなことは無い。
‥‥‥だがしかし、物事には例外があるように、アンデッドにも例外が存在する。
そう、リッチなどの高位のモンスターに変じた場合、その中でもさらに高位の存在になった時に自然と頭の中に入っている方法があるのだとか。
「儂の場合は、どこの段階で入ったのかはわからぬがのぅ…‥‥少なくとも、元聖女じゃったせいなのか、御前様との契約前後で知っていたのじゃ」
その方法は、アンデッドたちでも禁忌と言えるような代物。
それに、扱おうにも制御できるとも限らず、下手をすれば死んでいる身でさえも危険なことになりかねないので、使用を考える者はそういないはず。
「扱うための条件なども複雑であり、そうそうできるわけでもなく…‥‥そもそも儂自身も、使う気はないのじゃ」
だがしかし、今回の件を見る限りでは…‥‥どうやた、その禁忌の類を使おうと考えた馬鹿がいる可能性が出て来た。
しかも、おそらくは既に条件などもいくつかやっている可能性があり、その中には…‥‥
「‥‥‥父の死体も使って、やらかそうと?」
「そうじゃろうなぁ。いやまぁ、御前様の父及び血族に関することじゃから必要はあったのじゃろうが‥‥‥それでも、残された時間はそうないかもしれぬ」
‥‥‥その禁忌に関しては、ゼネの考えでは90%以上の確率で失敗する可能性が高いらしい。
仮に10%のほうで成功したとしても、それはまだある程度対処可能らしいが…‥‥禁忌が禁忌ゆえなのは、その失敗したほうの代償が大きすぎるからだ。
「もしもやらかし、失敗をしたら…‥‥見たくもないような代償が、いや、地獄のふたが開くと言ってもいいのぅ。ありとあらゆる怨霊、悪霊、死霊、凶霊などがはびこりまくり、あちこちで大災害を起こす可能性があるのじゃ」
面倒事ゆえにさっさとどうにかしたいが、現時点ではその災害に備えたほうがいいらしい。
失敗する可能性の方が非常に大きく、既に行われていたら間に合わないそうだが…‥‥何処の馬鹿が、そんなものを試そうとしているのか。
「…‥‥と言うか、何でこの間組織を潰したばかりなのに、面倒な馬鹿は出るのかな?」
「それは私でも、理解できまセン。人は愚かではないはずなのですが、それでもやらかす人がいるのでしょうカ?」
何にしても、今はその情報を元に対策を素早く進めるのであった‥‥‥
面倒事は続々と来る
しかも、わざわざ周囲へ振りまいて・・・・・




