333 餅は餅屋とも言うが
…‥‥冬季の帰郷と言うのもあり、冷え込んではいただろう。
そしてこの帰るタイミングまで、天候が良かったのは幸運かもしれない。
――――びゅおおおおおおおおおおおおおおおお!
「‥‥‥うわぁ、すっごい吹雪だな」
「今年度は冷え込みが激しいようですし、温暖用の道具を作ってよかったデス」
「リザは既に、部屋から出なくなったがのぅ…‥‥冬眠を決め込むようじゃぞ」
「そして、アナスタシアは嬉々として吹雪でも出かけて行ったのだ…‥‥」
室内にいれども、ガタガタと窓が震え、外が見えなくなるほどの吹雪では、見るだけでも寒さを感じさせるだろう。
雪女であるアナスタシアは喜んで出て行って、雪で我が家がつぶれないように工作してくれるらしいのはありがたいのだが、それでもちょっと不安を感じないわけでもない。
「とは言え、確認のためにこの外に出るのは避けたいな…‥‥」
「ピャーイ、外ヤヴァイねー!」
「グゲェグゲェ」
割と大型な面子はリリスの中に入りこんでスペースを確保しているが、それでも吹雪の音は室内に手も響くほど。
どれだけひどい吹雪なのやら‥‥‥ここまでなのは、初めてかもしれない。
「一応聞くけどノイン、何処かの馬鹿が魔道具でやらかしたとかそういうことはないよな?」
「魔道具の反応はありませんし、観測したところ自然なものデス。まぁ、ある意味間違ってないのですが‥‥‥」
「どういう事じゃ?」
「反動の一種ですネ。調べたところ、仮面の組織の残滓と言うべきものでしょウ」
「迷惑/しつこい」
…‥‥かつて存在し、そして今では根絶された仮面の組織フェイスマスク。
その残党たちもしっかりと狩り取り、何かと対応したとはいえ‥‥‥‥それでも、はた迷惑な道具の類や怪物たちの作成で、なにかとやらかしていたらしい。
その中で、自然のエネルギーに眼を付けた者もいたようであり、利用しようと工作して失敗した痕跡があった様だ。
そしてこの吹雪は、そのしっぺ返しと言うか、一時的な大反動が今になってやってきたことが原因らしく、どこまで面倒をかけるのだとツッコミを入れたい。
とは言え、この吹雪の様子から今回限りの猛烈さらしく、この一度の猛吹雪で収まるそうだ。
「でも、明日がちょっと怖いな…‥‥アナスタシアが何か細工をしてくれるらしいけれども、どうなる事やら」
「雪女である彼女なら、何かしそうですガ…‥‥吹雪が激しいので、動きをちょっと把握しづらいのデス」
そして、不安を抱きながらも過ごした翌日…‥‥ある意味、その不安は的中していた。
「‥‥‥雪女が凍っている光景とはこれいかに」
「これまた見事に、かっちーんっと凍っているのぅ」
吹雪がやみ、防寒して外に出たところ、氷像と化したアナスタシアがいた。
結局一晩中帰ってこなかったわけだが‥‥‥‥これまた見事に氷像になっているというか氷の中に閉じ込められているというか、かちこちになっている。
何事かと思い、ルビーが適度に火炎放射で氷を溶かすとすぐに蘇生した。
「吹雪、いつも以上に、すごかった…‥‥油断して、凍ってた」
「いや、油断しすぎじゃないか?と言うか、アナスタシアが雪女じゃなければ凍死がほぼ確定するレベルだったぞ」
「雪女が凍死しかねない吹雪と言うのもすさまじい事のように思えますガ」
何にしても一晩中帰ってこなかったのはこういう訳だったのかと思いつつも、一応何もしていなかったわけではないらしい。
村全体にあちこちで凍結が起きているが、雪がすごい積もっている様子はない。
それもそうだろう。村の全体を覆うように、大きな雪のドームが完成していたのだから。
「ただ、ちょっと、外から作った。そのせいで、入る前に上の方で一休みして、凍ってた‥‥‥」
「あ、天井の方に穴が空いているな」
「あそこから落ちて来たのでありんすかねぇ?」
メチャクチャ強化した雪のドームで、村全体が雪没するのは防いでいたようである。
とは言え、製作途中で気を抜いて凍ってしまうのはどうなのかと思うが…‥‥でもまぁ、よくやってくれただろう。
「ひとまず、温かい飲み物でも飲んでおくか?」
「冷たい物の方が、良い」
「そこは譲らないのかのぅ…‥‥」
凍っていたけれども、それはそれで楽しかったらしいアナスタシア。
だがしかし、見た感じの絵面はちょっとシャレにならないので、次からは気を抜かないようにと注意をするのであった…‥‥あれ、何処かズレている気がしなくもないけど…‥‥まぁ良いか。
ツッコミどころがずれている気がしなくもない
けれども、そうなるとどうツッコめばいいのかがわからない
既に常識人の枠をちょっと無くしているような‥‥‥‥
‥‥‥気が付きたくなかったなぁ、そんな事実




