315 それはそれで、これはこれで…‥‥片付く訳ではない
新しくディーが召喚した、九尾の狐ことスルーズ。
神獣に該当するようでありつつ、詳しい分析を行ったところむしろそれ以上。
並大抵のモンスターとは比較にならないほどの力を持ちつつも…‥‥‥
「‥‥‥まぁ、馬鹿みたいに力があっても、まともに扱えるかは別ではあるがな。のぅ、旦那様、これで大丈夫であれば、問題ないと言いたいのだが…‥‥」
「‥‥扱い方に多少の難があるとかは、まだ許容範囲だ。何しろ、本当に無茶苦茶な面子だからな。でも‥‥‥これはちょっとやり過ぎじゃないかな?」
「ちょっとどころか、かなりのようなのじゃが」
「普段のノインたちの行いを見ると、これでもちょっとだとは思えるんだよ」
「‥‥‥旦那様、その言い方だと先輩と言うべき方々が怖いのだが」
スルーズがそう口にするが、まぁこれはまだ許容範囲内なので問題ない。
そう、例え死んでいた大地が蘇っていても、蘇り過ぎていてもそれはそれで良いのだが…‥‥この光景は、まだちょっとだと思えるのは、自分の感覚が狂っているのかどうか疑わしく想えてしまう。
「うーん、土壌の完全復活は良いのですけれども…‥‥これはこれで、良くないですわね」
「カトレア、それってどういうことだ?」
「人で例えるならば、栄養過多で太りますわよ?」
…‥‥何もなかった大地に注がれた、新たな生命力。
それだけでも色の無かった台地が色づいたのは良いのだが…‥‥カトレアが急に何かに気が付き、大慌てで植物の成長を一旦阻害させた。
その理由を聞けば、どうやら今すぐにこの周囲一帯を蘇らせるには、土地の活力が有り余り過ぎた状態になっているらしいのだ。
まぁ、そんな事を言われずとも、カトレアの阻害が無ければどうなっていたのかは想像しやすい。
というのも、阻害したのに目の前には今…‥‥大森林が広がっているのだ。
「森林国よりも、すごい状態になってますわね‥‥‥‥というか、栄養過多状態でますます増殖して、人が入れないような魔境になりますわ。見てくださいませ、そこに実った果実を」
カトレアが蔓を伸ばし、取って来たのは巨大な果実。
メチャクチャでかいというか、何というか…‥‥巨大な狐のスルーズが傍にいても、小さな狐だと錯覚するほどの異常な大きさである。
「豊穣の力があるようですが…‥‥これ、ちょっとした豊穣神といっていいぐらいですネ」
スルーズの力は分かったが、制御しないと不味い状態。
どうやら大きすぎる力ゆえに、制御が難しい召喚獣を俺は呼んでしまったようなのであった…‥‥
とにもかくにも、死滅した土地の問題は解決したと言っていいだろう。
そう、例えちょっとやり過ぎたところで、こんなところまで来る人は相違ないだろうし、豊かになっている大地であれば、誰が困るのだろうか。
そう、エネルギーに満ち溢れているせいで種が瞬時に成長したりする程度で…‥‥いや、解決どころか別の問題が発生したか。問題の上塗りか。
そのあたりはもう、国に全力投球してしまう事にしよう。
悪化ではないという言い訳ぐらいはできるはずだからな。深く考えるとツッコミの入れどころが多すぎて、ツッコミ過労死しかけねない危険性がある。
「何にしても、とりあえず今回の任務としてはこれで終わりかな?」
もともとフェイスマスクの研究所になった疑いのあるダンジョン攻略だったからな…‥‥消し去った以上、これ以上やることはあるまい。
ワゼさんたちもまだほかの場所の観光をするようで、別れ、俺たちだけがこの場に残される。
後はもう、国に報告するために帰ればいいだけだが…‥‥
「スルーズの報告もしないとな。けど、この大きさだからなぁ…‥‥」
「寮の部屋には、流石に入りませんよネ」
見上げるほどの大きな狐なだけに、ちょっとドアを通りそうにはない。
他の面子もそれなりに大型なレイアやリザもいるが、この二人も一応ドアを通れるようになっているのである。細身でもあるし、かがめばいい話しだし、人型になっている利点が活かせる。
スルーズの方は、巨大な狐ゆえに‥‥‥この様子だと、外にいてもらった方が良いのかもしれない。
「そう考えると小屋でもあったほうが良いのかのぅ?」
「それが一番良さそうだぜ」
「ならノイン、スルーズ用の大型の小屋でも作ってほしい」
「了か、」
「いや、その必要はないぞ」
「「「「え?」」」」
小屋でも作って、そこに置こうかとしていたところで、スルーズがそう口を開く。
「わらわのこの大きさゆえに、部屋に入れぬのは分かっているのだが…‥‥やりようによっては、こうすることも可能だ」
そう言うと、九本ある尻尾の一本を立ち上げ‥‥‥一瞬、その巨体が輝く。
次の瞬間、ぼうんっと音を立てたかと思えば…‥‥‥
「このサイズならば、問題あるまい」
「手乗り子狐サイズ‥‥‥‥でもなんか、ちょっとおかしいような」
…‥‥威厳あふれる巨体だったのに、姿が変わり果てていた。
小さくなって子狐っぽいけれども、リアリティが減少してなんか緩い感じの容姿の狐姿。
確かに、これならサイズ的には室内にいれても問題は無いだろう。
「ふふん、わらわは9本の尻尾に、それぞれ特殊な力を蓄えているからな。使えばその通りになるのだよ」
スルーズの説明によれば、九尾の狐はその尻尾に別々の力を普段蓄えているようで、力を解放すれば使用可能になるそうだ。
先ほどの大地の豊穣も、尻尾の一本が持つ力であり、この姿になったのも別の尻尾によるようだ。
「これは単純に、小さくなるだけなのだが、姿が完全な縮小にならぬのは、これでもわらわはまだ未熟なところがあるからな…‥‥経験を積めば、より完璧に扱えるのだ」
「あれでも未熟なのかよ‥‥‥‥」
大地を活力に溢れすぎさせる力も、未熟って‥‥‥‥どうなるのかがちょっと末恐ろしい。
まぁ、とにもかくにもこれで小屋を作る必要はなくなったのであった…‥‥
「‥‥ところでスルーズ、ちょっと抱えてみていいか?」
「ん?旦那様なら別に構わぬが…‥‥」
…‥‥ちょっと持ってみたら、すっごいふわふわしていた。大きなサイズでもモフモフしていそうだったが、手ごろなサイズだと抱え込めるのか。
「すごいふわふわもふもふで、これはこれで良いかも。お手頃サイズで抱え込めるし、寒い時とかだと温められるなぁ‥‥‥」
「ふむ、ふわふわもこもこデータではなかなか上位の毛並みにいるようデス」
「何その需要ありそうなデータ」
それはそれで気になる気がする。今度、詳しい事を教えてもらおう。
「ぬぅ?温かさを求めるのならば、人の子なら別の姿がいいのでは?」
「え?他に何かあるのか?」
「うむ。わらわの尻尾…‥‥いや、今はするべきではあるまい。需要があるとすれば夜だろうし、その時までのお楽しみだ」
何かこう、気になるけれども、よりふわふわもこもこな姿があるのかなと期待するのであった‥‥‥
ひとまず土地問題は解決した
いささかやり過ぎた気がするが、知った事ではない。
後はもう、全力投球で撃ち返されないようにするだけである…‥‥
‥‥‥ふわもこ要員、ようやくゲット。




