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314 事後処理はやはりどうしてもやらなくてはいけないものでありつつも

‥‥‥ダンジョン化していたハザードの命は消え失せた。


 これで、あのふざけた仮面の者の目論見も潰えただろうが、それでも問題は山積みである。




 コアの破壊に伴い、繋がっていたハザードの体も崩れ始めたのか、塔とかしていた空間が崩れ落ち始める。


 死したダンジョンとなっていただけに、どうやら周辺が脆くなっていたようだが、最初のダンジョン突破時と同じように壁を破壊し、外に出て難を逃れる。


 そして完全に崩壊した後に、周囲を見渡してみたが‥‥‥‥ハザードが無理やり食らいつくした影響なのか、周辺の土地が死滅しており、死の大地と化していた。


 地面が土気色ではなく何色」とも言い表せないような、いや色の概念そのものが無い大地。


 何もかも喰らいつくされて失せたかのようにまっさらになっており、踏みしめた感触すらも奪われたかのように実感がない。


「‥‥‥命の無い、土地ってこんなのか」

「いえ、普通ではありえない代物デス。通常であればかなり最奥部に生きた土が残って良そうですが…‥‥」


 そうノインがつぶやくので、カトレアの方に目を向けて見る。


 植物のモンスターでもある彼女は、こういう土の状態なども良く分かるはずであり、根っこを降ろして探っているようだ。


 だがしかし、その結果としては…‥‥


「ダメですわね。地面の奥深く、入りこめる限界までやってみましたけれども…‥‥同じような状態ですわ。肥料がいくらあっても、それでも何者も育てられないような状態ですわね」

「開墾してもダメってことか?」

「そうですわね。根底から根こそぎ奪われて‥‥‥‥ちょっとやそっとでは、修復不可能な大地ですわ」


 周囲の栄養が奪われただけではなく、生命の育つような土壌という概念すらも喰らわれていたらしい。


 あのままハザードを放置していれば、それこそ全世界がこの周囲のような状態となり、世界が終わるところであっただろう。


 そう考えると、まだ限られた範囲だけが犠牲になったのは幸いだったのかもしれないが…‥‥それでも、被害は大きい。


「このまま残すわけにもいかぬじゃろうが、治しようが無いのぅ。土地そのものが、アンデッドにすらもなれぬような酷い状態のようじゃ」

「大地にもツボがある事を最近見つけたのでありんすが…‥‥ここはそれすらも無くなっている様子でありんす」

「ふむ、踏みしめた感触だと、誰もが立ち寄ることは無いな…‥‥心地よくもなく、かと言って悪いわけでもなく‥‥‥何もない、無の感想しか出ないな」


 塔があった場所を中心に、半径100キロ圏内でこの状態になっているらしい。


 このままにして置いても今後開物は生まれないだろうが、人が行き来をするようなこともないだろう。


 いや、そもそも動植物すらも寄り付かない‥‥‥‥本当に死んだ土地になっているのだ。


「とはいえ、このまま放置して報告しに向かうのも、なんかなぁ‥‥何もない大地に誰も利用価値を見出さないから争いとかは無いだろうけれど…‥‥無くなった景色を見ると、このままにもしたくないな」


 今後立ち寄ることは無いかもしれないが、それでもこの大地の惨状は放置したくはない。


 とはいえ、俺たちにできるような事もないし…‥‥どうしようもない。


 色々と思う事はあるけど、何もできないのはもどかしくも思えるだろう。



「‥‥‥姉さん(母さん)、この土地を元に戻すような方法ってデータにありますカ?」


 そんな俺の想いを察知してか、ノインがワゼに対して問いかける。


「ふむ、流石にこの惨状は普通は起こり得ないので、データ上ではないのですが…‥‥どうにかできる方法は、一応ありますネ」

「本当ですカ?」

「エエ。けれども、私とご主人様のいた世界ならではの方法ですし‥‥‥‥この世界では、ちょっと無理ですネ」


 ワゼの説明によれば、彼女のいる世界ではこういうことは起こり得ないが、それでも大地自体を蘇らせる方法はあるらしい。


 無いのにあるとはどういうことなのかと言いたいが、どうやら単純に何もない土地に力を与えるような存在がいるだけという話のようだ。


「神獣と言いまして、私達の世界の方ではモンスターとはまた違う存在‥‥‥似ているようで異なるような、方々がいるのデス」

「でもそんな力って、見たことあったかな?僕らのところだとポチの印象が強すぎて全然わからないんだけど…‥‥」

「あると言えばあるようデス。まぁ、あのポチさんの場合は微妙過ぎるというか、そもそもこういう土地関係ではないのでその力が無かっただけのような…‥‥いえ、神獣なのにアレ過ぎてちょっと私でも分かりまセン」


 なにやら知り合いに一匹の神獣がいるらしいが、その神獣の力は微妙らしい。


 こういう土地関係に関してはもっと違う神獣が存在しているらしく、それがいればこの大地すらも蘇らせることができるそうだ。


「奪われたのであれば、与え直せばいい話‥‥‥ただし、肥料などで栄養を与えるのではなく、土地の概念そのものに影響を与える事で富ませる方もいるのデス」」


 つまり、そう言う存在さえいればこんな土地だろうとどうにかできるようになるのだが…‥‥残念ながら、この世界ではそのような存在は見ていないそうだ。


「本当は私達の世界の方で、知り合いの神獣から誰か引っぱってきた方が良いのですが…‥‥世界が異なる以上、神獣の行き来に関しては、制限がかかりマス」

「そういうものなのか?」

「そう言う者なのデス。私やご主人様に関してはそう言う制限がかからないのですが‥‥‥存在その物が世界で構成されているので、何かと不都合な事も多いのデス」


 なお、その世界の行き来に関しての神獣の制限に関しては、ワゼは実験していたらしい。


 一応、実験したのはそのポチという人らしく、自己責任でやってもらう代わりに色々と融通などもしたようだが…‥‥色々とあったとはいえ、そんな制限がある事を見つけることができたようだ。


「まぁ、今は離れた場所ですが、元お隣さんでしたからネ。きちんと彼の奥様の方に許可も貰ってますし、ポチの生命力は他の神獣に比べてかなりしぶといので、案外大丈夫でシタ」

「それってまともなデータになっているのかな‥‥‥?」


 とにもかくにも、神獣がいれば大地は治るそうだが、この世界へ連れてくることが出来ない。


 ならば、この世界にいる神獣を連れてこられればいのだが、そちらに関してはシスターズが全世界を隅から隅々まで確認したそうだが…‥‥発見したとは聞いていないようだ。


「まぁ、あのポチが本当にアレ過ぎて見つけやすかったというのもあるのでしょうし、この世界ですとまた違う定義があるかもしれないので、見つけられないのかもしれまセン。流石に、万能なわけでもないですし、そう簡単に見つけられないからこそ神獣なのでしょウ」


 色々と酷い言われようの見知らぬポチとやらに不憫さを感じてきたが‥‥‥‥何にしても、現状の状態ではどうにもできないそうだ。


「ただ‥‥もう一つ、手がないわけではないですネ」

「というと?」

「ノイン、貴女は元々シスターズであり、私達の世界にいた存在デス。けれども今はこの世界の、そのご主人様に従っていますよネ」

「ハイ。そうデス」

「となると、普通に世界を越えて移動させられるという点を考えると…‥‥召喚士とやらの、その召喚でどうにかできるかもしれまセン」


 ただし、通常の召喚士ではまずそんな存在も呼びだせないだろうし…‥‥となると、どういうことなのか話は見えてくる。


「つまり、俺に神獣を召喚して見てもらって、それで試してみろと?」

「そう言う事デス。この世界ならではの決まりごとの職業とやらも興味深いですが、ディーさん、あなたのその『異界の召喚士』の力であればどうにかできる可能性もあるでしょウ」


 異界の召喚士という職業は、本家本元の滅茶苦茶なメイドゴーレムのワゼさんにとっても、未知数な頃があるらしい。


 その職業の力で、この場をどうにかできるような召喚獣を呼び寄せることができるかもしれないようだ。


「それに、今後も同じようなことが無いとは限りまセン。この際ですし、既にかなりの数がいるようですが…‥‥思いきって、召喚してみるのはどうでしょうカ」


‥‥‥召喚できるのか、と尋ねられれば、できないこともない。


 というか、まだできるようであり、召喚文を頭の中に浮かべて見れば、はっきりと出てくるのだが‥‥‥どうなるのかはわからない。


 そもそも、全部が狙い通りに行けるってわけもないからなぁ…‥‥ある程度の融通は効くらしいけれど、それでも完全にできるのかといわれればそうでもない。うん、先ず最初から思い通りだったらでっかいドラゴンを俺は呼んでいるよ。なのに今ではメイドに植物にアンデッドにドラゴンの仲間だけど人型に‥‥‥‥悲しい事に、完全に思い通りにいった試しがない。


 とはいえ、やってみなければわからないだろうし、ワゼさんの言うとおりに今後もこのようなばかげた土地の死滅をフェイスマスクがしないとも限らないし、備えるためにというのであればやったほうが良い。


「‥‥一応聞くけど、全員新しい召喚獣が来るのは、賛成か?」

「賛成デス。ご主人様の命令であれば、どの様な事でも良いでしょウ」

「大丈夫ですわね。何かと全員関係持ちですが…‥‥今さら増えたところで、どうでもいいですわね」

「拙者としても、賛成でござるよ。文句なんぞ、当の前に無いのでござる」

「まぁ、不安なことは無いじゃろ。ただ、思い通りの輩が出るのかどうかは不明じゃな」

「グゲェグゲェ、グゲェ」

「それはそれでも面白そうでありんすしね。どのような事であっても、反論はないでありんす」

「文句なし。しいて言うのであれば、冷えた方を」

「ついでに何かと武術に長けた方の方が良いなぁ、と思っていたりするが…‥‥マイロードの判断であれば従うな」

「良いぜぇ、面白そうなやつの方が良いけど、それでも何かと決めるのであれば、従うだけだぜ!」

「後輩/できる。それ/ちょっと欲しかった」


 ついでに関係持ちな事を考えると、この場にいないルナティアにアリスにも聞きたいところだが…‥‥まぁ、彼女のたちの方でも文句はあるまい。


「なら、すっごい久し振りにだが、新しい召喚獣を呼ぶぞ!!」

「「「了解!!」」」


 反対意見も特に出る事もなく、全員が賛成したので召喚を試みる。


 契約などではなく、純粋な召喚での召喚獣を呼ぶのはかなり久し振りなのだが‥‥‥‥問題はない。


「なら、やるぞ。『来たれ、古のものよ、我が元へ』」


「『汝は常に、我が元へ、傾国の者を、富を満たす者へ』」


‥‥気のせいか、何か不穏なものが混ざったが、それでも何とか良いのを引き当てたい。


「『我が命を受け、大地を富ませよ生き返らせよ、さすれば汝に名を与えん』」


「『さぁ、さぁ、さぁ、顕現せよ、汝に与えし名はスルーズ!!我が元へ来たまえ!!』」


 かなり久し振りの、最初からの召喚。


 魔法陣が出現して発光し、ぼうんっと音を立てて煙が立ち上る。


 そして、煙が晴れた時にその姿を現‥‥



どばんっ!!


「!?」


‥‥今までの召喚であれば、何かともみな人型サイズゆえに、直ぐに全部を見ることができただろう。



 だがしかし、今回の召喚は一味違っていたようで‥‥‥‥晴れる前に、その巨体が煙を内部から吹き飛ばし、大きな体を見せ付ける。


「‥‥‥ほぅ、わらわが呼ばれるとは、これまた面白いことになったであるな」


 ずぅんっと音を響かせ、大地を揺らしてできたのは、巨大な狐の姿。


 ただし、通所の狐とは異なり、どう見ても尻尾の数がおかしいというか…‥‥九本の金色の狐。


「お主が、わらわを呼んだ‥‥召喚主(旦那様)となるのか。なるほどのぅ、中々良い面構えに、他の者の臭いも漂わせるようだが…‥‥気に入った」


 ニヤリと笑みを浮かべ、そう告げる巨体は、こちらの方へ顔を向けつつ、頭を下げた。


「ならば、わらわも従うとしよう。種族は‥‥‥まぁ、見た目の通りじゃが『九尾の狐』であり、名はそのスルーズとやらをいただくとするか。それでは、我が召喚主(旦那様)よ、末永く頼むぞ」


 笑みを浮かべつつ、そう告げる大きな狐‥‥‥スルーズ。


 なんというか、確かに神獣の類なのかもしれないが…‥‥これまでの召喚パターンから大きく外れたこの結果に、召喚した俺自身が驚く。


「‥‥ドラゴンとかじゃなくて、きちんとした神獣っぽいけど…‥‥なんだろう、ちょっと大きすぎる気もするけれども、ようやくというか、本当にまともな召喚獣を呼べたような気がしてきて涙が…‥‥」

「ぬぅ?何故呼んで早々に泣くのだ?」



 だって、今までの例が美女ばっかりで、初めてまともな獣を呼びだせたから。


 そう答えようとしたが、何となく出てしまったその感動の涙で、直ぐには出来なかった。


 召喚を続けてようやくというか、今日初めてまともそうな召喚獣を呼びだすことに成功したのであった‥‥‥‥


「ふむ、こういう感じに召喚デスカ‥‥‥‥あれ、でも九尾の狐と言えば、神獣の類かもしれませんが、確か‥‥‥」

「いや、ワゼ。今は言ってやるな。僕の方でも一応その手の知識はあるんだけど、何となく後のことが予想できるし、今は彼の喜びに水を差すような真似をするな」


‥‥‥なんか不穏そうな会話が聞こえてきたけど、それはそれで気のせいだと思いたい。


300話超えて、ようやく出てきたまともそうな召喚獣。

美女ではなく大きなモフモフの狐だが、それはそれでかなりありがたい。

というか、「美女限定召喚士」とか「ハーレム野郎召喚士」とかそういう声も多分これで、拭えるかもしれない‥‥‥‥




・・・・・そう言えば、まともに狐系のモンスターを出したの初めてかもしれない。狐って結構ファンジー系では出るけど、出す機会が中々無いんだよね。テンプレそうなのにうまく表せなかったんだよなぁ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 希望を与えられ、それを奪われる…その時人は最も美しい顔をする 作者による主人公へのファンサービス、哀しいなぁ…
[一言] 今は獣でも次話で傾国の美女に化けるよね
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