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311 時間との勝負

‥‥‥ハザードの体内ダンジョン。


 中の状況は物静かではあるのだが、外では今でもハザードがあちこち動き回り、暴れているだろう。


 ゆえに、長時間の滞在はせずに、できるだけ早く突破を目指すべきなのだろうが‥‥‥‥



ドドドドドドドド!!

ザスザスザスザス!!

ゴロゴロゴロゴロ!!


「光線に槍に鉄球って、どれだけのトラップがあるんだよ!!」

「殺意ありまくりの罠が多すぎデス!!」


 いざ進んでみれば、一歩踏むだけでもトラップが発動するとんでもダンジョン。


 むしろここまでドリルで突破してきたこと自体が幸運であるというがのごとく、先へ進めば進むほど容赦なくトラップが発動していく。


 しかも、ボタンとかレバーではなく生命体感知式らしいというのをノインは分析していたが、どうやら生命体の反応を確認するだけで発動するらしい。


「というか、アンデッドに剣精霊も生命体に値するのかのぅ?死体と物では色々と違うような気がするのじゃが」

「多分/関係ない。意志/あるなし/で見分けているかも」

「その可能性があるでありんすな、っと!?今度は棘棍棒が!?」

「グゲェ!!」


 ばっとリリスが箱で受け止めつつ、先へ進めば進むほど出てくるトラップに俺たちは気を張り続ける。


「んー、おそらくですが、先ほどのルンの考えで間違いないでしょウ。生命体の定義はややこしくもあるのですが、ここでは意志ある者を生命体として捕らえているのでしょウ。っと、今度は矢ですカ」


 前方から急に放たれまくった無数の矢に対して、ノインが箒を取り出しはじき返す。


「何にしても、こっちがこの様子だとあっちも同じことになっているだろうな‥‥‥」


 別方向から目指している面子を思うと、何となく同様のトラップに襲われている様子が想像できてしまうのであった‥‥‥








‥‥‥そしてその想像通りに今、ディーとは別方面へ進んでいたカトレアたちもまた、トラップに襲われていた。



「ぶじゅわぁぁぁぁぁぁ!!」

「じぇげぇぇぇぇぇぇぇ!!」


「うわぁ、ダンジョンだけあってモンスターが出てきたでござるが…‥‥」

「化け物が造りだすと、まだまともに見えるのが不思議」


 モンスターハウスのトラップと言うべきか、踏み入れた瞬間に周囲に大量のモンスターが出現し、囲まれる。


 だがしかし、このダンジョンになっている化け物(ハザード)を見た後だと、ここにいるのはまだ常識内にいるモンスターたちであり、どことなく楽である。


「よいしょっと!!鎖鎌で一網打尽とは、楽すぎるぜ!」

「これならまだ、ハザード相手の方がきつかったな」


 ティアにレイアがそれぞれの武器を振るい、一気に殲滅していく。


 カトレアは木の根、ルビーとアナスタシアの炎と氷でも撃退可能であり、数が多かろうとも対応できるだけの広範囲攻撃手段はそろっているのだ。


「それでも、中々先へ進みにくいのは嫌ですわねぇ。モンスターだらけのトラップも、相性が不利な相手が出てこられると困りものですわ」

「まぁ、マイロードと別行動な身だと、指示が無い分各自で判断するしかないからな。統率しづらいと戦闘力も落ちるだろう」

「でも、今のところ個人でのパワーがあるし、力づくでどうにかなっているから良い方だぜ」


 ディーとは別行動な分、戦闘時の指示が無いので各自の判断で動くしかない。


 指示がある方が動きやすいので、現状全体的に見ればパワーダウンするのだが…‥‥それでも、各々の戦闘能力は高い面子なので、今のところは問題ではない。


「いざとなれば、通信機で指示を仰げば良いでござるな。しかし、まだ先は長いのでござろうか‥‥‥」



 別れて先へ進むのは良いのだが、この様子だとディーたち側も罠にかかって大変な様子がうかがえる。


 時々通信を行いつつも、どうやらここの攻略は一筋縄ではいかないような予感を彼女達は抱くのであった…‥‥














 …‥‥そしてその予感は、当たっているだろう。


 外で大暴れをしていたハザードではあるが、自分の体の中で蠢く者たちの存在を感じ取っていないわけではない。


【グガギリレエェェェ!!】


 肥大化した頭で転がって移動しながら、体内での動きを感じた化け物は歩みを止め、周囲の大地を喰らっていた行動を止め、その場に停止する。


 遠くから見ればひどく醜い肉塊が鎮座しているかのような状態になり、その目が上へ向けられ、伸び始めた。


 たとえるならばカタツムリの目のごとく顔から離れ、途中で曲げて、自身の口内へ入れていく。


 そう、胃カメラのように自分の体の中の状態を自分の目で見て…‥‥何重にもなっている体内の壁を透過して内部の様子を確認していく。


 そしてハザードは見た。自分の体の中に呑みこんだのに、まだ生きている者たちの姿を。


 別れて内部を突き進み、コアを目指しているようだが…‥‥内部のトラップを次々と踏破している様子を。


【ギギギギ、ギガガギュグアァァァァ!!】


 様子を見て、ハザードは雄たけびを上げ、目を元の位置に戻した。


 自分で取り込んだ者たちが生きており、容易く突破している様子が酷く腹が立ったのである。


 自由を手に入れ目に付くものすべてを取り込んでいるのだが、中に入れて取り込めないものがるのが非常にもどかしい。


 自分が産まれた目的は、どうやら人知を超えた存在になる物らしく、ならばその目的のために色々と吸収して人知を超えてやろうという思惑も持っていたのだが…‥‥吸収すらできないで、何が人知を超えた存在になれるのだろうか?


 そう思い、ハザードはしばし考え…‥‥自分で自分を喰らい始めた。


 靴下を裏返しにするがごとく、自分の口の中に自分の体を入れ始めていく。


 ぎりばぎぃっと音を立て、骨が砕けて肉が千切れようが、そんな物は関係ない。



 そして数分も経たないうちにその巨体は口内へ収められていき…‥‥残るのは、裏返ってさらなる醜い肉塊と化した物体だけ。


 

 それでも体内のダンジョンは変わらないのだが…‥‥いや、今はもう裏返しになった事で、体外のダンジョンと言うべきか。


 石造りのような壁をあらわにしていき、地面に降り立って根付いていく。


 口すらも見当たらずにそのまま膜を張り、次第に地面にも根付き始め、大地の力を吸い取り始める。


【ギュルグウガァァァアァァァ!!】


 一つの大きな肉塊は、喰らったはずの塔へと姿を変えていく。


 ただ、喰らわれる前の塔のダンジョンと違う点を挙げるのであれば、その全身に全て血管のようなものが覆い尽くし、脈を打ち始める。



 場所を移動し、地に根付いた塔のダンジョン。


 けれどもそれは、一つの大きな化け物となり、今度は内部から破壊されることはできないように何重にも壁が連なり、分厚くなっていく。


 周囲の大地が枯れ始め、生きとし生ける者の命が奪われていく。


 存在するだけで、滅びを与える滅亡の塔として今、ハザードは成長を始めるのであった。


 何もかもを犠牲にさせ、己を高めるためだけに。


 人知を超えた存在になるという目的のために、全てを喰らいつくすために。


 そして何よりも、自分の手を逃れて内部で行動する者たちをまとめて葬り去るために…‥‥‥


内部にいるので、外の様子は分からない。

けれども今、何かが蠢き始めたのは感じることができるだろう。

それがどういう存在になり果てていくのかは不明だが…‥‥厄災になるのは、間違いなさそうである。




‥‥‥人知を超えたものになる前に、何かこう、取り返しのつかない化け物になってきている気がする。

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