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閑話 じわりじわりと攻めこみつつ/そしてそろそろ

‥‥‥ルナティアは今、どうしたものかと頭を悩ませていた。


 そしてまた、彼女の隣ではアリスも同じように頭を悩ませていた。


「何に使えと、言うのニャ‥‥‥」

「こちらもどうして送られてくるのよ‥‥‥」


 長期夏季休暇。本来であれば彼女達はそれぞれの出身国に帰郷し、そこで夏を過ごす予定であった。


 だがしかし、互いの上の人達から今年は少し忙しいことがあるという連絡を受け、学園の寮に留まっていた。


 一応、普通に過ごす分には問題もない。


 バイトをして小遣い稼ぎもできるし、この寮で過ごし始めてだいぶ慣れているので、帰らなくとも平穏無事には過ごせるはずであった。



 けれども本日、同時に荷物が届いたので友人(ライバル)同士として何が送られてきたのかちょっと見せ合いっこしてみようという話になって、ルナティアの部屋の方で開封したのだが…‥‥中身はやや違うとはいえ、示された用途はどちらも同じようなものだった。


「何を考えているのかニャお母さん!!なんでこんなものを送ってくるのかニャ――――!!」

「兄様たちも何を考えているのよ!!妹にこれを勧めるってどういうことよ!!」


 二人はそろって顔を真っ赤にして叫んだが、無理もないだろう。


 何しろ、送り主はそれぞれの家族からであり、その品物はネグリジェ‥‥‥ワンピースに似た寝巻の一種だった。


 だがしかし、普通のであればよかったのだが‥‥‥‥どちらもかなり攻めているというか、色仕掛けに使われるような類であった。



…‥‥一緒に入っていた手紙によれば、どちらもいざという時の勝負服用。


 親というか兄というか、それぞれの肉親が考えた最終兵器のようではあったが、それで良いのかと彼女達はツッコミを入れたくなるのであった。


「気はあるけれども、いきなりこんなものを送ってくるのはやめてほしいのニャ‥‥‥」

「同感よ‥‥‥思って送りつけてくるのはいいけれど、色々段階すっ飛ばし過ぎですわよね‥‥‥」


 はぁっとそろって溜息を吐きつつも、送り返すことはしない。


 一応、肉親が考え抜いてくれた勝負服でもあり、捨てることはもったいないと考えたのである。


 特にアリスにとっては、まだまだごたごたしているガランドゥ王国で頑張っている兄たちが、その仕事の合間に選んでくれたということになるので捨てがたいのだ。


「とはいえ、段階を考えて欲しいわよ‥‥‥何でこうなったのかしら?」

「恐らくだけど、あたしたちの進み具合が遅いからかニャ?」


 心当たりがないわけでもないが、無理に押さないでほしいとは思う。


 ゆっくりと進めたいので、いらぬ心配はして欲しくはない。


 そう思いつつも、一応送って来てくれたことに関しては返事の手紙を書くのであった。


「…‥‥まぁ、セクシー路線でと言うのは間違っている気がするけどニャ。流石に彼の召喚獣たちにスタイルで負けているのは自覚しているのニャ」

「うん、だからこそそこまで早くもないのに…‥‥もうちょっと考えて欲しい物よね‥‥‥」


 なお、後日にネグリジェの存在をメイドに把握され、使用する機会が巡って来るのはまた別のお話である。



――――――――――――――――


‥‥‥ルナティアとアリスが互いの肉親の思いやりに対して複雑な感情を抱いていた丁度その頃。


 とある場所の奥深く‥‥‥いや、違う。奥ではなく空に続くとある塔の頂上では、ある者たちが集まっていた。



「‥‥‥地下ではなく、こんな場所に研究所を作るのはどうかと思うが?先日も、それで発見されたのか、潰されたところがあっただろう?」

「いやいやいや、大丈夫だったぜぇ。ここまで登ってくるような奴らはいないし、そもそも道中に失敗作の怪物たちを用意しているからなぁ。組織のものでなければここまで安全に来れないし、下からも目視しきれないほどの位置で、安全性だけで言えばここはかなり高いんだ」


 仮面をかぶっているとはいえいやらしい笑みを浮かべるような相手に対して、呆れたように肩をすくめる同じ仮面の者。


 いや違う、その目の前の者の仮面は怒ったものではあるが…‥‥それでいて笑ったような声に不気味さを感じさせられた。


 そう、ここは塔タイプのダンジョンのはるか上であり…‥‥既に仮面の組織フェイスマスクの手に堕ちたところなのだ。


「しかし、失敗作を放置とは‥‥‥バレたら元も子もないと思うが?」

「大丈夫大丈夫。ダンジョンだからこそ、未知のモンスターがつきものだと思うような奴らが多いからなぁ。それに、大抵見つけられても全滅させてて養分になっているからなぁ。ついでに、他のダンジョンならばダンジョンコアを掌握するが、ここのやつはマブダチだ!意外にも話が合うんで、協力し合ったからこそ思いっきり成長したんだぜぇ!!」


 がはははっと笑いながら言うが、その道のりは容易い物ではなかっただろう。


 何しろ、組織のものとは言えダンジョンに挑むのは変わりなく、コアまで到達するにはかなり厳しい道のりがあるからだ。


 それに、大抵普通のコアは組織の調べによればろくでもない精神が宿っていることが多いのだが‥‥‥どうやら偶然というか、奇跡的にもこの研究所の所長を任された目の前の仮面野郎とは話が合ったらしく、無理やり掌握することなく協力関係を築き上げたからこそ、ダンジョンとしても質が高い物になったようだ。


「何にしても、今日ここへ集まって来たのは自分でも思うこのくだらない話しでもするためじゃねぇんだろう?」

「ああ、そうだ。そう言えばそうだったな」


 ちょっとこの場の雰囲気に流されかけていたが、流そうとしていた本人が話を切り替えたので、はっとそこに集まっていた者たちはその事を思い出す。


「上からの命令だが、確認のために来たのだが、そちらの研究はどうなっている?」

「…‥‥んー、ちょっとあの狂気野郎ハドゥーラに似たものになって来たけど、だいぶいい感じだぜぇ。ただ、ちょっと問題があってな‥‥‥」


 どうしたものかと悩むようなそのそぶりに、何か研究での壁にぶち当たったのかと彼らは思った。


「人知を超えた者の製作‥‥‥ハドゥーラは人体改造でやっていたが、それに似た方法でなにかあったのか?」

「ああ。そもそも人知を超えた者を作るのに、人知の範疇にあるような素体の人間を使っても限界があると考えてなぁ、そこからちょっとアプローチを変えて、前からやっていた怪物研究にちょっと混ぜたのは良いんだがなぁ‥‥‥」


 とりあえずついて来いと彼は言い、その後に他の者たちは付いてくる。


 そして研究所の奥深く、魔道具によって内部が見れる監視室に案内された。



「ダンジョンコアにきちんと話をして譲ってもらったダンジョンマスターが良い素体になり得るかなぁっと思って、色々やったのは良いんだが…‥‥調子に乗ってこうなってしまったんだぜぇ」


 はははっと軽い笑い声をあげ、とある室内の映像を移す仮面の者。


 何が起きたのか彼らはその映像を見て…‥‥その意味を理解した。


「‥‥‥ちょっとばかり制御がね、難しくて…‥‥今知性の増加に取り組んでいるんだけどなぁ」


 映し出されていたのは、巨大なドラゴンのような姿。


 だが、その各部位には様々な魔道具が埋め込まれており、露出しており、あちこちのパイプから何かの液体が漏れ出ている。


 厳重にかなり多くの鎖で縛られて身動きが取れないようにしているようではあるのだが…‥‥見る感じではすでに狂気に呑まれており、人知を超えたものではなく、ただの狂った災害となり果てている様子だった。


「いや、これは大失敗作にならないか?しかも所々、怪物となったものも生体部品として埋め込んでいるが‥‥‥これはダメだろ」

「んー、そうかねぇ?だったらアレに混ざって(・・・・)成功作へ近づけてくれるかい?」

「「「「へ?」」」」


 その問いかけに対して、何を言っているのかと彼らが思った次の瞬間…‥‥ばかっと床が開き、体が落下した。


 そして映像の方に目を向けて見れば、その怪物の目の前に落下したやつらが落ちて…‥‥縛られているとはいえ、異様に発達した長い舌で次々と絡め捕らえて、有無を言わさずにあっという間に捕食されていった。



「…ま、これでいいか。あいつは幹部候補生とその部下たちだったけど、あの様子だと結果もなさそうだったしねぇ。この研究に体を捧げたのであれば、それはそれで本望だろうぜぇ」


 怒りの仮面をかぶりつつも、その声は何処か軽いもの。


「食べれば食べるだけ、相手の知性もアレが自分のものにすることも分かったからこそ、良い材料になるかなっと思ったが…‥‥」


 映像に再び目を向けて見れば、未だに狂気のままの姿を見て彼は溜息を吐く。


「うん、やっぱりただの人間程度じゃだめかぁ。もっと高度な生命体というか、知性を持つものがいればいいけどなぁ…‥‥あ、そうだ」


 そこでふと、彼は組織内で回ってくるお知らせの内容を思い出し、それを利用することにした。


「安全な研究所だけど、刺激が足りないからねぇ。それにおびき寄せるには都合のいいものが多いし、ちょっとやってみるかぁ」


 ニヤリと笑みを浮かべた彼が手に取ったのは、知らせの内容にある一つの紙。


 そこに書かれていたのは、組織に敵対する者たちやその危険度を示す者ではあったが…‥‥その中の一人に、いや、彼の持つ召喚獣たちに目を付けた。


「うまくいけば大成功で目的達成。失敗すればここはお釈迦で自分の命も危なくなるが、その時には自ら喰われればいいぜぇ。ああ、どっちにしても成しとげられるならも本望なのは間違いないからなぁ」


 はははっと狂気の笑い声をあげつつ…‥‥心の奥底に秘めたる怒りも少しだけ湧きださせ、彼はさっそく行動に映し出す。


「ああ、こういう時に幹部の肩書が役に立つのは良いぜぇ。さてと、人員の手配や使い捨ての怪物の厳選をっと…‥‥」





…‥‥やや少し前に起きた、謎の研究所消失事件により、仮面の組織フェイスマスクは活動を少しだけ自粛していた。


 だがしかし、組織と言えども完全に一枚岩でもなく…‥‥自分の命を持っての責任で動くことには寛容なところがあった。


 ゆえに、一人の狂気によって再び動き出すのであった…‥‥


「しかしなぁ、ハドゥーラがいないのはさみしいぜぇ。あいつはあいつでうまくいっていたはずだったのになぁ。新しい幹部でも最近変なのが入って来てちょっと嫌だし、組織が内部崩壊で終わるとかはやめてほしいぜぇ」


使用する機会が来るという事はどういうことなのか。

何にしてもずっとお蔵入りということないので、もったいなくしまい込み続けることはないのだろう。

そして一方で、狂気が少しづつ目を覚ましてきたようで‥‥‥




‥‥‥もうずっと自粛して自然消滅してほしいのに、何でこうも起きてきちゃうのかなぁ。

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