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276 倫理を学べと言いたいが

 アポトーシスへめがけて放った遠距離攻撃。


 だがしかし、それを防ぐものがあったようで、結果としては直線の道が出来ただけ。


 ならば、このまま突き進めばいいだけの話と思ったのだが…‥‥



「‥‥‥突き進むごとに思うんだが、さっきの攻撃を防げるのか?」

「あちこち、壊れているからのぅ」


 壁を貫き、扉を粉砕し、床をふっ飛ばす。


 進めば進むほど放たれた魔導砲とやらの威力を実感できてしまうのだが…‥‥それを防げるだけの代物があるというのはにわかに信じがたい。


「少なくとも、単純に物量で押し切られたとかでは無いようデス。反射音などから測定する限り、大型の何かが守ったのでしょうが‥‥‥‥威力がある程度落ちているとはいえ、防ぎきるとは予想外デス」

「あれで本来の威力じゃないのかよ」

「ハイ。ご主人様の力を借りれれば、この程度で済みませんからネ。威力があり過ぎると、それはそれで大変ですガ‥‥‥」


 ワゼの方のご主人様って何者なのかとツッコミを入れたくなったが、そんなことをする前に前方に動きが見えた。



ズシン、ズシン、ズシン!!

「何だあれ?」


 重みのある足音を響かせて、こちらに何者かが向かってくるようだったので足を止め、臨戦態勢へ移行する。


 そしてよく見てみれば‥‥‥それは大きな人型の物体。


「どうやら、ゴーレムの類ですネ。私のような人間サイズとかではないようですガ」

「ふむ、メイドゴーレム目的ではなく、純粋にここの防衛装置目的として作られているようデス」


 ノインたちとゴーレムというくくりは同じでも、その種類は違う存在。


 全身が金属光沢を放ち、かくかくとした体つきに、頭の方には目らしい発光物が一つしかないようだ。



ギギギ、ブシュウウ!!

『侵入者確認ー排除!!』


「っと、やる気か!!」

「いきなり相手をしてくるのですカ!!」


 やってきたゴーレムたちは一体ではなく、かなり多くの数。


 そしてそれらが一斉に音声を流し、煙を吹き出したかと思えば襲ってきた。


「この程度、某の槍で貫いてくれるわ!!」

「鎖鎌でまとめてぶった切ってやるぜ!!」

「切断/専門」


 襲ってきたゴーレムたちに対して、まずは素早くレイアにティア、ルンたちが各々の武器を使って攻撃を仕掛ける。


 相手の動きはこちらよりも遅く、彼女達の攻撃が先に当たったが…‥‥



ガギガギガギィィィィィン!!

「「「硬っ!?」」」


 槍は貫けず、鎌ははじかれ、剣は反動で押し返される。


 各自の先手必勝の攻撃が、まさかの不発であった。


「なんだと!?」

「うわぁ、防御力が半端じゃなさそうじゃな…‥‥しかも、ルンの剣は確かオリハルコンの刃になっているはずなのじゃが‥‥‥それをはじき返すって、どういう金属なのじゃよ」

「ふむ、この防御力なら納得がいきますネ。どうやら合金の類のようですが…‥‥データには無いような、未知の組み合わせのようデス」

「分析しても、ERRORしか出ないのですが…‥‥データに無いのなら納得デス」


 攻撃がはじかれたことに驚きつつも、ワゼとノインが冷静に分析した。


 容姿に違いはあれども、こういう点では姉妹のように思える。


「なら、破壊は出来なさそうですが…‥‥これはこれで良いサンプルになるでしょウ。ひとまずは、破壊よりも捕縛を推奨いたしマス」

「ご主人様、粘着弾で捕縛の許可ヲ」

「あ、それがあったか」


…‥‥攻撃を仕掛けてきているので反撃したいが、何も全部壊すだけが反撃ではない。


 というか、攻撃されるのであれば攻撃できないようにする手があり…‥‥そのようにできる手段を俺たちは持っている。いちいち壊すだけが、攻撃を辞めさせる手段ではないからな。


「なら、捕縛用意!!破壊不可能なら、ここへ固定してしまえ!!」

「「了解デス!!」」


 いうが早いが、じゃきんっとノインは腕を変形させ、ワゼはどこからともなく大型の機関銃を取り出す。



ズダダダダダダ!!べたべたべたべちょん!!


 嵐のように、すごい勢いで打ち出される粘着弾。


 しかも、ノインの物とは違ってワゼの使っている物のほうがより粘着力に優れているようで、次々にゴーレムたちが絡み取られ、動けなくなっていく。


「カトレア、アナスタシア!!お前たちも拘束を行え!!」

「分かってますわ!!ノインばかりに動かせませんわよ!!」

「氷結、得意、全部拘束!」


 面子内で拘束が可能な二人も動き出し、蔓や氷で固めていく。


 ついでに先ほど攻撃をはじかれたレイアたちも、武器で破壊するのを一旦やめ、体術で押さえるなどして拘束しやすくしていく。


「というかこの程度、後ろ足で蹴っ飛ばしたほうが早い!!」

「鎖鎌の鎖も拘束に役立つぜ!!」

「ゴーレム切れない/でも/足元の床なら可能」


 全員で捕縛しつつ、あちこちへ絡み取って、ゴーレムたちは動けなくなってくる。


 それでも奥からゴーレムたちがどんどん湧き出るので、そちらも捕縛していた‥‥‥‥その時だった。




バキィズシィン!!

「っと、なんだ?」


 ゴーレムたちが湧き出る奥の方で、何やら変な音が聞こえてきた。


 その音の方向に目を向けて見れば…‥‥そこには、ここに来ているゴーレムたちとはまた違ったゴーレムが立っていた。


 体のサイズは二回り以上大きく、肩からは大砲のような物が生えている。


 頭の部分は邪魔だったのか無いようだが、その代わりに‥‥‥


「っ、あれは!?」


 そこに刺さっていたのは、ここへ来るまでの船内で見た人物。


 この海洋王国の第8王女であり…‥‥彼女の首から下が青色になっているゴーレムに埋まるような形でいたのだ。


 そして頭の方には、何やらごてごてしたヘルメットが被せられており、ゴーレムの体に繋がっており、気を失っているように見えたが、様子がおかしい。



「片目だけ、何やら空いているが‥‥‥青い目が、なんか光ってないか?」


 オッドアイだった彼女の目のうち、青いほうが無理やり開かれている。


 そしてその目は、何やら青く輝いているように見えるのだ。


「‥‥‥なるほど、そう言う事ですカ」


 その様子を見て、ワゼが何やら納得したような声を上げた。


「何がだ?」

「あの目…‥‥おそらく、魔眼と呼ばれる類の一種でしょウ。この世界の情報や、ここから得た情報を照らし合わせると、あれがここの王族の証とされるようですが‥‥‥‥動力源用のコアにもなっているのでしょウ」



…‥‥魔眼。


 それは、何かと資料が少ないというかワゼの方の世界とは異なる点も多いようだが、今はとりあえず不思議な力を持っている眼球という認識で良いらしい。


 その力には様々なものがあるそうだが‥‥‥‥どうやらここの王族に顕現する目は、力を生み出すような類らしい。


「魔力なのか、それとも霊力、呪力…‥‥その詳細はまだ分析し切れませんネ。ですが、どうやら遺伝的に発現するようなものですカ‥‥‥‥」

「でも、王女はここへ来る船上とかでもそんな話はしていなかったはずだが?」


 そのような力があるのならば、話していてもおかしくはない。


 いや、国家機密とかであれば無理もないとは思うのだが‥‥‥‥そんなことを考えるようなそぶりなどは無かったように思えるのだ。


「自覚の無い類なのでしょウ。あるいは、力の扱い自体が他から引き出されないと分からないような類か…‥‥何にしても、おそらくは形ばかりの眼ということになっていたのでしょウ」


 つまり、魔眼としての力の自覚は持てず、ただ単純にあるだけの存在として扱われていた。


 だが、アポトーシスが何らかの形でそれを知り、利用した可能性が高い。



「ついでにこの施設の技術レベルなどを考えると…‥‥もう一つ、嫌な予感‥‥‥いえ、もう当たってしまったようデス」

「え?」


 ワゼが途中でそうつぶやき、目を細めて先を見た。


 同じようにしてその視線の先を見れば、さらに奥の方から同じようなゴーレムがやって来たが‥‥‥こちらの機体の色は赤くなっていたが、同じようなグレイ顔を持つものが大勢、いや、あの海洋王国の国王となっていた物の顔も多くあり、同一人物であってそうではない大人数がそれぞれ取り付けられていた。


「‥‥‥何だ、アレ?」

「ココの技術力を見て、ある程度予想はしていたのですが‥‥‥‥どうやら、クローン技術を有していたようですネ」

「クローン?」

「要は、コピーデス」


…‥‥説明を色々と省くが、その人物の肉体の一部から倍増され、出来上がった一人の肉体。


 とはいえ、クローン技術にも色々種類はあるようだが…‥‥これらは全部魂が無い、肉体だけの存在のようだ。


「青い機体のは、さっきの王女じゃな。だが、その他の者どもからは魂があるように見えぬ」

「つまり、複製された体だけが取り付けられたってことか」

「魔眼の種類にもよりますが、あれは遺伝によって伝わる物のようですからネ。王女に限らず、他の方々でも有しているのでは‥‥‥っと、話している場合では無いようデス」


 ワゼがそう口にしたので、改めて状況を見れば…‥‥全員の青い目が共鳴するかのように点滅をし始めた。



キュイン、キュイン、キュインキュインキュイ…‥‥!!


 点滅に合わせるかのように、各ゴーレムから妙な音が鳴り始め、全身が輝き始める。


「…‥‥エネルギーの上昇を確認。光線と同じ理屈での攻撃用意と推測」

「それてつまり」

「撃たれマス」


ドオゥ!!


 その言葉とほぼ同時に、ゴーレムの全身が発光し、その光が集められたかと思えば、こちらへ束となって襲い掛かる。


「不味い!!全員防御、いや、床を砕け!!」

「「「「了解!!」」」」


 地上とは異なり、ここは船の中。


 なので、海水の侵入リスクがあるのだが、ここは回避手段として床の下に落ちる事を選択した。


 各自が拳や武器で床を攻撃し、その一撃の重さに砕け散る。


 そして俺たちが落下すると、その数秒前までいたところを光線が通り過ぎ、爆音が聞こえてきた。



ドガガガガ、ドガガァァァアン!!


 凄まじい威力だったようで、船全体が揺れたかのような振動が起きる。


 そして上から降ってくるのは、着弾地点にあったと思われるゴーレムの装甲などであり‥‥‥あの硬かったからだが、見事に粉砕されたのを確認した。



「…‥‥どう考えても直撃したら一巻の終わりだろ!?」

「あの硬い装甲が、見るも無残に砕け散りましたネ」

「怖すぎなのじゃが…‥‥」


 人の魔眼が扱える力なのか?いや、違うだろう。


 限界を超えて無理やり扱われたような力のようだが、それでも破壊力はすさまじく、船内でぶっぱなしていいようなものではない。


「あんなものを使うとは‥‥‥内部から思いっきり船が壊されてもかまわないとでも言うのか?」

「んー、それともワゼに恐怖を抱いて、もう全力で潰そうという感じでありんすかね?」


 うん、前者よりも後者の方が説得力があった。


 そりゃ、瞬時に命を奪いかねないようなメイドがいるならば、リスクを顧みずに全力で潰しに来るのが目に見えるだろう。



 とはいえ、これはこれで不味い状況。


「ゼネ、あの青い機体に乗っていた奴以外が、全部クローンなのか?」

「そうじゃろうなぁ。アンデッドゆえに、死人かそうでないかという区別が実はつくのじゃが…‥‥うむ、青いゴーレムに乗せられていたのは、儂らと別行動をしていた王女で間違いないじゃろう。そしてその他からは、生きたような気配がしないのじゃ。‥‥‥‥ただの、生きているけれども中身が無い、空っぽの肉人形が詰め込まれたかのような、不気味さしかなかったのじゃ」


 どうやら別行動していた第8王女は捕らえられ、あのゴーレムの部品扱いにされてしまったようだ。


 その他のは魂が無い死体のような類だが…‥‥クローンとは言え、人の尊厳を踏みにじったかのような扱いに反吐が出そうだ。


‥‥‥まぁ、一部のクローンにアポトーシスが憑りついていた国王の肉体もあったけどな。あれはなんか、そうなる未来だったんだろうなぁ、という感想しかでなかったが、これはどうなのだろうか?


 何にしても、こうなったらどうにかして彼女達を止めなければいけないだろう。


 囚われている王女の救出はもちろん、その他は命が無いとはいえ人の肉体なのは間違いないだろうし‥‥‥迂闊にやらかしてスプラッターなことになるのも困る。


「とはいえ、粘着弾だけで止められるか?」

「‥‥‥無理ですネ。どうやら他のゴーレムは対策をしていないようですが、彼女達の場合はきちんとその対策を取っていたようデス」


 流石に短時間で全部に手が回らなかったのか‥‥‥ただ拘束することが出来ない。


 となると、後はもうゴーレムを稼働停止させるとかしないといけないが‥‥‥どうしたものか。


「普通の攻撃は効かないし、拘束も無理となると…‥いや、待てよ?」


 そこでふと、先ほど落ちてきたゴーレムの破片を拾い上げ、俺はある名案を思いついた。


 こちらの武器で砕けぬような装甲ではあったが‥‥‥こうして形作られているというのであれば、どうにかして加工する手段はある。


 それはつまり、破壊不可能というわけではないという事実である。


「ゴーレムがすぐに降りてくるだろうけれど…‥‥ノイン、この落ちてきた破片を武器に付けられないか?」

「‥‥‥可能ですネ。ただ、やるとしても接着剤での簡易固定になりマス」

「それでいい」


 目には目を、歯には歯を、装甲には装甲を当てればいい。


 ガントレットや皆の武器を出しつつ、相手が迫って来る前に落ちてきた破片を取りつけ始めるのであった…‥‥


「ふむ、ノインの作った武器ですカ。どうやら改善点もありますし、余裕があれば改造しましょウ」

「まだこれ、改良の余地があるのか…‥‥」


…‥‥ノインの姉妹機ってことで、ワゼの性能面などは信頼できるけど、個性が違うとはいえ彼女と同じような人という時点で不安しかないのだが…‥‥今ならちょっと、アポトーシスが彼女に恐怖した気持ちに同情できるかも。

人としては生きていない、死体のような肉体。

けれどもそれらは人であり、それを無理やり組み込むような真似は許されない。

というか、生きた王女も混ぜられているという時点で、アウトなのだが…‥‥




‥‥‥まぁ、そもそも倫理観自体が、人によって違うかもしれない。アポトーシスの場合、どうなっているのかはわからんが…‥‥

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