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272 それはそっちの都合で

「…‥‥あとは、ここを直線距離か」


 ダウジングセンサーで位置を確認しつつ、ディーたちはその先を見る。


 ノインのいる位置は、ここから真っ直ぐに平行にすすんだ先。


 道中、床を溶かして下に行ったり、トラップを破壊しまくっていたが、ようやく目と鼻の先にまで迫れたようだ。


 ただ、あと数部屋程は無理やり直進しなければいけない位置だろうが…‥‥ここまでくれば脳筋のごとく直進するのもだいぶ慣れてきた、その時であった。



ゴゴン!!

「っと!?」

「なんじゃ!?」

「何か揺れたぜ!!」


 突然、周囲一帯が揺れたかと思えば、四方八方からの床から急に防壁のような物が飛び出してきた。


「流石にもう、気がつかれたか!!」


 地下から攻めて見たが、どうやら思いのほか早くこちらの居場所を探り当ててきたようだ。


 いや、あそこまでどっかんばっごんとド派手にやらかしていれば、誰でも気が付くかもしれないが‥‥‥何やら、防壁で俺たちを囲むようだ。



 何かの意図があるようだが、そんなものに簡単に乗るわけもない。


「ルビー!」

「分かっているでござるよ!!」


 ごうっとルビーが指示を出す前に熱線を飛ばしたが、効果は無かった。


 どうやらきちんとこちらへの対策も兼ねた物を出したようだが、それなら次の手を使うまでだ。


「ルン、ぶった切ってしまえ!!」

「了解/即切断/回転切り!!」


 ギュルルルっと勢いよく回転しながら、ルンが剣の身を回転させ、防壁を切断していく。


 彼女の剣の金属は、ここにあるものよりもはるかに硬い金属になっており、ガランドゥ王国の一件後に改めて鍛え直しをしているらしい。


 その切断力はいかにも硬そうな防壁でさえも、まるで紙をハサミで簡単に切るがごとく、スパパンっと気持ちよく切断していく。


 だがしかし、如何せん防壁の数が多いようで、切っても切っても周囲から防壁が迫り、囲んで来ようとしている。


「となれば、防壁が出ないように…‥‥これを使うか!!」


 装備品の中から、この状況に最適な物‥‥‥粘着弾が装填されている機関銃を取り出した。


 こいつは非殺傷の捕縛用武器でもあるが、その粘り気は中々使い道が多い。


 今回はこの粘り気を利用して…‥‥



ずぺぺぺぺぺったん!!

「防壁の射出口はこれで防げるな!!」


 出てくるのであれば、その出てくる場所を潰してしまえば良い。


 そんなわけで全部の防壁が出てくる前に抑制し、ルンで切り捨てる。


「気が付かれているようだし、このままノインの元まで全速力で行くぞ!!レイア、乗せてくれ!」

「分かったぞ、マイロード!!」


 単純に走るだけだと、彼女達に負けるのでレイアの下半身である馬の背中部分に騎乗させてもらい、猛ダッシュで突き進むことにする。


 各自正面へ向けて駆け抜けつつ、道中に出てくるものは全部薙ぎ払う。


「えっと位置は…‥‥あとはこの壁一枚先だ!!」

「なら突っ込むぞ!!しっかりとつかまれ!!」


 がしっとレイアの背中につかまりつつ、全員の攻撃を正面に集中させる。


 そして耐えきれなくなった壁は一気に破壊され‥‥‥新しい室内へ俺たちが入ると…‥‥そこには、彼女がいた。




「…‥‥ノイン!!」

「来てくれたんですね、ご主人様!!」


 なにやら作業をしていたようだが、俺の声にすぐに反応して素早く飛んで、くるっと華麗に着地を決める。


 見れば、いつものメイド服とは違うような、メカメカしいメイド服を着用しており、背中には大きなカバンのような物を背負っていた。


「不肖ながら、このメイド、ここで囚われつつも自己修復に取り掛かりながら、お待ちしていまシタ!」

「自己修復‥‥‥どこか壊されていたのか?というか、その格好は?」

「身ぐるみはがされましたので、置かれていた資材を全部利用しただけデス」


 手短に彼女に説明してもらうと、どうやら攫われた後すぐにアポトーシスに彼女の動力炉という動力部分を破壊され、動けなくなっていたらしい。


 その合間に、持っていた武器や道具の数々を奪われつつ、彼女の体の構造を調べるために無理やり分解された挙句に、何やら薄気味悪い溶液のあるタンクに放り込まれていたそうだ。


 だがしかし、そんな動力が壊されていても、そういう事態は想定していたようで、隠し持っていた非常用動力が作動し、再起動したそうな。


 そして色々と滅茶苦茶に壊されていたようなので…‥‥


「何やらため込んでいた場所だったようで、全部利用してやりまシタ。動力炉に関しては完全修復は無理でしたが、サンダードラゴンの素材がありましたので、外部電気式動力炉を製作し、繋げましたので動けなくなることはないはずデス」


 見れば、彼女の背中にはリュックのような物があり、それで動けているようだ。


 とはいえ、動力炉というものの完全修復には至らず、現状稼働できても65%ほどの出力しか出せないようだが…‥‥それでも、なんとか彼女が彼女のままで会ったことに安心感を覚えた。


「っと、そうでシタ。召喚に応じれなかったのは、呪いのようなものがありまして…‥‥ゼネ、治してください」

「ぬ?言われてみれば、確かに何やらどぎついのが…‥‥この程度なら、簡単に解呪可能じゃ」


 再会を喜んでいる合間に、ささっとゼネが杖を振ると、何やらノインの体が一瞬輝き、直ぐに戻った。


 どうやら召喚に応じれなかったのは、アポトーシスによって召喚不可能になるような呪いをかけられていたらしい。


 色々と積もる話がありそうだが‥‥‥‥とにもかくにも、ここへ来た際重要な目的は果たされたと言って良いだろう。



「よし、とりあえずこれでノインが戻って来たし、後はここからの脱出…‥‥いや、その前にアポトーシスを探し出して、ふっ飛ば」


「探す必要はない!!」

「「「「!!」」」」


 っとここでなにやら声が響き渡り、俺たちが視線を向けると、そこには奴がいた。


 あの浜辺での遭遇後に正体を見せた姿のアポトーシス…‥‥かと思いきや、何やら様子が違う。




「ふははは、よくぞ我輩のこの家ともいえる場所を荒らしまくってくれたな。しかも、何やら我がコレクションルームも盛大にぶっ壊してくれたようだなぁ!!」

「‥‥‥アポトーシス、だよな?何か見た目が違うようだが?」



 口ぶりなどからアポトーシスのような面影はあるが、その容姿は全く違う。


 なにやら全身が金属体というべきか、ドロドロとした液体金属のようなボディになりつつ、目の色はオッドアイのまま。


 いつぞやかのメタリックスライムのような金属光沢を持っているようでありながらも、辛うじて人型である。



「ああ、そうだ。我輩は我輩以外の何者ではない。復元率89%の本来の我輩に戻らせてもらったというべきであろう」

「復元率?本来の?」

「あの姿が、人工悪霊としての姿ではなかったのかのぅ?」

「くっくっくっく…‥‥ああ、あの姿か。確かにあれもあれで、我輩の真の姿とも言えただろう。だがしかし、本来の姿を正確に言うのであれば…‥‥この姿こそが、本当の我輩に近いといえるのだ!!」


 俺たちの問いかけに対して、アポトーシスはそう返答した。


「…‥‥液体金属固定式技術‥‥‥私から奪った技術のようですが、何やら違う形態のようですネ。もしや、別の技術の復元を行うために、私を参考にしたのでしょうカ?」

「そのとおりだ!!生憎、完全には理解し切れなかったからこそ、中途半端ではあるが…‥‥その技術によって、蘇らせることに成功したのだ!!」


「…‥‥どういうことだ?」

「単純な事だ。そのメイドの技術は確かに素晴らしいが…‥‥所詮は、我輩がここを元の場所に復元するために利用させてもらったに過ぎないもの。いや、これ以上の説明は貴様らにする必要もあるまい。なぜならば我輩は今、貴様らを消し去る目的で来たのだからな」


 そう告げると、アポトーシスの片腕が持ち上がり、ドロドロした液体の部分が形作っていく。



「とりあえず、ここまで来た事だけは褒めてやろう。この国の、いや、この乗り物(・・・)内部の復元した罠の数々を突破したのだからな。だが、ここでお終いだ!!」


 言うが早いが、変形し終わった腕の砲口がこちらに向けられた。


 ノインのカノン砲とかそういうのに近い形状だが、それよりもはるかに大きく、全員を射程内にいれるほどのものだ。


「蒸発して消え去れぇぇぇ!!」


 カッという音と共に、その奥底が輝き、こちらへ向かって太い光線が放たれた。


 かなりのサイズであり、まともに回避するのは不可能だろう。


 リリスの中に入って防御も考えたが…‥‥流石に全員入るだけの余裕はない。


「ノイン!!」

「了解デス!!」


 それでも俺は、この状況に対応できる方法をノインが持っていると直感で感じ取り、名前を叫ぶ。


 そしてノインの方も、俺の言いたいことが分かったのか、笑みを浮かべて懐から何かを取り出した。


「流石にいくらか作り直しましたが、やっぱりここは頼ることにしまシタ!!」


 取り出したのは、一つの小さな箱。


 そしてその箱の内部にはボタンが一つだけ置かれており、彼女はそれを押す。


「来てください、私の姉さん(母さん)!!」


 何やら色々と混ざったような声も聞こえたが、直前にまで光線が迫っているので気にする余裕はない。


 これでどうにかなるのか、と思った…‥‥次の瞬間。



ばしぃいいいいんん!!

「…‥‥は?」


…‥‥目の前で瞬時に起きた出来事にアポトーシスがマヌケな声を洩らしたが、無理もないだろう。


 なぜならば、こちらへ向けて放たれていた光線が、軌道を曲げて別の方向に当たったのである。


 いや、違う。曲げたのではなく、はじかれた。


 そしてそれは、手のひら一発で軽くされたものであり‥‥‥‥そのはじいた本人が、姿を現した。



「…‥‥次元転送終了。位置特定及び、緊急危険排除作業終了。威力、微妙な代物と確認」


 つぶやきながら、ほこりを払うような動作を行うのはノインに似た女性。


 ノイン本人はその後ろの方に立っており、その前に守る形で彼女が立っていたが…‥‥ノインに似ていると言っても、色々と違うような雰囲気を纏っている。


 なんというか、不思議なというか、本当はこの場にはいないような存在。


 あとは、直感で言ったら絶対に不味いと理解できるので言わないが、彼女と天と地ほどの差のある部分があるが…‥‥絶対に言わないでおこう。


 ああ、後アホ毛も無いが…‥‥少なくとも、ノインよりもさらに冷たい目で、アポトーシスを彼女は見ていた。



「『万能家事戦闘人型ゴーレム01』、『ワゼ』。()の危機に、緊急出張デス」


 そう言いながら、彼女は何処からともなく箒を取り出し、手に持って構える。



「な、何だお前は!!どこから出、」

「無駄な事を言う暇があれば、命乞いでもどうゾ」


 アポトーシスが急に現れた彼女に対して驚愕している中、言い終わる前に彼女は動く。


 箒を素早く振り下ろしたかと思えば、どうやったのか奴の腕が切り飛ばされる。


 それに気が付いたようだが、次の瞬間には体を半分に切り飛ばされる。


「なっ…‥‥!?」

「私の方のご主人様は、家族を大事になさる方デス。なので私も同様に、姉妹機でもあり娘のような機体の09(ノイン)にやられた行為は既に怒り心頭ですので…‥‥とりあえず、色々と喋れる限界まで、細かく分解して差し上げましょウ」

「ふざけるな!!この程度、再生し直して…‥‥んん!?どういうことだ、全然再生できないだと!?」


 冷酷に告げられた言葉に対して、アポトーシスはそう叫ぶ。


 だが、自身の体に起きた変化に何か気が付いたようで、金属体でありながらも青ざめた表情になった。


「当り前デス。メイドたるもの、初対面の相手の特性をすぐに見ぬき、対応するモノ。ただ箒で切り捨てたのではなく、固有振動による再生妨害…‥‥まぁ、説明は省きマス。時間がそうあるわけでもないですし、聞きたい部分を聞けるだけの状態にまで、無力化して差し上げましょウ」


 箒を改めて構え直したノインの姉(?)、ワゼに対して恐怖を感じ取ったのか、悲鳴を上げ始めるアポトーシス。


「て、撤退だぁぁぁ!!」


 そう言うと、浜辺の時と同じように姿を瞬時に消すのであった…‥‥

現れたのは、ノインの姉妹機らしい存在、ワゼ。

彼女に似てはいるがそこは色々と違うようで、よりメイドとして熟練しているような動きである。

というか、箒で金属体を斬り飛ばすって…‥‥液体っぽい見た目の相手でもあったけど、どうやったの?



…‥‥なんかとんでもない物を呼びだしてないかな?ノイン、君の姉妹機って全部常識外れのとんでもないメイドばかりなのか?

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― 新着の感想 ―
[一言] ノインの姉妹機じゃなく、ワゼが特別なだけ…(笑)
[一言] 解決したらしたらで、この場合はモルゼに責任による国際問題になるのか。 それとも手を切ったとはいえ、技術の大本であるフェイスマスクの責任になるのか。 尤も、前者だと被害者ともいえる王女が責任を…
[一言] これがクロスオーバーって奴か() 設定繋がってるから厳密には違うけど
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