25 放置は良くないと知るのは後ですか
「‥‥‥まあ、ここまでくれば大丈夫かな?」
「放置ですが、成敗致したので問題ないでしょウ」
「そうですわね、人の迷惑にはならないとは思いますわ」
路地裏の騒動から離れ、人込みの多かった商店街の場所からも離れ、ディーたちは寮に帰って来た。
追われているらしい人を助けたのは良いが、そのまま関わると面倒ごとの予感もあり、さっさと倒してから逃げたが‥‥‥まぁ、問題ないであろう。
自分達はただ、怪しい暴漢をそれとなく倒しただけであり、訴えられることは多分ない。
そう、ノインとカトレアが図書室で間違った知識を身に着け、それを実践して相手が全員瀕死になった事も、問題ないはずである。多分。
やや自信がないながらも、既に終わった事だ。
そう気持ちを切り替えつつ、寮室へ僕らは戻った。
「ふぅ‥‥‥休日だというのに、楽しむどころか逃げ帰ってきた大変さがあるなぁ‥‥‥」
「それでも、ある程度は首都内を把握できましたネ」
「マスターと一緒でしたから、大丈夫ですわ」
ベッドに俺は倒れ込み、ノインとカトレアはそれぞれ椅子に座り、話し合う。
「とはいえ、休日って気分でもない様な…‥‥過ごしかた、下手かなぁ?」
「あー‥‥‥私としては、楽しかったデス。休日の過ごし方を、良く把握できていませんガ」
「わたくしも楽しかったですわね。まぁ、日中光合成をして過ごしているのに比べて、甲乙は付けにくいですが」
…‥‥何と言うか、今言えることが一つあった。
この面子、休日の過ごし方が下手なのかもしれない。
いやまぁ、俺は元々田舎の方の村育ちで、召喚士になりたいと思って研鑽しつつも、そこまでぐでっと休むこともなかった。
ノインの場合はメイドゴーレム故か、身の回りの世話をしてくれるけど彼女の休むところはそう見ないし、カトレアの場合は、普通に吸血樹でもあるので、働く概念自体が余り無い分、休む概念も少ないのかもしれない。
あれ?もしかして休日って、この面子だと楽しみにくい?‥‥‥いやいや、絶対楽しまないと損だな。というか、癒されないと精神的にきつい。
「‥‥‥図書室って、休日でもやっていたっけ?」
「ええ、夏や冬にあるという長期休暇を除けば、ほぼやっているそうデス」
「じゃぁ、今からちょっと行くか。良い休日の過ごし方とか、そういう本があるかもしれないしね」
ろくでもない本も多いらしいが、まともな本もあると思いたい。
何にしても、休日の終わりごろだけど、次回に活かす点を見いだせたような気がしなくもないのであった‥‥‥
‥‥‥そして一方、首都内の中心部にある、ヴィステルダム王城。
ここでは今、休日ゆえに実家である王城内で過ごそうとしていた王子たちも含め、人が集められていた。
休日の時ぐらい、王城内はゆっくりと過ごしたい人が多い。
血で血を洗うような激しさは無いとはいえ、王位継承権争いはそれなりにあり、精神的に疲れる事もある。
だがしかし、今はそれ以上に深刻な情報が、ある者の手によってもたらされていた。
「‥‥‥それは本当か?」
「はい、間違いありません。ここまでの道中で、口封じのために殺されかけ、助けてくれた者たちもいたので辿りつけましたが‥‥‥普通であれば、命がけでここに赴くことは無いでしょう」
国王の目の前で、ひざまづき、報告をするフードの人物。
そのフードが卸され、その姿をみて、第2王子は驚いた表情を見せ、第1王子は眉を顰める。
「‥‥‥よもや、我が国と関係の危いゼオライト帝国の第1皇女とはな‥‥‥しかも、その知らせが知らせだけに、祖国を裏切るような真似になりかねないが?」
「裏切ってはいません。裏切ったのは、我が父を排した…‥‥あの愚物だけです」
ぎゅっとこぶしを握り、そう答える皇女。
‥‥‥翌日、国内にある知らせが配布されることになった。
それは、ゼオライト帝国の皇帝の崩御と、クーデター、及びに宣戦布告という内容であった‥‥‥
‥‥‥休日の過ごし方が、そろって下手くそであった。
まぁ、それはおいおい改善するとして、何やらきな臭い話しの予感。
面倒事は、どこからでもやってくるようで‥‥‥
‥‥‥というか、あの追手たちをどう処分したのだろうかとかは、また後日。




