265 油断してはいけないのは十分身に染みており
‥‥‥小船に乗って、沖合の方においてある船へ戻っていった海洋王国の者達。
なんというか、あのまま放置しても勝手に自滅していきそうな国王ではあったとは思う。
「というか、アレが国王で大丈夫なのか海洋王国‥‥‥」
「んー、駄目になりそうな気しかしないなぁ」
俺がそうつぶやくと、呆れたように肩をすくめながらグラディがそう返答する。
「何しろ、王の器的な物が全然感じられないからな。まだ我々は王子の身とは言え、王たるものはどういう者かという教育も受けているからこそ、その振る舞いも理解できるが‥‥‥」
「なんというか、あれはひどすぎますよね。まず、第8王女ができるほど子供がいる身というのも、驚きますわよねぇ」
ゼノバースの言葉に続けて、ミウがそう口にし、全員同意する。
いやそうな印象からガキ大将、ただのでかくなった頭の中身が残念なオッサンという風に移り変わる様子を見てしまうと、そう思えてしまうのは無理もないだろう。印象の移り変わりが早い人というのも珍しいが…‥‥
「どう考えても、政略的な強制結婚によるものか、あるいは女遊びの果てにという風にしか見えませんネ。でも、あの第8王女や、ハルモニアさんの父親と考えると‥‥‥むしろ、母親側の方が各自偽っているようにしか見えまセン」
「そう言う風にしか見えないのぅ」
子は親に似るはずだが、全然似ていないように思われる。
いや、あのオッドアイでも青い目の部分は同じかもしれないが、雰囲気が全く違うし、王家の血ではないと処分されかけていたハルモニアとも、あの国王は雰囲気が違うだろう。
むしろ、母親側が全員あの国王を父親ですと言って偽ったようにしか見えないのもある。騙されそうな気がするし、間違ってない説もある。
「とはいえ、オッドアイだったし‥‥‥海洋王国で王家の血筋の場合、オッドアイであればそうであると認めるんだったか?そう考えると、あれでも王なんだなぁ‥‥‥‥」
「むしろ、よく王になれたなと思えるような気がしますわねぇ」
「絶対に、まともな兄弟姉妹があればそちらが優先されるだろうな」
何にしても、困ったオッサンがこの場からいなくなったのは良いのだが、残念ながら船に帰還したというだけであって、完全に去ったわけではない。
というか、場所を移してもこの浜辺の近隣に来るとか言っていたが‥‥‥
「結局、ここに来る目的は何だったんだ?」
「色々尋ねて見たけど、途中から喧嘩腰になったせいでまともに聞けていないんだよねぇ‥‥‥でも、それでも一応その目的の事が頭にちょっとある理性で残っていたのか、探していたような感じがしたよ」
「探していた?」
「怒っているように見えても、ある程度は周囲を見ていたというか‥‥‥人を捜しているような目だった」
「けれども、見た感じだと純粋に誰かを求めているとかそういうのではなく、欲望のために動くかのような‥‥‥気持ち悪い感じだったぞ」
「ぞわっとするというか、異性を求めるかのような…‥‥他の女子生徒がいれば全員嫌がるのは間違い無しでしたわねぇ」
王族たるもの、相手のことはよく観察しておくのか、王子たちは全員きちんと観察をしていたらしい。
そしてその観察結果から考察すると、どうもあの海洋王国の王は誰かを求めて探していたような目をしていたようである。
「欲望まみれだけど、多分ディー君自身を求める気はないね。むしろ、その召喚獣たちというべきか…‥」
「異性に対する欲望の目と言ったところだろう」
まぁ、召喚獣だけではなくその他の女性を探し求めるような目だったようだが、その纏う雰囲気が不気味だった。
普通に見るとかそう言うのではなく、ねっとりねばねばしたかのような‥‥‥‥
「目的がちょっと見えても、その中身までは見切れないが…‥‥すごい嫌な予感しかしないなぁ」
「いっその事、遠距離から沈めてしまいましょうカ?船底に仕掛ける水中爆弾なら用意できマス」
「流石にそれは国際問題にならないかな?」
「黙っていたら、バレまセン」
‥‥‥それもそうであると思ったが、流石にその案はやめておくのであった。
いやまぁ、あの国王だけならまだしも、他の王女や船員を巻き込むようなものは避けた方が良さそうだからな。
それに、船を爆破したところで漂着してくる可能性の方が大きい。
「こっそり船内に入って情報を収集できるなら、しばらく床に臥せる薬でも…‥‥」
「流石に犯罪になるからな?」
…‥‥ディーたちがどうしたものかと考えている頃。
沖合の船上では、国王が腹立たしそうな顔で考え込んでいた。
「‥‥‥さてと、どうしたものか」
浜辺で見せた大醜態の姿とは異なるような、異様な雰囲気に船員たちは近づきがたく、第8王女も近づきにくい。
なんというか、今まさに悪だくみをしているという風には見えるのだが、その中身が黒すぎるように感じられるのだ。
醜態をさらしながらも、懲りずに何かをやらかそうとしているのか…‥‥その中身が何なのか問いたくとも、問いにくい状況。
明らかに何か目的があるのに、その目的を隠し通す姿勢に謎しかないのだが…‥‥今のところは従うしかないだろう。
(‥‥‥だが、何を考えているのだろうか、父上は)
浜辺での醜態ぶりを見ると王にふさわしくないように見えるが‥‥‥そこはまだ、知っている父のような姿がある。
けれども今の姿はそれとは違うようで不気味であり、何かに憑りつかれていると言っていいような程雰囲気が異なっているのだ。
嫌な予感しかせず、異様な雰囲気を纏う父には何も言えず、どうしたらいいのかと第8王女は考える。
それでも、いい案は思いつかず…‥‥結局はなすがままになってしまうだろう。
そうこうしているうちに国王の頭の中の考えがまとまったのか動き出し、指示が出され始めるのであった…‥‥
何かをやらかされそうな雰囲気はあるので、警戒するに越したことはない。
というか、色々いるからこそ問題を起こしてほしくない。
‥‥‥遠距離から超強力な眠り薬を撃つってのもダメか?
‥‥‥シリアスな雰囲気って、やるのが難しい。
それにこの面子だけに、そこまでもっていくのも苦労しそう…‥‥




