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252 近いからこそわかっているので

「‥‥‥催眠術じゃと!?」


 ゼネの妹の言葉に対して、思わずそう叫ぶゼネ。


「ええ、そうなのですねぇ。どんなことであろうとも、お姉様に関して調べ上げつつ、お姉様がお姉様になる前までずっとさかのぼって調べ上げ、ありとあらゆる周囲の人間関係やその細かい部分なども手抜かり無く調査してきましたもの」


 問いかけられたことに対して、妹はそう冷静に返答していく。


「そしてその中で、ある時お姉様がそこのメイドと共にやらかした事例を知りましたわ」

「何でござるか、それ?」

「メタリックスライムとか言うものの騒動後に、寝付けなかった召喚主さんを寝かせる案の一つに、催眠術を使用した事例ですよ。調べたら、深夜テンションとか言う者で思わず調子に乗って色々としちゃったという例でしたけれどもねぇ」



 その言葉にゼネは少し考えこむ。


「‥‥‥あ、そういえば…‥‥」


 そう、実は一度、ノインとと共にディーに対して催眠術をかけたことがあった。


 眠りにくかったからこそ、眠りの魔法をかければいいかとも持ったが、夢の専門家のようなモンスターも世の中にいるのでそういった類に憑かれては困る。


 ゆえに、魔法に似て非なるような手法として催眠術を使用したことがあり‥‥‥その時に思いのほかどっぷとかかったディーの姿を見て、共にやっていたノインと調子に乗ってやらかしてしまい、翌朝催眠が解けたディーに土下座した記憶があったのだ。



 そしてその反応を見て、心当たりがあったのかと全員が彼女を見て、瞬時にどのようなことをしでかしていたのかを理解した。


「‥‥‥何しているんでありんすかねぇ?」

「何、やらかしてしまった?」

「ほぅ、そのような話などは聞いたことないのだが…‥‥」


「やましい事は、特にないのじゃ。いや本当に、色々とやってしまったので謝ったのじゃが‥‥‥」


 物凄く冷たい視線に対してだらだらと冷や汗を流すゼネ。


 そして一方で、地面に頭から突き刺さったままのノインの方もピクリと動かず、黙秘を貫いているようだ。


「まぁ、そんな話は良いですわねぇ。お姉様のおちゃめな話しでしたし、私達がかけてほしいとも思えましたが…‥‥その時に一応発覚した催眠術への弱さに関しての記録を取っておいたのです」


 なお、当時の会話内容によれば対策も考えていたようだが、そのやらかした土下座時に頭から抜け落ちていたらしい。


 ゆえに今までその分野では放置され続けていたようであり…‥‥そこから、ディーに対しては催眠術が有効かもしれないとゼネの妹たちは推測したのだ。


 そのためいざという時の手段として使えるように、どの催眠術が最も有効的であり、どの様な道具を用いればさらに都合よく効率的にかけたり命令できるのか研究したのである。


 そしてその研究の末に、トライアングルを振り子のように動かして注目させ続け、鳴らしている音はダミーにして人間の男性にしか聞こえない音域で催眠をかけるような声を発し続けて…‥‥‥ディーを催眠状態に陥れたのであった。


 ありとあらゆる耐性があげられているが、視覚と聴覚がある以上は、その方面から攻める隙があると考え、用意した成果であろう。



「とはいえ、ここまで弱かったのは流石に想定外ですけれどもね…‥‥お姉様ったら、自分の大事な主に対して弱点が分かっていたのに、その対策を怠ってしまうなんてうっかりしてますねぇ」


 ふふふっとゼネの妹が笑う様子は、一見姉のやらかしに対して苦笑しているだけに見えるだろう。


 けれども、その裏腹には都合よく使えた手段の結果に満足している悪女の雰囲気を纏っていたのであった。




「さてと、催眠術にかけたのはいいですが、そこまで長持ちするわけでもないですし‥‥‥‥一応、お姉様のためを思ってやらかしたいのですが、皆様は反撃しますよねぇ?なので、一旦大人しくしてもらいましょう」


 そう言いながら、ゼネの妹は一つの違うトライアングルを手に持って鳴らし始めた。


「では、召喚主さん…‥‥皆様を大人しくするために命令‥‥‥いえ、召喚士の命令は召喚獣に多少は効果はあれども、強制しまくるわけでもないんでしたっけ」


‥‥‥召喚士の召喚する召喚獣には、確かにある程度の命令は効くだろう。


 けれどもそれは、召喚獣自身の意思もある程度作用しており、全部が強制されるわけでもない。


 そもそも、互に信頼関係が成り立っていればそれこそ命令などしなくとも意志をくみ取って動いてくれることが多いのでそこまで命じる事もないのだ。


「人質っぽいけれども、そこまでやる気はありません。でも、大人しくなってもらった方が都合が良いですし…‥‥ええ、では、そのメイドからもらっている装備品とやらで、全員を拘束してください。あ、お姉様はふんわりと、その他はやや乱暴でも構いませんわぁ」

「…‥‥」


 その指示に対して、ディーは何も語ることはなく、腕時計を操作する。


 そして、その中にあった装備品を一気に展開した。


「っと、放置は不味いのじゃ!催眠術の類なら強いショックなどで目覚めるはずじゃし、御前様を解放するのじゃ!!」

「言われなくてもやりますわよ!!」

「とりあえずダーリンごめんでありんす!!」



 ディーの動きに対して、直ぐに召喚獣たちは動き出す。


 相手が自分の主とは言え、操られているのを看過できるわけもないし、大人しく拘束される気もない。


「こういうのは殴ればいいぜ!!」


 各自が動き出したところで、まずは先手を取ったのはティア。


 ナイフを手に持たず、拳を握ってディーの真横に回り込む。


「我が君を殴る機会はないし、この際一気にやってしまうぜ!!」


 一応、モンスターではなく人間の主なために、ある程度の加減をしつつ殴りかかるティア。


 このままぶん殴れば済む話だと思った…‥‥次の瞬間。



「‥‥‥」

ぶしゅわっつ!!

「おうっぱぁ!?」


 瞬時にディーの横に筒のようなものが出たかと思えば、何かの液体が噴出された。


 ただの水のようだが、それがかかった瞬間にティアの足がサメのものに切り替わり、地面に足ではなくサメの尾びれで滑り、バランスを崩す。


がしぃっ!!ぶぉぉぉん!!

「どわああっ!?」


 体勢を立て直す前にガントレットで尾びれを掴まれ、ティアは勢いよく回される。

 

 その勢いのままで床にだぁんっと叩きつけられたところで‥‥‥


だんだんだんっ!!べちゃぁっ!!」

「ひえっ!?なんだぜこれ、滅茶苦茶ねばついて動けないぜ!?」

「あれは、ノインの粘着弾と同じやつじゃと!?」

「拘束用の弾でしたけれども‥‥‥厄介ですわね」


 どうやらノインの護身用武器の一部が、ディーの装備品に流用されていたらしい。


 相手を確実に捕縛し、身動きが取れないようにする特殊弾の一つ「超強力粘着弾」‥‥‥‥一度その手にかあってしまえば、逃れられなくなる代物だ。


 身動きが取れなくなったティアに目を向けた後、次に他の面子に目を向けた。


「油断/しない。高速移動/捕らえるのは無理」


 しゅばばばっとルンが宙を動き回り、ディーへの攻撃の隙を狙う。


 流石にぶった切るわけにはいかないので、柄の部分で一撃を入れるつもりだったが‥‥‥



しゅんっ!!

「!?」


 囲んでいたはずのディーの姿が瞬時に消え失せ、思わずルンが驚愕する。


 そしてその驚愕が隙となったのか、次の瞬間には上から粘着弾が飛び、ルンの体が壁に張り付けられた。


「不覚/マイロード/強い?」

「あー‥‥‥そう言えば装備品じゃと確か強化スーツってのが‥‥‥ジェットブーツとかでも素早さが上がるようじゃし、催眠で意識が無い分、もしかして使いこなしているのかのぅ?」


‥‥‥意識があれば、人は自然と力を抑えることがある。


 というのも、強い力を振るうほど自身への反動をおのずと理解し、ある程度加減してしまうのだ。


 よっぽどの精神力を持つものか、はたまたは鍛え抜いた者か、そう言う類でなければいかなる時も万全の力は出ないだろうが…‥‥今のディーの状態は催眠術で意識が奪われているような物であり、何も気にする必要性が無い。


 だからこそ、気にせずに全力で活用しているのだ。


「それに、儂らと結構長く過ごしておるしのぅ…‥‥御前様が召喚主だけに、召喚獣である儂らの特徴を把握し切っている可能性があるのじゃが‥‥‥あ、もしかして結構不味い奴じゃないかのぅ?」

「だったらむしろ、本気で押さえる必要があるのか…‥‥」


 できれば怪我してほしくないので、ある程度彼女達は加減していたが‥‥‥どうやら、本気で行かないと非常に不味い状況のようだ。


 何しろ、ディーが人間とは言え、その身に纏うのはノインが護身用に作り上げた装備品であり、それに付随する機能は多種多様。


 ありとあらゆる状況を考え出され、できる限りディーに最適化された装備品であり、まともに扱われた不味い類。



「でしたら普通に地面からいきますわ!!」


 っと、ここでまともに対応するのは悪手だと判断したのか、カトレアが木の根を動かす。


 地面に突き刺さり、神殿内部だろうとその根は勢い良く地中を伝い、一気にディーの元に到達する。


「さぁ、どうしますのマスター!!わたくしの体を拘束しても、植物たちを全部拘束し切れないはずですわ!!」


 確かに、カトレアの言う通り彼女自身を粘着弾で拘束したところで、この木の根の群は対処しきれないだろう。


 地面から離れようとも伸びまくり、切っても切っても違うものがすぐに生えまくる。


 さらに、カトレアの拘束手段だけに頼るまいと、ルビーの火炎放射やアナスタシアの吹雪が襲い掛かって来たが‥‥‥催眠術に賭けられているとはいえ、彼女達の主だにディーの動きは素早く対応してきた。



「‥‥‥」


 無言で操作し、取り出したるはガントレット。


 ただしそれはただの鉄の拳ではなく、鋭い刃が生えまくっていた。


 

 勢いよく射出され、ガントレットが周囲を飛び交い、一気に木の根を切り捨てていく。


 そして再び生えてくるのを防止するためか粘着弾とは違う液体を地面にまいてカチカチに固めていく。


「なんですのあれ!?って、きゃぁぁ!?」

「あれは、確か喧嘩時に思いつき、ご主人様の瞬間的な防壁作成に役立つと考えた『瞬間コンクリート剤』デス。まさかあれを把握しているとは‥‥‥」

「うおっとノイン!?復活していたのかのぅ!?」


 木の根が出なくなって驚愕していたところで、先ほどまで刺さっていたノインが起き上り、そう解説したところに全員驚愕する。


 とはいえ、木の根での拘束が使えなくなったようであり粘着弾でカトレアの動きが封じられ、ルビーとアナスタシアの遠距離攻撃だよりになるところで…‥‥


バァン!!ダァン!!

「へぶらいがぁっ!?」

「あうっち!?」


 拳銃のような武器を持ちだし、容赦なく彼女達へ狙撃した。


 ただし血が噴き出ることはなく、何やら変わった特殊弾だったようだ。


「な、なんでござるか今の衝撃?痛くもなければ、何と‥‥‥あうぁ!?痒い、痒いでござるぅぅぅ!?」

「これ、悶絶、気絶もの!!」


 数秒ほどで何か異常が起きたのか、じたばたと彼女達がもがき始めた。


「あれは確か、不審者対策用に用意していた特殊弾…‥‥『激痒弾』デス。直撃後に神経系に作用し、痒みを誤認させて悶えさせて動きを封じるというものですネ」

「結構えげつないやつじゃな!?」


 痒い痒いともぞもぞと動きまくっていたところで、容赦なく粘着弾が撃たれ、彼女達の動きが止まった。


「催眠術で操られているとはいえ私の作った装備品を扱うとは‥‥‥流石ご主人様デス」

「感心している場合ではないのじゃが!?」


 じゃきっと音がしたかと思えば、粘着弾が向けられていたが、ゼネはその時に気が付いた。


 この場からレイアとリザの姿が消えており、それぞれ別方向からディーの元へ駆けていることに。


 どうやら挟み撃ちで攻撃し合い、問答無用の一撃を入れるつもりのようだが…‥残念ながらそれは読まれていた。



「…‥‥」


 腕時計を操作し、取り出したのはノインの腕が変形した時についている道具と同じもの。


ズダダダダダダダダダダ!!

「あぶっ!?」

「ひみゃっ!?」


 ガトリング砲…‥‥ただし、弾丸ではなく粘着弾のみを装填しているようだが、その量は多い。


 一気にねばねばの弾によって周囲から迫ってきた二人は絡み取られ、他の面子よりも厳重に動けなくなってしまった。


 よって残るは、ゼネにノイン、リリス‥‥‥あとはルナティアとアリスだけになった。


「ふふふふ、流石というべきか、だいぶ仕留めましたわねぇ」


 その状況を見て、ゼネの妹は満足するかのように笑みを浮かべるが、ゼネたちの方は観察するほど余裕がない。


「一応、私の作成した装備品の数々は、ご主人様にとって扱いやすくしてますからね…‥‥こうなると、私でも流石にきついデス」

「ぐぬぅ…‥‥まさか、御前様が敵に回ったらここまで手ごわいとは思わなかったのじゃが‥‥‥」

「グゲグゲェ」

「ディーって、容赦なければ全員抑えられるのかニャ…!?」

「恐るべしというか、改めて全員を従えていた凄さを思い知らされた気がしますよ」


 このままでは不味いと考えるも、良い手が無い。


 というのも、ディーの身に着けている装備品はノイン御手製の品々であり、それを作ったノインでさえも今のディーを相手できるかと言われれば無理のようだ。


「そもそも私はメイドであり、戦闘も可能なのですが‥‥‥ご主人様に渡したのはその武器をさらに強力にしたのが多いからこそ、まともに打ち合うのは出力面で負けるのデス」

「なんでそんなものを御前様に渡すのじゃ‥‥‥」


 守るために身に付けさせたはずが、思いのほか脅威となってしまった現状。


 今の面子で拘束するために動こうとも…‥‥良い手段がない。


 ノインの場合は同じ武器でも出力面で負けており、リリスは元から防御面に優れていてもそれでは意味がない。


 ルナティアは事前に渡された弓矢があれども今のディーならそれらすべてを叩き落とせるだろうし、アリスに至っては鳥の召喚獣(ピヨヨ)に音響兵器…‥‥


「‥‥‥あ、それなら行けるかもしれません!」



 そこでふと、アリスは思いついた。


「なんじゃ?」

「あの催眠術は、音と視覚で成り立っているんですよね?だからこそ、強い衝撃とかで目が覚めるのであれば、大きな音でも‥‥‥」

「その手があったニャ!!」


 何も、衝撃を与える手段は物理的な手に限らない。


 物凄く大きな音でも十分刺激になるだろうし、催眠術で操っている以上音を聞かせないw替えにもいかないだろうからこそ、防ぐ方法が無いはずだ。


「でしたら、これデス!」

「ピヨヨ、いけるわね?」

「ピィィ!!」


 ノインの腕が変形し、メガホンに切り替わる。


 アリスの方も召喚獣のピヨヨを呼び、目の前に飛ばせる。


「最大音量兵器発射デス」

「ピヨヨ、やって!!」


「っ!!何かするつもりでもやってしま、」

【【ボンエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!】】


 ゼネの妹が動きに気が付いたようで、慌ててディーへ指示を出そうとしたようだが、もう遅い。


 飛び切り強烈な爆音波が響き渡り、大気が震えた。



「---------!?」


 そしてそれは、思いっきりその方向にいたディーにも直撃し、回避する隙は与えなかったようだ。


 流石に長時間は危険なので、ある程度流したところで音をやめさせて様子をうかがえば、ぐらりぐらりとふらついた様子。


 耳からは血が流れており、鼓膜が破れたようだがそれは後でどうとでも治療可能だ。


「---あ、が、っが…‥‥っ!!」


 何とか踏みとどまろうとしたようだが…‥‥音響兵器の威力は、流石に耐えきれなかったようだ。


 様々な装備品で耐性が上がっていても、音の衝撃波はすさまじい。


 

 数回ほど大きくふらついたところで…‥‥ディーはその場にぶっ倒れ、気絶したようであった。



「‥‥‥‥良し、ご主人様に無理した反動が出ているようですが、治療可能ですネ」

「となればじゃ、あとは…‥‥」



 ディーを確保し、状態をノインが診察したところで、彼女達は目を向ける。


 そこには、催眠術をかけ続けていたがゆえに防御し損ねていたゼネの妹たちが、先ほどの音響兵器の影響でぴくぴくと痙攣して悶えている姿があった。


「…‥‥儂が罰を与えても、ろくに受け取らんじゃろうなぁ。とりあえず‥‥‥‥」


 ふふふっと、流石姉妹というべきか、妹のような笑みを浮かべるゼネ。


 だがしかし、その顔は笑みでも本当に笑っているわけではなく、物凄い悪い顔での笑いになっていた。


「二度とこんな真似ができぬように、ちょっとやらせてもらうかのぅ」

「と言いますト?」

「‥‥‥儂のためを思って色々やったのかもしれんが、それは儂の喜ぶようなことでもなければ楽しめるようなものでもない。儂のため(・・・・)なのに儂のためにやっておらぬ(・・・・・・)という矛盾に気が付けぬ阿呆には、それ相応の躾をするのじゃ。うむ、できればそのあたりも踏まえてちょちょちょいっと‥‥‥‥」



…‥‥ゼネの生前の肉親であり、彼女のために行動を起こしていたという事は分からないでもないだろう。


 けれども、それぞゼネ自身が本当に望むことなのかどうかという判断が、妹たちから抜けていた。


 盲目的に、狂信的に慕うあまりにその本質を見過ごしていた。


 何もかもやってあげたいがゆえに、むしろそれらを消し去ってしまった。


 人のためを思って人のためにならない行為…‥‥それに対して、ゼネは今、怒っているのだ。


「まぁ、流石に記憶を奪うとかまではせぬ。そっちの方が罰になるかもしれぬが、こんな馬鹿共でも儂の生前の縁者じゃし…‥‥甘いと言われるかもしれぬが、これが一番良いのじゃ」


 そう言いながらゼネは呪文を唱え、杖を振りかざす。


ゴッス!!


「…‥‥なんか魔法じゃなくて物理的攻撃をしたように見えたのニャ」

「魔法の一種じゃよ。まぁ、この手は専門ではないがゆえに、ちょっと力づくで叩く真似になってしまうのじゃが…‥‥とりあえず、全員に施すかのぅ」


 そう言いながら、ゼネは一人一人丁寧にその魔法をかけるために、杖で殴っていくのであった‥‥‥‥



「それはそうと、他の人はどうするのニャ?」

「あ、そう言えば皆拘束されたままでしたわね…‥‥」

「大丈夫デス。粘着弾自体はそこまでダメージを与えませんし、特殊溶剤で瞬時に溶かして…‥‥アレ?」


 ルナティアの言葉で、拘束状態の皆を解放しようとノインはその特殊溶剤を取り出そうとしたところで…‥‥ふと、ある異常に気が付いた。


「…‥‥最悪デス」

「どうしたのニャ?」

「何か問題があるの?」

「ご主人様の先ほどの攻撃を受けていたせいで、どうも思った以上に内臓武器がダメージを受けていたようでして…‥‥ちょっと今、お見せできない惨状が広がってまシタ」


 どうやら、先ほどの一撃は思いのほか強すぎたようで、ノインの内蔵していた武器の数々が悲惨なことになっていたようだ。


 痛みとかはないものの、内蔵していた武器の数々が互いに干渉し合い、色々と悲惨な光景。


 特に、薬液などを出すタイプの武器がちょっと不味い状態になって…‥‥


「これはオーバーホール修理の必要があり、しばらく使えまセン」

「グゲ?グゲェ」

「ええ、溶剤出せまセン。ご主人様の腕時計の方にも一応ありますが…‥‥こっちの方はそもそも解放目的がそこまでないので、量はかなり少ないデス」

「というと、全員助け出せないのかニャ?」

「いえ、できると言えばできますガ…‥‥粘着弾自体は髪などに付かない親切設計ですが、衣服が駄目デス。なので、最低限の仕様のみで、あとは衣服を切り裂くしかありまセン」


‥‥‥全員無事とはいかず、半裸に近い状態になって救出される羽目になるのであった。


「今の季節が、暑くてよかったのぅ…‥‥雪降る時期じゃったら最悪じゃろう」

「いや、これでも最悪なのだが…‥‥特に某の場合鎧が駄目になったんだが」

「一応、後で新造しましょウ。こちらも元々点検予定がありましたしネ」


(…‥‥ところで、金属の鎧とかを切り裂けるハサミを使っての救出にツッコミを入れた方が良いのかニャ?)

(いえ、やめましょう。ディーの召喚獣たちにツッコミを入れたらきりがないですもの…)

ちょっとやらかしたというか、皆にすまなかったというべきか…‥‥

色々と罪悪感を抱きつつ、気絶してしまう現在。

ああ、今後こういうことがないように、対策しないとなぁ…‥‥




‥‥‥なお、催眠術耐性うんぬんの話に関しては、134話周辺であったりする。

その時に話しているのに、こういう時に限って忘れているんだよなぁ…‥‥

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