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247 たまに絵面が不安になる

「‥‥‥あのスライム液体の操り人が、発生源の方にいると思ったが‥‥‥流石に、見た目的には無事なのは驚くな」

「いや、爆発アフロになっている時点で無事ではない気がするのニャ」


…‥‥蠢く液体に電流を流し、操っていた人物らしい輩の場所へディーたちはたどり着いた。


 液体に浸かりながら操作していたようで、思いっきり流れてきた電流を浴びたらしい相手だが‥‥‥今のところ、表面的な生命の危機は見えないだろう。


 しいていうのであれば、さっきのルナティアのツッコミの通り、巨大なアフロが気になる程度である。すごいチリチリしているというか、これで済んでいるのもすごいが‥‥‥



「ふむ‥‥‥気絶しているだけのようじゃが、こやつあれじゃな。前の狂愛の怪物の一部になっていた奴じゃ」


 ゼネがぐいっとその人物の胸ぐらをつかみ、持ち上げて顔を確認したところで、どうやら以前に襲撃をかけてきた相手のようだ。


 ゼネの妹の仲間にして、狂信者とも言え、そして狂愛の怪物の一部にもなった女性のようだが‥‥‥ちょっと俺としては見づらい光景。


 というのも、液体に裸で浸かっていたようであり、緑色の粘り気のある液体でまだ体が包まれているようだが、男としては見づらい。


 まぁ、布でくるんで拘束したので、一応解決したは良いが…‥まだ気絶しているようだ。


「ちょうど良いのじゃ。こやつの記憶から、ここの脱出方法とか探るかのぅ」


 ふんっと気合いを入れ、魂を引っこ抜くゼネ。


…‥‥気のせいだとは思いたいのだが、この女性、気絶しながらもゼネに触れられた瞬間に笑みを浮かべてないか?


 気を失っているのに、肉体で感じているのか‥‥‥うん、考えると闇が深そうなので、気が付かなかったことにしよう。


 

 そうこうしているうちに、魂を少々ゼネが弄って‥‥‥記憶を閲覧した。


「ふむ…‥‥なるほどのぅ…‥おおぅ?」

「どうした?」

「‥‥‥魂から記憶を見れるのは良かったのじゃが…‥‥余計なものまで見たというか、知らんかった情報もあったのじゃが。‥‥‥ノイン、儂の衣類とかすり替わってないかのぅ?」

「ン?…‥‥全部材質は同じなはずですが、ちょっと待ってくだサイ。リリス、箱の中の衣類を確認させてもらいますネ」

「グゲェ」


 よいしょっとリリスの箱の中にノインが入り込み、衣類の保管場所で探ること数分。


 結果が出たようだが…‥‥どうやら、今取った情報通りだった。


「確かに、ゼネの上着から下着‥‥‥衣類一式、ほとんどが交換されてまシタ。よくできた複製品でしたが、私が作った衣服も混ざっており、そちらの方で細かな違いが確認できましたネ」

「うわぉぅ‥‥‥嫌な予感どころか、情報通りすぎて寒気がするのじゃが」


‥‥‥何やら今得た余計な情報というか、知りたくなかった情報を知ったらしい。


 なお、全員の衣類はノインが洗濯しているが、狙われたのはおそらく干している時に、少し目を話した瞬間らしいが…‥‥


「学園のセキュリティは、ご主人様の入学当初よりも格段に上がっていたはずでしたが…‥‥それを潜り抜けてきたのでしょうかネ?」

「そうらしいのぅ‥‥‥儂の衣類のみを狙うだけの特化班が組まれていたようじゃからな‥‥‥」


 恐るべし、ゼネへの執着心から生まれた特殊班。


 というか、それは下手したら色々と仕掛けられる危険性があったが…‥‥幸いなことに、そのような真似はしなかったようだ。



「あとでそのあたりは調べるとして、今はここからの脱出の方を探るかのぅ…‥‥」


 嫌な情報を得てしまったが、それの解決策は後でどうにかなる。


 そう考え、気を取り直して記憶を改めて探り始めたのだが…‥‥探っていくにつれて、ゼネの顔色が悪くなっていった。


 いや、一応死体なんだから悪いと言えば悪い所もあるのだが、それより悪化していくのもどうなんだろうか?


「知りたくなかった情報が多いのじゃが…‥‥おぅふ、本にしているとか、何かと想像して作っているとか…‥‥」


…‥‥調べていくたびに、ゼネが思わずそう口にしていく。


 どうやら重要な情報を探っているのだが‥‥‥‥その情報にたどり着こうとすると色々な他の記憶が邪魔してきているらしく、その中身を見てしまっているらしい。


 新手の精神攻撃かと言いたくなるレベルのようだが…‥‥それでも何とか乗り切ったようで、ようやく彼女は情報を集め終えた。


「…‥‥‥何と言うか、儂、燃え尽きたのじゃが…‥‥」

「うわぁ…‥‥精神的に、やられそうなぐらいか」

「ふふふ‥‥こいつでこれだけなら、妹とかを見たら多分地獄なんじゃろうなぁ…‥‥」


 真っ白になっているというか、灰になって燃え尽きたというべきか…‥‥乗り切って情報を得たが、試合に勝って勝負に負けたかのような状態になっている。


 というか、それはそれで確かに地獄を見るような気がする。いや、地獄という言葉では生ぬるい物が容易く予想できるんだよなぁ…‥‥


「じゃが、ここの詳細情報ぐらいは入手できたのじゃ…‥‥。予想通りというべきか、ここは妹たちが組織フェイスマスクから強奪した技術で作り上げた場所のようじゃな」

「強奪か」

「強奪じゃよ。拠点づくりをしていたところに強襲をかけ、成功したようでな…‥‥」





‥‥‥仮面の組織フェイスマスクは、現在各国でも対策を練っているそうだ。


 被害に遭った国々が多く、また来られても困るし、来ないようにと工夫をしているようだが‥‥‥この神聖国では襲撃をかけているようだ。


 というのも、この国のトップに連ねているのがゼネの妹たちであり、ゼネに対して攻撃を仕掛けるような組織を彼女達が放置するだろうか?いや、否だ。


 むしろ、より多くゼネと接するという事で、過激に敵対しまくっているらしく、拠点を探し当てては潰しと、他国より群を抜いて徹底的にやりまくっているらしい。


 そのついでに、相手の利用できそうな技術は利用してやろうという事で、技術の強奪を堂々と行い、国のために役立てつつ…‥‥自分たちの欲望を満たすためにも転用してるのだとか。


 先ほど発覚した衣類の複製や、液体スライムなどもその技術の一部であり、どうやら未完成なところを強奪した後に、自分達独自で研究し、確立したようである。


 凄まじい執念というか、ある意味間違ってない対応法というべきか‥‥‥‥いや、奪われる側にとってはたまったものではないだろうなぁ。組織の奴だってことは分かるけど、狂愛の怪物の襲撃とかを考えると同情してしまいそうになる。

 

「というか、同情レベルじゃな。怪物を繰り出すなどをして応戦したようじゃが、全部徹底的に殲滅していたようじゃ」

「ゼネの妹たちって本当に何者?」

「というか、人間なのかニャ?」

「そもそも、常人の枠組みを超えていますわよね?」


 ルナティアもアリスも思わずそう口に出すが、その回答は分からない。


 ただ一つ言えるとすれば、組織フェイスマスクの技術力は認めるけれど中々表立ってこないのは、ここのウルトラシスコンに喧嘩を売ったせいで抑えつけられているのではないかということぐらいである。


 シスコンは、世界を救うか‥‥‥なんか間違っているような気がするが。





 とにもかくにも、手に入れた情報によれば、この空間は未完成だった技術に工夫を凝らし、どうにかして使い物にした特殊な空間。


 ノインの私室づくりに近いようでありつつも、こちらは特殊な液体を多く混ぜ合わせることによって作り上げた泡の中のようなものなのだとか。


「とはいえ、時間の流れとかは違うようじゃが。ココでの1時間は、外の1分のようじゃ」

「未完成だった技術を強奪して、ここまで使い物にするのはすごいが‥‥‥何でそんなものの中に、俺たちを落としたんだ?」


 しかも、ゼネの召喚主である俺ならまだしも、無関係なルナティアとアリスを巻き込む意味が分からない。


「そのあたりの理由もどうやらこやつにはあるようじゃが‥‥‥‥ぬ?」


 ごそごそと魂を弄りつつ、その情報をゼネは見たようだが奇妙な声を上げた。


「…‥‥な、な、な‥何を考えているんじゃあやつらはぁぁぁ!!」

ビッタァァァン!!

「魂を叩きつけたぁ!?」


 瞬時に真っ赤になり、魂を盛大にその体に叩きつけるゼネ。


 良い音がしたというか、よっぽどの力でやったというべきか、そもそも魂を叩きつけることができたのかと様々なツッコミどころが出ていた。


 でも、それ以上に気になるのは、今のゼネの反応だが…‥‥彼女にしては珍しいほどの真っ赤さになっている。

 

「ゼネ、何を知ったんだよ?」

「こやつらはあほなのかと言いたくなるようなことじゃよ。余計な節介というか、あわよくばどさくさに紛れて混ざろうなどと…‥‥色々とやらかす気じゃったようじゃが‥‥‥」


 俺の方をちらっと見て、顔を再び赤らめ直すゼネ。


 そして少し考えるようなそぶりを見せた後に、言うことにしたようである。


「じゃけど、ちょっと御前様は耳をふさいでほしいのじゃ。もしくは耳栓をして、儂らだけでちょっと共有すべき話なのじゃが‥‥‥」

「どういうことだよ?」


 まぁ、聞かない方が良い話しって言う位だし、一応手で耳は塞いでおく。


 そしてゼネはノインたちやルナティア、アリスを手招きして、少しだけ離れた場所でひそひそと説明したら‥‥‥次の瞬間、全員先ほどのゼネのように瞬時に真っ赤になった。


‥‥‥聞こえないようにしているけど、彼女達に何が伝わったのだろうか。


 少なくとも、怒りと何かが混ざっているような表情のような気がするが‥‥‥何と言うか、俺の勘がまだ聞くべき話ではないとささやいているような気がする。


 っと、そうこうするうちに話が付いたのか、もう聞いても良いというジェスチャーが来たので、手を耳から話した。


「で、終わったのか?」

「色々とじゃな…‥‥とりあえず御前様、ここから脱出するまでの間にちょっとお願いしたいのじゃが」

「リリスの箱の中で、ちょっと守られていてくだサイ。色々と防衛可能な装備を渡してますが、万が一というのが考えられますからネ」

「そうなのニャ。一応、こちらでも納得出来る話だったけれども、まだ段階が早いというか、そんな思惑に乗せられまくって流されるようなことはちょっと避けたいというかニャ‥‥‥」

「い、今はまだ、早いのでちょっと引っ込んで守られていて欲しいですよ」


「‥‥?」


 本当に何を聞いたのかと思うが、素直に従っておこう。


 こういう時は、むやみやたらに首を突っ込めば、相当厄介なことになると直感が働いたからな。


「リリス、とりあえずお前のその箱の中に入れさせてくれ」

「ググゲェ!」


 びしっと指を立て、了承するリリス。


 とにもかくにも、俺は彼女の箱の中で、警護されることになったのであった。


「あ、そう言えばその情報抜いたやつ、どうする?そのまま放置しておくのか?」

「んー、さっきと同じように液体を動かしてやられるのも嫌なのじゃが‥‥‥その前に、ちょっと風呂に入って流したいのじゃが」

「何でだよ」

「御前様の方には効果はないらしいが、儂らのほうに時間が経てば(・・・・・・)ちょっと不味いのがあったらしいからのぅ‥‥‥‥その効き目が来る前に、さっさと脱出を目指すのじゃ」


‥‥‥そう言いながら、魂をその人に戻し、より一層厳重にして拘束して引きずり始めるのであった。


 持って進まずに引きずるのは、これでもちょっとした罰のつもりなのだろうが…‥‥魂も抜かれた状態だったはずなのに、その人の気絶顔がより恍惚とした笑みになっているのは気のせいだろうか?見なかったことにしようか…‥‥

情報を得たのは良いが、何やら皆の様子がおかしい。

けれども、何だったのかは聞いていないし、聞かない方が良いようだ。

とは言え、ここに残っていると結果として聞きそうな気がするのだが‥‥‥





‥‥‥なお、今回の捕縛された人。この騒動終了後に生死不明になっていたりするが、それはまた別のお話。

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