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239 念には念を入れておくべきだったり

‥‥‥無事にテストも終え、続けて行われる臨海合宿。


 去年のゲイザー騒動も考え、場所が変更される可能性もあったが、結局は変わらず海。


 ただし、変更された箇所としては‥‥‥‥



「‥‥‥最低でも、2学科編成の馬車で集団移動か」

「万が一があれば、こちらの方が対応しやすいですからネ」


 並行して走行する馬車を見ながら、俺たちはそうつぶやく。


 去年の海までの移動の際にあった襲撃なども踏まえて、今年は臨機応変に対応可能なように、各学科ごとではなくランダムに混ぜ合わせた学科の馬車と並走して海を目指すことになった。


 神聖国を通過するルートは変わらないが、並走して走る分、外の景色が片側部分見にくくなったことが、ちょっと難点だが‥‥‥それでも、安全性を考えるのであれば仕方が無い事だろう。


 とはいえ、ずっと馬車の中にじっとしているのも暇なので、召喚士学科の馬車の周辺には各自の召喚獣たちが自己責任で並走しており…‥‥


「うん、全員乗り込んでも問題なく牽引できるし、良い鍛錬になるな!」

「レイア、重かったら休んでもいいぞ?」

「大丈夫だ、マイロード。この方がむしろ、鍛えるのに都合が良いからな!」


 鎧を装備しつつ、ぐっと指を立ててそう返答するレイア。


 馬車にはきちんと御者と馬がセットになるはずだが、俺たちの乗る馬車に関してはレイアがその両者の役割を果たし、意気揚々と牽引していた。


 将来的に諜報活動などで移動する際に彼女が色々と移動の要になりそうで、こういうのも将来へ向けた良い訓練になるだろう。


 しいていうのであれば、ちょっと絵面が…‥‥と言いたいが、一応鎧のを着こなしているので、素の姿で牽引させるよりもマシである。



「というか、召喚士学科と並走するのが弓兵学科…‥‥あ、ルナティアもやっぱりいるのか」

「ついでに後部の馬車の方には、アリス王女の姿もありますヨ」


 きょろきょろっと馬車の周囲を見渡せば、馬車から身を乗り出していたり、あるいは上に乗って風に当たっているなど自由にしている人たちの中で、いつもの彼女達の姿を目にする。


 なお、アリスの場合はガランドゥ王国の復興中なので、その際のごたごたで馬鹿がやらかさないようにと、王女という身分が実はちょっと隠されているらしいが…‥‥何処の面倒な馬鹿でも、権力者を狙うのは同じなのだろうか?



 それはともかくとして、彼女達に気が付いて軽く手を振って見れば、二人ともニコッと笑って振り返してくれた。



「こういう風に友人も一緒にいる状態だと、それはそれで楽しんだけどなぁ…‥‥バルンもいればよかったが」

「あの人の場合は、別の学科デス」


 残念ながら、悪友であるバルンは現在先頭の方にある学科集団のところだったりする。


 ついでに王子たちの方も同じく前の方に進んでいるので、彼らの姿も見ることはない。



「去年の今頃で、襲撃もあったが…‥‥」


‥‥‥こういう馬車での大移動の際に、襲撃の類は警戒しなければならない。


 前の奴だと薄気味悪い怪物とかがあったが…‥‥幸運なことに、今年はその類は出ないようだ。


 一応、他国に留学中の第3王子、第1王女なども海の方で合流するそうだが、今年はまだ攫われたとかいう情報もなく、無事に会えそうでもある。


「まぁ、儂の場合じゃと道中の通過する国が一番怖いのじゃがな‥‥‥‥」

「‥‥‥そう言えばそうだったな」


 ヴィステルダム王国に海がないからデオドラント神聖国の方を通過して海へ向かうのだが‥‥‥その神聖国の内部が問題である。


 というのも、どうやらゼネの妹及び彼女への狂信者が居ついている国だからだ。


 狂愛の怪物の一件以来、動きが途絶えており、大人しくしているようだが油断はできない。



「というか、時間経過と共に熟して拗らせ具合をより酷いことにしているだろうなぁ…‥‥」

「どんな人たちなんだよ、それ?」


 ティアが疑問の声を上げるが、考えて見ればその一件にいない召喚獣もいたんだったか。


「疑問/神聖国/清廉潔白では?そのようなおどろおどろしい類/存在する?」

「するんだよなぁ…‥‥」


 見ていないルンたちには、あの恐怖は分からないだろう。


 というか、組織の手も多分関わってないのに、狂愛だけで合体・怪物化するっていうのもどうかと思うが…‥‥あそこまでこじれた輩は恐怖が実体化した類にしか思えない。


 うん、人間にとって一番怖いのは、怪物とかではなく人のこじれた思いだってことをよーく理解させられたよ。あれは確実にトラウマになるなぁ‥‥‥‥


「むしろ、あれを長い間耐えていた聖女時代のゼネのメンタルを尊敬するよ」

「耐えていたというか、死にかけていたというべきか…‥‥死因は別なのじゃが、それでもあれはひどいからのぅ‥‥‥」


 遠い目をして彼女はそう答えるが、生前のこじれ具合も相当ひどかったのだろうと推測できる。


 人のこじれた感情って、なぜ恐怖へ変貌するのか…‥‥世界の謎の一つとも言えるだろう。


 何にしても、通過している間に動きが無ければいいと思う。


 何かあったら、それこそ狂愛の怪物の再来となるだろうし、その時こそ真の恐怖に襲われる可能性がある。


 組織フェイスマスクよりも恐ろしいと言うのも、過言ではないだろう‥‥‥‥





…‥‥そう言えばあの一件で、ちょっと奪われた記憶があるような。うん、思い出すとあれで止めれたのは良いけど、なーんか嫌な予感がする。余計に拗らせてとんでもない目にあわされるような気がするのは気のせいだはないだろう。


「ノイン、この間の防犯用トラップだったか、あれを通過時に設置しておいてくれないか?徹底的に警戒しておかないといけないと、なんか勘が警鐘を鳴らしているんだが」

「しておきますが…‥‥ご主人様のその警鐘は間違ってないと思いマス」

「御前様、それを言うのはやめてほしいのじゃが。言われると余計にその可能性が高まるというか、逃れられぬ何かが待ち受けている確信を持ちそうなのじゃが」



 

恐怖の予感というのは、嫌でもあたることがある。

だからこそ、的中しないように対策は取るが、それでもどうにもならないことがあるだろう。

人の想いというのは、強力過ぎるのだから‥‥‥‥




‥‥‥なお、当時いなくて理解していない召喚獣もいるが、否応なしで知る羽目になる可能性もある。

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