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233 金属対決

‥‥‥ルンの刃部分を、相手の攻撃を利用してオリハルコンに変え、攻撃に転じる作戦。


 とはいえ、そのためには相手の攻撃を彼女の刃部分にわざと当たる必要がある。


 相手の攻撃が直線的というか、軌道が読みやすいのでその攻撃する先を狙って当たりに行くことはできるが…‥‥



【オオオオオオオオオォン!!】


「どんどんっと、連続発射してきたな」

「グゲェグゲェ」


 ガランドゥ王国の国王もとい巨体の怪物が口から放つ光線は、どうやらかなりの頻度で発射できるらしい。


 貯める時間が短くなっている分、攻撃範囲も狭まっているようだが…‥それでも、発射速度は驚異的なレベルだろう。


 リリスの箱に装備したジェットエンジンや翼で旋回・急加速・ホバリングなどで回避できているが‥‥‥それでも長い事こうするわけにもいかない。


「というのも、これ流石に有限なんですよネ。ホバーブーツであれば周囲の空気でほぼずっと飛行可能になりますガ、こちらは燃焼材料を入れているので…‥‥飛行可能時間はあと10分ほどデス」

「思いのほか短かった」


…‥‥何にしても、何とか相手の攻撃をわざと、ルンの刃部分だけに当てる必要がある。


 けれど、この飛行状態ではちょっと難しいので…‥‥


「レイア、頼めるか?」

「任せろ、マイロード!!いくぞルン!」

「了解/高速移動/対応」


 ばっとリリスの箱から飛び出し、地面に着地するレイアとルン。


 レイアの手にはルンの本体である剣が握られ、既に鞘から抜いて刃を出している。



【おおお?何やら国王陛下の芸術けなす者が、分れたようですが…‥‥何か考えがあるのだろうが、あちらから狙いましょうかぁ国王陛下!!】

【オオオオオォン!!?】


 国王の頭部内にて操縦しているらしいハドゥーラがそう口にすると、国王の咆哮が響き渡る。


 何かを仕掛けようとしていることは分かるようだが、わざと乗ってきたようだ。


 おそらくは、こちらが何をしようともたいした攻撃手段がないように思っているか、あるいはその策が何であれ、今の国王を止めるすべはないと思っているのか…‥‥ここまで国王を肉体改造してきた頭を持つ割には、やけに単純な思考のような気がする。


「力というべきか、改造した国王陛下の力に酔っているようデス。人は大きな力を手に入れると、それに呑まれることがありますからネ」

「でもそれこそが、大きな隙にもなるか…‥‥」



 咆哮を上げ、国王の口内が輝き、光線が発射される。


 光弾のような攻撃もあるが、連続照射によって一気に当てる気のようだ。


‥‥‥とは言え、悠長な攻撃では彼女達に命中させることはできない。



【オオオオオオオォン!!!!】

「まずは全力回避!!ある程度見極めに移るぞ!!」

「了解/対応」


 光線が当たる直前に、レイアたちの姿が掻き消え、直ぐに別の場所へ移る。


【オオオオォン!?】


 一瞬の動きに対して驚愕したような声が出たが、無理はない。


 彼女達の地上での走行速度は、この面子の中でトップクラスだからな。


「ははははは!!遅い、遅いぞ!!」

「余裕/相手/ウスノロ」

【オオオオオオオオオオオオオオオォン!!】


 挑発するような声を上げると、伝わるのか怒ったような咆哮を上げ始める。


 光線だけでは意味が無いと思ったのか、使われていなかった巨体の手足を動かし始め、彼女達を捕らえようとするが‥‥‥


「よっとはっとさっと!この程度、腕にも乗って進めるぞ!!」


 光線、拳、足などが迫って来ても、瞬時に彼女達は別の場所に移っており、その攻撃はどれも当たらない。


 なんというか、瞬間移動でもしているのではないかと言いたくなるほどだが、あれはあくまでも地面を踏み砕くほどの高速で移動しているだけである。


「ああ、そうだ!!ついでにこういう時にやってみようと思っていたんだ!!新技いくぞ!!」


 そう言うが早いが、急に彼女の動きが止まったかと思えば…‥‥次の瞬間、目を疑うような光景に変わった。


「「「はははははは!!どうだどうだ!!」」」

「なんだありゃ!?」


 その光景は、ルンを手に持ったレイアが、大量に地上にいる光景。


 増殖したかのように見える光景に、思わず俺たちの方も目を疑いたくなる。


【なんだそれ!?滅茶苦茶増えているじゃないか!?】

【オオオオオォン!?】


 流石にこの光景には、相手も驚愕したようだ。


 混乱したような声を上げつつ、数が多くなったらむしろ当てやすいのではないかと踏んで、攻撃の手を増やし始めたが…‥‥


「ふははは、当たらん当たらん!!」

「遅い/全部無駄」


 どれもこれも当たる直前にその姿がかすみ、別の彼女達が大勢現れる。


「‥‥‥どうなってんの、アレ?」

「あー‥‥‥なるほど、理解できまシタ。わざと止まって、像を残す、理論上は可能な影分身の類ですネ」


 その技に俺たちも驚いていたが、どうやらノインは見ぬいたらしい。


 いわく、彼女達の瞬間移動のような高速移動は目にもとまらぬ速さだが、その合間にほんの数十ミリ秒ほど体を止めているらしい。


 すると、その止まっている部分だけ像が残り、彼女の姿がそのまま残っているかのような…‥‥理論上は可能な影分身の技だというのだ。


 あくまでも理論上というのは、そのレベルにするにはそれだけ早く動く必要があり、急加速・急停止・急加速の動作を繰り返せるだけの肉体が必要となるのだが、それは流石に常人には無理。


 そんなことが可能なレベルの彼女達だからこそ、成し得た技のようだ。


「私でも、流石にあの数は無理ですネ。メイドたるもの、ご主人様の命令の数に対応できるように、ある程度の影分身ならできますが、あそこまでの練度は無いデス」

「さらっととんでもないこと言ってないかニャ?」


 とにもかくにも、大量の影分身技により、相手はただの攻撃では分が悪いと考えたのか、急に光線の連続照射を止めた。


 そして次に取った行動は、大きな貯めのようだ。


キュインキュインキュインキュインキュイン‥‥‥!!


「うわ、でっかいのが来るな」

「一気に広範囲を攻撃する用ですが…‥‥あれですと、どの程度なのか分かりませんネ」



 そのまま一気に口腔内に光が貯まっていき…‥‥これまでにないほど強くが輝いた次の瞬間、全てが解き放たれた。


ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!


 ぶっとい大光線が物凄い範囲に広がり、地上を薙ぎ払っていく。


 いや、正確には全てをオリハルコンへ変えゆく光景を作り出していき、都市の間にある壁に直撃し、それを破壊していく。


 これまではオリハルコンに変えるだけであったが‥‥‥どうやらため込みまくった結果、大きな質量を伴った攻撃になったようで、都市を隔てる壁すらも破壊していった。





‥‥‥そして後に残るは、抉るようになった地面がオリハルコン化している光景であり、一本の金属の道が出来上がる。



しゅうううう‥‥‥

「うわ、なんか口から煙が出ているんだけど」

「あの攻撃、相当な熱量もあったようですネ…‥‥反動が来たようデス」


 ぶしゅううっと音を立てつつ、国王の口が閉じられる。


 流石に今の一撃は大きすぎたようで、すこし冷却する必要があるのだろう。


「おおっと‥‥‥流石に今のは危なかったかもしれない」

「ちょっと/肝冷えた」

「っと、二人とも跳躍していたか」

「グゲェ」


 ふと気が付けば、先ほどまで分身しまくっていたレイアたちが、リリスの装備の飛行用翼にしがみついていた。


 あの一瞬のうちにこちらへ跳躍し、難を逃れたようだが…‥‥どうやらそのついでにきちんとなすことは出来たらしい。


「オリハルコン刃/形成完了。相手の大きな一撃/より高純度なオリハルコン/いただいた」

 

 あの攪乱も、この攻撃を誘うためのものであり、大きな攻撃であればよりいいオリハルコンを入手できそうだと踏んでいたが、どうやらうまくいったようだ。


 ルンの刃は今、元の装飾は残しつつも輝きが増し、黄金の光を纏っている。


「ならあとは、やってしまえ!!」

「了解/実体化開始」


 瞬時に剣の中から、精霊としての彼女の体が出現し、自身の柄をしっかりと持って構えた。



【何をする気だ!!】

【------!!】


 いまだに大きな攻撃をしたがゆえに、口が開かない国王に変わってハドゥーラがこちらの攻撃に気が付いて叫ぶが、もう遅い。


 気が付いたときにはルンの姿は翼から消え失せ、国王のその巨体のどてっぱら前の宙に浮いていた。


「剣技/『皮剥ぎ斬り』」


 しゅんっと剣を振るった音が聞こえたと思ったら、実体化を解き、剣の状態でこちらに戻ってきていた。


 そして数秒後…‥‥一気に巨体に閃光が走ったかと思った次の瞬間、


ズババババァン!!

【オオオオオオオォォォン!?】

【なんだとぅ!?この特殊合金で固めていたボディが、あんな剣に一瞬で切り捨てられていただとぉ!?】


 何が起きたのか理解した声がしたが、それでももう、奴らになすすべはない。


 振るわれた剣は綺麗に国王の前側の装甲になっていた金属を剥ぎ取っており、その中身がさらされる。


 本当なら内部へ突っ込んで突撃する気もあったが‥‥‥‥一応、とある可能性も考えて全部見えるように表面だけの解体をしてもらったが、見事なものだ。



 装甲が全て取れ失せた後には、生々しい内部構造が見えている状態となり、素早くノインが分析する。


「…‥‥動力源確認、あの各部位に見える黒い球のようなものですネ」

「いくつもあるけど、複数の動力で動いていたってことか」

「そのようデス。まぁ、人体改造程度であの巨体を動かせるだけの力を1人のみに持たせることは出来ないと思いますので、十分納得いきますガ…‥‥とりあえず、これで終わらせましょウ」


 守られていた壁が払われ、全ての動くために必要な個所がさらけ出されている。


 一か所に集中しているのではなく、全身のあちこちに動くための仕掛けがある可能性を考えての解体ではあったが‥‥‥予想通り。


 となればもう、後はやるべきことは決まっている。


「全員、遠距離攻撃最大火力、一斉射撃開始!!」

「「「「了解!!」」」」


 各自が持てる最大火力の遠距離攻撃を行うために、全員リリスから飛び出す。


 そして舞うように、熱線、光線、飛ぶ斬撃に投げられる槍と、様々な攻撃が解き放たれ…‥‥全てが着弾し、破壊していく。


 ある意味彼女達が宙を舞っているようで、美しい光景なので、これも芸術かもしれない。まぁ、その攻撃全てが死へのいざないになりそうだが…‥‥相手が芸術を愛した国王であれば、これも本望だろう。



【オオオオオオオオオォン!!】

【馬鹿なぁ!?このわたくしが創り上げた、国王陛下がこんな簡単にやられるはずがなぁぁぁい!!】


 頭部に乗っているハドゥーラが叫ぶも、これが事実なのだから諦めて受け入れろと思う。



 なので、黙らせるためというか、まだ残っている頭部への攻撃に俺も加わることにする。


 腕時計の装備の中から、ガントレットを選び、宙で構える。


 ノインのようなロケットパンチも可能であったが、更に改良がくわえられ、飛びだすと同時に刃を纏い、回転しながら襲うちょっとえげつない技を放つ。


「『スマッシャーストライク』!!」


 音声入力方式で発動するようになっているらしく、それを叫んだ瞬間ガントレットが一気にぶっ飛んだ。


 そのまま刃を纏い、回転して頭部の操縦席らしい部分に直撃し、その席を砕いて貫く。


【ぎゃああああああああああああああああ!!】

【オオオオオオオオオォン!!】


 断末魔が聞こえてきたが…‥‥まぁ、安心すると良い。


 ギリギリ横をかすめて貫くだけにしたのでハドゥーラ自体は無事なはずだ。人が肉塊に変わっていく光景は、流石に見たくないからな…‥‥事前に実験して、破壊力の凄まじさを確認しているのもあるけどな。


 まぁ、突撃した際に透けていた部分の防壁とかを砕いたので、そっちが飛び散ってしまった可能性は否定できないが…‥‥何にしても、かなりの恐怖となりえただろう。


 そう思いつつ、貫通したガントレットが逆噴射して戻って来て、装備し直す。


 そしてその頃には、全ての動力源が破壊され尽くし、巨体が倒れていくのであった…‥‥‥

 


事前に装備の試射とかしているので、ある程度加減なども把握済み。

というか、してなかったらハドゥーラ直撃・爆散のコンボが決まっていただろう。

流石に情報を得るために、できるだけ生け捕りを狙っていたのだが…‥‥きちんと確認しておいてよかったと思うのであった。




‥‥‥なお、本当は『三枚おろし』にしようかと思ったが、ちょっと技名ダサいかなって思った。

センス欲しい。中二病のあのセンスがちょっと欲しい。

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