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194 手際よくする前に、向こうから

‥‥‥地下牢で作業中に来た報告では、案の定襲撃者が現れてきたらしい。


 なので、全員拘束したうえで運び入れ、ゼネの手によって魂を引っこ抜いて閲覧する作業を行っていたが…‥‥


「‥‥‥ふむ、同類じゃな。自身の姿を見せないように工夫しつつ、何かしらの魔法か道具を使ったようじゃが…‥‥」

「証拠がすっごい揃っていくな‥‥‥というか、どれもこれも同じ人物じゃないか?」

「声紋一致。加工されている形跡もありませんし、手口も同様デス」

「違うとすれば、今回の襲撃者は別の犯罪組織の手の者だが…‥‥鮮やかではあるが、動きがほとんど同じだろう」

「それなりに動いているが、パターン化しすぎているというか‥‥‥同じ仕事しかできないような、感じがあるな」

「なんというか、どんどん証拠を積み重ねて、捜査しやすくなっているよな?」



 案の定というか、予想以上に早かったともいえるが‥‥‥第1王女(ミウ)を狙った襲撃者たちからも、同じような犯人の影がうかがえた。


 生憎姿は映っていないのだが、そのどれもこれも手口がほとんど同じなうえに、声を全然ごまかしていないのである。


 また、犯罪組織所属組らしい襲撃者たちの方は、手で覆い隠す手段は流石に取っておらず、こっそり背後でつぶやいているようだが、映像からどこでやられているのか確認できていた。


「王城周辺でもないが‥‥‥首都内、貴族街の裏道あたりか」

「あの辺って人通りも少ないが、その分特定もしやすいはずだな」

「使用人たちに接している時点で、王城内に入り込める者たち…‥‥貴族の誰かなのだろう」

「手の感じからも、色々と様子をうかがうなら‥‥‥デスクワークもするが、あまり仕事量もないな」


 映像が集まるにつれ、詳細に集まっていく犯人像。

 

 使用人たちの映像だけではまだ幅広かったが、襲撃者たちをよこしてくれたことで、だいぶ幅が狭くなっていく。


「犯人は犯行現場へ戻るって何かの小説とかで読んだが…‥‥この場合は、犯人はわざわざ証拠の数々を持ってきたともいえるのだろうか?」

「言えますネ。自分の意思ではないのでしょうが、見事にどんどん退路を断ってマス」


 墓穴を掘っているというか、見事に自爆しているというべきか…‥‥犯人のやらかし具合に、思わず俺たちは苦笑する。


「これだけあって、できるだけ絞り込むとすれば…‥‥」

「いくつかあったはずだよね。最近ちょっと手を下さないといけない家がね」


 そしてこれだけの情報を集めてしまえば、どうやら王子様方にはある程度犯人を絞りこむことができたようである。


「確か、大公爵家1つ、侯爵家4つ、子爵家3つ、男爵6つが、薬の盗難時期なども考えると犯行可能な家で‥‥‥」

「どの家もある程度職業に関しての情報もあるが、こういう手段を隠して持てるとすれば男爵家は不可能だ」

「で、確かこの間その侯爵家の1つが断絶危機で、新しい当主探しで奔走して手を出せる暇もないし、別の侯爵家は仮面の組織との関係がこの間見つかって潰れて何もできなくなったから‥‥‥」

「「大公爵家1つ、侯爵家2つ、子爵家3つのどれかになるだろう」」


 思いのほか数はあるが、それでも絞り込める分調査もしやすい。


 そしてさらに、ミウへの薬の投与で利益を得るのは…‥‥



「若返りの薬の効果で、赤ん坊前に殺せると考えた場合と」

「単純に子供化であると考えた場合だと‥‥‥」


「‥‥‥大公爵家?」


 王子たちが出した結論は、一つの貴族家が絞られた。


「ああ、どっちに転んでも利益が出る家とすればその家ぐらいだ」

「というか、本来は位もいらないとは思うが…‥‥無駄に有能だったからね。祖父が最後の情けで入れたんだっけか」

「『グレイドルストン大公爵家』ですカ」


―――――――――――――――

『大公爵』

事情があって、王位に就ける条件を満たしているというのに、王位に就かなかった者たちが与えられる爵位。領地経営でさらなる国の繁栄をもたらすように努力する人が多い。

―――――――――――――――


‥‥‥グレイドルストン大公爵家。それは、現在の国王の弟が起こした貴族家。


 大公爵家は、王位につかなかった者たちが起こす貴族家でもあるが、その理由は様々。


 国王の弟の場合、仕事自体は実は今の国王以上にできていたりもしたそうだが‥‥‥どうも何かと悟っているというか、仙人風だったというべきか、人の上に立つ気もなく、自ら王位継承権を放棄し、その家を作ったそうな。


 そして一応人の子というべきか妻も娶りつつ、子を得たそうなのだが‥‥‥‥王子たちにとっての従兄であるその者は、親とは正反対の大問題児だったそうだ。


 王家でもかばいきれないほどの厄介事を多く引き起こしまくり、現在は再教育中。


 なので、本来であれば表に出る事もない扱いだったが‥‥‥‥



「僕らにとっての叔父上の子で、従兄と言えるんだけどね、最近叔父上が嬉しそうに語っていたんだよ」

「何でも、ようやく再教育が効き始めたのか、従兄がまともになってきたとか言って、わざわざ王城へ連れてきてお披露目をしたりしたんだ」


 その時には、その従兄はそれはもう信じられないほど変わっていたそうで、その変貌ぶりに驚きつつも、ようやく問題児がまともになったのかと安どの息があちこちで吐かれたらしい。


‥‥‥だが、今回の件を考えると、おそらくそれは偽りの可能性が高い。


「…‥‥あの従兄、性根が腐っていたからな。叔父上の再教育でどうにかなったのであればそれでよかったが‥‥‥」

「今回のこれだけのことをやらかせるとすれば、無駄に行動力の塊だったあの従兄しかいないからなぁ‥‥」


 犯人を当てるのであれば、その従兄が候補であるらしい。


 だが、仮に犯人だとしても、第1王女を害する理由が無いような気がする。


 

「甘いな。あの従兄、最悪のというか、紳士の風上にも置けないことがあったからな」

「そう言えば、(エルディム)はよく激突していたな…‥‥性癖の趣向性の違いだったか」

「あ、なんかその言葉だけで全部わかったような気がする」


 全部説明しなくとも、今の言葉で分かってしまうのもどうかと思えるが…‥‥




 

 あの第3王子(エルディム)はショタやロリコンなど、様々な児童性癖というべきか、盛大な拗らせ方をした、マイルドに言うのであれば子供大好き人間である。


 それと似た性癖であるらしいその王子たちの従兄だが、趣向性が見事に違うようだ。


 エルディムの場合は、子供とは愛でるべき存在であり、守るべき存在。色々と変態的な思惑も多いそうだが、それでも割とまともというか、健全な方なのである。


 だがしかし、その従兄は逆に加虐性癖及びマゾ的な被虐性癖…‥‥対照的な不健康すぎるどころか社会的に大問題なものを持ってしまったそうな。


‥‥‥いや、どっちもかなりアレな性癖だが、実際に害をなすのは従兄のようだ。


「しかも、(エルディム)の職業『シールドマン』の正反対というべき珍しい職業持ちだからなぁ」

「なんというか、あれはあれで非常に手を焼かされたんだよねぇ…‥‥『パイルバンカーマン』だったっけ?」


―――――――――――――――

『シールドマン』

タンクマン以下の攻撃力、以上の防御力を持つ、完全防御特化型ともされる珍しい職業。

ドMではなくなっているのだが、その代わりに何故か性癖を拗らせ、昇華させるような者たちが多く、「何かを守る」という面に対して固執しているがゆえに、そのような者たちがなりやすい職業ではないかと言われている。守る役目に対して普段の生活でも振るうことが多くなり、この職業を利用して孤児院の経営、村の防衛、飢える人々の救済など、人々を守るような将来性を持つ。


『パイルバンカーマン』

タンクマン以上の攻撃力、以下の防御力を持つ、シールドマンとは正反対の攻撃型防御とも言える職業。

ウルトラドMを拗らせつつ、加虐性癖にも目覚めた人物が極稀に保有しており、防御面よりも攻撃面の方に向いている。

なお、激突した際にはパイルバンカーマンのほうが防御を打ち砕きやすく、やや面倒な相手でもある。

何しろ傷つくことを喜びつつも、相手を傷つける事にも喜びを得ており、何かとややこしいのである。


―――――――――――――――


「要は、変態から紳士性を抜いて、更にヤヴァイ犯罪性を混ぜ込んだ感じか?」

「ご主人様、単純に犯罪思考を盛り込んだドMSな人だという方が分かりやすいと思いマス」


 珍しくノインからのツッコミが入ったが、確認を取ったところそれで間違いなさそうだ。


 ただ、パイルバンカーマンであれば、催眠とか暗示の技はそもそも持っていないので…‥‥


「何か道具を使ったという方が正しそうですネ」

「ああ、その可能性で間違いないだろう。何しろ、再教育して色々な事業に関しても手を出させ始めたそうだが‥‥‥その分、資金なども得ているはずだからな。どこかで入手してもおかしくはないだろう」


 で、そもそも何で第1王女(ミウ)を狙ったのかという可能性については‥‥‥おそらくは、第3王子から奪った薬を利用した王位の簒奪を目的にしている可能性があるようだ。


 王位継承の力関係から行って、まずは低そうなところから追い落としていく感じだと思われるようだ。


「腐っても、大公爵家‥‥‥王家の血を引くからな。継承権が実は存在する」

「まぁ、一応僕らの方で争っているから、そう手出しをするような人は普通いないんだけどね」

「でも、だからこそ自分に王位が回ってくる可能性を考え、より確実にしたいのであれば‥‥‥」

「まずは、一番弱そうな相手として、妹を狙ってもおかしくもない」


 何しろ、王子たち3人が割と戦闘向きというか、実力がある人たちとは言え、第1王女に関しては職業は父親である国王と同じ『遊び人』であるため、身の守りに関しては他よりも薄い。


 また、王女という立場上、他国へ嫁ぐ可能性など政略的に動くこともあり、そのあたりを考えると別にいてもいなくても良いと考えるような人もいるのだ。


 実際のところ、そう言う考えは王家には無く、本当に実力主義的なところがあるのだが…‥‥その従兄は、その部分を考えていない可能性もある。


「王女が若返り過ぎて亡き者になれば、他の者にも何かしらの手段で与えて亡き者にして、王位継承権を得るという事もできる」

「また、子供化させる程度であれば、成長するまでの後継人立候補して政治を手中に収めたり、もしくは無力に近い状態でもあるからこそ、自身の性癖を満たす道具として利用しようと考えたりするだろうし‥」

「どっちにしても、利益があったという事か‥‥‥‥」



‥‥‥狙ってきた相手がその従兄であると考えられるなら、今すぐにでも踏み込んでみた方が良いのかもしれない。


 だがしかし、そうやすやすとできるわけでもなく、一応王家の血筋でもあるので、下手をすると権威的な部分で他の貴族に攻撃されたりする可能性もある。


 面子も大事だが身内が一番大事…‥‥それでも、普通に正面突破で踏み込んで、何もなかった場合は王家の方にダメージがあるだろう。



「‥‥面倒くさい、王族の闇を垣間見たなぁ」

「本当に、色々厄介なんだよね…‥‥どうしようか」

「それに、暗示をかけるような道具を持っているとすれば、また悪用してさらに手口を増やして襲ってくる可能性があるからな…‥‥」


 非常に面倒な闇というべきか…‥‥国の余計な部分に踏み込んでしまったかなぁ‥‥‥?


「でも放置はできないな」

「犯人であるとまだ決めつけにくいが‥‥‥‥これだけの証拠でも犯人としての可能性も大きいからな」


 であれば、次に取るべき行動はあるだろう。


「ならば、こちらも城から間者を忍ばせて、探ってみるべきか?」

「いや、大公爵家も動きを把握するだろうし…‥‥手の内を読まれる可能性もあるよね?であれば‥‥‥」

「ん?」


 そろってこっちに目を向けられたが…‥‥うん、まぁ、察した。


「ディー君、頼みがあるというか、人命がかかっているんだけど‥‥‥」

「もう分かった。その家を探ってきてほしいってところか…‥‥」


‥‥‥諜報を目指すのであれば、家を探ることがあるだろう。


 そして不正の証拠なども見つけ出せる可能性もあるし、将来の予行演習になるかもしれない。


 それに、一応友人の頼みだし…‥‥命にかかわることであれば、やらざるを得ないだろうからな。


「一応聞くけど、万が一俺たちがやらかした場合はどうすればいい?」

「具体的なやらかしは‥‥‥ああ、いや、でも大体予想付くからいいや。王家の方で責任をとるよ。後は‥‥‥」

「遂行後に、終わった後の褒美などは…‥‥それは、父上と要相談するか」

「それで良いかな」


 何にしても、面倒そうな闇に踏み入れてしまったのであれば、この際開き直って踏み抜いてしまえば良い。


 いや、むしろ冬期休暇中に面倒事を引き起こしてくれた礼として、盛大に木っ端微塵に粉砕すればいいだろう。





 確実に犯人と決め込んだわけでもないが、疑うべき証拠も多く、探る必要性が多いグレイドルストン大公爵家。


 そして、その犯人の可能性が最も高い王子たちの従兄に対しての調査を遂行しなければならない。


 とにもかくにも、まずは召喚獣たちと集まって、作戦会議をするべきかな‥‥‥‥


「あ、でも調査中に襲撃があるかもしれないな」

「警備を増やすけれど…‥‥できればちょっとは傍にいて欲しいかな」


‥‥‥ひとまず、チーム分けをするか。大人数で探るわけにもいかないし、万が一の戦闘時には召喚で呼び出せるから問題ないはずである‥‥‥‥

声などの証拠もあるが、きちんと確認するべきだろう。

あとは、言い逃れのできないように証拠集めとか、別件の犯罪の証拠だとか、発見できればいい。

冬季休暇中に、面倒事を持ちこんでくれたお礼はたっぷりとしないとね‥‥‥




‥‥‥あと、王城から離れるから、第1王女を守れるようにしないとな。王城の警備とかを増やしても、また暗示などでわざわざプロなどを雇って来られても困るんだよなぁ。

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