17 代償は大きめに
就活が、割とマジで、忙しい
‥‥‥でも書きたくなってしまう。
捕縛された、タンクマンたちを操っていた元凶。
少々手順を踏み間違えたというか、ノインがやらかしたというか…‥‥何にしても、とりあえず供述できる状態となり、生徒会案件という事もあって、会長たちも立ち合いう中で、事情聴取を行った。
そして、結果としては…‥‥
「犯人の詳細は、エルドリック男爵家の次男レタガー。職業は『錬金術師』であり、人の操作には自作の洗脳魔道具と呼ばれるものを使用したのか…‥‥」
「惜しいね。結構難しい道具でもあり、顕現して間もないのにそこまで作れた時点で才能はあったのだが…‥‥それを犯罪面の方へ移してしまうとは嘆かわしい事だ」
報告書をノインがまとめ、改めて生徒会のこの面子で内容を確認しつつ、相手のやらかしたことに溜息を吐いた。
今回のノインスカート捲りのための人操り事件‥‥元凶は、そのレタガー(元男)である。
錬金術師という職業は、顕現する職業の中でもやや特殊な部類であり、努力し、研鑽を積めば、それこそ素晴らしい魔道具などを製造できる職業なのだとか。
そして、その作れる道具の中にはゴーレムの類もあるらしい。
元々、自然発生、召喚士が召喚したもの、人造物という者があるゴーレムの中で、その人造物系統を作れるのが錬金術師。
そして今回、そのレタガーとやらはゴーレムづくりに並みならぬ執着を持っていたらしい。
「過去の記録を洗い出してみたところ、男爵家は元々侯爵家でしたが、このレタガーのせいで爵位を下げる羽目になったという例がありまシタ」
何でも、幼少期に公爵家の娘に対して色々とやらかそうとしたらしく、まだ幼いとはいえ極刑手前なことだったそうで、なんとか再教育の名目なども立てて、爵位を落とし込むことで収めたらしい。
つまり、その時から問題児であり、再教育してまともにするはずだ…‥‥
「ですが、教育は意味をなさず、見せかけでごまかしていたようデス。そのため、学園で職業が顕現した後にやらかす可能性があったそうですが‥‥‥それは現実となりまシタ」
適性検査によって、彼が得たのは錬金術師。
その錬金術師という職業柄、様々な魔道具を作れるという事で、その悪用を考えていたらしい。
具体的には、モテる道具とかそう言う類だったようだが‥‥‥その後に、ディーが異界の召喚士となり、ノインを召喚してからすぐさまその考えを切り替えたというのだ。
「俺の召喚を見て、切り替えた?」
「そうデス。まぁ、元々の考え自体が色々と愚かでしたが‥‥‥このレタガーとやらは私がメイドゴーレムだということを知り、錬金術で作られるゴーレムの可能性に目を向けたそうデス」
「そこまでいうと、もう大体見当がつくよね。彼女のような綺麗なゴーレムがいるのであれば、そのようなモノを作りたい‥‥‥そう考える輩がいても、おかしくは無いね」
グラディの言葉に、全員同意する。
「ですが、試行錯誤を繰り返すとからないいのですが‥‥‥どうもその作業工程を嫌い、手っ取り早く本人、つまり私を調査して、ある程度省こうとしたようなのデス」
ノイン自身の調査。どのような構造なのか、どのように動くのか、様々な事をレタガーとやらは調べたかった。
だが、正面から頼みこもうにも、その頼むような伝手もない。
かと言って、面倒な試行錯誤をやるのは嫌だと考えた結果…‥‥他人を利用して、調べる事を考え付いたのだ。
「それの何をどうしてスカート捲りをするために、人を操ったのか…‥‥」
「元々は、そうではなかったそうデス」
その試行錯誤の過程を省くために、他者を利用して調査を考え付いたのは良い。
とはいえ、頼む手間も面倒なので、いっその事操って遠くから観察すればいいという結論にたどり着いたようだが…‥‥その操るための装置を作るぐらいなら、普通に頼んだほうが良かったような気がする。
何にしても、操ってノインを襲わせ、色々と観察して調査しようと考えていたそうだが‥‥‥そこに、思わぬ誤算が出たらしい。
「本来であれば、スカート捲りどころか、私自身を襲撃し、それこそ性的暴行を加えさせようと考えていたそうですが‥‥‥その人を操る道具とやらに、大きな欠点が生じたそうデス」
「その欠点は?」
「確かに、『襲わせる』という部分に関しては成功しまシタ。しかしながら、その手法が個人の心の赴くままに‥‥‥つまり、道具の使用者の思惑どおりにはいかず、ややズレた方向で操ったそうなのデス」
「なるほど‥‥‥本当は衣服すらも剥ぎ取るような物を考えていたはずが、タンクマンたちを操った結果、その思考とは裏腹にスカート捲りに至ったという事なのか」
「ハイ」
なんだ、そのばかばかしい道具。
しかも、タンクマンたち側に調査して詳細を聞いて、照らし合わせてみると、その道具の本当の性質が判明した。
要は、命令通りに動かしつつも、心の奥底に隠したものを露出させ、影響を与えてしまう‥‥‥願望性癖露呈機となったということだ。
タンクマンたちはドMではあるが、一応それなりにわきまえる事もある。
だがしかし、彼らの心の中では常に嗜虐などを求めており、その中にスカート捲りをして女の子にボコボコにされたいという欲望があったそうなのだ。
‥‥‥あ、これタンクマンたちも情状酌量の余地がない奴だ。操られていたとはいえ、そんなことを心の中に隠していたなら、それを実行しただけだもん。
「私自身としては、データを提供するようにと言われましてもできないんですけどネ」
「そうなの?」
「ハイ。ご主人様の命令があったとしても、自己修復まではできるのですが、詳しいデータはブラックボックス化‥‥‥つまり、製作した本人以外には閲覧できないようにされており、調べようにも隠蔽が厳重に掛けられているのデス」
真正面から頼み込んだとしても、結局は彼女の自身でも構造の把握はできていないし、襲撃して分解したとしても重要な部分などは絶対にわからないようにされているなのだ。
「あー‥‥‥つまり、今回のそいつは骨折り損のくたびれ儲けというやつか?」
「そういうことになりマス。しかも、潰れましタシ」
その言葉に、この場の男性陣一同、レタガーに同情を覚えた。
襲撃してきた他の奴らはまだよかったのだが‥‥‥いかんせん、打ちどころが悪すぎた。
彼は既に、男としても終わり、性別を変えられるわけでもない。
しかも、人を操るという事もやらかしているので…‥‥
「職業封印に加え、退学も妥当だったが‥‥‥流石に、男という立場としては同情をせざるを得ないのだが‥‥‥」
「少なくとも、もう二度とやらかさないだろうなぁ‥‥‥」
幸いというか、彼は男爵家の次男。跡継ぎは長男がいるらしいし、元々は職業を利用して独立させようとしていたらしいので、領地に関しては問題ない。
だが、何がとは言わないが、潰れたことで、色々と悲惨過ぎるのである。
「職業そのまま、退学措置無しでもしばらくは地獄だろう。後をどうするかは、彼自身に任せようと思うが、どうかな?」
「まぁ、大丈夫そうなら放置でいいかな…‥‥人を操る行為は二度とさせないという事で、もう一度やったら完全に処分でお願いいたします」
「私的には、徹底的にと考えてましたが‥‥‥まぁ、やらかしたら今度は人生を終わらせるだけですので、それで良いですかネ」
満場一致で、レタガーに関しては放置という事になった。
だがしかし、彼には、いや、もはや潰れた男には、この先辛い人生しかないだろう。
タンクマンたちからは、灰色の青春の元凶としてボッコボコにされるだろうし、二度と男として戻れない状態でもある。
自業自得で逆恨みをしてきても、それはもはや覆しのないことであり、二度と戻らない人生。
できれば、終始穏やかに新しい道へ行って欲しいのだが…‥‥
「ある程度、人生細工もできますが、どうしマス?」
「じゃあしてあげて。男として同情するからね…‥‥」
‥‥‥その後、学園の男女比の割合に、新しいカテゴリーが追加された。
そのカテゴリーは増減したりもしたが、差別もなく、むしろすがすがしい人が増え、将来的に各地で酒場などを開き、それなりの人気を要するものになったらしい。
レタガーとやらも人生を修正され、問題行動が無くなり、後日に感謝の手紙がその男爵家から送られてきたのだが‥‥‥正直、複雑な気分である。
‥‥‥ああ、おとがめなしという訳にもいかないが、少なくとも人生を潰したからなぁ。
別のものも潰れたようだが、自業自得であり、それ相応の代償なのだろう。
というか、さらりとそのカテゴリーの「増減」ってあるが、何があった?
‥‥‥それは、今後のお話ゆえに、今は語る事ではなかったりする。