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174 人間、やる気出せば何とかすることもある

‥‥‥精神って、追い詰められるほど力を発揮することがある。


 根性論とかは暑苦しい言い方かもしれないが…‥‥まぁ、それに似た類があるのは間違いないだろう。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「っと、そこまでデス」


 放課後、リハビリの一環として全速力で走らされたが、ようやくストップがかけられた。


「おお、マイロードの速さ、中々のものになっていたな」

「早い、結構良い」

「タイムを見る限り、治療前に比べて飛躍的に伸びてますし…‥‥これなら、完治したとも言えるでショウ」

「ってことは?」

「これにて、リハビリは終了デス」

「よっしゃああああああああ!!」


 ぐっとこぶしを握り締め、思わず俺は歓喜のあまりにそう叫ぶ。


 ひと月はかかると言われていたが、根性で2週間以内に終わらせてみせたのだ!!




 体が自由に動きづらかった日々も何とか乗り切り、今はようやくまともに体が動く。


 それでなおかつ彼女達の補助が無くても大丈夫な状態になり、これで‥‥‥‥


「やっと、風呂に一人で入れる‥‥‥‥」



 カポーンっと、改良が進んでいる男湯の中で、俺は一人、感動しながら入浴していた。


 なお、流石に完治したということで、本日からはノインたちは女湯の方に移動しており、こうゆっくりと広い風呂に浸かれるのは久しぶりであろう。


 あと、先日の騒動の教訓から装備入り腕時計(改)を付けているが…‥‥それでも、ゆったりと落ち着けるのはなんという平和だろうか。


 









「んー、近辺に不審な動きは無しデス」

「完治は嬉しいのですけれども、マスターと一緒じゃないのは残念ですわ」


 心の底から平穏を味わってシアンが感涙の涙を流しているその頃、女湯の方ではノインたちが入浴していた。


 リハビリと体調を気遣う名目で共に入っていたはずだが、完治を持ってそれができなくなったことに、少々嘆く。


 まぁ、彼女達としても自分たちの主が治ったのは嬉しいことなのだが…‥‥それでも乙女心的には複雑なところ。


 できればこのまま慣れてもらって、何食わぬ顔で共に入れていればよかったのだが…‥‥残念ながら、そううまくはいかなかったようである。


「何にしても、無事に治ったことは良いでござろうよ。色々もったいないような気もするでござるが、健康第一でござるしな」

「今後も同様の事が起こらぬように、皆で気を遣えば良い話しではないか」


 ルビーとレイアがそう口にするが、それでも惜しかったものは惜しい。


「そう言えばでありんすけど‥‥‥ノイン、ちょっと聞いて良いでありんすか?」

「何かありますカ?」


 ふと、リザが何かを思い出したかのように問いかける。


「いや、あの最後の方のリハビリの全力疾走でありんすが‥‥‥気になったのでありんすよ。人間の記録って、あそこまであったでありんすかね?」

「記録、確か100m走、5秒」

「…‥‥言われてみれば、確かにちょっと早いような気がしますネ」


 リゼに続けてアナスタシアが述べた記録に対して、ノインが少し考えこむ。


「いえ、そもそも少し全体的な身体能力だけを見れば、非常に高くなっているというか…‥‥やはり、副作用が出ていたのでしょうカ」

「副作用じゃと?何か変なものでもあったかのぅ?」

「まぁ、やり過ぎた部分の意味ですガ」




‥‥‥元々ディーの体自体は、普通の人間。


 なのであの時、ディーに組織の者が薬が打たれた際に、普通は持つはずはなかった。


 いや、良くて廃人、悪くて死亡であったが…‥‥そうなる前に、彼女達は徹底的な治療を行ったのだ。


 それこそ体を細かく分解し、徹底洗浄および治療薬の投与や各々の持てる最高の治療手段を利用して、できるだけ完璧に直したはずだったのだが…‥‥


「それでも、ご主人様の髪や瞳の色が変化したように、完全ではありませんでシタ。各部位も少々変貌していたようで、それでも通常の者とある程度変わらないはずでしたが…‥‥リハビリや治療に使った薬品の効き目が、効きすぎたようデスネ」

「という事は、どういうことなのでありんすか?」

「モンスターに進化などがありますが…‥‥多分、それに似た作用が起きたのかと思われマス」



 要は、全員で協力して取り組みまくった結果、やり過ぎたという事である。


 まだ人間を辞める範疇ではないようだが、それでもちょっと踏み外させてしまったという事のようだ。



「‥‥‥えっと、それって、大丈夫?」

「大丈夫…‥‥だと思いたいですネ。普通のことぐらいであれば、おそらく問題ないかと予想できマス」

「普通じゃない範囲だと、何があるんでありんすか?」

「そうですネ‥‥おそらくは、召喚に影響が出ると思われマス」

 

 その言葉に、全員何が起こりうるか想像し…‥‥頭を抱え込む。


 自分達も召喚獣である身なのだが‥‥‥‥ディーの召喚は少々どころかとんでもない事をよく理解しているのだ。


「儂なんて、元骨みたいな体じゃったのに、召喚の契約で肉が付いたしのぅ」

「グゲェグエェ」

「わっちなんて、元蛇で、それがこういう人の姿になったのでありんすが‥‥‥」


 元の姿はそのまま組よりも、元の姿から大きく変貌した組はそれが良く理解できている。


 なので、またディーが召喚した際に、何が起きるのかも予想が付きやすいのだが…‥‥その召喚される存在が想像しにくいレベルになりそうなのだ。


「とはいえ、マイロードは私を最後に呼んでいるだろう?人数的には、これ以上召喚もないとは思うのだが‥‥‥」


 レイアのその言葉にそれもそうかと思う一同ではあったが、それでも不安はたっぷりある。


 確かに今は、ノイン、カトレア、ルビー、ゼネ、リリス、リザ、アナスタシア、レイア、と大所帯であり、これ以上召喚する必要もないかもしれない。


 けれども、ディーの事だしこれで終わりそうな気もしないのだ。


「…‥‥むしろ、召喚なんて必要ないほどに、各々が鍛えればいいとは思うのだが」

「いえ、ですがこれでも万全でもないですし…‥‥場合によっては増える可能性も非常に大きいデス」

 

 そう考えると、安心できないような、戦力が増えるのはディーの安全につながるような、人数が多くなると独占しづらくなるというか‥‥‥‥様々な複雑な感情が入り混じり、全員黙り込んでしまうのであった。



「ぶえっくしょい!!‥ん?なんか噂でもされたかな?風呂場なのに何でくしゃみが…‥?」


 そんな事も知らずに、ディーはのんきに平穏な風呂でゆっくりと浸かっているのであった‥‥‥‥






完治祝いが一人風呂だが、それはそれで非常に心安らぐ。

メンタル面で非常に大変ではあったが…‥‥何とか乗り切った。

危く一線を越えかねなかったが、これはこれで良いだろう…‥‥




‥‥まぁ、平穏はそう長くは続かないけれどね。

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