164 手を回しつつ回されつつ
‥‥‥テスト期間も終了し、本日はゆったりと休める休日。
テストの点数自体は高得点ではあったが、取りたくなかったものまで高得点だった悲しみはある。
だからこそ、その悲しみも癒す意味で…‥‥
「‥‥‥街中を巡って気分転換を考えていたけれども…‥あっちもこっちも工事をしているところが多いなぁ」
「地下の方の工事が多いようデス」
ドガガガッと魔法で土を削っていたりする工事風景が目につきやすい。
どうやら仮面の組織フェイスマスクの対策として、地下に色々と作られることが多かったからこそ、その地下への対策を今、国がとっているそうなのだ。
可能な限り掘り進み、あちこちを整備しあい、地下の商店街などを作り出し、各都市での新しい観光資源としての計画が立ちつつ、裏では地下調査を行うことによって、面倒ごとが出る前に未然に防ぐという目的があるらしいと、先日王子たちから聞いた。
なお、効果は一応あったそうで、いくつかの都市で発覚し、事件が起こる前に制圧はできたらしい。
「それで、ある程度防げればいいけれども‥‥‥」
「まぁ、いたちごっこになる可能性もあるじゃろうなぁ。どのような目的で動くのか把握しきれぬところもあるが、技術力があるのは面倒じゃからな」
抑制などになるかもしれないが、より深い場所に作られるとか、あるいは堂々と建物の中に作るとか、色々な手段も考えられる。
一度の対策に2手3手先を読み合う必要があるだろうが…‥‥それは国の仕事であり、俺たちには関係ない。
そう思いつつ、街中を巡るが、実は本日は俺たちだけじゃなかったりもする。
「おー‥‥‥こ、これが今首都内で流行っている、夢の超巨大パフェかニャ!!」
「食べ応えがありそうでありんすなぁ」
「というか、喰い切れるのだろうかコレ」
都市内のちょっとした有名店にて、大きなパフェに目を輝かせているのはルナティア。
森林国からの留学生でもあり、何かと縁があった彼女と今日は行動を共にしているのである。
‥‥‥というのも、今日は彼女は友人たちとこういう店を巡る予定だったらしいのだが、友人たちが虫歯になったらしい。
歯を削るとか薬草で痛みを和らげるとか様々な治療方法はあるが、全員そのせいで今食べることができず、悲しんでいたのである。
なので、こちらとしても気分転換に出かけるだけなので、一緒に遊びに行こうかと誘ったわけなのだが…‥‥
「‥‥‥パフェ、甘い。美味しい、でも量‥‥‥多かった」
「拙者もちょっと撃沈でござる‥‥‥」
「そもそも俺は、そこまで甘いものは好きじゃなかったかも…‥‥」
金ならそれなりにはあるので、全員頼んだのは良いものの、パフェの量を見誤った。
食べられそうでありつつ、胃の限界を試す量だこれ…‥‥しかも甘いのが多いからちょっときつい‥‥‥
「んー、儂は平気じゃな。こういうのは別腹じゃよ」
「私も平気だ。本当は野菜とかの方が好きなのだが…‥‥ないものは仕方が無いか」
「この程度、簡単にエネルギー分解できますし問題ありまセン」
何かと皆、胃の空き容量に差があるようだ。
撃沈組もいるが、一応食べきれている者も多い。
「グゲェグゲェ」
「お腹のツボで、いくらでも食べられますわね」
一部完全なズルをしているけどな。箱に入れたり、ツボで消化を早めたり…‥‥良いのかそれで。ノインの方もちょっとアレだが‥‥‥うん、競い合っているわけでもないし、ズルともいえないか?
何にしても、動けなくならないようにリザのツボ押しのサポートも受けて、なんとか俺達は食べきった。
味は悪くなかったし、今度は普通サイズのを食べようと心に誓ったけどね。何であれ、全部普通に胃に入る人たちがいるのか、本気で不思議に思う。
「でも美味しかったニャ。森林国はデザートはそうないからニャァ」
「そういうものなのか?」
「そういうものなんだニャ。エルフとかドワーフとか、亜人種族が多いと、食文化で問題が起きてしまう事もあるからニャ‥‥‥」
やれやれと言うように溜息を吐くルナティア。
森林国は森林国で、色々と大変なことがあるのだろう。
「他種族が多くいる分、議会とかでしっかり話し合われるけれども、不満があったりもするからニャ」
「まぁ、多くいればその分あるだろうしね。‥‥‥こっちはそこまであるわけでもないけどな」
ここまで行ってふと思ったが、森林国ほどの規模ではないとはいえ、こちらも種族が違うのが多い。
ゴーレムに吸血植物、ドラゴン仲間にアンデッド、宝箱、蛇、雪女、ケンタウロス…‥‥考えてみると、何かとバラバラではある。
「それでも、仲良くやれているのが不思議だな」
「言われてみれば、ディーのところの召喚獣たちもそれなりにバラバラな割には、仲良くしていたニャ」
種族は違えども、よく的まとまっているものだと改めて思う。
ノインとカトレアのように仲が悪い同士もいるが、それでもそこまで衝突し合わずに済んでいるのはある意味奇跡に近い。
「儂も一員じゃが、考えてみれば皆まとまっておるのぅ。各々出自も召喚された理由なども異なるのに、なぜこうもしっかりまとまっているのじゃろうか?」
「マイロードの召喚獣である、というくくりが存在するからではないか?」
「それでも、こうやって一緒にいても違和感がないのは不思議でござるな」
っと、俺たちの会話を耳にして、ゼネたちも各々口にする。
まぁ、互に衝突も特になかったし、問題がないならそれでいいか。
「んー、考えても分からないこともあるし、ディーのところは不思議がいっぱいニャ」
考えても分からないなら別に良いかというように、ぐっと体を伸ばし、ルナティアはそうつぶやく。
「とりあえず、まだ楽しめそうなところもあるのニャけど‥‥‥あ、そうだ!せっかくだし衣服のほうも買いたいのがあるから、見てくれる人がいた方が良いし、一緒に向かうのニャ!」
「私は作れますが、既製品のサンプルも欲しいですからネ。ご主人様、どういたしましょうカ?」
「じゃぁ向かうか?服屋ってどこだったかな?」
「あっちの道に、確かあったはずでござるな。ああ、でも店を間違えるとヤヴァイのもあったでござる」
「タンクマン御用達の、滅茶苦茶怪しい店だったですわね」
「何その絶対に入りたくない店は」
何にしても、難しい事を考えるのも大変だし、今日は頭空っぽというか、皆で楽しんだ方が良いだろう。
そう思いつつ、次は服屋へ向けて、俺たちは歩みだすのであった‥‥‥‥
…‥‥が、この時俺は抜けていた。
衣服に関しては、大概男性の方は早く買い物が済むことを。
召喚獣たちもモンスターとは言え、感性は女の子と変わらないところがあるという事を。
そして、異性から見ての品評を行うには俺しかいないことを。
とりあえず、色々と大変な目にあうが…‥‥俺はすっかり、その可能性が頭から抜けていたのであった…‥‥
「うーむ、私は鎧だけでいいのだが…‥‥防具店とかあったはずだ」
「まぁまぁ、せっかくだしレリアもやってみれば?」
いつも鎧を着ている彼女だが、たまには普通の衣服を着ても違和感ないとは思う。
「マイロードがそう言うのであれば、従うが…‥‥ううむ、可愛い衣服とかは無縁だから、こうゼネのような男装できる類が欲しい‥‥‥」
「無理だと思うのじゃが。わっちの方はこれだから良いけど、お主じゃと…‥‥あれ、なんじゃろう、なんか悲しくなってきたのじゃ…‥‥」
「あたしより上なのに何で泣くのニャ?‥‥‥あ、なんかこっちも悲しくなってきたのニャ」
「拙者は気にもせぬが…‥‥あそこまであればいいなぁと思う事もあるでござるよ」
‥‥‥アレ、なんか悲しみの連鎖招いちゃった?
皆の衣服を買うのもいいけど、考えて見ればこの状況ってどうなのだろうか?
うーん‥‥‥目線がビシバシ刺さっているのを気にしないでいるけど、やっぱり痛い。
諜報になったら、目立たないような策とか必要かもなぁ…‥‥
‥‥‥なお、どこがと言わないが、初期設定構想だとルビーはノインカトレアより下ノインより上の位置の予定だったが、機動力を考えている間になんかこうなった。
ドラゴンの仲間がDとかそう言うのはここだと無いっぽい。まぁ、本人はそこまで気にすることもないようでもあるが…‥‥落ち込んでいるところもあったし、やっぱり少しは思うところもあるのだろう。
そして某メイドだと削ぐ可能性が非常に大きい光景が多い。うん、まぁ流石に他の作品まで出てくることはな、(…‥‥某進撃の武器のようなもので、ズバッとやられた形跡がある)。




