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162 黙々とやっていくけれども

…‥‥身体計測なども終わり、召喚士学科のテストも一通りこなし終え、後は一つだけになった。


 何かと数はあるが、全体的に見れば前学期よりも少ない方であり、採点する教師陣の負担を減らしつつ、より向上した点が見えるように配慮されたものばかりだっただろう。


 そして今、残す一つのテストは…‥‥


「…‥‥ダンジョン内で、『最大火力テスト』‥‥‥か」



‥‥‥テストの予定表意を見て、俺はそうつぶやいた。


 召喚士たるもの、召喚獣たちの攻撃力を把握する必要性はあるだろう。


 いざという時に逆転できるような手段としても必要になる事もあるだろうし、全力を出した際の力などもどの程度あるのか確認するという意味合いもある。


 あと、万が一召喚士が召喚獣を利用した犯行をした際に、取り押さえる際にどの程度の戦力が必要になるのか、という事も兼ねているらしい。


 まぁ、前学期の中間テスト時にもあるし、最大火力の測定とは言え、ダンジョンの崩壊でもしたら意味もない。


 ゆえに、ちょこっと加減して行われるはずなのだが‥‥‥‥




――――キュィンキュインキュインキュイン!!

「エネルギー充填、89%‥‥‥ダンジョンの崩壊は、これでギリギリ免れますかネ?」


 ノインは何やら、両腕を合わせてバカでかい大砲のような物に変形して構え、


―――――キィィィィィン!!

「んー、地下だけに光量不足ですわねぇ。まぁ、この程度であれば問題ないですわね」


 カトレアは大きな葉っぱを周囲一帯に茂らせて光球を作り、


―――シュゴォォォォオォ!!

「ごぼもごがぼござぁ(このぐらいの熱量で、崩壊しないはずでござるかな?)」


 ルビーは口いっぱいに炎をため、ちょっと離れた位置に集中して青白い炎に変えて、


――――フィィィィィィン!!

「儂のは攻撃向きじゃないからのぅ、死の霧ではない別のこの闇の魔法が良いかもしれぬ」


 常識人枠に辛うじて入りそうなゼネは真っ黒なヤヴァイ珠を作り出し、


パキパキパキパキ‥‥‥

「グゲェ、グゲェ‥‥‥グゲェ?」


 リリスはどの程度の威力がちょうどいいのかわからないようで、とりあえず大きな宝石を精製し、


シュッシュッシュッ!!

「わっちたいした攻撃手段ないでありんすからなぁ…‥‥」


 リザの場合はシャドーボクシングで軽くマッサージ風に指を突き出し‥‥‥あ、ここまでの時点で頭が痛そうな担当員たちに施し、


ヒュォォォォォォォォォォォォォ!!

「冷凍、周囲凍結、氷結改造…‥‥」


 なにやら薄暗い地下の改造を目論むアナスタシアが周囲をカチッコチに凍らせていき、


ドゴンドゴンドゴンドゴン!!

「んー、私の場合何が良いのかわからん!!」


 レイアが槍で次々と壁を突き刺し、無駄な破壊をせずに綺麗な穴をあけていく。



「‥‥‥どうしようかなぁ、このカオス」


 取りあえず、ノインとカトレア、ルビーの攻撃は本気でシャレにならないだろうし、ゼネの方は元聖女という部分を思いっきり嘆かせ、リリスに至っては加減の調整、アナスタシアは企み放棄、レイアはもうちょっと変えようがあるんだよなぁ…‥‥


「というか、リザ。お前だけ一番平和で良かったよ」

「何がでありんすか?」


 いやまぁ、そのツボ押しの腕前はシャレにならないレベルだけど、破壊力とかだとこの中で一番平和な事に、俺はほっとするのであった。










 とにもかくにもテストをなんとか全て終え、本日は終了。


 少々ダンジョンの最下層まで当分使えない(・・・・・・)状態になったが、ギリギリ崩壊を免れたのは御の字と言ったところだろうか。


「で、ついでに途中で威力の張り合いの喧嘩になった二人には、装備ガントレットの強烈なげんこつでどうにかなったし、結果までは気楽にできるかなぁ…‥‥」

「あれは危なかったでござるからな‥‥‥全速力で逃げれたでござる」

「儂の方も、あれは管理している方じゃったから権限でどうにか防ぎきったが、下手したら潰れていたのじゃが」

「命の危機は、身内、原因」


「「すいません…‥‥」」



 全員からジトっとした目で見られつつ、頭にでかいたんこぶを作ったノインとカトレアがうなだれる。


 うん、無事に終わるかと思った矢先に、まさかの喧嘩である。


 平和そうに見えて、勃発的に喧嘩されたりするし、そこはどうにかならないものだろうか。


 命があったのはまだよかったが…‥‥装備をこういう形で使用したくなかった。


 

「ノイン、カトレア。喧嘩するのはもう止めるのをだいぶ諦めるとして、できればもうちょっと周囲を気遣ってくれ。今回止めなかったら俺たち終わっていたんだぞ」

「すいません、ご主人様‥‥‥つい、カッとなってしまいまシタ。ご主人様に害しかけたメイドは役立たずデス‥‥‥」

「すいません、マスター…‥‥わたくしのほうも、少々やり過ぎてしまいましたわ…‥‥しばらく血も抜きで良いですわ…‥‥」


 しょぼーんっとうなだれつつ、元気なく彼女達はそう答える。



 流石にここまでしょげられると、ちょっと罪悪感が…‥‥いやいやいや、今回は割とシャレにならなかったから、まだ許さん。


 一瞬こちらが目を向ければ、物凄くウルウルと許してほしそうな目で見られたが、ぐっとこらえて目を背ける。


 見た目美女だけにその容姿攻撃はずるいが‥‥‥‥


「ダーリン、意志強いでありんすね」

「一応、命の危機だったからな‥‥‥」


 ぷんすかしつつ寮室へ戻る中でそう言われたが、流石にあの状況になったら誰だって怒るだろう。


 というか、加減している状態で全員ぶっぱなしたら、結局威力はそれぞれのが合わさる可能性とかも考慮してなかったこっちも悪くは思えるが…‥‥それも考慮してほしかったというのは、無理もあるかもしれない。


 うん、深く考えないようにしよう。


「そもそも、あのダンジョンを崩壊させかけるほどの加減の時点で、滅茶苦茶危いとは思うのじゃけどね」

「それも考えない方が良いだろうな」


 全員の全力を出すような事態は、今後できる限りさせないようにしたいという想いも強まった。


 ゲイザー騒動時の哀れになる事もあったし、流石にそうないとは思うが‥‥‥全力を出させるような事態は避けたいとも思えるだろう。


 後は、あのテストの結果について採点する教師陣の胃などを心配に思いつつも、俺たちは自室へ戻るのであった‥‥‥‥







‥‥‥ディーが召喚獣たちの全力を出す事態を絶対に避けようと、物凄く心に決めている丁度その頃。


 色々とやらかされたいのか…‥‥その事態を引き起こす可能性がある者たちが動いていた。


「この間の薬品は失敗だったようだな」

「まぁ、無能の処分及び実験台としては良いサンプルだったかもしれん」


 誰も知らない、とある場所。


 そこに、仮面をつけた者たちが集まっており、先日の鼻でか怪人の出身組織‥‥‥もとい、仮面の組織フェイスマスクのものたちは話し合っていた。


「まぁ、元々が実験台予定の者たちだからこそ、失ったところで痛くもあるまい」

「しかしなぁ‥‥‥こういう実験のためだけに、わざと無能過ぎる奴を引き入れるのもどうなのだろうか」

「やらかされたらこちらにも被害が出るかもしれぬが、実験台としては優秀であるがゆえに、処分のしやすさからも言っても、問題はあるまい」


 そう語り合いつつも、その場の雰囲気は重い。


 それもそうだろう。わざと実験台にするために無能を使ったとはいえ、その無能の成り果てた怪物に対して、この組織を以前から邪魔する者たちによって排除されたのだから。


 良いデータが取れたとはいえ、どさくさに紛れて亡き者になってほしかったのだが‥‥‥無能が無能過ぎて、何もできなかったことに、腹を立てているのだから。


「そもそも何だ、あの召喚獣の多さは!!普通の召喚士の持つ量とはすでにかけ離れているではないか!!」

「以前から確認され、排除対象にはなっていたが…‥‥あの薬で怪物と化した無能が無能とはいえ、実験薬自体は相当自信があるはずでしたが…‥‥簡単にあしらわれると、ちょっと残念に思いますね」


 だぁんっと思わず机をたたく者もいれば、冷静に分析してちっと舌打ちをする者もいる。



 彼らのいら立ちも、無理はないだろう。


 実験台が色々ダメすぎる人間で、元から使用する目的で採用し、わざと動かしていたとはいえ、投与した自信作をまさか倒すとは思っていなかったのだから。


 技術力も進歩しているはずなのだが‥‥‥いかんせん、彼らの目的に思いっきり邪魔になるであろう人物が討いるのだから。


‥‥‥なお、何も今回の邪魔だった人物に限らないのだが、対象はそれなりに存在していたりもする。


 けれども、一番排除すべきものとして…‥‥


「‥‥‥やはり、まずはこの者をどうにかしないといけないか」

「ディー・フォン・ゼロス‥‥‥元は平民でありつつ、功績によって城伯になった、この若造か‥‥‥」


 彼らの手元にあるのは、ディーに関する資料。


 ある程度新しい情報とは言え、それでもその内容の濃さに、頭を抱えたくもなる。


「‥‥‥城伯になったとかはまだ良いとして、召喚士にしては召喚獣が多すぎだろ」

「どれもこれも規格外というべきか…‥‥人型が多いのは何か意味でもあるのか」

「それでいて、本人に特に負担とかある様子もなく、いや、胃をたまに押さえるような部分もあるからストレスをためているかもしれんが、滅茶苦茶だろう」

「ついでに、何やら未知の道具を装備することもあるとか…‥‥先ずそれはどこから手に入れたんだ?」



 色々と言いたいことがあるが、全会一致で言えることとすれば、どう考えても非常に厄介極まりない相手。


 まだ平民時であれば、何かあろうともこの者に特に手を出さなければ動くこともなさそうではあったが、城伯という立場に挙がった時点で、国の命令などで動く可能性を考えると、組織にとっての危険度は跳ね上がっている。


「亡き者にしたいが、暗殺手段がとれん。各国で密かに諜報員などが送られているようだが…‥」

「夜な夜な、召喚獣たちが自主的に動き、排除しているらしいからな‥‥‥闇討ちはできまい」

「留学生の中には潜り込ませた構成員もいたはずが‥‥‥」

「いつの間にか、送還されていたんだよなぁ…‥‥あの学園、学園長の方も中々の曲者だから当然と言えば当然か」


 打つ手がないというか、隙が無さすぎるというべきか、それとも相手の守りが過剰すぎるというべきか。


 あるいはその全部なのかと言いたくなるような気持になりつつも、それでも排除する手段がないわけで得もない。


 いや、考え方を変えればまだいい方法もあるだろう。


 ただ単純に、亡き者にするだけではなく、そのものの召喚獣たちなどを考えると、引き込めた方が良い可能性がある。


 とはいえ、引き込む方法などは…‥‥


「薬剤投与は、今のところ駄目そうだな…‥‥実験体である程度従わせることに成功したが、それでも召喚獣たちの方が動かなくなる可能性もあるし…‥‥」

「手っ取り早いのは、洗脳かハニートラップか…‥‥後者は無いな。召喚獣たちの姿を見て、ハニートラップ担当の者たちが速攻で辞職願を出すほどだったからな」

「となると、洗脳が良いか‥‥‥一口に洗脳と言っても、暗示、催眠術、薬物…‥‥ううむ、どれが良いのだろうか」

「そもそもそう言うのが効く相手なのかが分からないし…‥‥もっと調べよう」


 取りあえず、当分は排除よりも引き込める方法を模索する指針を彼らは取った。


 最良の手段かもしれないし、成功すれば大幅な戦力向上も見込めるし、悪い案ではなかったかもしれない。


 けれどもそれは、とっても危険なパンドラの箱を開きかねない行為であることに、彼らはまだ気が付かないのであった‥‥‥‥




‥‥‥壊れかけたダンジョン、当分使用禁止。

学園の授業に組み込んでいたりするので、当分その代用も何とかしなければいけないだろう。

やらかした喧嘩組には、きちんとやってもらわないとなぁ…‥‥



‥‥‥いっその事、仲が悪いならそれを利用して罰に組み込んでやろうかな?

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