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157 トラップって種類が多いな

…‥‥ディーの元に届いた怪盗ボルセーヌゥからの予告状。


 あまりにも悪筆過ぎる上に曖昧過ぎる予告内容ではあったが、狙いに関してはおそらくリリスであろうというのが予想できた。


 宝箱と言えば、彼女ぐらいしかいないからな‥‥‥‥ハニートラップボックスだし、宝箱に偽装しているモンスターとしては間違ってないかもしれない。


 とはいえ、予告状では盗むとはあるが、どの様な手段で盗むのかが分からない。


 そもそも、怪盗の被害はこれまでそれなりに出ており、護衛とかも物理的に排除されたり、その盗んだものをどうしているのかという事も分かっていない。


 ということは、今回の件を利用すればその謎の怪盗の正体やアジトなどもしっかりと把握できる可能性があるということだ。



「…‥‥だからこそ、目立つ場所で、今晩待ち伏せて、素直に攫われてみるって作戦だけど…‥‥ある程度の護衛とかも用意してもらって、そこで止められないかと試すんだよな?」

「ええ、王子たちが王城の方から選りすぐりの騎士たちを用意するようデス。国にとっても、貴族相手の怪盗は問題になりますし、罠を用意していてもそれにかける前に、まずは本気で相手を捕らえる試みデス」


 盗まれてもいいように対策はしつつ、罠だと悟られないように厳戒態勢を敷いておく。


 リリスの箱の中に、トラップ専門というべきか、相手の拘束に長けたカトレアやアナスタシアを配置し、その他の面子で周囲の警戒を行う。


 主な警備・警護に関しては王子たちが騎士たちを呼んで守らせるが…‥‥怪我人が出ないようにとも一応配慮はしているようだ。




「で、盗まれた際に追いかけるために、闇夜に紛れ込めるこの服でござるか…‥‥ぴっちりしているでござるな」

「儂の幻術で隠れるすべもあるがのぅ。まぁ、これはこれで動きやすいから文句はないのぅ」

「黒い鎧‥‥‥ふむ、これはこれで中々いいかもしれない」


 追跡時に備えて、俺たちは全員黒い衣服を身にまとい、夜であれば見にくいであろう服装ではあるのだが‥‥‥俺の方は装備の改造型なのは良いとして、皆ピッチリスーツなのはどうなんだろうか。あ、レイアは黒くなった鎧か。黒騎士みたいでそれはそれでなんかかっこいいような気もする。







 とにもかくにも時間が経過し、夕日が沈んで星が出て、夜となった現在。


 場所としては、どこから来ても分かりやすいような校庭の真ん中にリリスを配置し、演習場に騎士たちが配備。


 俺たちはゼネの幻術で物陰に隠れつつ、怪盗が来るかどうか待ち伏せる。


「…‥‥思いっきり目立つようにして、周囲を守らせるのは良いけど‥‥‥果たして本当に来るのかな?」

「あ、センサーに感アリ」


 びんっとノインのアホ毛が立ち、怪盗の接近を知らせる。


 果たしてどのようにしてくるのかと思っていた中‥‥‥‥ついに、その姿を現した。




「っ、来たぞぉおおおおおお!!」


 騎士の一人が叫び、その声の方向を見ると、そこには人影があった。


 ただの人間サイズならいざ知らず、距離がそれなりに離れているとはいえ、目測でもおよそ3メートルはありそうな大男。


 ただ、その全身は真っ黒なコートで包まれており、顔の部分は…‥‥


「‥‥‥何、アレ?」

「ものすごく大きな鼻でしょうカ?」


 ‥‥‥‥顔に当たる部分には、巨大な塊が付いていた。


 それはそれは、巨大な大きな鼻であり、よく見れば頭から腰のあたりまででっかい鼻が動いている。


 バランスが悪すぎるというか、巨大すぎる鼻というべきか、ツッコミどころが大きいだろう。



「全員、かかれぇぇぇ!!」

「「「「おおおおおおおお!!」」」」


 その姿にも動じず、騎士たちはその巨大鼻人間…‥‥ボルセーヌゥと思わしき人物に向かって攻撃を開始し始める。


 抜刀し、だだだっと剣を持って振りかぶろうとする中で、ボルセーヌゥはその巨大な鼻を少し上に向けた。


ずぉおおおおおおおおおおおおお!!


「お?」


ぶんすわぁぁああああああああ!!


「「「「どわあああああああああ!?」」」」」


 なにやら吸い込む音が聞こえてすぐに、物凄い勢いで暴風が吹き荒れた。


 どうやらあの巨大な鼻で空気を吸い込み、それを一気に噴き出したようだが、その風圧が凄まじい。


 鎧でそれなりの重量があるはずの騎士たちが吹き飛ばされ、一気に蹴散らされる。


 そしてずしんずしんと進み、リリスが入ってる宝箱の方へ近づき、持ち上げた。


「ぬ、ぬすませるなぁぁぁぁ!!」

「「「『おおおおおお!!」」」」


 吹き飛ばされても抵抗は忘れずに、騎士たちは再度かけ始める。


 すると、ボルセーヌゥから再び吸引音が聞こえ‥‥‥



ぶっしゅわあああああああ!!


「と、飛んだぁ!?」

「凄いですネ、アレ」


 まさかの鼻息を下へ集中して噴き出し、その巨体が一気に空へ舞い上がる。


 そのまま鼻を噴きまくり、空の彼方へ飛んでいくのであった‥‥‥‥


「…‥‥それじゃ、追跡しますカ」

「インパクト強すぎたけど、普通に追いかけられるかなアレ?」

「あの速度なら、普通に追いつけそうだ」









ぶしゅわあぁぁぁぁぁぁっ!!


「…‥‥すごい鼻息荒いですわね」

「気が付かれてない、でくの坊。でも、鼻凄い」

「グゲェ」


 大空を舞う中、閉じた箱の内部にて、リリスたちは待機していた。


 蓋の隙間からちょっとのぞけば、そこにいたのは巨大な鼻であり、直ぐに閉じて気づかれないように声を潜めて話し出す。


「けっこう噴射して…‥‥相当な肺活量というべきかしら?でも、これはどこに飛んでいるのかしらね?」

「方角、コンパス。これ見ると、多分、そう遠くない」


 鼻息が凄まじい音が聞こえてくるが、どうやら高度を取るだけのようで、移動距離自体はそうそう遠くはない。


 箱自体が本体であるリリスにとっては、どうやら箱を閉じていてもそこは分かるようで、あらかじめ用意していた地図の上に、大体の予測進路及び距離を書き込み、位置を把握していく。


「グゲ」

「あら、高度を下げ始めたようですわね」

「ん?‥‥‥都市郊外、出てない。コレ、都市内」


 学園のある都市から離れた場所にでも出向くのかと思いきや、どうやらそうではないらしい。


 地図の位置を見ると、どうやら都市内にある貴族街と呼ばれる場所…‥‥主に、各貴族の別荘や拠点が集まっている場所へ着陸するようである。



「もしかして、この怪盗のアジトとかそういうものかしらね?」


 っと、鼻息が収まり、どうやら無事に着陸したらしい。


 ずんっと怪盗の重い体の着陸音が聞こえた後、どうやら歩み出したようだ。


「グゲグゲェグゲェ」

「貴族家の屋敷内へ、ですわね」

「中身確認されてない。普通するはずだけど…‥‥もしかして、この怪盗、頭悪い?」


 色々と疑問に思いつつも、どうやらしっかりと運び込まれているようだ。


 邸らしい場所へ入り、色々と部屋を進み、地下を降りるなどの行為を繰り返した後…‥‥ようやく、目的地へ到着したらしく、箱が降ろされた。



「まだ出るタイミングではありませんわね…‥‥状況は?」

「グーゲ」

「待機状態?誰かを待っているのかしらね?」


 少々待つこと十数分。


 ちょっと時間かかり過ぎじゃないかと思い始めた頃合いで、箱の外からの声が聞こえ始めた。



「おおおお!!これまた豪勢な宝箱だ!!よく盗み出したな!!」


 声の主が何やら喜ぶように言っているようだが、どうやら怪盗の雇い主と推測できる。


ぶしゅわぁぁあっぁあ!!

「おおう!やっぱり鼻息はすさまじいが‥‥‥その風圧でまた警備とかそう言うのを吹き飛ばしたのだろう?本当に使える奴だなお前は!!」


 ばしばしと、褒めて叩いているような音が聞こえるが、ちょっとうるさい。


「リクエスト通りに、これまでの宝を収納するのにふさわしい宝箱…‥‥確かにこの装飾であれば相当ふさわしいだろう」


「グゲェ」

「マスターじゃないと、褒められてもうれしくありませんわよねぇ」

「いらぬ他人、いらぬお世辞」


 箱の外から聞こえる声に、リリスが肩をすくめてつぶやき、カトレアたちも同意する。


「しかし、これをどこから盗んだのかはともかく…‥‥中身も何やら期待できそうだな」


‥‥‥‥そこまでの会話を聞き、彼女達は大体の推測を立てることができる。


 おそらくはこの声の主が怪盗の雇い主でありつつ、どうやら色々なものを盗ませていたらしい。


 被害もそれなりにあるが、その分盗まれたお宝などが多くなり、おおかた今回はそれを収めるための宝箱などが欲しかったのだろう。


 それで、宝箱を盗ませたようだが…‥‥怪盗の頭が足りないのか、それとも愚直に命令を聞き過ぎたのか、綺麗な宝箱のみを狙った結果としてリリスが該当したらしい。


 この雇い主の方には、どこのだれから盗み、盗んだものの詳細は出されていないようだが…‥‥いい加減さというべきか、怪盗の盗みの手口の有能さの方を信頼している気がする。



「ではでは、まずは中身を拝見…‥‥」


 油断しているようで、近づいてくる中、彼女達は動き出す。


「グゲェ!!」


 まずは一気に蓋を開き、全員飛び出す。。


「何!?」


 目の前にいた声の主が驚いたようだが、お構いなしにまずはリリスが宝石を投げつける。



 かかかっと宝石が次々に直撃し、壁際に怪盗及び雇い主が縫い付けられ、そこへカトレアが木の根を伸ばし、更に拘束していく。


「瞬間冷凍」


 そしてトドメに、アナスタシアが凍り付かせ、一気に氷像へ変貌させるのであった。




「…‥‥生命、残る。これ、単純に閉じ込めただけ」

「でも、これならそうそう動けないですわね」

「グゲェ」


 うーんっと体を伸ばしつつ、周囲を軽く見渡す。


 どうやらここは今まで盗まれた宝などがあるようで、財宝が散らばっている。


「証拠充分、きちんと内容も書き留めましたし…‥‥この方々が犯人なのは間違いないですわね」


 とりあえず拘束し終え、ディーたちが来るまで待機しようと思っていた…‥‥その瞬間であった。



ビキィッ!!

「ん?」

「へ?」

「グ?」


 なにやら割れるような音が聞こえ、振り返ってみれば‥‥‥驚くべきことに、巨大な鼻を持つ怪盗の氷にひびが入っており…‥‥


ばきぃぃぃん!!

ぶっしゅわああああああ!!


「ええ!?」

「何で!?」

「グゲ!?」


 氷がはじけ飛び、怪盗だけが脱出していた。


 驚愕する中で、怪盗が鼻を大きく上にあげ…‥‥


―――ずぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!


 猛烈な勢いで、吸引し始める。


「きゃぁぁ!?なんですのこの吸引力!?」

「ヤバイ、これ、本当にすさまじい」

「グゲェ!!」


 吸い込まれたら不味いと感じ、各々が対抗手段をとる。


 カトレアは木の根を張り、アナスタシアは足元を氷結させ、リリスは宝石を作製して枷にして固定する。


 だがしかし、その吸引力はすさまじく、そう長くは持たない。


「んー、こうなったらこれですわ!!」


 相手が鼻であれば、その鼻の吸引力を利用すればいい。


 そう考え、カトレアはさっとある花を咲かせ、それを投げつけた。


ずおおおおおお!!ずぼん!!

ぶじゅわぼん!?



「‥‥‥今、何、投げつけた?」

「超強力な刺激花粉150%越えの代物ですわ」


――――――――――――――

「刺激花粉」

カトレア御手製、不審者撃退用品種改良型刺激花の花粉。

元々は鼻詰まりの酷い人の治療用の薬にもなるのだが、大量に摂取すると花粉症と呼ばれるものの数百倍はひどい症状を引き起こす、取り扱い要注意な代物。手に持てるサイズの可愛らしい花ではあるが、植物系モンスター以外では本当に酷い花粉症になってしまう。

怪物騒動などを経て、いざという時に相手をその症状で苦しませ、逃れようと考えだして、カトレアが品種改良をしまくった結果、恐ろしい劇物へとなり果てた。

本人曰く、やり過ぎた。

――――――――――――――

 

 吸い込み、まともに喰らった怪盗。


 そして数秒後には、その花粉の効果が発揮される。


ぶわっつ、ぶわっつ、ずぉおおおおお、ぶわぁぁぁぁぁくじょあおぉおおおおおん!!



 一気に排出され、物凄い鼻息が噴き出される。


「きゃあああああああああ!?」

「吹っ飛ぶ、これ、凄まじすぎる!!」

「グゲェェェェ!!」


 その勢いに吹き飛ばされ、そのまま彼女達は出口を見つけ出し、その場を脱出した。


 再び吸引される可能性を防ぐために、先ほど使用した刺激花粉たっぷりな花を所々に配置しつつ、すぐさまその屋敷を抜け出す。


「カトレア、アナスタシア、リリス!!無事か!!」

「マスター!!無事ですわぁぁぁ!!」

「全員、異常ない」

「グゲェェ!!」


 抜け出すとちょうど都合よく、その場にディーたちが到着するのであった…‥‥‥



何気に結構酷い花ではあるが、不審者撃退などには役に立つだろう。

それも今回のような鼻の発達した相手であればあるほど効果は抜群である。

なお、植物系以外が触れただけでもひどくなるので、実質彼女にしか扱えない…‥‥



‥‥‥ノインに試したところ、ゴーレムだったので効果は無し。反撃を喰らいつつ、彼女にも効果がでるようにちょっと改良途中だったりする。

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