141 整えつつも確認はして
‥‥‥本日、いよいよ適正学園の学園祭が開催となった。
前年度とは異なる、本年度の学園祭。
学園はセキュリティの面から普通は生徒たちぐらいしか往来しないが、この祭りの時だけは異なり、学園外の人たちであふれかえる。
かつての学び舎を懐かしんだり、今年はどの様な物なのか楽しみにしている人が多いようで、笑顔になっている者もいれば、何かしらのトラウマを刺激されて体育座りで端っこに行く者もいる。
そんな中で、ディーたちは生徒会として警備面での確認もしつつ、所属している学科の生徒としてもきちんと動かなければならないのだが…‥‥
「‥‥‥人多いというか、何と言うか。時間的にそろそろ店の方に行かないといけないのに、なんでこうもホイホイ集まって来るんだろうか」
「楽と言えば楽ですが、面倒ですネ」
「縛り上げていく蔓が足りなくなりそうですわよね…‥‥」
はぁっと俺たちは溜息を吐きつつ、一人一人ぎちっと縛り上げていく。
「こういうときに、何でやらかす輩がいるのでござろうなぁ。っと、そこの者、今スリをしたでござる」
「ひげぇ!?」
「足、凍結。転倒確認、捕縛」
「こちらではどさくさに紛れ、何をしでかそうとしていたでありんすかねぇ。えいやっ」
「ぐっげびぃ!?」
アナスタシアによって凍り付き、リザにツボ押しされて変な声を上げ、犯罪者たちは倒れ伏し、捕縛されてずるずると引きずられていく。
「人込みに紛れて、犯罪を起こす輩ってどうして出るのだろうか」
「バレないと思っているからこそ、やらかしてしまう輩もいるんじゃろうなぁ‥‥‥のぅ、まだ妹とか確認できぬか?」
「生体反応データは以前採取してますので、近づけば分かりますが‥‥‥少なくとも500メートル以内には、まだいまセン」
箱の中からゼネが問いかけると、ノインはそう答える。
そして答える中で、リリスがふわっとジャンプし、今度は盗み食いの逃亡を図ろうとしていたものを足の小指めがけて角を落とした。
…‥‥騎士学科や武闘家学科、その他戦闘系可能な学科でも店の交代時に警備を行うそうだが、こういう時に犯罪者がでるのはどこもかしこも困りもの。
対策はしているはずだが、それでも出る者は出るからなぁ…‥‥犯罪が無くならないのはこういうのがあって面倒なものである。
「まぁ、ここまで白昼堂々とする輩が多い分、ゼネ狙いの輩とかも見ないな」
「捕まった情報とかもあったのじゃろうけれども、動く可能性はあるんじゃよなぁ…‥‥あと妹の方も、絶対にもう国内にいそうな気がするのじゃ」
「国のトップになったのであれば、そうそう来ないような気がするのでござるが」
「甘いのじゃ…‥‥あやつ、何か催事があっても、重大な議会があっても、動いたからのぅ…‥‥一度戦争が起きて、儂のいた場所が集中砲火を受けそうになったときには、悪魔のごとき勢いでその仲間たちと共に獅子奮迅で動いたからのぅ…‥‥アレは味方側ではあったが、非常に怖かった」
リリスの箱で引き籠りつつ、ゼネはそう語る。
規格外というか、それ本当に妹なのか、度が過ぎた狂信者ではないかと言いたくなるなぁ…‥‥いや、言わなくてもその通りな可能性が大きいし、ツッコミを入れるまでもないかもしれん。
「何にしても、本日はここで引き籠らせてもらわなければいけないがのぅ‥‥‥リリス、きつくないかのぅ?」
「グゲェ」
ゼネの言葉に大丈夫だよと答えるリリス。
彼女の箱の中はすさまじく広いので、全員入っても余裕だからこそ問題は無いようだ。
ただ、できれば今日の店の方で魅せたかった部分でゼネとリリスの二人が中に一緒に入る点を考慮するとそこがちょっと行えないのだが‥‥‥まぁ、全員でやれば問題ない。
というか、召喚士学科の同級生たちと決めたら、召喚獣の数の関係上時間ギリギリになっていたし、空いた分をさらに回せるとあれば別に良いのかもしれない。
「ま、とりあえず警戒は解かないで、さっさと魅せに行くために店に向かうぞ」
「了解デス。っと、そちらの方にもいマス。昨晩使用した、新しい反射板式レーザー砲発射デス」
ガシャコンっとノインの腕が変形し、小型レーザーガンとやらが打ち出され、周囲に浮いていた光る物体にあたると軌道を変え、狙いすました相手へ直撃した。
「おー、なんか新しい攻撃手段だけど‥‥‥あれ?今昨晩使用したとかって聞こえたけど、練習でもしていたのか?」
「ええ、実験を行ってまシタ。直ぐに扱えるようにするために、ちょうどいい実験台などが用意できましたからネ」
そういうものか。昨晩はぐっすり寝ていたし、彼女が何をしていたのか分からないが‥‥‥まぁ、寝る必要もないらしいノインなら、新しいモノの扱いを慣れるために練習していてもおかしくないかもね。
そう思いつつ、俺たちはさっさと店の方へ向かうのであった‥‥‥‥
‥‥‥ディーたちが召喚士学科の店に向かっていた丁度その頃。
学園のある都市の端っこの方で、ようやく到着した一派があった。
幌馬車に人が入っている状態の中、彼女達は無事に入国できたことに安堵の息を吐いていた。
「…‥‥検閲も無事に済ませ、入ることができましたね」
「本当はトップだけれども、こういう時は一般人として紛れ込んだほうがいい。下手に国の方で動けば感づかれかねないからね」
「でも、ここでもお姉様のかぐわしい香りが臭わないのは気になりますわね‥‥‥ああ、いつもならば、3キロぐらい離れていても分かるはずですのに、何故なのかしら」
ひそひそと話し合いつつ、聞いている常人がいればドン引きしたかもしれない馬車の内部の大量のグッズに囲まれながら、彼女達は確認しあう。
「まぁ、何か気が付けらないようにされているかもしれないわねぇ‥‥‥お姉様なら、その手の結界は張れるかもしれませんわ」
「ですが、愛の力は偉大なはずよ!!それでもこう何も分からないという事は、何かの細工がされているに決まっているわ!」
「落ち着くのですわ、皆様。我らがお姉様を狙う不届き者どもの情報もすでに入手済み。先に潰しにかかり、お姉様のみの安全を確保した後にゆっくりと会いに行くのもありですわよね?」
「はぁははぁはぁ、ようやく会えると思うと、過呼吸が‥」
「いけません。今は貴重なこのお姉様の遺品、いえ、いまはアンデッドになっているのでどうというべきなのかはわかりませんが、共用財産の身に着けていた衣服で整えるのですわ」
少々どころか色々とおかしい彼女達ではあるが、ここへ来た目的は皆同じ。
彼女達にとっての偉大なる、愛すべきお姉様の身の危険を察知し、それらをすべて退ける。
そして、今こうして存在を確認したその時から、練りに練られまくったお姉様を取り込む計画を発動させ、どうにか自国へ連れて帰るようにするという想いがあるのだ。
「さぁさぁさぁ!!もう間もなくお姉様の場所に付きますわよ!!」
「ええ、長い間眠っていて、再びの再会を祝えるこの奇跡に感謝しつつも、まずは邪魔者共の排除にかかりましょう!!」
「しかし、何やら妨害が先に行われているようですし、そちらもさっさとどうにかしないといけませんわね」
「ええ、ええ、ええ。今すぐにでも飛びつきたいですが、先に動きを悟られることなく全てを終えさせましょう!!」
「ふんすふんすふっはぁぁぁぁ!!お姉様お姉様お姉様、今すぐ行きますわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「そうしなければいけないですわ!!…あら、それにしても貴女、やけに興奮を‥‥‥あ」
「ああ!!それは特級のお姉様の御用達の小物!!」
「いけません!!さっさと彼女を離さなければ、急性お姉様中毒で暴走に歯止めが着なくなりますわぁぁぁぁ!!」
‥‥‥もし、ツッコミ力のある人物がいれば、堂々と今の言葉にツッコミを入れることができただろう。
かなり大昔からそのお姉様とやらに慕いまくり、度を過ぎた愛情を注ぎ、長い年月を経ているのにそれでも衰えることなく、むしろたぎる様子は暴走ではないのか、と。
愛情も度が過ぎれば恐怖となるはずなのだが、彼女達はそれを理解できないほど狂化しているともいえるのではないだろうか。
バーサーカーの職業ならまだしも、彼女達は各自神官などを務めているので、狂信者になったという方が正しいのか…‥‥とにもかくにも、恐るべき一派が今、ゆっくりと侵入し、迫り始めるのであった‥‥‥‥
「うぉっひぇい!?」
「どうした、ゼネ?」
「い、今すっごい悪寒がしたのじゃが‥‥‥‥もしや、ついに来たのか!?」
様々な人々が入り混じり、楽しむはずの学園祭。
けれども警戒を緩めることはできず、きちんと対応できる心構えが必要である。
準酢に楽しみたいのに、なぜこうも迷惑な輩がでるのだろうか‥‥‥
…‥‥そして書いているうちに、後半の一派の調子が出てきた。設定はきちんと入れているはずなのだが‥‥‥おかしいなぁ、なんか暴走をし始めたような。
小説を書いていると、何故か設定・予定通りに進まず、勝手に暴走し始める類がいるのだが‥‥‥え、もしかしてなんかヤヴァイやつに進化しちゃった?




