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134 全力投球を受け止めて欲しい

「…‥‥いや本当に、盛大に丸投げされたな」

「学園長からの方も、要請されてますが‥‥‥どうしましょうか」


‥‥‥スライム騒ぎがあった深夜の王城内、会議室。


 今年に入り、例年以上に会議の機会が多くなったと一同は思いつつ、集められた者たちはその議題を聞き、頭を悩ませる。



‥‥‥適正学園に紛れ込んでいた、フェイスマスクという組織の者たち。


 それを捕らえることができたのは良かったが、それを帳消しにするような事態として、学園内で災害が起きたのである。


「人工的な、スライムの生成‥‥‥いや、それは錬金術師など、その手の技術を持つ者がいれば可能な事は可能だっただろう」

「だがな…‥‥その原材料を、増幅させた上に廃棄物にすると言う置き土産は、残してほしくなかった」


 その言葉に、集められた者たちはそろって深い溜息を吐く。



 というのも、学園に起きた災害‥‥‥巨大メタリックスライムの襲撃。


 正確には大量のスライムたちの襲撃でもあるが、それは現在鎮静化されたというのは良い情報。


 けれども、その後の残された事後処理‥‥‥元スライムであった廃棄物をどうするのかということが、大問題であった。


「材料の構成自体は、大量の金属なんだろう?錬金術師たちなどに分解、再構成などをさせてどうにかならないものなのだろうか?」

「生憎、混ざり過ぎた影響で、できたとしても純度が低く、赤字レベルになります」

「単純に埋め立てようにも、鉱毒等がありますし‥‥‥スライムのままでやってほしかったというのもあるでしょうが、それはそれで国中の金属を食いつくされる危険性がありましたからね」


 うーんっと頭をひねり、悩みまくる一同。


 国の金属を食いつくされる危機は無くなったが、残されたこの処理問題に頭を抱えてしまう。


 やりようはいくらかでるものの、いかんせんコストを考えると利益もなく、かと言って放置もできないこの状況。


 非常に面倒な厄介事を見事に押しつけられたと思いつつも、どうにかするしかないのであった…‥‥










「‥‥‥どうしよう、眠れん」


 王城で会議が行われているその頃、ディーはベッドの中で目が冴えていた。



「ご主人様、寝つきが悪いようですネ」

「ああ、ちょっとな…‥‥」


 原因は分かっている。


 モンスター違いとは言え、夏のゲイザーを思い出し、ちょっと体が震えるのだ。


 あのスライムの見た目はゲイザーほどではなかったとはいえ、巨大、目玉沢山などが似ていたからなぁ‥‥‥気にしていないつもりだったが、深層心理的な部分ではやはりトラウマになっているのだろうか。


「寝つきが悪いというか‥‥‥ゼネ、今ならお前のトラウマによる恐怖と語れそうな気がするよ」

「うーん、それはそれで良い事なんじゃが…‥‥御前様が眠れぬのは、ちょっと心配じゃな」


 深夜とは言え、まだ起きているノインとゼネ。


 彼女達が話し相手になってくれるが…‥‥眠りたいのに、眠れないこの状況はちょっと辛い。


「と言ってもなぁ‥‥‥このまま寝たところで、悪夢を見そうで、寝付きにくいのもあるな」


 トラウマが原因で眠りにくいし、寝付いたところで思い出したこの状況では悪夢を見て不快になりそうである。


 でも、騒動があったとはいえ、明日は休日でもないし、できるだけ寝ておきたいのだが…‥‥どうすべきだろうか。


「ゼネ、眠りの魔法とか、俺にかけられないかな?夢見ないレベルのやつとかさ」

「可能と言えば可能じゃが‥‥‥こういう時にはちょっと不安もあるのじゃよ」

「不安?」

「うむ。本日のスライムのせいで、大多数の生徒たちが流され、同様のトラウマを抱えてしまった可能性はあるじゃろう?となれば、その他の部屋でも寝ている生徒たちは悪夢を見ている可能性がある」

「まぁ、それは分かるかな」


 カトレアやアナスタシアの手によって、スライム洪水から救助したが、あのスライムの洪水などは悪夢に見てもおかしくはない。


「こういう集団で悪夢を見ている状況じゃとなぁ、夢に関するモンスターが寄ってきたりするんじゃよ」

「夢に関する?」

「図鑑ですと、バク、インキュバス、サキュバスなど夢魔とひとくくりにされる類ですネ」

「そうじゃ。儂は幻術などの専門でもあるが、夢に関してはそちらの方に軍配が上がるからのぅ‥‥‥下手に魔法をかけたら、それはそれで相手の都合に合わせて改変されるおそれがあるからのぅ、ちょっとやりたくないのじゃよ」


 ゼネいわく、確かに俺を完全に夢を見せないほど熟睡させるような魔法はできることはできるらしい。


 だが、大勢が不安を抱き、悪夢を見ているかもしれないこの状況で、夢に関するような魔法をかけた場合、その夢魔などが引き寄せられ、俺に悪影響を与える可能性が大きいのだとか。


「まぁ、娼館などで共存しているやつらもおるのじゃが、厄介なのは完全に野生の類じゃしな…‥変にやられても困るし、おすすめできないのじゃ」

「つまり、自力で寝たほうがまだ良いと?」

「そう言うことなのじゃ‥‥‥すまんのぅ、御前様。こういう時に力になれなくて」

「いや、謝らなくてもいいよ」


 頼りたかったが、魔法に頼り過ぎるのもいけないようだし、そこはきちんと考慮した方が良いだろう。


 いくら彼女達が無茶苦茶な力を持っていても万能でもないし、頼り切れないこともある。


 だからこそ、忠告も聞いておいた方が良い。


「だけど、やっぱり寝にくいしなぁ…‥‥カトレアの睡眠草枕とか、借りれないかな?」

「現在、熟睡状態のようデス」

「そっか」


 無理に起こすのも悪いな…‥‥今の時間は深夜だし、ノインやゼネは別に寝なくても大丈夫だからこそ、こうやって付き合ってくれているだけなんだけど…‥‥うーん、どうしたものか。


「…‥‥あ、そうじゃ」


 っと、ここでふとぽんっと手を打つゼネ。


「のぅ、ノイン。ちょっと耳を貸してほしいのじゃ」

「ハイ」


 何かを思いついたのか、ノインと話し合うゼネ。


 声が小さくて聞こえづらいが、何か名案でも‥‥‥‥いや、なんか表情的に迷案な気がしてきた。


「…‥‥なるホド。それはいいかもしれまセン」

「そうじゃろう?」


 ゼネの説明を聞き終えたのか、納得するようにうなずくノイン。


 なんとなくだが、口元が互いに一瞬だけニヤッとしたように見えたのは気のせいだろうか。


「ご主人様、ちょっとこちらの方へ視線を」

「いや、さっきから見ているけど…‥‥なんだ?」

「では、これの注目してくだサイ」


 そう言い、ノインは腕をガシャコンっと変形させ、何かを取り出した。


 振り子のようなものだが、ぶら下がっているのは玉ではなく穴が空いた輪っかである。


「魔法とはちょっと違う、催眠術と呼ばれる類をかけマス」

「怪しさ満点というか、なんか不安が一気に増したぞ」

「大丈夫じゃよ。儂も補助するし、これは魔法の類とは違うのに当てはまるから、夢魔などにかかる心配はないのじゃ」

「大丈夫かなぁ‥‥?」


 何だろう、この相談する相手を思いっきり間違えたような感覚は。


 でも、何か思いついてやってくれたのだろうし、無下にするのもどうかと思う。


 そもそも催眠術とかは本で読んだことはあるが、流石に俺がそう簡単にかかる事もあるまい。


 いや、それだったら意味ないような…‥‥まぁ、とにもかくにも、やってもらうか。


「では、これに注目を。ご主人様はだんだん目が離せず、意識を沈め始め~る、始め~る‥‥‥」


 どう考えても、かかる気が全くしないような…‥‥ああ、でもなんか‥‥‥‥













「~、ハイ、ここで催眠にかかったのであれば、手を上げてくだサイ」


 ノインのその言葉に対して、ディーはゆっくりと手を挙げた。


 目は先ほどまで起きていたのに、今はややうつろであり、そこに意識があるように見えない。


「…‥‥どうしましょうカ、ゼネ。貴女のアイディアに乗って、ついやってみましたが‥‥‥」

「御前様、滅茶苦茶深くかかったのじゃが…‥‥」


 互に顔を見合わせ、この事態に驚く二人。


 メイドと元聖女、互に色々と経験は持っているのだが、流石にこうなることまでは予想し切ってなかった。


 いや、精々軽くかかるだけで、簡単に眠るだけだと思っていたのだが…‥‥


「右上げテ」

「左上げテ」

「右上げないで、左上げないで、軽くチョキ」

「全部見事にやっているのじゃが」


…‥‥思いのほか、ディーの催眠術に対する耐性は低かったのか、ノインの指示に対してディーは意識もなく、それでいてはっきりとその指示に従う。



「ご主人様のとんでもない弱点になり得そうなモノを見つけてしまいましたネ。これ、組織の類とかに知られたら、絶対不味いやつデス」

「そうじゃよなぁ…‥‥いや、儂も軽くかかる程度だと思っておったのに、御前様本気でどっぷりかかっておるのぅ」


 ディーの状態を確認しあい、少し彼女達は頬を引きつらせる。


 とはいえ、精神的には眠っているので間違いないだろうし、一応眠れている感じはするので、問題の解決にはなったのだろう。でかい問題を出したが。


「催眠対策のものを用意しておきましょうカ」

「そんなものができるかのぅ?」

「体質改善薬などですネ。後は、普通に今の催眠を活かして、その他の催眠にかからないようにすればいいだけなのデス」

「それもそうじゃな。催眠術を催眠術で上書きされぬように、しっかり施せばいいのかもしれぬ。幸いというべきか、今は儂らの言葉に従うようじゃし…‥‥ん?」


 その言葉に、ふとゼネとノインは気が付いた。


‥‥‥今の時刻、深夜。その他の皆、熟睡中。


「流石に良からぬ真似なら、メイドとして排除しマス」

「そこまではいかぬ。そもそも儂ら召喚獣じゃし、召喚主である御前様に無理にやる事もないじゃろう?」

「それもそうですガ…‥‥」


 この状況に二人は考えこむ。


「‥‥‥仕方がないですカ。メイドたるもの、ご主人様がかかっている間の安全確保も必要ですし、どの程度の効き目があるのか、確かめた方が良いでしょウ」

「というと?」

「やれそうなので、徹底的にやってみましょウ。ええ、流石に変な事さえしなければ、目撃者もなく終えることができマス」

「万が一やらかしたら、裸土下座でもしてあげるかのぅ…‥‥まぁ、流石に儂らはそれなりにわきまえるからのぅ」


 考え込んだ末に、朝まで時間が多くあるわけでもないことから、やれそうであるならとことんやってみようかと二人は判断を下す。


 というか、普段特にふざける事もしない二人だからこそ…‥‥こういう状況はめったにないのだ。




…‥‥普段優しい人が、怒れば怖いことが多いように、普段まじめな人が、いざはじけられそうなことがあれば、どうなるのかは想像に容易いだろう。


 そして翌日…‥‥‥



「…‥‥すいまセン。ご主人様」

「調子に乗り過ぎたのじゃ…‥‥」

「ちょっと待て、本気で何をやった?というか、何で裸土下座?」


 目が覚め、起きて見ればノインとゼネが、そろって裸土下座状態であった。


 俺の状態を見れば、普通にベッドの中に入っていたのと変わらないのだが‥‥‥何をやらかした?


 あと、裸土下座なのも何で?めっちゃくちゃ目の毒なんだけど。まともに見れないというか、その散らばったその他とか片付けて欲しいというか、きちんと着て欲しいというか‥‥‥



「メイドなのに、メイドなのに…‥‥なぜここまでしたのか、冷静に戻って物凄く後悔していマス」

「御前様の貞操は大丈夫なのじゃが…‥‥責任を取って、ここで自爆と浄化昇天で、二人の命で詫びるのじゃ‥‥‥」

「いやいやいや、そこまでやるほどって、本気で何をやらかした!?」


…‥‥ディーは驚愕しつつ、なんとか二人の命を失わせないように思いとどまらせた。


 だがしかし、本気で何をしでかしたのかという情報は言わず、何があったのか物凄く疑問に思うのであった。



「聞くのが怖いんだけど、本気で何をしでかした?」

「…‥‥黙秘デス」

「少なくとも、深夜テンションは後悔しか生まぬと理解したのじゃ…‥‥」


 なお後日、その件を聞いた他の召喚獣たちが、しばらくの間同様の事をやらかし、同じように土下座することが数日間ほど続いたのも言うまでもない。


「自白のツボ、効果抜群であったでありんすが…‥‥うん、ダーリンに聞かせぬ方が良いでありんすな。というか二人とも、この面子でまじめな方なのに、何でそうしたのでありんすか」

「深夜テンションという闇デス」

「同様のことをしたら、術で縛るのじゃ」

「やってみたい好奇心はあるのでありんすが…‥‥まぁ、うん、同情の余地はあるでありんす。わっちでも、同じ状況ならやらかす自信はあるというか、そこからさらに超えることは否定できぬでありんすからなぁ‥‥‥」


‥‥‥本気で何をしでかされた?

気になるのだが、体に異常はないし、特に何かされた感覚もない。

でも、あの彼女達が本気で謝る姿勢を見せるのは…‥‥なんか聞くのが怖い‥‥‥



…‥‥なお、催眠術って、そうかかりやすいものでもない。相手に信頼があるかどうかなどが大事らしい。

ついでに言うのであれば、R15~18ぐらいなら詳細まで書いていた。いつかノクターン版をやって見た際に、この時に何をしでかしていたのか、書きたいところ。

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