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131 履違えると厄介だったり

…‥‥メタリックスライムの捕縛により、収まるかと思われていた金属齧り被害。


 捕縛したスライムに関しては、グラディたちに報告後、ちょっと気になる点があったので…‥‥



「ピキィィィ!!」

「ふむふむ…‥‥やっぱりというか、痕跡がありますネ」

「痕跡というと?」


 一夜明け、本日の授業までまだ時間がある中、ノインが固定して調べ上げていたスライムを調べ上げ、そうつぶやいた。


 机の上にどういう手法か動かないようにしっかりとくっつけ、腕から様々な道具が飛び出しつつ、何やら色々と調べ上げていたようであったが…‥‥


「スライムには自然発生するモノ、ダンジョン内で湧くモノなどがあるのですが、人工的に作られるモノもあるのデス。それで、念のために調べて見たのですが…‥‥これ、人工的な類でシタ」


 そう言いながら、スライムの表面を、手を変形させて虫メガネのようなもので拡大して俺たちの方へ見せてきた。


「つるんとしているように見えますが、人工的な痕跡として自然界にはない鉱物が、こことここにありマス」

「鎧とか食べて、混ざっただけではないでござろうか?」

「その可能性も考えましたが、どうもそれでは説明のつかないものもありマス」

「ふむ、つまり何者かがこれを作ったという訳かのぅ」



…‥‥考えてみれば、そもそも学園内に急にこのメタリックスライムが現れたのもおかしな話である。


 誰かが召喚獣として召喚したのであればいざ知らず、召喚士学科の学生たちの登録している召喚獣のリストにはなく、野生のものっぽいというのは分かっていた。


 だが、罠の分別や逃走時の身体能力がちょっと高いように思え、不自然さもあったのだが…‥‥


「‥‥‥人工的なモノ、となれば説明はつくのか」

「ハイ。スライムの知能の説明などは色々と面倒な点が多いですが、通常のものとは異なる点に関しては、説明が付きマス。‥‥‥そしてついでに、更に別の可能性も出てきまシタ」

「というと、何かあるのかしら?」

「スライム一体の製作コストを考えると、実はそこまで多くは使わないのデス」


 スライムの生成方は色々と面倒な物が多いが、それでも原材料費などを考えるとそこまで高くはつかないらしい。


 やりようによっては腕のいい人であれば水とちょっとした魔法だけでも簡単なスライムぐらいは作成できるそうで、このメタリックスライムに関しても、金属なのでそれなりに値は張りそうなのだが、使用されていると考えられる材料が安物なのが多いのだとか。


「そう考えると、一回の作成時にできるスライムの量を考えますと…‥‥少なく見積もっても、残り30体ほどはいる計算になるのデス」

「うわぁ、そんなにか」

「名状しがたき這い寄る混沌の生物とか、Gとか言われている類のようじゃな…‥‥」

「間違ってはないですネ。生成方法自体が混沌ですので、ある意味合ってマス」

「合っているのかよ」


…‥‥というか、残り30体ほどというが、昨晩見つけたのはこれ一体だけである。


 となると、その他のはどこにいるという話になるのだが。


「‥‥‥何だろう、この嫌な予感」

「想像したくないでありんすなぁ‥‥‥なーんかわっちもダーリンと同じ予感がしたでありんす」

「わたくしもですわね」

「拙者もでござる」

「‥‥‥予感、皆、同じ」

「グゲェ」


 召喚主の予感は、召喚獣たちも同じものを抱くのだろうか。


 全員、その予感に嫌なものを感じたようである。



「…‥‥解決したかと思ったら、もしかして余計に面倒な問題を見つけてしまったか?」

「そう言うことになり…‥‥ア」


 俺の言葉に返答しようとした途端、ノインの頭のアホ毛がビンっと立った。


 なんというか、言い終える前に起きたというべきか、今までに何となくわかっている経験がここで俺たちにその予感の的中を知らせたというべきか…‥‥


「ご主人様、大変申し上げにくいのですが…‥‥間違ってまシタ」

「というと?」


 無表情というか、その嫌な予感に現実逃避でもしたいのか、目がやや遠いところを向くノイン。


「先ほど、30体ほどと述べあげましたが…‥‥それはあくまでも『少なく見積もった場合』に限りマス」

「まさか…‥‥」


 


 急激に聞こえてきた謎の音。


 ドドドドドっと何かがなだれ込むかのような、それでいて色々と多くあるような音に、俺たちは冷や汗をかく。


「‥‥‥感アリ。学園内に急速に出現を確認」

「数は?」

「4ケタほどデス」


…‥‥嫌な予感、的中。


 恐る恐る、その気配を感じつつ、そっとドアを開け、廊下の方を見れば…‥‥


「「「「「「「「「「ピキピキィィ―――――――!!」」」」」」」」」」


「‥‥‥うわぉ」


 その光景を見て一言しか出ず、そっと俺たちは扉を閉めて見なかったことにしたかった。


「ノイン、感知反応の詳細頼む」

「感知対象、データ確認。捕縛したメタリックスライムと同種であり、同じ材料から人工的に作られたメタリックスライムの大群と確認。…‥‥発生源も同時に確認できまシタ」

「発生源は?」

「錬金術師学科の授業用の教室横あたりデス。学園内の図面を考慮すると、本来部屋がないはずなのですが…‥‥誰かが隠し部屋でも作って、実験していたのでしょウ」


‥‥‥そして見事に何かをやらかし、今外に広がるメタリックスライムの洪水を引き起こしたようだ。


 外から聞こえてくる、スライムの大群による悲鳴。


 というか、ココの扉も水圧というかスライム圧のせいか軋み始め、非常に不味そうな状態である。


「‥‥‥あー‥どこの誰がやらかしたのかはともかく、どうにかしないとこれ不味い奴だよな」

「不味い奴だよな、というどころではなさそうですわね」

「うわ、窓の外にも広がってきたでござるよ」


 見れば、外の方にも溢れており、大量の金属光沢の塊が見て取れる。


「全員、直ちに動くぞ。あの副生徒会長たちの事だから生徒会としてとか言うだろうし、その前にさっさと片付けよう!!」


 溢れ、辺り一面に広がるメタリックスライムたち。


 蛇口が壊れたようにドババっと出てきているようだが、放置するわけにもいくまい。




 どこの誰が引き起こした馬鹿な所業なのか呆れながら思いつつ、溜息を吐きつつ、ディーたちは事態の収拾に動き始めるのであった‥‥‥‥


 

突如として溢れ出す、メタリックスライムの大群。

ドバドバと流れ出し、辺りを覆いつくしていく。

‥‥‥いやまぁ、金属齧りと同個体であれば、被害とかを考えると放置できないからなぁ。



‥‥‥いやほんとうに、どこの馬鹿が引き起こしたやつだこれ?

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