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10 人の口に戸は立てられぬ

「あー…‥‥結局バレていたのかぁ」

「どこから情報が漏れたのでしょうカ?」


 学園長室から出た後、ディーは真っ直ぐに自身の寮室へ戻り、ぐったりとベッドに倒れ込みながらつぶやき、ノインは首を傾げた。


 まだ誰もこの部屋には来ていないはずで、窓からのぞいたとしても全部が見えるわけではない。


 それなのに、何をどうしたらこの拡張がバレてしまったのか分からないのである。



 何にしても、今後は許可を貰えば問題ないらしいが…‥‥うん、増やす予定はない。


「精神的に疲れたなぁ‥‥‥」

「そう言えばご主人様、寮のお風呂が今日から解禁されたようデス。そちらにゆっくりと浸かって疲れを癒すのはどうでしょうカ?」

「あ、そうなの?」


 風呂かぁ…‥‥清潔と癒しを目的に作られた寮の風呂。


 聞いた話では、この学園が出来た当初に、初代学園長が一番心血を注いで作ったそうで、こだわり具合がとんでもないのだとか。


 入寮初日は、清掃作業のために入浴できなかったが、どうもすぐに解禁されるようである。


「そっか、じゃぁ風呂に入ろうかな」

「ええ、お背中も流しマス」

「そうかそうか…‥‥いや、ちょっと待て」


…‥‥危ない危ない。今ついうっかり自然に流されそうになったが、それはアウトだと言いたい。


 俺は男、ノインはメイドゴーレムだけど容姿が女性だし、風呂に男女で入るのはちょっと危ない。


 いや、夫婦とかそう言うのならまだしも、召喚獣は…










「‥‥‥残念デス。こういう時に何もできないのは、メイドとして悔やみマス」

「グゲーイ」

「ギュッポォォォン」


…‥‥召喚士の召喚獣たちも、清潔に過ごすべきである。


 そう言う話も昔あったらしく、寮の風呂のすぐそばに、召喚獣用の風呂場があった。


 そして現在、ノインはその風呂に、他に入浴しに来ていた召喚獣たちに混ざって、ゆっくり浸かっていた。


「あー‥‥‥そもそも特殊加工されているボディには、入浴は必要ないですが…‥‥ゆったりできるのは悪くないかもデス」


 メイドゴーレムとして作られている彼女は、入浴は実は必要ない。


 どんなに汚れたとしても、布などで軽くふき取ればすぐに綺麗になり、髪もくしで2,3回ほどとかせばあっという間にサラサラになる。


 また、メイドとしての矜持とも言えるメイド服を脱ぐのは何処か落ち着けないのだ。



 けれども、風呂に浸かる事に嫌悪感は無い。


 メイドとしてご主人様へ供するために、こういう場にも来る必要性もあるだろうし、それなりに居心地の良さは感じることができるのだ。


 ただ一つ、現在問題であるとすれば…‥‥



「ブギュッポポォォン!」

「クェェェ!」

「ハイハイ、次の方どうゾ」


 ノインの前に並んでいる、召喚獣たち。


 ちょっと風呂に入っている間の暇つぶしとして、体を洗う手伝いをしたのだが…‥‥その手腕が気に入ったのか、何故か列を作って待機されてしまったのである。


 ディーが風呂から上がるまでの間としたのだが…‥‥ぞろっと並ぶ列を見て、ノインは少々後悔したのであった。






「…‥‥なんか召喚獣の湯の方で、鳴き声が騒がしいな?」


 またノインが何かやらかしたのではなかろうかと思いつつ、俺はゆっくりと風呂に浸かっていた。


 学生用の寮の風呂は男湯と女湯にも別れているのだが、その広さはかなり広い。


 建築時のモットーとしてゆったり浸かれる風呂としてもあったそうだが…‥‥泳げそうなぐらいである。


 まぁ、流石に風呂で泳ぐのは何かマナー違反なような気がするのでやらないが、それでも楽な事は楽であった。


「村にいた時は、こんな風呂なかったからなぁ…‥‥」

「へぇ、君ってどこの村出身なの?」

「ちょっと田舎の方の…‥‥ん?」


 ふと、答えようとしたところで、誰なのか気になり、そっちの方を向けば‥‥‥湯気の向こうにも、同じように入浴している人がいた。


 なんというか、顔面偏差値というのか、そういうのが高そうなやつ。


「誰だ?」

「ああ、僕の事かい?単なる一般人風な人だから気にしないで頂戴」


 いや、普通の一般人はそんなことを言わないんだけど。


「‥‥‥気にするなといわれても無理があるような」

「あははは、そうかな?こういえばだれにも気遣われずに、適当に過ごせると父さんが言っていたんだけどね」

「いや、それ色々と間違っているんだけど」

「そうなのかぁ。まぁ父さん遊び人でもあるし、適当にいったのかな」


 その可能性の方が大きいというか、何と言うか。


 普通に考えれば無理があると思えるのだが。





 ツッコミどころが色々あるというか、何をしたいんだと言いたい目の前の相手。


「でもまぁ、それでも何とかやっていけるから良いんだけどね。適性で『騎士』になれたし、将来継がなくてもどうにかなるのは助かるよ」

「いやいや、継がなくていいとかそういう問題ではない様な…‥‥というか、その口ぶりだと、何処かの商人の息子とか?」

「違うよ。国王の息子だからね」

「そうか、国王のむ‥‥‥」


‥‥‥今、何て言った?


「ああ、もしかして気が付いちゃった?その考え通りと言えばあっているかもね。名乗るとすれば、この学園の副生徒会長にして、第2王子グラディね。君の事も、あの召喚獣の噂を聞いて、ちょっと気になって、このタイミングで会えて嬉しいよ、ディー」


 にやりと笑みを浮かべながら、目の前の男…‥‥第2王子はそう名乗り、既に俺の名前を調べていたのか、そう告げたのであった。



 

 学園長の言葉で、近いうちに生徒会の方から接触する可能性があるだの、ノインへの常識教育で王子とかがいるかもしれないと自分で言ったが…‥‥まさか、こんな早くに出会うとは。


 何ともいえないというか、人の事を言えないやらかしをしたような気分になり、俺は現実逃避をし始めるのであった…‥‥




‥‥‥なお、その後、王子はまた後でと言って早々にあがり、逃避していた俺もあがり、召喚獣の湯の方へ、ノインを迎えに行ったが‥‥‥


「‥‥‥なんか周囲一帯、赤くなってない?」

「流石に、染み抜きするにはちょっと材料不足デス。一応、そこに積み上げてますが、どうしましょうカ?」


 何がとか、何をとか、色々ツッコミしたかったが、力及ばずなのであった‥‥‥‥

‥‥‥忠告に警戒しても、そうすぐに来るとは流石に思わなかった。

対策をせめてとらせてほしかったなぁと、遠い目をしながら思うのであった。


‥‥‥赤く染まっている周囲?まぁ、そのあれだ。どこの世界にも不埒物がいるというか、自爆しているというか。

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