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117 表立つの反対はそう聞かないけれども

「ふーん、あの後結局、そっちでも警戒している状態か…‥」

「そうなのニャ。まぁ、そのついでに調査を色々とした結果、数人ほどが更迭されたとも聞くしニャァ」


 昼食時の学園の食堂にて、ルナティアとディーは情報交換をしていた。


 森林国の騒動以来というのもあるし、互に別々の場所にいたので何かと起きていることもある。


 その中でも一番の関心事とすれば、騒動を引き起こす組織についての話題であった。



「ところで、一つ聞くけどニャ、そこでうじうじと落ち込んでいるのは誰ニャ?」

「あー‥‥‥武闘家学科のバルンだ。俺の友人なんだが‥‥‥」


…‥‥昼食時、生徒たちは和気あいあいと他学科も入り混じって、あちらこちらで入ったばかりの留学生たちに対して会話を楽しんでいるのだが、悪友のバルンはそこに混ざれていなかった。


 というのも、留学生も入った事なので、各学科でそれぞれ合同の模擬戦を時間割ごとに変えてやっていたのだが、その中の一戦で留学生の一人にコテンパンに負けたらしいのである。


 実力はどの程度なのか把握し切ってないが、バルンもそれなりに強かったとは思うのだが…‥‥


「やはりこの世は、権力か顔か運なのか‥‥‥」

「大丈夫かー?」

「大丈夫じゃねぇよ‥‥‥」


 実力差で負けて悔しいだけなのか、それとも武闘家学科には留学生が来なくて、模擬戦で相手をしてフルボッコで敗北者となったのが悔しいのか‥‥‥多分、両方ともあるかもしれない。



 とはいえ、俺たちで慰める事もできないし、ひとまずは放置である。


「なるほどでありんすなぁ、わっちが加入前に一時的に共にしていた獣人の方でありんすか」

「毛並み、中々良い‥‥‥ちょっと、触っていい?」

「え、ええ別に良いニャ。って冷たぁ!?」


 アナスタシアに触れられ、びくっと震えたルナティア。


 まぁ、雪女だし結構冷たいと言えば冷たいが‥‥‥


「!フワフワ、中々、手触りいい‥‥‥」

「あ、あの、そろそろ放してくれないかニャ?」


 キラキラとした目で触るアナスタシアにルナティアはそう問いかける。


 はっとしたように気が付き、直ぐに放してくれた。


「ご、ごめんね」

「い、いや良いのニャ…‥まだよく理解していなかったあたしが悪かったのニャ」


 プルプルと震えつつもそう返答するルナティア。


 彼女なりの優しさというべきか、申し訳ない。


「というか、本当に増えているニャね‥‥‥しかもどちらも聞いたことが無いようなモンスターで‥‥‥ディー、何を目指しているニャ」

「諜報。一応、国からの特別諜報推薦確定済み」

「絶対に向いていないどころか、何か間違っているような気がするニャ」


 ジトっとした目でそう言われるが、否定できないのが悲しいところ。


 戦闘力だとか、能力の高さとか、色々と考えるとおかしいとは自覚するのだが‥‥‥うん、まだそこは曲げる気はない。


「今のところは、その手の勉強の方に力を入れているからな。諦める気はないし、曲げる気もないな」

「絶対に色々と曲げた方が良いような、それはそれで大変な気もするのだけどニャ‥‥‥まぁ、人の事だし、これ以上とやかく言う事もないニャ」


 何にしても、それはそれ、これはこれの精神で貫けばいいだろう。


 そうこうしているうちにも、たわいない日常的な話しへ切り替わるのであった…‥‥



「まぁ、あの二人の喧嘩を止めやすくなったのは良かったけどね」

「それはそれでどうかと思うのニャ。というか、激闘の中をあっさり潜り抜けていけるのもすごいようニャ‥‥‥」









…‥‥和気あいあいとたわいもない世間話などで盛り上がるその一方で、ノインの頭のアホ毛がピンっと立っていた。


「…‥‥」


 自身の主であるディーと、その友人であるルナティアの二人の会話を見つつも、センサーを全開にして、ノインは周囲を探る。


 主への負担をかけないように、できるだけ陰で隠れて行うようにするというメイドの嗜みゆえだが、どうも感じ取れる反応としては、一つや二つでは無さそうである。



(‥‥‥留学に乗じて、色々と動かれているようデス)


 心の中でそうつぶやきながらも、監視の目を緩めないノイン。


「‥‥‥のぅ、ノイン。お主も気が付いておるのじゃろ」

「おや、ゼネもですカ?」

「儂の場合は、いやでも染みついた気配察知でわかったからのぅ‥‥‥」


 その一言だけで色々と察するが、どうやら感じていることは同じ様だ。


 ディーにバレないように軽く召喚獣一同でアイコンタクトによる連絡を取り合ってみれば、全員既に察知しているようだ。


 カトレアは植物から、ルビーは宙を舞って上から、リザは空気にツボを押してから、リリスは箱に閉じこもり、アナスタシアは布団に潜りこみ、それぞれで確認が取れたらしい。


 一部取り方がおかしいような気がしなくもないが、それはそれ、これはこれである。



「‥‥‥ま、何もしないならそれで良いですけれどネ」


 ただ観察するだけ、干渉しないだけであれば、こちらから言う事も特にない。


 着替えの時とかは流石に防がせてもらうが、現状不味い事は彼女達には無いのだ(国にとってはともかく)。


 しかしながら、こういう状況で、もし干渉をかけてくるのであればそれなりの対応はさせてもらうつもりである。


 そして何よりも、彼女達の主であるディーへの直接的な危害であれば‥‥‥それこそ、地獄を見るよりも恐ろしい結末を迎えるであろう。


(データには、いつの間にか地獄ではなく冥界と呼ばれる場所のものがありましたが‥‥‥勝手に更新されているのであれば、別に良いでしょウ)


 とにもかくにも、彼女達の主はこの状況を把握していないまま。


 諜報‥‥‥要は探る者になるはずなのに、逆に探られる側になるのもどうかとは思うが、まだまだ成長途上と言っても差し支えないので良いのだ。


 自分達で支えつつ、役に立てればいいのだから。



(できれば一番になりたいという想いはありますけれどネ)

(それは同意ですわ)

(拙者たち、平等でござるが不満もあるからのぅ)

(少なくとも、トップを目指したい気持ちはあるのじゃ)

(グゲグゲェ)

(わっちは二番手でもいいのじゃが‥‥‥こういう時を利用するのも面白いでありんすなぁ)

(眠い…‥‥)


 三者三様、十人十色、様々な思いが交錯しつつも、主を想う気持ちは皆同じ。


 とりあえず、今は様子見を決め込みつつも、何かあればすぐに動けるようにしておくのであった‥‥‥‥




 

好意はあれども、今はまだその時でもないだろう。

かかる火の粉をふっ飛ばしつつ、守るだけである。

そう、たまにはこのあとがき部分ものっとって心情を出したい時もあるのだ。



‥‥‥いつの間にか絆されつつ絆が深まっている模様。

でも深まり過ぎたら、それはそれで問題が起きる事もあるが、その事例はまだ先の話…‥‥

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