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101 気が付かぬだけで何かとあったり

‥‥‥深夜、学園の寮はひっそりと静まり返っていた。


 夏季休暇も空け、新しい学期と共に授業内容も変化していき、その変化に慣れるために生徒たちは疲れ果て、誰もが寝静まりかえっている。


 だが、就寝しているその傍らで、その動きを彼女達は見逃していなかった。





「…‥‥!!」

「おっと」


 どずん!!っと一撃を撃ち込まれ、学園へ潜入しようとしていた者が地に倒れ伏し、音を立てる前に彼女はその尻尾で拘束していく。


「弛緩のツボ、今のお主はもう動けない状態でありんす。さてと、他は‥‥‥」

「探す必要はないデス。もう全員、捕らえ終えまシタ」


 きょろきょろと再び探し始めた彼女の側に、すっと現れ、捕縛された者たちが転がり出される。


「おお、ノインはすごいでありんすな。わっちはまだこれだけでありんす」

「私の場合、レーダーがありますからネ。ステルス性ない奴らには、十分効果があるのデス」


 頭のアホ毛をくるんと回しつつ、リザの言葉にノインはそう回答した。


「ふふふ、わたくしの方はもっと多く捕らえましたわ」

「ひぃふぅみぃ‥‥‥んー同じぐらいではござらんか?」


 っと、物陰からまた出てきたのは、カトレアにルビー。


 彼女達も多くの者を捕らえつつ、その場に転がしていく。


「儂らの方もそれなりに捕まえたのじゃが…‥‥いつの時代も、こういう輩がいるのかのぅ?」

「グゲェ?」

「ああ、儂の生前の話になるのじゃが…‥‥まぁ、それは置いておくとしよう」


 ゼネにルビーも、それぞれ捕らえた者たちをまとめてそこへ転がしていく。


「これだけの不審者、一体どこから出てきたのでありんす?」

「んー、ご主人様がそろそろ王城にて、叙爵話が広まってきて、気に入らない人たちが差し向けてきたのでしょウ」



‥‥‥夏季休暇前に、王子たちから聞かされていたその話し。


 様々な功績を積み重ねすぎたせいで、国としても面子というモノがあり、一旦ディーに褒美としての爵位を与えるということがあった。


 叙爵するのは夏季休暇明け後、新学期故のドタバタも落ち着いてきた頃合いで、王城が主催し、叙爵のために軽い式典が開かれるそうだが…‥‥


「爵位は領地無しの貴族となる準男爵あたりですわよね?まぁ、それ以上の可能性も考えられますが‥‥‥」

「領地がなくとも、平民が貴族の仲間入りは嫌だというような輩がいるのでござろうか?」


 はっきり言って、実はこういうのは珍しくもなんともない。


 多大な功績をもたらした者に、爵位が与えられるというのは普通にあり、うまくいけばそこからさらに積み重ねていくこともあるのだが…‥‥


「‥‥‥まぁ、いつの時代もいるのじゃろうなぁ。自身の地位を脅かしそうな輩を目ざとく見つけ、排除するような馬鹿者がのぅ」


‥‥‥ディーの場合は、本人にその気がなくとも色々と目立っているところが多い。


 というか、そこら辺の爵位があっても無能な人達にとっては自分たちの地位を奪う可能性が見えており、小心者ゆえに先にどうにかしてしまおうと考えるような馬鹿がいてもおかしくないのだ。


 普通であれば、妨害手段には金やハニートラップなどがあるのだが、ディーにはどちらも効果が見込めない。


 そもそもゲイザー体内から出てきた宝も献上しており、庶民ゆえに大金を持つこと自体慣れていないというのもあるし、ハニートラップに関してはノインたちのような美女たちに囲まれているので意味もなさない。


 そうなれば、残る手段としては冤罪、マッチポンプ、暗殺などがあるのだが…‥‥


「学生ゆえに、そもそも学園から出ること自体少ない時点で意味ないですわよね」

「あくまでもかかる火の粉を振り払うだけで、かからなければ向かう事もそんなにないでござるな」

「で、最後の手段に関しては、予想しやすかったしのぅ…‥‥まぁ、何人かは何処かの間諜、諜報部隊などじゃろうけれども、質がいまいちじゃな。聖女の時も、同様な輩が送って来たが‥‥‥質が低下したのかのぅ」


 なんというか、この面子がそろっている時点で、相手がどの様な手段を取ろうとも実質打つ手はないに等しかった。


「まぁ、叙爵の時まで、あと3日程度ですネ。それまでご主人様へ害をなそうとする者たちを捕縛し、式ついでに出していきましょうカ」


 なお、この捕縛活動はディーに内緒だったりする。


 これは彼女たちなりの、彼への好意への示し方の一つ。


 せめて、安心して睡眠できる時ぐらいは確保してあげたいと思い、真夜中であろうともこうして動くのだ。


 こうして今夜も、哀れな不審者共は続々と捕縛されていくのであった…‥‥



「‥まぁ、できればこういう事よりも、ご主人様の側で安心したいですけれどネ」

「それは分かりますわね‥‥‥こんな輩に時間を割くよりも、できれば一緒に寝たいですわ」

「気持ちは分かるでござるが、根絶をさせたほうが早そうでござる」

「いっその事、呪術で一人当たり一呪いで送り返した方が良いような気もするがのぅ」

「新しい単位でありんすね。それはそれで、面白そうでありんすが」

「グゲェ」


…‥‥この日から、ちょっとずつ不幸になる者たちが増えたというのも、また別のお話。


なお、呪い返しなどの心配はしなくても良かったりする。

人を呪わば穴二つというが、呪い返しが来ても、既に死んでいる相手に効果はあるのだろうか。

まぁ、そもそも呪い返しをできるような相手がいるとも思えないが…‥‥こういうのを送り込んできている時点で、できない人の方が多そうである。


‥‥‥なお、この後明け方ぐらいに、ディーへの膝枕などに関して、順番決めの一新なども行い、ちょっと争ったのもまた別のお話。

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