100 それが目に見えて
…‥‥いよいよ長かった夏季休暇も終わり、新学期が開始した。
とはいえ、直ぐに授業が開始されるわけではなく、とあるものが存在する。
そう、新しい学期開けでもあるが、出された課題をギリギリまでこなし、研鑽を積まない輩もいるだろう。
ゆえに、そのような輩の発見のためにも‥‥‥‥
「当然のように、しっかりと新学期早々テストが用意されているわけか…‥‥」
「夏季休暇という莫大な時間で、テストの作成もかなりできているようデス」
なんというか、最初の共通筆記テストは、最初のテストの時に比べて内容が濃くなっていた。
けれども、真面目に着実に、こつこつと夏季休暇の間に研鑽していればさほど問題は無い。
問題ある人たちの場合は、終了後に魂が抜け切ったようになっていたが…‥‥うん、自業自得である。
そしてさらに、各学科ならではの他のテストもあり、召喚士学科では召喚獣たちの身体検査があり、その審査基準はどうやら厳しめになっていた。
何故ならば、長い休暇の間に怠惰に過ごすような輩がいる事で、召喚獣たちも怠惰に過ごし、肥満などの運動不足が見られる可能性が大きいからである。
人であろうとモンスターであろうとも、運動しなければ大抵太ってしまう。
一部例外はあれども、やはりきちんとした計測は必要であり、容赦なく増減が見られた者たちはチェックを入れられていく。
「そのあたりは、私たちにとっては問題ないですけどネ。私はメイドゴーレムですから増えようがないですシ」
「儂の場合は、そもそも死体じゃからな。肉体の腐敗はあるかもしれぬが、それでもすぐに治せるので問題ないのぅ」
「グゲェグゲェ」
ノイン、ゼネ、リリスの3名は、そのあたりは問題ない。
生ものというわけではない利点がここに出たようである。イヤ、リリスの場合はちょっと生ものに近いが‥‥‥そのあたりの議論は難しい。
一方で、生ものと言えるカトレア、ルビー、リザの3名は…‥‥
「ふふふ、わたくしもそう簡単に自身のバランスを崩しませんわ」
「拙者も特に変動はござらん。日々鍛錬は欠かさぬし、そもそも太りにくい体質でござるからな」
「わっちはそもそも、今回が初めてでありんす。計測しようにもその前後の記録はないでありんすからね」
こちらはこちらで、問題は無いらしい。
常日頃油断せずに、自己ベストな状態を保っているそうである。
「そもそも、己の身体の都合で、マスターに負担をかけては意味ないですわよね」
「戦闘不能時に敵が来たら不便じゃからな」
とはいえ、この後の検査にある『基本能力テスト』、『最大火力テスト』に関して言えば、問題しかなかった。
‥‥‥先生方、これどう点数を付けるのだろうか。
相も変わらず基本応力がずば抜けているのは当然であったが、最大火力がまさか向上しているとは思わなかった。
「『原子分解砲』‥‥‥扱い方を間違えれば、ちょっと変なところへつなげかねませんネ」
「どこにだよ!?粉砕以上にひどいことになっているじゃん!!」
「『混沌毒草の花粉』‥‥‥これ、人に当てるとちょっと不味いかしら?」
「不味い以前の問題!!アンデッド化するよりも危険すぎる!!」
「拙者は普通に火力が向上したようじゃな」
「あー‥‥うん、向上したと言えば向上したというか、まだまともそうに見えるのはどうなんだろうか」
「『外道魔法』‥‥‥は、ちょっと見せられんのぅ。禁術じゃな、コレ」
「犯罪になりかねないんだが!!」
「グゲグゲェ!!」
「リリスの場合は、全員の攻撃耐久だけど…‥‥耐えきったというか、無傷なのがすごいな」
「わっちの場合、水をこうやってかき混ぜ…‥‥様々な酒が出来たのじゃ」
「飲めないんだけど‥‥‥というか、いくつかおかしい酒が混じってない?」
「回復薬入り酒、毛生え薬酒じゃな」
…‥‥夏季休暇明け早々、また教師陣に負担をかけそうな結果が飛び出るのであった。
期間はそこまで空いてないと思うのに、前回以上の結果である。
胃痛軽減酒とかないかな‥‥‥いや、まだ飲めないけど。