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閑話 前夜の部屋確認

…‥‥夏季休暇も終了一日前に、ディーたちは村から出て、学園の寮へ到着した。


 宿題も何もかもすべて運び終え、明日の休暇明けの始業式の前に、寮室の整備を行う。


 何しろ、夏季休暇中はずっと放置されていた分、汚れが貯まっていそうだとも考えていたのだが‥‥‥



「あまり汚れていませんが、掃除は楽しいものデス。メイドとして、こういう仕事が似合うのデス♪」


 ノインが鼻歌交じりにそうつぶやきながら、室内を手早く掃除していく。


 メイドゴーレムだけに、そのメイドの本領を発揮してか、元々そこまで汚れていなかったらしいこの部屋は今、キラキラと輝くかのように、綺麗に掃除されていく。


「というか、本に塵とかそう言うのがほとんどないな…‥‥放置していたら、ちょっとは積もる物だと思っていたのだが」

「ご主人様の部屋を、放置して汚れまみれにするようなことはしないのデス。対策は色々あったのデス」


 答えながら、腕を伸ばし、あちこちを乾拭き・水拭きしていくノイン。


「ふむ、寮室とはこういうのものでありんすか。数多くの部屋があるでありんすなぁ」

「いや、ここがおかしいだけだからな」


 リザが感心するかのように、室内の他の扉を開けてそうつぶやき、俺はツッコミを入れる。


 ノインの魔改造で、この部屋が異常におかしくなっているだけなのだが…‥‥新鮮な反応ともいえるか。


「わたくしの部屋の植物たちも大丈夫ですわね。菜園で育てていた、作物も良い成長具合ですわ」

「室内に何で菜園が‥‥‥あれ、何このドクロマークの立て札がある部分は」

「色々と使えそうでも危ない植物を植えている場所って意味ですわ。主に毒草ですわね」

「それはアウトだろ!!」


 毒草栽培って、違法薬物並みにアウトじゃないのか?え、毒と薬は表裏一体な面もあって、正しい使用方法だと薬にもなる?‥‥‥なら良いのか?


「拙者の部屋も、特に何も異常は無いでござる。溶岩がコンコンっと湧き出したままでござるしな」

「なるほどなるほど‥‥‥ん?溶岩?」


 覗かせてもらうと、ルビーの部屋の片隅に、確かに溶岩が貯まっていた。


 こぽこぽっとあぶくを出して煮えたぎっており、その横には滝のようなものも作られている。


「拙者用の溶岩風呂でござる。ヴイーヴルという種族柄、熱耐性もあるのでござるが、全身を一回浸ける事で鱗の艶を増すのでござるよ」

「うん、そのあたりはもうツッコミを入れないからな」


 まぁ、世の中には電気風呂だとかそういうのものもあるだろうし、溶岩風呂も特殊な風呂の一種と思えば良いだろう。なお、普通に風呂にも入るが、この溶岩に浸かるだけに少々物足りないのだとか。


「ついでに儂の部屋も、大丈夫そうじゃな。休みで放置しておったが、特に何もないからのぅ」

「‥‥‥ゼネはもうちょっと、家具を増やした方が良いような」


 ゼネの部屋…‥‥シンプル過ぎる。


 あるのが棺桶のようなベッドと、小さな本棚、読むための椅子と机ぐらいしかない。


「儂、元聖女じゃからなぁ‥‥‥物欲は乏しい方なんじゃよ。元々ダンジョンマスターになる前にも放浪の旅じゃったし、居住を構えることが少なかったのもあるのじゃ」

「そう言えばそうなのか」

「まぁ、あったらあったで、いつの間にか紛失していたのじゃが‥‥‥主に衣類が多かったのぅ」

「‥‥‥」


 何だろう、遠い目をしながら言われると、なんか察してしまった。


 そう言えば、ゼネには超シスコンとも呼べるような妹がいたような…‥‥どういう訳か先日現れ、追いかけていた時の記憶があったが、十中八九その妹のせいではなかろうか。


 だが、それはそれで何故盗るのかという疑問も生まれるのだが‥‥‥考えても誰も幸せにはならないので、俺はそれ以上ツッコミを入れるのを諦めておくのであった。


「酷い時は下着全部無くて、風が強い日じゃったから色々やばかったのじゃ…‥‥」

「それ苛めの類じゃない?」


 訂正、ツッコミどころが多すぎて疲れ切るのが目に見えているから、抑え気味のツッコミしかできないな。



「グゲェグゲェ」

「ああ、そう言えばリリスの場合はこっちの部屋だったか」


 扉を開ければ、そこはリリスの部屋。


 ただしあるのは、ふかふかの大きなクッションぐらいであり、ゼネの部屋以上のシンプルさである。


 というのも、その本体でもある箱の中に色々と入れられるので、置く必要性自体がないのだ。


「グゲェ」

「でも結局あまり使わないんだよなぁ…‥‥部屋の片隅でお前寝ているもんな」

「グ!」


 リリスの場合は、元々ミミックでもあるせいか、いつの間にか部屋の片隅にいたりするのだ。


 待ち伏せとかそういうのではなく、ただ単にそこが落ち着くようだが‥‥‥まぁ大人しいから良いだろう。


「なんというか、様々な部屋があるでありんすな。ダーリン、将来は大家にでもなる気でありんすか?」

「諜報の仕事に就く気だからな?大家とかそう言うのは、なるつもりはないし、そもそも部屋を作ったのはノインだからな」


 あははっと、部屋を巡って呆れたように笑ってそう言うリザに、俺はツッコミを入れる。


 引き払う時はきちんと全部戻すようにするし、やるとしてもまともな相手だけにしたい。


「っと、ちょうど掃除が終わりまシタ」


 ちょうどいいタイミングで、ノインが掃除をし終え、用具を片付けていく。


「ではリザ、貴女の部屋も作りますが、何かリクエストはありますカ?」

「ん?わっちは別に、ダーリンと一緒の部屋であれば作る必要もないのでありんす」

「ダメデス」

「でも」

「ダメデス」

「あの」

「ダメデス」

「…‥‥わかったでありんす」


 ぐいぐいっとノインに迫られ、リザはあきらめるのであった。


…‥‥同室に関してはコメントはしないが、すごい押していたな今。


 何にしても、この日また一つ部屋が増えたのであった‥‥‥‥



「ちょっと残念でありんすが…‥‥まぁ、夜中にでも…‥」

「あ、先に言っておきますが、夜間用ロックもかかりマス」

「用意周到というか、なんでありんすかその対策…‥‥あれ?そう言えばノイン、そちらの部屋は?」

「私の部屋はありますが、常人は入らない方が良いですヨ」


‥‥‥ちょっと待てい。どんな部屋にしたんだノイン。なんか気になるような、見たらやばそうな、そんな予感させられるんだけど、どうすればいいんだ。



ノインの部屋は、気にしない方が良いだろう。

色々とメカニックな音とかが聞こえるが、何でもない部屋だと思いたい。

というか、室内が色々とおかしな仕掛けだらけだと思うのだが…‥‥何をどう改造したらこうなるんだ。




‥‥‥っと、ディーはツッコミを入れるが、一番忘れてはならないのは、外部から見てもこれだけ部屋が広がっているとは認識されない事実の方に、ツッコミを入れるべきであろう。

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