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99 だからこそ、黙っていたりもする

‥‥夏季休暇終了までもう数日となった頃合い。


 その時期になると、いくつかの家‥‥‥主に学園からの生徒たちがいる家では、夏季休暇の終わりに近づくにつれ、真夜中に明かりが増えていたりするのだ。


 その理由としては、遊び惚けたが故の大きなツケ。


 すべてを終わらせるには時間が足らず、馬車での移動時間も考えると余裕もなく、だからこそ真夜中であろうとも徹夜で行う者たちもいるのだ。


 そんな中で、ディーの場合は普通に計画通り進み、余裕をもって終了しているので‥‥‥





「馬車に乗って向かう前に、この新しい装備の実験か?」

「そうデス」


 余裕もあるので、先日のボルテニックドラゴンの素材を使用した、ホバーブーツに続く、新しい装備を俺は試着していた。


「ガントレットじゃないかなこれ?職業『武闘家』とかの人が良くつける類だよな?」

「まだ余分な部分が多いのでその形状ですが、いずれは手袋サイズにする予定デス」


 渡されて試着したのは、右腕のみしかないガントレット。籠手とも言われることがある武器で、主に打撃の威力を増すためにとかで利用されるらしい。


 ついでに言うならば、村でなんか騒ぎが起きた際に使用される武器の一つらしく、最近だと風呂場覗きをもくろんだ奴がいて、その奥さんに星にされたとかなんとか…‥‥うん、まぁそれはどうでもいいか。


 何にしても、両手ではなくて片腕だけのものなので、少しバランスが悪い。


「でも、そこまで重くもないな」

「開発には、拙者も力を入れたでござる」

「ついでにわっちも、色々とやったのでありんす」


 感想を述べると、ルビーとリザがそう口にした。


‥‥‥この二人も加わった開発って時点で、なんか予想できた気がする。


「左の方はまた別のものの予定ですので、今はその右だけデス。とは言え、それだけでも相当な代物になりまシタ」

「相当なものって、なんか不安になるんだけど」

「とりあえず、説明いたしマス」


 ノインの説明によれば、この右腕だけガントレットはブースター機能搭載の打撃補助道具。


 ホバーブーツのような特異性は少ないが、それでも機能はそれなりに搭載しているそうだ。


「ブースターな時点で、それなりの枠を超えてないか?」

「ただ殴るよりも、威力増加させるレベルデス」


 試しにという事で、そのあたりにあった岩を実験台にしてみる。


 安全のために目の保護をすると言う安全グラスというものも渡されたので装着し、一発やってみる。



「せぇのっと」

ゴゥッツ!!


‥‥‥‥軽く振りかぶったつもりが、今なんか出た。


 手首のあたりからにょきっと小さな筒が生えて、火を噴いて加速させ、びりっと電撃が流れたような感触もして…‥‥


ドッゴォォォォォォン!!


 哀れ、岩は木っ端微塵。


 破片どころか文字通り粉砕され、粉と化したどころか、跡地が凄まじいことになっていた。


「…‥‥勢いと威力がやばいのだが!?今絶対に腕の全力を越えたというか、やり過ぎた感じがするんだけど!?」

「ジェットエンジンブースターを搭載したので、殴る際に勢いが増しまシテ」

「拙者の火を濃縮した弾を装填したので、その分さらに火力も増したのでござる」

「ついでにわっちが、電気マッサージとか言う提案をして、ダーリンの腕に負担をかけずに、なおかつ瞬発的筋力増強効果を発揮するようにしたのでありんす」

「威力を増し過ぎだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ついでにロケットパンチも搭載しているので、遠距離も対応可能なのデス」

「ついでにって、それも同じだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



…‥‥夏季休暇も残り少なく、宿題を終えて楽ができると持っていたのだが、全然楽にさせる気は無いようである。


 威力が少々どころかとんでもない代物なので、改善するまではこの打撃増幅機能だけは封印することにしたのであった。


 ハリセンを出せる機能があったのはまだよかったぐらいだろうか。というか、何でこんなものを搭載しているのやら…‥‥



「私達が暴走した場合に、ご主人様に止めてもらえるようにと善意で作成したのデス」

「でも、何でこんな威力にしたのでござるよ…‥‥」

「一撃で、わっちたちの体沈んだでありんすな」

「本当に何でこんなものを搭載しているんだよ!!ガントレットの意味ないじゃん!!」


 まぁ、止めやすくなったのは良い事なのだろう‥‥‥‥多分。でも、自重を覚えるまではちょっと埋まっておけ。あとリザ、お前の場合それどういう風に埋まっているんだよ。蛇の体部分の長さを差し引いても埋まり方がおかしいのだが。










…‥‥ディーがもはや慣れたツッコミと、新しいツッコミ道具を手に入れてしまったその頃。


 デオドラント神聖国にある、神官たちによる政治を行う議会室の場では、とある者たちが掌握を完了していた。


「政治把握率、100%を確認」

「蠢いていた、腐敗した者どもは全て証拠を確認。いつでも廃せます」

「まぁ、待つですの。捨て去る予定者たちは、最後まで利用させてもらうのですの」

 

 各自が報告書類をまとめ上げ、読み上げていく中で、彼女達の中心にいたその人物はそう口にする。


「これもあれもそれも、全て私たちのお姉様をこの国へ迎えるために必要な駒…‥‥裏切り、腐敗、人間失格、そう言った輩でも利用は出来ますの」

「それもそうですね…‥‥危害を加えられる可能性はありますが」

「加えた瞬間に、この世からオサラバさせる用意はできてます」

「ふふふ、ここまで把握すれば、大体の準備が出来たも同然なの」


 ふふふふふふふふっと、それぞれが笑みを漏らし、笑い声をあげ、議会室には不気味な雰囲気が漂う。


「そう言えば、お姉様を使役している召喚士についての情報は、どうなりましたの?」

「王国の方では情報統制をかけ始めたようですが‥‥‥まだまだ甘いようです」

「しかも、存在を把握してる帝国、森林国の方でも動きがみられ、その筋からも入手できています」

「ふふふふふ、なら良いの」


 人の口に戸は立てられぬというように、情報はいくら何処かで守ろうとしていても、いずれはバレる。


 というか、先日のゲイザー騒動の時点でしっかりこの国でも把握していたようで、先日断頭台や奈落の底へ消えた者たちが利用しようと企んでいたらしく、そちらからも情報を入手できていたのだ。



「…‥‥我らが行動指針は!!」

「「「「偉大なるお姉様をここへ向かえ、共に過ごすために!!」」」」

「そのためには!!」

「「「「邪魔者を排しつつ、お姉様が不快にならないように配慮しつつ!!」」」」

「では、そのためには!!」

「「「「まずはお姉様の主となっている人物をこちらへ引き込めるようにして、続けてお姉様をここへ獲得するために動くべし!!」」」」


 一致団結し、叫び、確認しあい、彼女達は意思を一つにする。


 大昔に失われた、彼女達の愛の対象。


 だが、今世になって眠りから覚めて見れば、その対象はしっかりとモンスターの身になってしまったものの、彼女達にとっては愛するべきお姉様であり、二度と失いたくない存在。


 ゆえに、確実に引き込むために、彼女達は画策を練りあげていく。


 くふふふふふう、うふふふふふ、ふへへっへえ、ふんすふんすふんすぅ!!っと次第に鼻息荒く、雰囲気も混沌とした状況になりつつも、その得られる日を待ちわびて動き始めるのであった‥‥‥‥



「…‥‥そう言えば、妙な組織の報告もありました」

「ああ、森林国の方でのものなの。その組織は確実にお姉様へ害そうとする可能性もあるし、潰すためには各国の協力を惜しまないようにするの」


‥‥‥そしてそのついでにと言わんばかり、とある組織がその彼女達の行動のとばっちりを喰らうのであった。

いよいよ新しい学期開け。

休暇も終わり、学園へ戻るが数が増えている。

何にしても、卒業までにこれ以上増えることはないと思いたいが‥‥‥‥




‥‥‥ついでに色々と、他で動きがあるようだ。何が起きるのやら‥‥‥

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