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死にたがりの異世界転生(仮)  作者: 十ヶ目
第一章 リンゴとナイフ。
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出会い 2

 よく見ると部屋は檻のようなもので綺麗に半分ずつ区切られていた。まさに牢屋だな。

 少女の綺麗な赤髪。服はワンピース──元々は白の綺麗な色だったのだろう。だろうが、汚れのせいで少し小汚ないワンピースを着ている。そのワンピースのせいか余計に綺麗な赤髪が目立つ。


 見た目は十~十二歳ぐらいか。服装の汚さから、丁寧には扱われていない? つまり、閉じ込められている……?


 無言で少女と見つめ合い数秒が流れた。

 無言に耐えきれなくなったのか、少女は口を開く。


「アナタ……誰……ですか?」


 ふむ、まあ当然の質問だな。


「私は」と口を開き固まる。私は誰なんだ?

 いや、記憶喪失とかそういうのではない。この質問、なんと答えるのが正解なのだろう。

 少女の質問に頭を悩ませる。答えの遅さに少女は更なる質問を投げ掛けてくる。


「私は……どうなってしまうのですか?」


 この質問と顔色でなんとなくの予想が確定に変わる。


 この子は捕らわれているのだろう。


「大丈夫。私は敵ではないよ」

「嘘です……。あの男も、味方のフリをしてこんな所に」


 既視感。なにか意図的なものを感じる。私はあの神とやらに運命操作でもされてるんじゃないのか。


「本当だ。まあ、君が信じなくても私には関係はないのだが」


 敵ではない。だが、味方でもない。この子を助けたせいで面倒に巻き込まれるなどもっての他。少女には悪いが無視しよう。


「私を、どうするのですか?」

「どうもしない」

「なら、何をしにここへ?」

「偶然だよ」


 少女の質問を適当に返しつつ部屋を物色する。

 ふむ、いくらか物色したが何もない。あと探していない所と言うと檻の向こう側──少女の閉じ込められている側か。入り口は有るが鍵のようなものが見える。どうしたものか。


「あの、本当に、何をしにここへ?」

「だから、君にはなにもしない。適当にくつろいでいてくれ。それより、この檻は開かないのか」


 少女は少し黙る。いや、何かを考えているのだろう。

 その間に私は檻の鍵穴を見る。古いタイプの鍵穴だ。道具があれば開けられそうだが、手ぶらなんだよなあ。もう本当に嫌になる。


 私がため息を吐いた時だった。少女が檻の前まで──私の前まで歩いてくる。


「あの、名も知らぬ方」

「なに」

「私を、私を助けてください」

「どうした急に」

「アナタは……どうやらここの悪い人達とは違うようです。私もアナタを見たことがない。それに、敵ではないと仰られていました」

「その瞬間は信じようとしなかったのに随分と調子がいいな」

「いじわるを言わないでください。私も、怖かったのです」

「さらに意地悪を言うが、敵ではないが味方でもない。すまないな」


 少女の目が潤むのを私は見逃さなかった。

 少女は「そうですか」と弱々しく呟くと私に背を向け三角座りをする。

 たびたび震える少女の肩を見て、またため息がでた。

 どうしたものか、これは面倒事だ。


 ……どうしたものか?


「ははっ」と思わず笑ってしまう。

 その笑い声を奇妙に思ったのか、はたまた癇に触ったのか、少女はこちらをチラ見する。


「君の家にナイフはあるか」

「な、ナイフ……? は、はい。あります」

「交換条件だ。私は君をここから助ける。その代わりに君は私にナイフを差し出す。どうだ?」

 少女は少し考える。奇妙だと思われたか? 確かにナイフが欲しいだなんて意味がわからない条件だ。私なら裏を考えてしまう。

「わかりました。ナイフを差し出します。だから、私をここから救ってください」

「交渉成立だ」


 私が笑ってしまった理由。

 どうしたものか。と悩んでしまった時点でもう駄目なのだ。この子を置き去りにする選択肢をとった場合、後悔が一生私の心を曇らせる。


 一生といってもどうせすぐに死ぬんだけど。なんて思いまた笑った。

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