最終話 僕は笑う花が好き
さて、と少し複雑な顔で考えていた杉原が、冷静な声を出した。
「そろそろ、この状況を現実的に処理することを考えましょう。今の状況で警察を呼ぶわけにもいきません」
「なんで? 竹中さんの携帯に録音したやつは使えないの? 思いっきり自白してるじゃん。それに薬の現物も、不正の証拠書類も、小百合さんの自殺偽装の証拠もあるのに」
えっ、と驚く小百合に、杉原が嘆願書の内容を説明すると、その文書を確認した小百合が絶句する。杉原は話を続けた。
「録音されているのは、逢坂と杏梨さんの会話。河出さんと南雲さんを殺したこと、『悪い薬』を密造したこと、竹中さんに眠剤を飲ませて、自殺に見せかけて殺そうとしていたこと、これらを認める発言が入ってる」
「あらためてリストアップすると、ほんとにヤバい人じゃん。早く捕まえてもらおうよ、おまわりさんに」
「ただ、これが逢坂と杏梨さんの会話であることを証明していいのか? この録音を証拠として使うなら、杏梨さんは何者か、どうしてこの状況にいたのかを、はっきりさせないといけない。でも、それをはっきりさせると深見さんも捕まる」
それは絶対だめ、と杏梨と乃梨子が声を揃える。困ったような顔で杉原が続けた。
「竹中さんを救出するだけならともかく、逢坂を逮捕してもらうとなったら話は別です。深見さんが今まで調べていた方法だって、ウシタ製薬の施設に忍び込んだり、他人の家からプフランツェを盗み出したり、説明しにくい話のほうが多いです」
「ここからみんなで逃げて、警察に匿名の電話をかけるとかじゃ駄目なの? 逢坂はこんな奴で、人を殺してます、さらに証拠もあります、捕まえてふん縛っておきましたから取りに行ってくださいって」
簡単そうに話す守口に、杉原がため息をついた。
「似たようなことを、逢坂が竹中さんにやろうとしてたんだよ。今まで竹中さんを陥れようと根回ししてたんだし、逢坂の証言次第では共犯扱いされる可能性もある。プフランツェの薬物混入を、竹中さんが知らないほうが不自然なんだから」
「じゃあ、どうしたらいい? さすがに逢坂って人を見逃したらいけないと思うし、かといって殺して山に埋めるとかはしたくないし僕」
「当たり前だ。だから問題なんだよ。深見さん、杏梨さん、乃梨子さんは警察に接触できない。でも、俺と守口と竹中さんで、警察に納得のいく説明をするのは無理だし、逢坂は杏梨さんたちの顔を見ている。証言はまったくかみ合わないものになる」
「逢坂も、本当のことなんて言わなさそうだしね。録音聞いてるかぎりじゃ」
えげつない性格だよね、と肩をすくめる守口に、だろ、と杉原がため息をついた。
「俺達は部外者だから、竹中さんがほぼ単独で『違法薬物』『不正の証拠書類』『遺書にもとれる嘆願書』だけで逢坂を突かなきゃならない。録音は使えないんだから」
「いい。俺が行く」
深見が険しい表情で杉原を遮った。驚く杏梨と乃梨子を見ながら続ける。
「俺が本当のことを警察に話せば済む話だ。実際にお前たちを連れ去って、盗みをさせたのは間違いないことだ」
「いやです! どっちも、お願いしたのは私たちです。お手伝いしたかっただけです」
腕を掴んで訴える乃梨子の頭に、深見が手を置いた。
「そのかわり、お前たちが救済されるように、計らってもらう」
「絶対いや! 私、そんなことのためにがんばったんじゃないもの」
杏梨も泣きそうな顔で縋りついた。その肩をぽんと深見が叩く。
「ほかに誰が、このことを告発する? このままだと小百合は共犯、もしくは犯人にされる可能性がある。それにお前たちは、いつかはどこかに帰らなきゃならない。学校にも行け。お前たちは馬鹿じゃない。もっと明るい道を堂々と歩ける」
「ずっと一緒にいられないのはわかってます。でも、深見さんが警察に捕まるなんて絶対いやです」
泣きながら乃梨子が深見の腕を強く握る。杏梨も深見の服を掴んだまま訴えた。
「私たちが邪魔なら、出ていきます。だからこのままでいてください。深見さんは悪い人じゃないです。私たちのせいで警察に捕まるなんていやです。そんなことになるくらいなら、逢坂なんて人、あのまま山に捨てていいです」
「よくないよくない」
守口と杉原が思わず声をそろえて言った。杏梨は泣きながら続ける。
「深見さんだって、小百合さんと会えなくなるじゃないですか。どうしてわざわざそんな、価値のない、つまらない選択をするの?」
「杏梨さん」
近付いた小百合が、杏梨の前に屈みこむ。その両手を握りながら、諭すように言った。
「私も、杏梨さんたちと会えなくなるのは嫌です。私だって深見さんが捕まるくらいなら、代わりに出頭したいくらいです」
え、と杉原たちが目を見開く。深見も焦ったように小百合を見た。杏梨が涙に濡れた顔を上げると、小百合は目を細めて微笑んだ。
「深見さんにとって、一番避けたい最悪の状況は、杏梨さんや乃梨子さんの人生が台無しになってしまうことなんだと思います。深見さんだってあなたたちが大切だから、感情で決めようとしているんです」
「いや。お願いだから、そんなことしないで」
杏梨が両手で顔を覆った。杉原が穏やかな声で話す。
「でも、自分の存在を主張できるようになれば、私たちも、堂々と君たちを助けることができるんですよ」
杏梨は顔を覆ったまま、いやいやをするように頭を振る。乃梨子は涙を拭い、震える声で守口に聞いた。
「こうするしかないって、守口さんも思うんですか」
ん、と守口が困ったように指を顎に当てて考える。杉原や深見の顔をちらりと見ながら、言いにくそうに口を開いた。
「僕も、乃梨子ちゃんたちは隠れて暮らすより、学校に行くべきだとは思う。でも深見さんが悪い人じゃないのは僕もわかるし、逮捕されるのはさすがに嫌なんだよね。……その、正しいやりかたじゃないし、賢いやりかたでもないんだけどさ」
乃梨子が瞬きして首を傾げる。守口は恐るおそる続けた。
「深見さんは、乃梨子ちゃんと杏梨ちゃんの存在を隠さなきゃいけないんだよね。どんな理由であれ、家出した当時小学生の女の子を連れ去ったら犯罪になるから。それなら逆に、言い逃れできない、完全な冤罪を作るってのは、どう?」
ああん? と杉原が睨んだ。深見も怪訝な表情を隠さない。気まずそうに守口が小さく付け足す。
「なんて、考えたりもしたんだけど」
「……もっと、詳しく教えてください」
乃梨子が真剣な目をする。杉原と深見の視線に耐えながら守口は言った。
「乃梨子ちゃんと杏梨ちゃんは『ここでずっと逢坂に監禁されていた』って警察に証言するんだよ。それなら、逢坂とか南雲とか、河出さんのことを二人が知っててもおかしくないし、携帯に入ってる逢坂と杏梨ちゃんたちの会話も、そのまま使える」
いやしかし、と杉原が混乱しながら考え込む。守口は頬を掻きながら続けた。
「録音中は二人とも、竹中さんのことを『この人』って言ってる。逢坂が連れてきた『眠らされた女の人』を助けようとした二人が、『隙を見て逢坂を取り押さえた』ってことにしても、あんまり変じゃなくない?」
うーん、と納得しかけている様子の杉原に、守口は早口で言った。
「それにさ、ここは乃梨子ちゃんたちが住んでた日辻町の山の上なんだよね。知らない街で制服買ってもらって、勉強教えてもらいながら、しょっちゅうコンビニでおやつ買ってたっていうよりは、つじつまがあうっていうか、みんな信じると思うんだけど」
どうかな、と守口が首をすくめる。ぽかんとしていた乃梨子も、口元に指を当てて真剣に考える。
「こいつらに、そんなことをさせる訳にはいかない」
動揺しながらも深見が守口を睨む。乃梨子は守口を庇うように前に出た。
「でも、深見さんが悪い人にされちゃうより、逮捕されちゃうよりいいです。……ね、もういいよね、杏梨」
「乃梨子は、……いいの?」
「杏梨が一緒にいてくれたから、もう平気。帰る場所がどこになるかわからないけど、深見さんのところじゃだめだよ。いつかは、ちゃんとどこかに帰らないと」
乃梨子がほんのり笑った。杏梨の声が震える。
「でもここからは、一緒じゃなくなるかもしれない。……本当は私、乃梨子と一緒じゃないと怖かったんだよ」
「ちょっとわかってたけど、一緒にいてくれたから、私はいられたんだよ、今まで。でも、もう少し一緒にがんばろう。こういうの考えるの、杏梨のほうが得意なんだから」
「待て。お前たちにこれ以上、嘘をつかせたり、危険な真似は」
危険じゃないです、と深見の言葉を強く遮り、乃梨子が主張した。
「私たちにとっての最悪は、深見さんが悪い人として警察に捕まることです。これは、最悪を避けられて、小百合さんが犯人にされることもない、危険のない方法です。深見さんが言ったみたいに、私たちはどこかに帰るんです。学校にもちゃんと行きます」
ね、と乃梨子が笑うと、頷いた杏梨はそのまま強気な表情で話しはじめる。
「私たちの話を、警察が信じてくれる可能性は高いですよね。それなら、ここに警察を呼んじゃえばいいんです。そして私たちが、小百合さんは被害者だって証言します。そのかわり小百合さんも、私たちが逢坂に監禁されていたって、嘘の証言をしてください」
えっ、と小百合が目を見開く。杏梨はそのまま続けた。
「小百合さんは、私たちを知らなくていいんです。眠らされてここに運ばれて、目が覚めたら、私たちが逢坂を取り押さえていたんです。私たちはずっとここに監禁されてて……ときどき外に出してもらって、ビスケットを食べてたことにすればいいかな?」
「だいたい合ってるよね」
守口がにやりと笑う。杏梨はさらに続けた。
「逢坂は『この施設の工事が終わってるから河出さんに会えない』って言ってました。調べれば死体は出てくるはずです。それを逢坂が小百合さんのせいにしようとしても、私たちが違うって言います。逢坂と私たち、警察がどっちを信じるか勝負です」
ね、と杏梨がにやりと笑った。杉原は冷静な表情で頷く。
「それなら、慎重に口裏を合わせないと。偽装はバレやすいですから。そして、その先のことも考えないといけません」
「……そのあとのことも、考えないといけないんだね」
杏梨が呟くように言った。
「小百合さんを助けてから、あとのことを考えようって話してたもんね」
乃梨子も真剣な顔で続けた。
「私は、『私の家じゃない場所』で、がんばってみます。杏梨と一緒にいられなくなっても、大人になるまで我慢します」
「恐らく、児童福祉施設の類に入所することになると思います。二人の失踪や家庭環境は、多少なりとも事件として周囲に知られていますから」
「施設に行けるなら、私も行きます。乃梨子と違うところに行くことになっても」
「ただし、本気でこれを実行するのであれば、君たちは、今までのことを、すべて捨てる必要がありますよ」
そう言って杉原は杏梨の顔をじっと見る。わかりました、と杏梨は深く頷いた。
「……深見さんに繋がるものは、なかったことにします。全部」
「……では、確認を。私や守口は当然として、深見さんのことも君たちは知らない。本来なんの接点もないので、これをごまかすのは難しいことではありません」
「はい」
「そして竹中さんは、この子たちを知らないし、この子たちも竹中さんを知らなかった、これを貫いてください。年齢的に、二人の顔が報道される心配はないと思いますが、警察が二人の写真を見せて、逢坂の周辺に聞き込むくらいはするかもしれないですからね」
杉原の言葉に、杏梨がそのまま続ける。
「どうやってここに来て、今までどうしていたのかは、私たちも怖くてよく覚えてない。食べ物と水は与えられていた、でいいですか?」
「いいですね。面倒なことは、とにかく怖くて覚えていないことにしましょう」
「小百合さんの真似ですね。説明したくないことは、『怖かったので覚えてない』です」
杏梨は小百合をちらりと見て笑う。杉原が眼鏡のブリッジを押さえて頷いた。
「裏設定としては、ここに忍び込んだ君たちが、見てはいけないものを見てしまって逢坂が監禁した、で筋は通ると思います」
「はい、逢坂の事情は、監禁されていたから私たちも知っていた。私たちの証言と録音で、小百合さんは被害者です。『悪い薬』もここにあります。あ、でもプフランツェだけは、持ってきてないんですよね」
「プフランツェについては、言わなくていいんじゃないかな。逆にそのほうが竹中さんに有利かも」
守口が考えながら言った。それもそうだな、と杉原も納得する。杏梨は教科書を暗唱するように言った。
「私たちは、深見さんも守口さんも杉原さんも知らない。知っているのは逢坂だけ。小百合さんには今日初めて会った。小百合さんは逢坂に眠らされてここに連れてこられた。殺されそうだったから隙を見て私たちが助けた。プフランツェのことは知らない」
うん、と乃梨子が力強く頷き、確認のために再び録音を再生する。あっ、と気まずそうに杏梨を見た。
「……録音の最初に『秘密の関係です』って入っちゃってるけど」
「私たちのことかな?」
「嘘じゃないね」
守口が頷いた。あとは私達の痕跡を消さないと、と杉原が部屋を見回す。まだ困惑している小百合に杏梨が言った。
「小百合さん、お願いです。共犯になってください。このまま深見さんが警察に捕まって、ネット通販の購入履歴とかを調べられたら、すっごく大変なことになるの」
ちょっと待て、と顔色を変えた深見が慌てて杏梨を制する。たしかに、と杉原も二人を見ながら言った。
「実際、その制服から足がつく可能性があります。今、身につけているすべての所持品は、ここに残さないほうがいいでしょう」
「……服、脱ぐの?」
杏梨が不安そうに杉原を見た。乃梨子も自分の着ている服を見つめる。女子中学生の監禁に『裸にされていた』というオプションが付くのは、さすがにやりすぎのような気もする。全員のあいだに一瞬、微妙な空気が流れた。あの、と小百合が女神のような声で言う。
「治験で使う検査衣でよければ、ここの施設にあるはずですけど……使いますか?」
「それしかない」
「それでお願いします」
思わず杉原と守口が頭を下げる。頷いた小百合は乃梨子と杏梨を別室へ連れていき、これなんですけど、と申し訳なさそうに薄い服を渡した。二人は珍しそうにそれを受け取り、はしゃぎながら着替えはじめる。
男子が自分たちの痕跡を残さぬよう念入りに作業していると、女子たちが戻ってきた。検査衣に着替え、脱いだ服を抱えている乃梨子と杏梨に、深見が顔を歪める。
「俺は、こんなことをさせるために、お前たちを匿ったわけじゃない」
「わかってます。でも、もう自分で決めたんです」
「最悪を避けたいんです。だから、お願いします」
許しを請うような乃梨子と杏梨に、深見が唇を噛む。
「……それでお前たちは、幸せになれるのか?」
「はい」
頷いた乃梨子は、ぎゅっと抱きしめていた制服と、赤い眼鏡を深見に差し出す。杏梨もきちんと畳んだ緑色の制服と、白い携帯電話を差し出した。しばらく二人を見つめたあと、深見は言った。
「乃梨子、お前は人の顔色を窺わなくていい。無理に役に立とうとしなくていい。お前を好きな人間は、お前がいるだけで喜ぶ。だから俯くな」
乃梨子は目に涙を溜めながら、笑って頷いた。
「杏梨も、自分の決断を後ろめたく思わなくていい。お前は乃梨子を助けた。最悪の状況から連れ出した。お前はついでに、自分のことも助けただけだ。悪いことじゃない。……どっちも俺にはできなかったことだ。俺はお前を認めている」
やった、と杏梨が泣きながらにやりと笑ってみせる。頷いた深見は、差し出された制服を受け取った。
外に出て、深見の車にカバンや服を積み込む。日付も変わった深夜、山頂の空気はひんやりしていた。この服だけだとスースーするね、と杏梨が笑ってみせる。検査衣の裾を気にしながら、乃梨子も顔を上げて言う。
「いつか、みんなで会えたらいいですね」
「その気になれば、会えますよ。病院に来れば私はいます。私経由で深見さんや守口にも会えます。竹中さんには……深見さんとセットで会えますから」
深見と小百合をちらりと見たあと、杉原は真面目な顔に戻って続ける。
「ただし、数年先のことになります。二人がそれぞれ、どんな環境で過ごすことになるかはわかりませんが、二年間の空白は警察も調べるでしょう。仮に自由に外出できたとしても、何かを隠していると疑われれば、監視がつく可能性もあります」
はい、と乃梨子と杏梨が神妙な顔で頷く。杉原も真剣な表情で告げた。
「今後しばらく、深見さんは当然として、守口や私の名前を口にするのも避けるべきです。私たちが病院で話しているのは周りが見ていますから、そこは徹底しないといけません。再会するときは、初めて会った人間同士として会いましょう」
「結構厳しいなあ」
「共犯だからな。でも」
杉原は守口を軽く睨んだあと、杏梨と乃梨子に言った。
「必ずいつか会いましょう。階段でぶつかるよりは、自然な出会いで」
僕のこと? と気付いた守口が、笑っている乃梨子に言った。
「じゃあ、次に会ったときには、二人に花束をプレゼントできるくらい、僕の花屋レベル上げておくから」
「じゃあ、二人でもらいに行きますね。初めて行く花屋さんで、初めて会う店員さんに」
少しだけ恥ずかしそうに乃梨子が言う。杉原も少しだけ寂しそうな目をして言った。
「一度、君達を忘れないといけませんね」
「でも共犯ですよ」
合言葉のように言って杏梨が笑う。その隣で乃梨子は真上を見た。
「今日は星が見えるね。あのときと違って」
あのとき? と守口が聞き返すと、杏梨も星を見上げて言った。
「初めて深見さんに会った夜です。あのとき、流星群が見えるって話を聞いて、二人で抜け出したんです。出るのは明け方だったから、見えなかったけど」
「でも、それも叶ったね」
顔を上げながら乃梨子が言う。光源のない山頂の夜空にあるのは、無数の星だった。紺色の空。見たことのない数の星がまたたくなかに、糸のような光が流れて消えた。そのまま目を閉じて、冷たい空気を吸い込む。ふう、と息をついて乃梨子が真剣な顔をした。
「深見さんたちは、そろそろここから離れないと」
「小百合さんは、もう少し一緒にいてください」
そう言って杏梨が小百合の手をそっと握った。かすかに震えていた杏梨の手を握り返し、小百合が頷く。深見達を車に促し、強い目をして言った。
「深見さん、あとは任せてください。この子たちに、無茶なことはさせたりしませんから。絶対に」
「……お前もだ」
「はい。約束します」
「わかった」
車に乗り込んだ深見がエンジンをかける。スクーターに跨がった守口はもう一度振り向き、またね、とヘルメットを被った。杉原も車のドアを開け、助手席に乗る。
「さようなら」




