親が出て来て・・・
帰宅して、入学して二日目で早くも兄弟子に相談である。
今日合った突発イベントを報告する。
「う~ん」
うなる兄弟子。
困った顔のキャロリーン。
二人とも、うなるしかなかった。
「めんどくさい事にならなければ良いが」
「貴族と言う人種はプライドだけが高くて困る」
「用心に越した事は無いな」
二人の意見はそこで一致した。
「分かりました」
「あの子には気を付けておきます」
翌日の学校には、モンスターペアレントの嵐が吹き荒れている。
フランク男爵が乗り込んで来た。
ボコした奴を連れて!
はっきり言っていちゃもんである。
子供の言っている事を信じて、僕と学校が悪者の前提で模擬戦の不正、決闘の拒否と言いたい放題だ。
職員室の前で騒いでいるので、人集りが出来ている。
その中で見ていた僕に、ボビーが気が付き父親に伝えると。
恐ろしい勢いで突進して来た。
そして、言いたい放題だ。
ただ、僕は反対に冷静になり、昔アニメで見たセリフを思い出した。
何代も貴族の生活を続けていたら、それが当たり前になり平民と掛け離れてしまい、一種の病気みたいになると!
まさに、今の状況で貴族は正しいから、儂も子供も正しい。悪者はコイツらだ。
の論法である。
いい加減聞き飽きたので、反撃に出る事にする。
「いい加減にしろ!」
「子供の言葉を鵜呑みにして、滑稽にも程がある」
「自分に都合が良い事だけ話し、都合の悪い事は言わない御宅の息子のボビーが悪い」
「そんな事も分からないのですか?」
僕の言葉を聞いて樽みたいな体がプルプルと震えだす。
「貴族に口答えなど平民のしていい事ではない」
「平民は黙って貴族の言う事を聞いていればいい」
「虫けらの存在が口答えするな!」
怒りに任せて大声を張り上げ怒鳴り散らす。
頭からは湯気がでてピィーと湯沸かし器がなっているみたいで笑えて来る。
更に大声をあげてピィーと鳴っているみたいで滑稽だ。
顔は真っ赤になっている。
思わず、声を出して笑ってしまった。
「無礼者」
怒りが頂点に達したみたいで、殴りかかってきた。
「バタン」
男爵が倒れる。
僕が後ろに飛んで回避をしたら、足が絡まってその場で倒れたのだ。
周りの観衆もこれには大笑いである。
男爵の中では平民は攻撃を受ける者で、避ける事は無いと思い込んでいるので、また、訳の分からない事を叫んでいる。
しまいには。
「決闘だ」
「貴様に決闘を申し込む」
立ち上がりもしないで、顔を上げて僕を指さしながらだ。
「嫌です」
「以上」
すぐさま断る。
「・・・・」
目が点になり言葉を失う男爵。
しかし、決闘は断れないから、相手が飲めない条件を出してやり過ごす事を考えながら、男爵から目を離さずにいる。
「条件を言ってみろ」
ゆっくりと立ち上がりながら言った。
子供からリサーチ済みか!
受けれない条件を提示しよう。
「条件は、僕が勝った場合は男爵の爵位の譲渡、領地と財産の譲渡とあなた方一族が平民になる事」
「するなら、今日学校の訓練場に30分後だ」
これなら決闘を取り下げるだろう。
「よし、分かった」
即答したので、僕が驚いた。
僕だけで無しに、先生方や貴族の子弟もだ。
何かやばい気がする、負けても有耶無耶にするかもしれない。
ここは保険を掛けとくか!
「殿下そう言う事になりました」
「立ち合いをお願いします」
「ロビン、私がいるのが分かっていたのか」
「先輩使いの荒い奴だ」
「はい、ですから証人になって頂こうかと」
「男爵に有耶無耶にされない為に」
ここでの殿下の登場に、男爵は動揺しまくっている。
負けても、平民の戯言で済ますつもりでいたのがまるわかりだった。
「では、男爵その条件で30分後に始める」
「準備をして訓練場に来るように」
「私の顔をつぶすなよ」
最後にすごんで殿下は訓練場に向かった。
30分後、僕は訓練場に立っていて、目が点になっている。
それは、フランク男爵が禍々しい甲冑一式を着込み剣を持って立っている。
まさに、樽に手足を付けたみたいだ。
しかし、ここまで用意しているのは、最初から決闘をする気満々だつたのだろう。
そして、ボビーも禍々しい装備一式で出て来た。
「二対一か」
「まぁ、いいか」
「猫の手は入りませんか~」
間抜けな声で売り込みをしてくるやつがいる。
「いいのか」
「おぅ」
「猫の手を借りよう」
クラスメイトのドミニクが一緒に戦ってくれる。
こいつも酔狂なものだ。
自分から危険に飛び込んでくるのだから。
「では、今から決闘を始める」
「立会人は私が勤める」
「先ほどの条件を守り、正々堂々戦う事」
「人数がお互い増えているが、良しとしよう」
「では、始め」
「ファイアーボール」
「ウォーターアロー」
二人が先制攻撃を狙う。
しかし、目が点になった。
それは、男爵の甲冑に吸い込まれていく。
「やっぱりか」
「何かあると思ったが」
「あの甲冑は魔術師殺しだな」
ドミニクが冷静に甲冑に付与されている魔術を教えてくれる。
男爵の甲冑から、大笑いが聞こえる。
こちらの攻撃が通じなかったのが本当にうれしいみたいだ。
ただ、男爵も攻撃手段が無い為、ボビーがそれを担当するのだろう。
「向こうも、攻め手が無いから慌てずに行こう」
そう言いながら、ボビーの攻撃を盾で受ける。
「ドミニク少し、攻撃をしていてくれ」
「両方が死なずに勝てる方法を思いついた」
「詠唱に少し時間がほしい」
「何かわからんが、任された」
「************」
僕は詠唱に入る。
ドミニクはボビーを狙い攻撃魔法を打ち込むも、父親を盾代わりにしている為、甲冑に吸い込まれていく。
ボビーの攻撃を、ドミニクは回避しながら戦っている。
しかし、男爵は不動である。
ひょっとして、甲冑が重すぎて動けないのかも知れない。
ドミニクは結構攻撃を打っているが、すべて甲冑に吸われてしまいボビーは無傷のままだ。
ある意味、攻守がしっかりしている。
「すまない、待たせた」
「顕現せよ、炎の壁よ」
術式を開放すると、盾が光って高さ2mぐらいある炎の壁が男爵とボビーの回りを包み込んだ。
直接攻撃では無いので、甲冑に炎は吸い込まれず二人の回りで燃え続けている。
「なぁ、ロビン」
「これって、攻撃なのか?」
「あぁ、そうか」
「これは、直接攻撃では無いが、間接攻撃に当たると思う」
「此処でも、かなり熱いだろう」
「じゃあ、あの中は?」
「炎は効かないが暖められた空気は、鎧の隙間から侵入するし呼吸もするから」
「あの中は大変だと思うぞ」
「もう、鎧の中は汗でべちゃべちゃの筈だ」
「嫌な攻撃だな」
「俺は干からびたくない」
男爵とボビーは炎の壁の中で暑さと脱水症状の二つの敵と戦っていた。
炎の壁に水系の攻撃をしても蒸発するだけで、打つ手なしだ。
しかし、まだ頑張っている。
「ふぅ」
「中々出て来ませんね~ぇ」
五分後そう言いながら、炎の壁の発動に、魔力を流し続けているので結構疲れてきている。
ただ、もう戦闘不能だと思う。
「ドミニク!」
「壁を消すから、臨戦態勢に入ってくれ」
「OK」
「いつでもいいぜ」
「3・2・1、解除」
炎の壁が一瞬で消えた。
「おぉ」
ギャラリーから声がする。
簡単な話である、魔力の供給により付いていた炎だから、供給を止めればすぐに消えるのである。
男爵とボビーを見てみると!
二人とも直立不動だが、壁が無くなったのに動きが無い。
僕とドミニクが二人を確認すると、意識が無いみたいだ。
「殿下、男爵達は戦闘不能です」
「確認をお願いします」
立会人である殿下が、二人を確認に行く。
意識が無く、直立不動で立っているだけである。
「うむ、勝者ロビン&ドミニク」
訓練場に歓声が上がる。
この完成にドミニクは手を振って答えている。
僕は少しやり過ぎたかな~と考えながら手を小さく振って歓声に答えていたのであった。
つづく
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