3試合目 なんでこうなるの2
カイルはロビンを試すべく、微動だにしない。
このプレッシャーの中どれだけ集中力が保てるのかを。
ロビンが集中を切らした時が攻める時と決めて、対峙している。
そして、実況も言葉を無くしたみたいみたいに、固唾を飲んでこの試合を見ている。
ロビンは受け続ける、魔大剣バルキリーとカイルのプレッシャーを。
しかし・・・
ロビンは今、静かにな世界の中にいた。
自分とカイルさん以外はいない世界に。
集中力がもたらす世界、ゾーンの世界に。
一流のスポーツ選手が神がかった試合をした時に入っている世界だ。
「見事だ!」
カイルがぼっそと呟く。
これだけのプレッシャーを受けながら、乱れなく集中し続ける。
まだ、12.3歳の子供が・・・
ただカイルが感じている、この心地良い試合は予期せぬ要因で終焉を迎える。
パリ―――ン
観客席からドリンクビンの割れる音が響くと・・・
その音に対して二人が反応した。
「うぉりゃぁぁぁぁ」
唸り声を上げながら踏み込み魔大剣を打ち下ろすカイル。
「ハッ!」
唸り声に負けじと、気合一閃抜刀するロビン。
剣同士が当たったと思ったら・・・
ドサッ
「なんじぁこりぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
魔大剣を振り切った状態で、カイルの大声がコロシアム全体を震わす。
二つに分かれた魔大剣バルキリー。
剣先が僕の横に転がっている。
ロビンもまた柄しか残っていないレイピアを振り切った状態でカイルの叫びを聞いている。
それもそうだろう。
カイルの魔大剣が一瞬にして切られた?
折れた?
いや、溶けたからだ。
正確に伝えると、ロビンのレイピアはカイルの魔大剣に刃に当たるまでに、蒼白く輝くファイアーレイピアと化して、刃と刃が当たった所を一瞬にして溶かして魔大剣を真っ二つにしたのだ。
しかし、レイピアが炎に耐えられたのも一瞬で刃は溶け落ちたのであった。
たった一振りでこの試合は終わったのであった。
この後カイルは棄権を申し出て相棒をもって、肩を落として帰っていく。
僕も同じくタイミングで、棄権を申し出てこの試合はドローとなった。
座り込んだロビンには、ひざが笑い立ち上がるのも大変な状態で、もう戦える体力も精神力もない。
たった一振りにすべてをつぎ込んだから。
「お疲れさん」
ナオ姉が肩を貸してくれて退場する。
退場する二人には、惜しみない拍手が送られるのであった・・・
また、この試合は後世に長く語り継がれる事となるのである。
つづく
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