3試合目 なんでこうなるの!
「おい、ニコラス」
「あんな化け物どこで見つけて来た」
問い詰める陛下。
陛下にも冷や汗が流れている。
儂とにらみ合いをして膝をガクガクいわせていた少年では無い。
初見では、かなり苦戦をすると思う陛下である。
「あんなに強くなっていたって?」
ニコラスも目が点状態である。
先手を取られたら、覆すのが難しい。
そして正直、何がどうなって強くなったか解らない。
考え込むニコラスであった・・・
<お知らせします>
<三試合目は1時間後に執り行います>
<観客の皆様にはご理解のほどよろしくお願いいたします>
アナウンスが入りコロシアム全体の緊張感が緩和されて、観客はホット一息つけたのであった。
1時間後・・・
<お待たせしました。選手の入場です>
<さぁ、先頭にロビン選手が入場してきました>
<先程の試合は凄かった。この試合も期待が膨らみます>
<これは珍しい、ロビン選手が刀を二本差ししています>
実況の声に観客が二本差しを見て少し騒がしくなった。
盾を背負い、腰には武士みたいにレイピアの大刀とそれより少し短い小刀だった。
・・・
・・・
相手選手が入場してこない。
<ただ今、情報が入ってきました>
<対戦相手のミハイル選手棄権です>
<棄権すると申し出があったみたいです>
ブゥゥゥゥ
ブゥゥゥゥ
ブゥゥゥゥ
観客席からブーイングの嵐がおこる・・・
アナウンスを聞いて、呆然と立ち尽くす老魔道士マクシミリアン。
会場が異様な雰囲気に変わり始めている。
止まらないブーイング。
1人の騎士が陛下に声を掛ける。
「陛下」
その一言で察した陛下は・・・
「頼む」
「ハッ」
言葉と供に急ぎ駆けだしていった。
「さてと」
「沈まれ!皆の者!」
「我はジョー・ウィルフリードである」
コロシアム全体に声が響き、一瞬で静かになる。
「うむ、皆の消化不良は良く分かる」
「しかし、棄権されてはどうしようもない」
「そこでだ、一つ提案があるが聞いてくれるか」
少し間を取る。
「提案とはエキシビジョンマッチを開催する事だ」
「ロビン君良いな」
有無も言わせない。
「対戦相手は、我が騎士・騎士団長カイルだ!」
うぉぉぉぉぉぉ
うぉぉぉぉぉぉ
コロシアム全体が異様な盛り上がりを見せる。
「開始は10分後だ、今しばらく待ってほしい」
「以上だ」
異様な雰囲気が一発で無くなり観客席は、期待で高まっている。
僕はと言うと・・・
「まじか」
「やるしかないか」
と覚悟を決めた。
10分なんて早いもので、カイルが入場してくると。
うぉぉぉぉぉ!
キャーーーーー!
カイル様ー
〈騎士団長カイル様が入場してきました〉
〈背中に背負っているのは、愛刀魔大剣バルキリーだ〉
実況が絶叫している。
#¥@「#」-¥@*¥「-」
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最早観衆は何を叫んでいるかわからないぐらい大盛り上がりだ。
カイルの存在感が凄いのは分かっていたが、大剣の存在感が凄い。
禍々しさを発揮している大剣は、刃の長さは約150cmぐらい幅は30cmくらいで厚さも3cmぐらいある。
「なんだあの剣は!」
最早呆れ顔だ。
「レイピアが折れるな」
思わずつぶやき、あれは無いわと思ってしまう。
<両者審判より注意事項と保護魔法を掛けてもらっています>
<さぁ、試合が開始されます>
実況がコロシアムを盛り上げていく。
「どうなんだ、ロビン君の剣技は?」
「あの年ごろの普通だな」
「ロビンは魔導士だからな、ただ人族の師匠が護身用に仕込んでいるだけだ」
「まぁ、カイル殿ならその辺りを見定めてくれるだろう」
陛下とニコラスの会話だ。
陛下も流石に剣技まではと思っていたみたいだが。
「試合始め!」
試合が始まり、両者中段の構えで対峙する。
ただ、魔大剣の存在感と禍々しさが凄過ぎて、カイルが凄く遠く感じている。
僕は剣先を動かしてみたり、フットワークで右に左にまた、フェイントを入れたりしても僕を正面に据えて微動だにしない。
まるで、大木が目の前に立っているみたいだった。
だったら。
腹を据えたロビンは、少し距離を取り五芒星陣を展開してレイピアを鞘に納め魔力を貯めて行く。
背中の盾が白く光り輝くのを待って右足を半歩踏み出し、居合抜刀術の構えを取った。
居合抜刀術とは、日本刀を鞘に収めた状態で帯刀し、鞘から抜き放つ動作で一撃を加えるか相手の攻撃を受け流し、二の太刀で相手にとどめを刺す形、技術を中心に構成された武術である。
今はレイピアだが。
「おもしろい!」
口元が笑うカイル。
二人の間に緊張感が高まっていき、コロシアム全体に広がっていく。
また、一度も撃ちあってないのに最初の攻撃で全てが決まる。
僕はひたすら待ち続けている。
集中力を切らさずに、カイルさんが大剣を振り下ろすのを・・・
つづく
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