再び魔人族の王都に出発して・・・3
「ナオミ、何があった!」
ニコラスの言葉に厳しさが出てくる。
取り敢えず、馬車を止めて現状の把握をする事になった。
「ニコラス、此方の魔導騎士さんは?どちら様ですか」
僕の問い掛けに、頷くアンナとウルフ。
護衛の四人は知っているみたいだ。
「あぁ、すまん」
「娘のナオミだ」
「ナオミよ、よろしくね❤︎」
おどけて挨拶をするが、先程の騎乗と良い所作仕草はかなりの物だ。
仕事の出来る、お姉さまと簡単に想像出来る。
「ナオミ、何故弟子(仮)を取ったのを知っている」
「そして、大変な事が起こるとはどうゆう事だ」
ナオミを問い詰める様な質問の仕方だ。
「陛下がお話になられたの、ニコラスが弟子を取った」
「人族の子だが、非常に面白い可能性を秘めた子を」
「その話を聞いた人達もあのニコラス殿がと、大騒ぎになってしまいには、弟子入りを断られた者達が、もう一度弟子入りを志願するとか、ロビン君より優秀な事を証明して弟子になるとかって話になっているの」
「だから、パパはともかくロビン君は完全なとばっちりだから、王都に入る前に止めに来たの」
この話を聞いて頭を抱えるニコラス。
「陛下いらん事を」
愚痴をこぼしている。
「しかし、もう遅かった見たいね」
そう言いながら、王都方面より凄い勢いで土煙りが上がっているのを見つめていた。
「げっ」
「まじか」
土煙りを確認したら、最後の悪あがきを始めた。
「ロビン、アンナちゃん! 逃げるぞ!!!」
ニコラスは急いで馬車に乗って1人で逃げ出した。
「ナオミさん、僕達の保護をお願いしても良いですか?」
「OK!」
「5人で守るから、安心してね」
「ただ、何かあったら困るから、ブパシさん一つお願いしてもいいかしら?」
ブパシの了解の下、耳元で何かを囁き微かに笑う2人。
「了解した」
ブパシさんの目が笑ってる、問題無いのだろう。
「じゃ2人とも隠れようか!」
3人と一頭は、街道横の茂みに隠れて、弟子入り志願御一行様がはしりさるのを今か今かと待ち構える。
10分後・・・
ダダダダダダダダダダダと恐ろしい勢いで走って来る(騎馬です)
「神様はどちらに!」
集団の中の1人が、休憩中に見える騎士4人に声を掛ける。
すると。
「ニコラス様は、馬車に乗って来た道を帰って行きました」
「ありがとう、先を急ぐので失礼する」
そう言い残すと騎馬の一団は、更に加速して走っていった。
そして、ニヤッと笑うブパシさん達は騎馬が見えなくなるまで見送るのであった。
「じゃ、行きましょうか!」
ナオミさんの言葉で、再び出発だ。
僕はパエスさんの馬に、アンナはナオミさんの馬に乗せてもらった。
「ナオミさん、ニコラスはあのままでいいの?」
「いいの、いいの、パパもその内追い付くから、それよりロビン君とアンナちゃんの安全を確保出来たのが一番だよ」
パパには、厳しいナオミだ。
そんなこんなで、騎馬になった為に予定より早く王都城壁が見えて来る、その辺りに来ると往来も多くなり
すれ違う人も増えてきた。
森を抜ける寸前に、目の前で二足歩行でふらふら歩いていたコアラが、倒れたのであった。
〈ここから少し、コアラ目線〉
「いけ」小声
「はい、ご主人さま」 魔人語に翻訳、以下省略!
僕は俳優、1000の仮面を持つ俳優。
あの演技の練習は伊達では無い。
そして、無念に散っていった仲間の為に。
行くぞ!今だ!
騎馬が見えて来たら、よろよろと歩きだす。
そして、おもむろにバタンと倒れ込む。
〈完璧だ〉
自画自賛中だし、ご主人様も喜んで頂いている(確信)
助演男優賞も狙える迫真の演技だ。
これで人族が駆け寄り抱っこしてくれたら必殺のアイアンクローで葬り去ってやる。
注、コアラの握力は1tあると言われている。
さぁこい、駆け寄って来い。
このプリティな僕を抱き上げろ。
段々騎馬が近付いてくる。
しかし・・・
バッキ――――ン!
「ウッツ」
横っ腹に痛みを感じたと思ったら、致命的な一撃を食らい明日の方向に消えて行った。
キラ――――ン☆ コアラは星になった。
ちなみに、翌日の王都守備隊の哨戒任務で全身骨折をしたコアラの魔物が保護され動物園に預けられ、一命を取り止めたのであった。
〈視点を元に戻そう〉
目の前で、行き倒れたコアラを見た、騎馬メンバーはスピードを緩めようとするが、ロビンに制止される。
「そのまま、コアラの横を駆け抜けて!」
全員に聞こえるように声を出し、自分はレイピアを鞘ごと手に取り体を乗り出して。
ポロの要領でハードヒットした。
バッキ――――ン!
「ふぅ、上手い事言った」
安堵のロビン!
後は、森を抜けて安心出来る所まで走り切るのであった。
つづく
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