経験の無い先輩達 VS 魔物
両騎士団と合流して早2日目の昼過ぎに目的の野営地に到着した。
道中では、田舎から山中に入ってくいのに、何一つトラブル無し、魔物との遭遇も無く到着した。
ただ、到着後には兄弟子とその他1人は斥候の為、直ぐに森の中に消えて行った。
僕達は、急ぎ野営の準備と周りの安全確認に動く。
「あっ、いた」
山を少し行った所に、魔物を感じた。
僕の反応を不思議そうに見る先輩方がいると。
「ロビン、いたって?」
殿下が聞いて来た。
「殿下のご想像通りです」
「そうか」
そう言いながら、顔が強張っていく。
それは、先輩方全員に伝播していった。
「じぁ、士団長に許可を貰ってきますね」
「先生もお願いします」
「分かった」
先生と同行して、士団長に許可を貰いに行くと2つ返事でOKがでた。
先に話してあったので、すんなりと許可が出たのである。
「良かった」
「これで、経験無しに討伐に参加する事が無くなった」
正直な気持ちが言葉になる。
「しかし、ロビンよく分かったな?」
ロイの問いかけである。
「はい、いつもこんな感じで、マーサと一緒に狩ってましたから」
「マーサ殿の教育方針はすごいな、私には何処にいるのか解らない?」
「では、気を付けていって来てくれ」
「はい、行ってきます」
士団長に許可を貰ったので、早速出発だ。
「先輩、許可が出ました」
「準備をして出発しましょう!」
10分後に出発する事が出来た。
迷わない様に、一定間隔で目印の布を木々に括りつけながら進む事、小一時間ターゲットの近くまで来た。
先輩達も流石魔導士である。
少し先の異様な魔力に気が付き臨戦体制をとっている。
「アンディ先輩、全体の指揮をお願いします」
「僕は手を出さないので、先輩にお任せします」
僕が参加したら、先輩たちの経験にならない。
全て先輩達に頑張ってもらおう。
「了解した」
「では、魔物に対して半包囲をして一気に攻撃するぞ」
全員で少しづつ距離を詰めながら、魔物の魔力を感じて緊張している先輩達。
アンディ先輩は、全員と目配せをして詠唱をはじめる。
あっ距離の詰めすぎだ!
「*************」
「*************」
「*************」
「*************」
あちゃ〜。
無詠唱が誰も居ない。
テレホンショットだ。
「バッキ、バッサ」
何かが突っ込んで来た。
詠唱に対して、猪の魔物の攻撃である。
「うわぁぁぁぁぁ」
先輩達が驚いて詠唱が中断する。
魔物は縦横無尽に突進を繰り返する事5分、先輩達の叫び声が響く事5分。
先輩達は這々の体で逃げ回っていた。
「此処までか」
見守っていたラファエル先生はため息をつきながら、詠唱をはじめる。
「そこだ!」
先生の強い言葉と共に、アイスアローが猪の顔面に飛んでいく!
「ブギュー!」
魔物の眉間に、アイスアローが刺さり絶命した。
見事な一撃である。
「先生、ありがとうございます」
先輩達が先生の所に集まり、助けてくれたお礼を言う。
ただ、お礼を言うので一杯一杯で、その場に座り込んでいる先輩もいた。
「さぁ、キャンプまで帰るぞ」
「反省は、帰ってから」
「其れまでに、何が出来て、何が出来なかったか考えて置くように!」
そこから、ベースキャンプに帰るまでの一時間半(足どりが重いので時間がかかった)の間は、亡者の行列であった。
「先生、魔道士団長に報告してきます。」
そう言うと、反省会からは席を外した、年下には聞かれたく無いだろうからそそくさと席を後にする。
「よう、どうだった」
士団長の問いかけである。
「今回は、後方待機でお願いします」
「戦闘には参加させずに、低ランクの魔物を討伐して、今後の成長につなげたいと思います」
ため息交じりに答えている。
「先輩達を庇うのは、分かった」
「戦力にはならないって事だな」
僕は頷くしかなかった。
「私も学生達に死者が出るのは避けたいと思っていた所だから、渡りに船だよ」
「ロビンはこっちの討伐を手伝ってもらうぞ」
「はい、了解しました」
「では、先輩方に適当な魔物を見つけてみますね」
「では、頼んだぞ」
「はい、では失礼します」
報告が簡単に終わってしまった―――!
先輩方に合流しなくてはいけないのだが・・・したくない。
そんな事で悩んでいると。
「よぅ、今日はどうだった」
近衛騎士団長のスタンに声を掛けられた。
「はい、これから要訓練と言う事が分かりました」
「これだけは実戦経験を踏むしかありませんから」
「だろうな」
「なぁロビン、明日は騎士科の学生も連れて行ってくれないか?」
「こいつらも要訓練のはずだから」
「頼めるか」
「はい、わかりました」
「ただ、適当な魔物がいなければ無理ですからね」
「じぁ、よろしくな!」
近衛騎士団長に頼まれてしまったので、先生に報告せねばなるまい。
重い足取りで、先輩達と合流するも、この話を報告すると明日は頑張ると気合を入れる先輩達がいて反省会は終わったのであった。
次の日。
朝早くから全ての事を終わらして、魔物退治に出発した一行であったが・・・
昨日と同じく猪の魔物に追い駆けられていた。
今日は騎士科の生徒達も含めてだ。
ただ、昨日と違い先制攻撃には成功をした。
しかし、攻撃は当たったのだが威力が足らず、猪の魔物を怒らせてしまい今に至るのである。
先生方お二人も、これはいい勉強だと言い出し監督に徹している。
それから10分立っても、状況は大きくは変わらなかった。
救いは、散発的とは言え先輩達は猪のスキを見て攻撃魔法で攻撃が出来ていた点だ。
この攻撃が火に油を注ぐ状態になってしまっていたのが残念である。
「もう駄目だな」
「あぁ、そうだな」
そう言いながら、ジミー先生は背中から大剣を抜き担ぎ上げて猪目掛けて突進した。
「どりゃぁぁぁぁぁ」
大迫力の一撃である。
猪は叫び声も上げる暇なく左右にわかれた。
「ふぅ」
生徒達みんな目が点になっている。
いくら剣士でも魔物を一撃で二つに割ったからだ。
「みんな、このぐらいの魔物で苦戦してどうする」
「今までの努力は何だったのか、しっかりと思い出してみろ」
「冷静になれば撃退できるはずだ!」
ジミー先生は激しく檄を飛ばす。
「わかりましたー」
騎士科の先輩達が大声で答えて奮い立った。
「じゃあ、次行こうか」
「えっ!」
「うそ」
「まじ」
先輩達の声が響く。
「分かった、分かった、休憩してからな」
取りあえず休憩をしてから、2戦目だ。
魔物はいるのだけれど・・・
「ロビン、近くに魔物はいるか?」
ジミー先生が聞いて来た。
「はい、いるんですが」
「あれの相手は、無理だと思うんです」
言葉を濁しながら話をすると。
「あれとは?」
「カバの魔物です」
「カバかあれは無理だな」
「でしょう」
「死人が出ますよね」
「あぁ、多分」
「それは僕達を見くびっていませんか?」
騎士科の先輩が話に入って来た。
「ただの水中の動物に!」
「任せてください」
呆れてものも言えない。
「先輩、カバをなめているでしょう」
「死人が出ますよ」
「カバは強いんですから」
「水陸両用で走るのも早く、口撃は威力と破壊力が抜群なんです」
「あと、体当たりもかなりの強力です」
「猪で散々だったのに、カバは無謀です」
普通のカバでも相手したくないのに、魔物のカバなんて自殺行為に等しい
「ちょっと強いからと言って、偉そうにするな」
上から目線で話してきた。
やっぱり貴族であるプライドを気付付けられたら聞く耳を持たないし、俺様は偉いオーラ出しまくりである。
こんなタイプには、言葉で言っても解らない。
勝手にしてくれ。
「じゃ、勝手に死んでください」
「僕は知りませんから!」
「遺書と髪の毛は先生に預けてくださいね」
こんな所で貴族のお坊ちゃんの相手なんてしていられない。
早々に退場としてもらうとしよう。
ケガだけで済めばよいが。
「おぅ、勝手にさせてもらう」
騎士科の先輩は此方を睨みながら他の騎士科の先輩に話して、カバと戦う事に決まったみたいだ。
ちなみに、話を魔道科の先輩達にも持って行ったがカバの基礎知識があったらしく参戦はしないみたいだ。
冷静な判断である。
そんなこんなで、騎士科の先輩VS魔物のカバの対決の為、近くの川まで出向いて行ったのであった。
つづく
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