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作戦会議、異世界を救わない男

 ルネッタリア王国。200年前に魔獣から逃れてきた人々が集まって建国された、地球でいう日本列島の本州、中国から近畿地方を開拓してできた国である。

 琵琶湖を中心に王都メリルが広がり、その北側に、豊後半島から若狭湾一帯を治めるシャルパンティエ公爵領があった。


 シャルパンティエ公爵領最大の都市マイヅル。

 ルネッタリア王国では、130年前に向こうの世界からの漂流船によって地図がもたらされ、その頃未開地だった場所はその地図にあった地名がそのまま使われている。

 マイヅルという地名もそこから来ていて、その場所も日本の舞鶴市の位置と変わらない。

 山間で平地が少なく、王都までの交通の便は悪いが、現在の王国の最北端に位置し、日本海側の航路の要所であり、また佐渡島への金採掘船団の拠点でもあるため、王国でも屈指の港湾都市として栄えていた。


 大小数多くの船が繋がれている。マイヅル港。

 沿岸警邏隊の船が並ぶ一角に一般からは隔離された専用の桟橋が設けられ、そこがアリスリット号の母港となっていた。

 また、この街は王国最高学府の教育機関であるマイヅル学園を有し、学問の都としても知られている。

 そして、現在彩兼はこの学園の講師という立場にある。

 この学園には向こうの世界から流れ着いた様々なものが集められ、彩兼も最初は保護という形で連れてこられたが、その知識を買われて正式に講師として採用されることになったのだ。

 なんでも生きた人間は130年ぶりだったらしい。


 魔力変異微生物と精霊魔法に関する概要。

 それは、この世界で精霊呼ばれている存在は、魔獣や魔族のように、魔力で変化した微生物であるとした論文である。


 学園で雇う口実をつくるため、向こうの世界の何か役立つ知識でもまとめてくれればそれでいいと、学園側が彩兼に論文の提出を求めたのだが、何故か彼は、この世界の根底を揺さぶるものを持ってきた。

 この世界ではまだ顕微鏡が発明されておらず、ミクロの世界に足を踏み入れていない。

 そんな世界で、精霊=変異微生物とした論文がひょっこり出てきたものだから、学者達は大騒ぎになったのである。


 実は彩兼はジョークのつもりでこれを書いた。

 彩兼は元の世界に帰る方法をすぐにでも探しに行くつもりでいたため、定職に就くつもりなどなかったのである。

 だからあえて敬遠されそうなネタを選んだ。

 精霊魔法とは、その名の通り精霊の力を借りて様々な自称を引き起こす魔法である。

 この世界の宗教観はよくわからなかったが、人々が魔法や精霊というものに対して、何かしらの敬意や信仰心を抱いているであろうと予想したからだ。

 いきなり宗教裁判で死刑とかも有り得たかもしれないが……。

 ところが、それは思わぬ方向に転がることになる。


 この世界の人は神を信じていなかった。

 魔法が使えるのは魔力を受けて進化した、魔獣や魔族だけ。

 神は人を万物の霊長として選ばなかった

 精霊もまた人を選ばなかった。

 そんな世界で精霊を科学的に解明しようとする彩兼の論文は、予想に反して好意的に受け止められることになったのである。

 同時に顕微鏡の設計図も提出され、今その開発が行われているところである。

 もっとも、その確認に必要な性能の顕微鏡、さらにその先にある電子顕微鏡が開発されるのは、遥か先の事になるだろう。


 そんな事があり、このマイヅル学園で講師として迎えられることになってしまった彩兼。

 当初の思惑とは異なる結果になってしまったが、それは良い方向に向かったと言えた。

 彩兼自身がそれなのだが、まず、この世界には向こうの世界から色々モノが流れてくることがあるらしい。

 大抵はゴミ、希に結構やばいもの。白骨を乗せた某国の船とかが流れ着いた事もあったらしい。即焼却されたらしいが……。

 マイヅル学園ではそういったものが集められ、その研究が行われていたのである。

 それから国内最高学府の講師という立場には、ちょっとした貴族並みの権威があったということ。

 これによって貴族や商人などの協力を得やすくなった。

 アリスリット号も学園の調査船という扱いとなり、彩兼の知識や技術を狙う輩に下手に手出しされる恐れが減り、より安全に調査探索を行えるようになったわけである。




 暦は9月、日差しはだいぶ柔らかくなってきたものの、日中はまだ残暑が厳しく、エアコンなど当然存在しないそこは、窓が全開でもかなり暑い。

 このマイヅル学園の学舎は、木とレンガと漆喰で作られた二階建ての西洋風の建築物でだ。

 ルネッタリア王国は、200年前に西から来た人々によって出来た国のため、社会システムや、建築、衣服などは、その持ち込まれたものが基礎となっている。

 しかしそれも、四季があり多湿な土地の環境に合わせて次第に変化し、また向こうの世界からの影響にもあって、現在は良く言えば和洋折衷、彩兼の目には、何でもアリのごっちゃ煮な文化に見えている。


 彩兼達がここマイヅルへ逃げ帰ってから数時間の後、入口に鰭竜対策本部と書かれた立札がかけられたマイヅル学園の会議室。

 そこには警邏隊の衛士など国の武官を始め、学者や学生、商人から漁師など、様々な役職の人が集まっている。それなりの立場の人も多いが、畏まった場ではなく、集まってる人達も老若男女まちまちで、服装も畏まったものではない。

 この国には王族や貴族といった、やんごとなき身分の方々はいらっしゃるが、それ以外の武官や町人といった庶民は、身分や立場による垣根が低く、あまり頓着しないようである。


 さて、鰭竜対策会議であるが、実はこれで2回目である。

 1度目の会議で彩兼による偵察が決まり、これからその報告と、その後の対応を話し合うことになっている。現状まだ領主に陳情するかを決めかねているという、その段階であった。

 鰭竜が現れていることは領主の耳にも入っているだろうが、その対応をどうするかは、こちらから陳情する内容によって異なるだろう。

 下手に陳情して、血気にはやった領主様が討伐するぞと言いだしたら、勝ち目のない戦いに赴かなければならなくなる可能性もあるのだ。


 この会議の発起人であり、対策委員長の席には、国の武官の長である、フリックス・フリント警邏庁長官。30代に入ったばかりと若いが、ルネッタリア王国随一の武人である。

 またこのマイヅル学園の卒業生でもあるとのことで、文武に優れた男であるが、190センチはある長身に黒の長髪。精悍な顔立ちで眼光鋭い切れ長の目と、威圧感が半端ない。

 彩兼は初めて会ったとき、魔王かと思ったと語っている。

 今は武具の類はつけておらず、普段着らしい着流し姿である。

 どこかのお奉行様のように、よくこの姿で街を見回っているらしいが、有名人で見た目にも目立つため、まったくお忍びにはならないらしい。

 ちなみに、この国には軍隊というものは存在しない。なぜなら戦争をするような国が他に無いからだ。

 一番近い隣国が、遥か南の海の先にあるが、海を越えてこの国に軍勢を送るような国力のある国は、この世界には存在しない。

 しかしそれでも、治安維持や魔獣への対応は必要なため武力を持つ組織として、一つが国王や貴族の私設部隊である騎士団、もう一つが国の機関である警邏庁である。

 権威を守るための騎士団と、法と民を護る警邏庁と考えてもらって間違いない。警邏庁に所属する武官は衛士とよばれ、子供達の憧れの対象である。


「あー、というわけで。自分の見解としましては、あえて手を出さずに静観するのがよろしいかと」


 教壇に立ち、実際鰭竜を見てきたことを踏まえて発言する彩兼。

 その後ろで助手であるルルホが、黒板に静観とでかでかと書きなぐる。

 もちろん今はちゃんと服を着ている。飾り気の無い質素な貫頭衣に、丈夫そうな革のブーツ。狩人が本業である彼女の基本スタイルだ。

 周囲からあからさまな落胆のため息が聞こえてくる。

 そのくらいの反応はわかっていたことなので、気にせず続ける。


「この付近にはあのサイズの魔獣が腹を満たすのに十分な大きさの他の生物が少ないため、しばらくすれば自分から餌の豊富な遠洋に出ていくだろうというのが自分の見解であります」


 またも大きなため息が聞こえてくる。

 しかし、誰も彩兼を悪く言うものはいない。ただ少し、失望の視線を送るだけである。


「あのー、それじゃメロウ族困るんですけどー」


 どこか棒読みのように声を上げるのはファルカだ。

 ファルカは、この学園の学生であるため、制服を着て会議に参加している。

 白いブラウスに膝上の短いプリーツスカートは、地球のデザインを元に再現したものだ。

 この学園は国の最高学府であり、その入学には高い倍率の入学試験を勝ち抜かねばならないが、種族枠というものがあり各種族の有力者なの子息、令嬢に至っては試験不要で学費や滞在費なども国費で負担するという制度がある。

 魔法の研究には魔族の協力が不可欠であり、また将来のためのコネ作りのためでもある。

 ややアホの子入っているファルカがこの学園にいるのも、一応メロウ族の長の娘であるからだ。

 実はマジモンの人魚姫だったのである。

 ファルカに同調する漁師の皆さん彼らもメロウ族同様、海には入れないのは死活問題なのだから当然だろう。

 しかし彩兼はすました顔を崩さない。


「幸いこの街の財政は豊かです。メロウ族や海に出れない間の漁師のみなさんを賄うくらいは余裕でしょう。この街が港町として発展できたのは、メロウ族やみなさん海に生きる方々の協力があってこそですから、領主であるシャルパンティエ公がみなさんを見捨てることはありません」


 必殺、領主様に丸投げである。

 本来それが正しい。

 この場には彩兼が持つ異世界の技術と知識を当てにしてる人も多く、彩兼としてはあんまり頼られても困るというのが本音のところだ。

 事実、彩兼の見立てではこの世界の人々だけであの鰭竜を討伐することはまず不可能だ。

 30ノット以上で泳ぐ20トンの怪物に対して、今この世界にある船は大型のものでも全長30メートル、300トン程度の帆船で、速力も10ノット程度、これではあの怪物相手に性能が全然足りない。網で下手に引っ掛けようものなら、ひっくり返されてしまうだろう。

 ならばもっと強力な武器や船を望んでも、一朝一夕で作れるものではない。

 重苦しい空気が会議室を包む。

 なんとかしたい。でもどうにもならない。

 この世界の人類は10万年、これを繰り返してきたのだろう。

 身内を食われ、仲間を食われても、悔しさを押し殺して、逃れて生き延びた人々が作った文明。

 それがこの国だ。

 そこで1人の男が口を開く。この会議の発起人であり、警邏庁長官のフリックスだ。


「アヤカネ講師の言うことはもっともだ。正直今の我々には鰭竜に対抗する手立ては無い。しかし、奴はここに人魚が住んでいることを知っている。ならば一度離れたとしてもまた戻ってくる可能性は捨てきれないだろう。だが、我々にはそれを知る術も無い。誰かが襲われてからでしか、それを知る術がないのだ……」


 魔獣にとって他の魔獣や魔族はご馳走だ。

 もちろん腹を満たすために普通の生物も食べる。そこに泳いでる人がいれば食べるし、小舟に人が乗っているのであれば、小舟をひっくり返して食べる。

 しかし、そこに溺れている人がいたとしても、近くに人魚がいればそっちを追うという。

 それくらい鰭竜にとって人魚というのは美味しいらしい。

 鰭竜が諦めることはない。それはその場にいる誰もが同じ見解だった。

 一時的にいなくなっても必ずまた戻ってくる。そしてその度に誰かが食われることになるだろう。

 メロウ族も、漁師たちもそれを恐れながら海に出ることになる。


「私はなんとしてもあの鰭竜を今ここで打つべきだと考える。どうか皆諦めずにあの魔獣を倒す手段を考えて頂きたい。そして手段があるというならば、我々警邏庁は私も含めて、命をかけてそれを実行することを誓おう」


 それは彩兼ではなく、この場にいるこの国の住人へと向けられた言葉だった。

 めちゃくちゃ強くて、魔王みたいな見た目で、そして偉い人。

 そんなフリックス・フリント警邏庁長官の発言は重い。

 拍手する者、同調する声、涙を流している者もいる。

 その後、フリックスの言葉に感化されたのか、火が付いたかのように議論が繰り広げられた。

 皆それぞれ知恵を絞り、できそうなことを考える。しかし、これという妙案は出てこない。相応の犠牲を覚悟して一時的に追い払うことはできるかもしれないが、海中にいる相手を仕留めるとなるとやはり厳しいのだ。

 その様子を見て、フリックスが彩兼にそっと耳打ちする。


「どうだアヤカネ。そろそろいいんじゃないか?」


 彩兼がこの世界に来てからフリックスとは親しくしている。この会議の流れも、ここまでは彼と打ち合わせた上での茶番だったりする。

 彩兼がやれやれという感じで、再び教壇上に立ち口を開く。


「フリント長官のおっしゃる通りです。人魚の味を知った鰭竜が簡単に諦めるというのも考えにくい。また奴がいることで、同種の魔獣。またはそれを捕食するさらに大型の魔獣が現れることも考えられます。他の港町で人を襲う恐れもありますしね。そこで俺なりにあの鰭竜の討伐案を考えてみました」


 そんなものがあるなら最初から出せよと誰かが呟いたが、彩兼はそれを苦笑して受け流す。

 彩兼としては周囲にやる気が無いならやりたくなかったからだ。

 討伐作戦を実行するならば、この場にいる者だけでなく、他にもたくさんの人に協力してもらわなければならない。

 それも命懸けでだ。


「ほう? で、どうするんだ?」


 漁師の男が言った。相手は海中を高速で泳ぎ回る巨大肉食生物である。普通にクジラ漁をするのとはわけが違う。


「まぁ、釣り上げてみようかと」


 ルルホが黒板の静観の文字を消して、ファルカと手分けして用意していた資料を参加者に配る。そこにはアリスリット号で集めた鰭竜のデータと、その討伐作戦について詳細に書かれていた。

 この世界、窓にガラスは入っていないが、わら半紙とガリ版印刷はある。

 その用意の良さに、会議参加者は呆れていたが、書かれた内容に目を通せば誰もが食い入るように資料を見つめ会場はしばし無言となる。

 彩兼の立てた作戦に、驚嘆するもの、呆れた目を向けるものと様々であったが、反対意見もなく、その討伐作戦は満場一致で決行はされることになった。


「奴が最後に人を喰ったのが2日前。すでに空腹なはずです。他の餌場を求めて移動するかもしれませんが、準備を怠ることもできません。そこで作戦開始は明後日の夜明けとします。それまでに必要な資材の準備と人員の手配をお願いします」


 彩兼が言い終わると共に講堂内が慌ただしい喧騒に包まれる。

 警邏隊長官のフリックスが次々と部下に指示をだす。

 学者達は彩兼が作った資料の内容を精査、検証するために自分の研究室へと帰っていく。

 皆が自分の役割を果たすために動き出したのを、彩兼はやや複雑な気持ちで眺めていた。

 これはフリックスにも言っていないことだが、本当はより安全にあの魔獣を仕留める方法が彩兼にはある。

 爆薬を作ればいいのだ。

 魚雷は難しいだろうが、機雷や爆雷ならば作れないこともない。囮の餌にでも仕掛けておくという手もある。

 しかし、彩兼にはそれを実行できない理由があった。

 それはこの世界を一変しかねない知識を広めることを禁じた契約を結んでいるからだ。

 例えば、爆弾、大砲のような火薬を用いた武器の製造法。

 例えば、こちらの世界ではまだ発見されていない資源の埋蔵地。

 そして、王国を根底から揺るがしかねない、民主主義、社会主義といった思想。

 そういった知識を広めないことを条件に彩兼はこの国での立場を保証されているのだ。

 そして彩兼もそれを納得している。


「勇者? 救世主? そんなものに頼るほど、この世界は落ちぶれちゃいませんよ」


 契約を結んだとき、マイヅル学園の学長であるエルフの言葉だ。その通りだと思う。

 確かに人類はこの世界の覇者にはなれなかったが、種族、民族関係なく助け合い、小さいながらもこうして国を作り平和に暮らしているのだ。

 そんな彼らに安易に爆薬を与えようとは思わない。そのうち誰かが発明するだろうし、いずれ自らの英知でもって魔獣を駆逐し、覇権を手にする日がくるかもしれない。

 けれどそれは遥か先の未来だろう。

 この場にいるほとんどの人間は彩兼にそんな知識があることを知らない。ただちょっと変わった船を持つ、異世界から来た少年くらいにしか思っていないはずだ。

 しかし、もし、作戦が上手くいったにしろ、失敗したにしろ、犠牲がでたならば?それがルルホやファルカだったならば……?

 そのとき彩兼はどうするだろうか?


「それじゃ行ってくるね」


 メロウ族の仲間に作戦の協力を求めるため、ファルカはここより少し北にあるオバマ地方へと向かう。

 そこにメロウ族の根城があるのだ。

 いつもなら海を泳いでいくのだが今海に入るのは鰭竜がいて危険なため、陸路で行く事になる。

 警邏庁所属の武官、衛士が手綱を握る大鹿の背に乗せてもらい、手を振るファルカを見送る。

 ちなみにこの国に馬はいない。代わりにトナカイみたいなやたら大きい鹿が人々の足として使われている。

 走る速度は馬に劣るだろうが、馬力は高く野山に強い。


「ああ、頼む。ルルホ、俺たちも行こうか」

「はい」


 彩兼とルルホは領主であるシャルパンティエ公爵の元へ向かう。

 ルルホが手綱を握り、彩兼が後ろに乗るのは格好悪いが、彩兼がまだ鹿にのるのに慣れていないため仕方がない。


「いくよコハル」


 この鹿は学園でも飼育されていて、ルルホも手が空いてる時はその世話の手伝いをしている。コハルというこの鹿はルルホのお気に入りらしい。

 手馴れた手綱さばきでコハルを歩かせる。

 彩兼とルルホはその背中に乗って、ぽくぽくと郊外にあるシャルパンティエ公爵の館へと向かう。

 途中、パオーンと鳴き声を上げる、材木を積んだ荷車を引く象が道を横切っていく。

 この世界の日本列島では、大きい鹿が生息しているだけでなく、ナウマン象も絶滅していなかったりする。それは移動用として、また労働力として、この国で欠かせないものになっていた。


 シャルパンティエ公爵家の祖先は向こうの世界のフランス人らしい。ルルホの祖先と同じ船でこの世界に流れ着いたそうだ。

 それゆえか、ルルホの事は自分の孫のように大事にしているため、大貴族にも関わらず、面会の段取りはあっさり取ることができた。


「ほう、鰭竜をか。よろしい。船と人員はわしが手配しよう」


 シモン・シャルパンティエ公爵。港湾都市マイヅルを含むシャルパンティエ公爵領の領主である。

 禿げ上がった頭に白い髭を蓄え御歳68歳になるが、180センチはあるだろう長躯と、フリックス警邏庁長官にも劣らない肉体を持つマッチョな爺様である。


「我が一族は代々船乗りの家系。この鰭竜討伐、一枚噛んでおかねば先祖に顔向けできん」


 彩兼の持ち込んだ作戦に二つ返事で協力を約束してくれたシャルパンティエ公爵。しかし、次からは作戦会議に自分も参加させるようにと念を押されてしまった。


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