第一話
――――それは「魔法」と言い換えて良かったのかも知れない。
一九九六年。一人の科学者によって発見された『それ』は少しずつ研究を進められた。
それから約三十年後、二〇二三年。科学者による英知の結晶は人々の間へと流布され始める。
そしてまた十年の月日が流れ――二〇三三年。
かつて「魔法」だった『それ』は一つの技術として確立された。
日本は『情報戦術技能特区』他世界七ヶ所でそれらの技術の習得が始められる。
月日が経ち――二〇四三年。
時代は『戦術プログラム』によって急速に変わろうとしていた。
「本当にどうしようもない愚か者だね、君は」
六月十日。梅雨に入って間もない日の事だ。新戸遊祉はそんな事を言われてしまった。
机に腰掛け足を組んだ彼女は椅子に座る遊祉を真っ直ぐに見下ろしている。
彼女は彼の担当講師である天上院 千詠だ。
腰まで届く長い黒髪はボサボサで、白いシャツ一枚にタイトスカートから伸びるタイツをはいた足は真っ直ぐに遊祉を指している。目の下には泣きぼくろ。不健康そうな青白い顔色は本日で何日目になるのだろう徹夜と引き篭もりによって形成されたものだ。
時期的には梅雨、にも関わらず久方振りの晴天の日、遊祉は千詠の研究室へと呼び出されていた。今日は土曜日。授業は休みであり、遊祉はベッドの中、揺り篭で眠る赤子のように惰眠を貪ろうと考えていたのだが携帯に連絡が入り、こうして千詠の前に引きずり出されている。
「君はこの間の試験で取った点数を覚えているかい?」
「うーん、まあ何となく覚えているような……」
千詠にそう問われた遊祉は言葉を濁しながらも頷く拍子に耳に着けたピアスが揺れた。
彼女の言う試験とは五月の末に行われた中間考査の事だろう。既に答案は返され、その試験結果に愕然とした事を遊祉はうっすら記憶している。
恐らく『可』にすら達しない酷い点数だった気もするが。まあさしたる問題ではない。
「君の担当講師である私はそれを見て唖然としたね。よもや稀代の天才と謳われたこの私の教え子に当たる君があんなにも酷い点数を取ろうとは。あまりに醜くて君のテストは燃やしてしまったよ。私はその答案用紙が水と二酸化炭素になり空気へと混ざった後も、それらの空気に触れるのが嫌で嫌で仕方が無かった私は数年ぶりにこの部屋を換気した。全く……、この私に外の空気を吸わせるとは。君は大した奴だよ。下等生物としては驚くべき不愉快さだ」
「良かったじゃないですか。普段外の空気を吸わないんですから、機会を与えた俺に感謝の言葉を戴きたいところです」
「ところで……。何で君は喋れているんだい? その脳みそにはスポンジか何かが詰め込まれていると思ったのだが。これは早急に切り開けて中身を調べたいところだ」
「俺の頭は台所用品かよ。先生のこの汚い研究室でも綺麗にしろってか」
千詠は遊祉の言葉を聞いた後、強調するかのように大きなため息を吐いた。
「まったく……。君はかの有名な『情報戦術科』に通う一生徒なんだぞ。その虫けらじみた小さな脳みそには一欠けらの好奇心って奴が存在しないのかね」
『情報戦術技能特区』。通称、『情戦特区』。二〇四三年現在、ここでは普通科や商業科の他に『情報戦術科』と呼ばれる特殊クラスを設置している中高大学が多数存在している。
情報科、と聞けば外の連中は基本的にパソコンに関わるあれやこれやを教える学科と想像するだろう。確かに情報戦術科ではパソコンを使う事も多い。
しかしながら、それだけでは無い。
普通の情報科では基本的にパソコンへの命令記述、スクリプトを作成する授業がある。
情報戦術科でも似たようなものだ。命令記述、スクリプトを作成するのが主な内容となる講義も多く存在している。
ただ、命令する対象が違う。
『情報戦術科』は情報科とは違い、世界への命令記述、スクリプトを作成する。
『情報圏』と呼ばれる情報蓄積領域が発見されてからほどなくして、一方的に情報が蓄積されるだけの領域であった情報圏の情報を改竄する事で世界への干渉を行う事の出来る方法・技術が発見された。
物理法則を無視し、世界を騙す命令記述。本来情報が蓄積されるだけの領域である情報圏より情報を改竄し、世界の物理法則を捻じ曲げる、不可逆を可逆へと変える為の命令が記載されたのが『戦術プログラム』であり、それを扱う人間をここでは『戦術プログラマー』、または短縮して『プログラマー』と呼ばれている。
遊祉は情報戦術科に通う一生徒であり、且つ落第生でもあると言う訳だった。
落第生である理由の一つには単純に無気力、無関心から生じる低空飛行の成績評価が上げられるが、それ以上にどうしようもないわけが遊祉にはあった。
「君が成績に頓着しないのは分からないでもないがね。人間、出来ない事は出来ない。ひいては知らない事は知らないままで居た方が幸せという者も居ると聞く。君はこの情戦特区でプログラマーとして生きていくにはどうしようもないハンデを背負ってしまっている」
「確かに。それはその通りです」
「本当に君は一つとして自分を恥じないのだね。ゲージの中で暮らす家畜は外の世界を知らない方が、太陽の色を知らない方がきっと幸せだ。知ったところでゲージの外へと出される事は無いのだからね。そういう意味で鈍感で居られる事は一種の美徳なのかも知れないな」
「これは褒められているんですかね」
「そんな訳がない。君は鶏よりも察しが悪いのだね。君の頭が九官鳥以下なのはどうしたところで君の責任には違いない。しかし君のプログラマーとしての才能を決定付けると言っても良い『メモリ』が低すぎる点についてはもはやどうしようもあるまい」
プログラマーにはそれぞれ『メモリ』または『脳内処理領域』と呼ばれる資質の秤と言っても良い要素がある。
この情戦特区に通う学生は何よりまず『メモリ開発』と呼ばれるカリキュラムを受けている。
情戦特区に通う学生と他学生の最も違う点を挙げろ、と言われれば恐らくはこのメモリ開発を受けているか受けていないか、となるだろう。
戦術プログラマーはこの学区に通えばすぐに『戦術プログラム』を扱える、と言う訳ではない。このメモリ開発を受け、『戦術プログラム脳内処理領域』――通称『メモリ』を持つ者が戦術プログラマーと呼ばれるのだ。
ただしこのメモリには個人差が存在する。そして才能の優劣がはっきりと示される。
新戸遊祉はと言えばこのメモリが平均よりもずっと少ない。ユーザー適正クラスⅠ、落第生の烙印を押されるユーザーカラー【パープルユーザー】である。
メモリが低い事には様々なデメリットが存在するが、簡単に言えばプログラムの多くを処理出来ない、言わばプログラマーでありながらプログラムを殆ど扱えないのである。
それに加えて遊祉は筆記テストの点数も悪い、どうしようもない落第生だ。
そんな彼に千詠は哀れみの視線を向ける。
「このままとなれば君は留年、悪ければ退学となる。君には同情を禁じえない」
「成程。まあ仕方が無いかも知れないですね」
「……。地位に頓着が無い事は良い事だ。ただ、社会的にはゴミカス以下だね」
「それを先生に言われるとは思いませんでした」
千詠は年がら年中研究室に引き篭もってる様子のどうしようもない社会不適合者だ。
少なくとも遊祉の担当教師から彼女になってからの二ヶ月の間、彼女がこの部屋から出る事は一度として無かった。しかも、彼女にはどうしようもない悪癖がある。そんな彼女に社会的にどうとか言う指摘を受けたくは無い。遊祉はそう思った。
「私はこうしていても許されるんだよ。何せ私は天才だからね」
「……その自称天才様がどうして俺をここに呼んだか、そろそろ教えてくれませんか」
「凡夫の癖に結論を急ぐか。まあ馬鹿に過程を話したところで無駄だと悟ったのであれば、それは良い兆候だ。評価しよう。さて、本日君をここへ呼んだのは他でもない。チャンスを与えようと思ってね」
「チャンス?」
遊祉はその言葉に首を傾げる。
「そうだ。天才である私はね、とても慈悲深いんだ。哀れで幸薄そうで恐らくは今後一切幸せを感じることなくともすれば童貞で一生を終えることになるであろう君に精一杯のチャンスをあげる為に私は今日、君をここへと呼んだんだ」
「先生に俺の経験うんぬんをとやかく言われたくはありません」
「良いんだ良いんだ。君と私の仲ではないか。例え君のような人間の底辺でも担当生徒である以上、担当教師である私が情けをかけるのは当然の事だ。感謝したまえ」
遊祉の言葉はことごとくスルーされる。基本的に天上院千詠という人は他人の話を聞かない。担当生徒が遊祉以外に居ないのも彼女のその破綻した性格故であろうと遊祉は考えている。
「さて。君は執行部と言う者達を知っているかね?」
その言葉に遊祉は覚えがあった。
だが、同時に今の彼にとって最も遠いであろう者達だ。
「そりゃあ、知っていますよ。『特区法』を守る自治組織みたいな人達でしょう?」
この情戦特区では外とは別に特殊な条例のようなものである『特区法』が存在している。
特区法には様々なルール、項目が存在しているが、その全てが基本的に『プログラマーが一般人その他にプログラムを用いて危害を加えないようにする』というものである。
プログラマーはクラスⅤ、【レッドユーザー】クラスにもなると途方もない力を発揮するプログラムを所有する事もある。そうでなくともプログラマーには何かと制限が必要なのだ。
そしてそれを遵守させるべき組織が『正規部隊』であり、そのサポートをするのが情戦特区内の学生によって構成された自治組織『執行部』である。
「それで。その執行部が俺に何の用ですか?」
当然ながら執行部は学生の中でもそれなりの優等生、中には『企業』と専属企業契約を結ぶ掛け値なしのエリート達が所属しているのが普通だ。
【パープルユーザー】から見れば雲の上の存在でる彼らの話を千詠が出した理由について遊祉はピンと来なかった。
「用があると言えば普段、落第生である君は執行部のお世話になる側であろうが」
「生憎まだそんな経験は無いです」
将来的には有り得ない話では無いが今のところ遊祉は執行部との接点を殆ど持たない。
「だが今回はその限りでない。なあに、実に簡単な話だ。新戸、君は本日付けで執行部第九支部に出向き、そこに居る者らのサポートを行って来い」
「……は?」
遊祉は渋面を作る。
「どうしてですか?」
「どうも察しが悪いようで困るな、君は。凡人の相手はこれだから嫌なんだよ。その首に乗っけている物体は飾りか何かかね。少しは考えてみたらどうだ」
遊祉はそう言われて頭を働かす。が、それが何かしらの答えに繋がることは無かった。
「……まあ良い。君もこの頃、情戦特区で治安が悪くなりつつあるのを知っているだろう?」
「いや、知りませんが。何かあったんですか」
「あったんだよ。君が無知で居る間も世界は回っているんだ。この頃、プログラムユーザーによる事件が多発していてね。正規部隊はおろか、執行部ですら手が回っていないのが現状なんだ。何せ正規部隊の連中は数が少ない。一学生の揉め事に一々介入してられないのだよ」
千詠の言う通り正規部隊と呼ばれる特区法の番人は万年人員不足なのが現状である。
理由は単純に正規部隊になれるほどの優秀なプログラマーが不足しているからだ。
正規部隊に入るには国家資格である国家情報戦術技術者の資格が必要で、その資格の取得難易度はかなり高い。
これらの人材獲得は現在の情戦特区での課題の一つとして数えられている程に急務だ。
それはそれとして正規部隊が不足している分は執行部がフォローに回るのだが、その執行部ですら手を焼いているのだと千詠は言った。
「つまり猫の手も借りたいのが今の執行部なのだよ。第九支部の会長とはちょっとした知り合いでね。この天才である私に対してそれら問題の解決を頼まれたのだ。優秀と言うのは実に厄介な病気だよ。一つの治療が終われば、次の病気が持ち込まれるのだからね」
千詠のそんな言い分を受けて遊祉は当然の疑問を抱いた。
「それって先生がその会長とやらに頼まれたんですよね? それを何で俺に……」
「そんなの答えは一つしかないだろう」
長い髪の毛をかきあげながら千詠は言う。その色っぽい仕草に目を惹かれながらも遊祉は一つの考えに至る。
「先生、それはもしかして俺にプログラマーとしての資質があるとかそんな感じですか?」
「はあ? そんな訳ないだろ。君は糞雑魚だよ、粋がるな」
鋭い目付きで罵りを口にする千詠。糞雑魚。すげぇ、言い草だな。
「答えはもっと単純だ。そう、単純に私が面倒なだけだ」
「単純に酷い理由でしたね」
「執行部だかなんだか知らないが、治安が悪いくらいがなんだ。私にとってそんな事は関係の無い事だ。私にとって大事なのは自分の研究であって凡百の人間が被害を被ろうが私の知った事ではない。まとめて地獄にでも落ちていれば良いのだ」
「…………」
聖職者とは思えない教師の物言いに遊祉は呆れてしまう。
彼女は例え隣の人間が身体の内側から爆発四散しようとも貴重なサンプルが出来たと喜べるような人間だ。しかも彼女の担当はどうやら医学系に属しているらしい。
医術に携わる人間が、こんな人格破綻者で良いのかどうか疑問に思うが、あるいは(自称)天才とはそういうものなのかも知れない。
「さてしかし。そうは言ったものの、一々頼まれたのだ。本当に面倒だとは言え、人の頼みを無碍にするのは人としてはどうかと思う訳だよ」
「安心して下さい。先生の人としての倫理観は既に人かどうか疑わしいくらいですから」
「世間には猫の手も借りたいという言葉がある。君が猫に匹敵し得る程に使えるかどうか私には甚だ疑問の余地があると思ってはいるものの、それでも例え形だけとは言え対応しようとした建前と言うのは必要だろう。つまりはそういう事だ」
指摘を無視して次々と口にする理由について担当講師としての器量の疑わしさを感じつつ、遊祉は口を尖らせた。
「先生の建前はさて置いたとしても……それって断る事は出来るんですか?」
「君は馬鹿か。さっきも言っただろう? これは私からの精一杯の親心だと。それとも留年の可能性を下げるたった一つの機会を失おうと言うのかね? ああー、さすがは私優しいなー」
「そんな棒読みで言われても……。それに俺は別に一回くらい留年しても良いと思ってますけど。人生そこまで行き急ぐ理由も無――――」
「命令だ、行け。それとも今すぐ退学するかね」
「……。委細承知しました」
遊祉は渋々ながらも首を縦に振る。この人は少し自分の思い通りにならない事があると自分の立場を利用としては何ふり構わず人を脅すのだ。遊祉を担当生徒として選んだのだってくじ引きで適当に決めたそうだし……。なんだこの人。
「それで。執行部第九支部とやらにはいつ行けば良いんですか?」
「君は人の話を聞いていたのかね? 本日付で執行部のサポートを行え、と私は言ったんだ。そんなの今すぐに決まっているではないか」
「今すぐ、ですか」
「今すぐだ。あと明日には先日出した課題の提出日だ。課題の内容は憶えているだろうな?」
「『プログラムによる情報干渉』のレポートとそれらを示す為の簡易プログラムの作成、でしたか。でも執行部の手伝いとやらに行く訳ですし期限を延ばして戴く訳にはいきませんかね」
「課題はかなり前から出していた筈。私だったらものの三分あれば纏められる内容だ。よもや出来てないなどと言う事はあるまいな」
ぎろり、と向いた千詠の視線からは慈悲の色はまるで感じられなかった。
「……どうにか間に合わせます」
「そうだ。死ぬ気でやれば君のような愚鈍な脳みそでも形にはなるだろう」
言っておくが、と千詠は付け加える。
「私が君の課題を確認する、と言う事は私の時間を、私の貴重な時間を君が奪うと言う事だ。つまらないレポートを提出するようなら、その時点で不可を与えるつもりでいるから、それを踏まえて課題を提出するように」
「…………」
酷い脅しだ。遊祉は心の内でそう呟く。
「新戸。担当教師として言っておく」
千詠は少しばかり神妙な顔つきでこう言った。
「君はもう少し努力をする事を学べ」
「努力、努力と言うのは?」
「そうやって逃げようとするな。自分を高める為の、自分に『期待』する為の努力だよ」
「先生、前から言っているでしょう。俺の目標はもう決まっているんです」
千詠のその言葉に遊祉は言葉を返す。
その表情は険しいもので、硬い信念を感じさせるものだった。
……硬いは硬いと言っても、それが立派なものであるかは限らないのだが。
「俺は楽して一生暮らしていきたいんです! 努力をするだなんて本末転倒、一生だらだら楽して生活、自堕落上等、無問題ですよ!」
「ああ、そうだなその現実を直視出来ていないお気楽な思考は最早正気を疑うよ」
千詠は遊祉のその固い信念を切って捨てる。
「俺のモットーは『果報は寝て待て』です。寝てるだけで利益を得る、最高じゃないですか」
「ああ。存分に寝れば良い。そして一生起き上がる事の無い事を願うよ」
「大体誰もかれもが『努力をしろ』とか『怠けるな』とか言いますが、それは個性の否定では無いんですかね。個性を認めるのであれば、駄目で居る個性も認めて良いのではないですかね。俺は自堕落にのんびり暮らせればそれで良いんですから」
「新戸。君は出る杭は斬られるという言葉を知っているかね」
「地味にアレンジを加えないで下さい。殺す気満々じゃないですか」
「良いかね、新戸。それを言って良いのは努力をしたものだけだ。磨かれない鉄は錆びるのが当然、努力をせずにいる者が安心して暮らせる場所などこの世界には何処にもない。どれだけ社会が発展しようとも、戦術プログラムが生み出され、物理法則を超える方法が生み出されようとも、その事だけは恐らくずっと変わらないだろう」
「はあ……、人間ってしょぼいですね」
「その言葉、恐らく君にだけは誰も言われたくないだろう」
千詠の声音には諦念が混じっていた。
「兎に角。現状に甘えるばかりでは何物も掴めないだろう。執行部に言って前に進み続ける覚悟を持った者を見てくると良い」
千詠は真っ直ぐ、しかし嘗め回すような視線で遊祉の「目」を射抜く。
「言っているだろう。君は『期待』するべきだ。現状を変える為に自分の力を認め、可能性を試す――――『期待』するのだ。君はその可能性を既に目にしている筈なのだから」
彼女の憐れむような、あるいは手の中に掬った水を見つめるかのような、そんな言葉を聞いた後、遊祉は研究室を後にした。
(仕方ない……言われた通りにするか。しかし……)
遊祉は思い出していた。執行部に在籍しているであろう『彼女』の存在を。
(とは言え……、第九支部に在籍しているとは限らないしな。浅からぬ縁があるとは言え、さすがにあいつに出くわす事も無いだろう)
遊祉はそんな事を思いながら執行部第九支部へと向かった。