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第45話.開戦

夜が明け、空が明るくなってきた頃


シュカさんは自分の部隊に戻り、撃ちつけた鎖をBランカー4人と共に外した。


原尾コロニーから出て来たのは、大型キメラ6体、ちびキメラ約30匹、そしてナンバーの部下である20人の者達。


対するシュカさん達第4区は、正門から少し離れた場所で4ヶ所に固まって待ち構えた。

ナンバー3シュカ、Bランカー4人、そしてその部下達48人がそれぞれの4ヶ所に分割されて配置されている。


シュカさんの所には、Bランカーも1人いる為

4ヶ所の中では一番正門に近い真正面に位置していた。


それを丘の上から見ている俺達。


「ナッツとじゅんじゅんは、出て来ないみたいだね。」

「じゅんじゅんじゃなくて、じゅんだよ?ナッツがあだ名でじゅんじゅんって言ってるだけよ」

「いかにもあだ名付けそうな女やもんなぁ。」

「メル。あの二人は、多分中央にある建物の中だよね?」

「アイサ!!ホカニ、オオキメラ2ツ、ヘンタイサン6ニン イルデシャ」

「中には他にダイヤモンドキメラ2体と変態さんが6人いるんだね」

「変態!?」


……兵士だよノア…。

多分、メルは兵隊さんと言いたかったんだと思うよ。



すでに、外壁の中には6つしかない建物。

その中央に位置する大きな建物が、ナッツ達が拠点としている場所だろう。


自らは高みの見物ですか?

戦いたきゃ、お前らが来いってか。

ダイヤモンドキメラは6体しか外に出て来てない。

残りの2体は、自分の近くに置いてるみたいだな。


「俺らナシで、ほんまにダイヤモンドキメラ6体も相手出来るんか?」

「うーん……。シュカさんやBランカーでもタイマンはキツイと思うけど…1体ずつ相手したとしても、6体いるから1体はフリーになっちゃうよねぇ。」

「部下はチビキメラでいっぱいいっぱいやしな。2区の兵士をまずは消さんと。部下だけでチビキメラと兵士2つを相手すんのはちょっと無謀すぎるな。

普通の兵士ならまだしも、頭脳派集団は体力スペック高くないんやし。」


「まぁ、だからこっちも1人貸してる訳だしね。」


作戦は、至ってシンプルだ。


正門前にシュカさん達が陣取り、戦う以上

ほとんどのダイヤモンドキメラとチビキメラ、兵士は正門前で彼らと戦うだろう。

ナッツとじゅんが出て来ないというのも、ギンとシュカさんどちらも予想していたので ほぼ100%だろうとは思ってた。それに加えて、メルの探知で確定。

さすが、頭脳の2人と探知機能持ち。


ナッツは正門前のダイヤモンドキメラのどれかにリンクして外の様子を見るだろう。


ここで重要なのが、いい勝負を必ずする事。

ナッツがリンクから目を離せなくする。

上手くいけば、その状況を知ったじゅんが加勢に行こうと建物から出て来る。


そうすれば、2区のナンバー2人を分断することに成功するのだ。


流石にナンバー2人を同時に戦闘させるのはムリゲーというもの。

分断させなければ勝ち目はない。


正門前で派手にドンパチしている間に、俺達は横の丘から外壁に移動し、外壁から原尾コロニーの内部に侵入する。

侵入したら直ぐに、どこかの建物の中に身を潜めて準備を整え、まずは中央の建物にいるナッツを狙う。


問題は、正門前に行ってしまうじゅんだ。

そのままにしておくと、じゅんがシュカさんやシュカさんの部下であるBランカーとぶつかってしまうのだ。

Bランカーでは太刀打ち出来ないが、シュカさんはじゅんと同じナンバーであり、じゅんが5番持ちである事に対してシュカさんは3番持ちだ。


俺達がナッツを倒すまで、なんとか時間稼ぎをして耐えて貰わなくてはいけないのだが……。


昨晩聞いてみると、シュカさんは笑いながら困った顔をした。


「確かに私は3番で、彼は5番ですが…。

ナンバーが上だからとは言っても、僕は頭脳派地区のナンバーなんです。

脳筋地区の第2区のナンバー5番とマトモに戦闘するとなると、無傷では済みませんよ……」


シュカさんは近接戦闘も出来て、さらに頭脳派はスピードスキルは高いというから、いい勝負は出来るだろう。


しかし、運が悪い事にじゅんもスピード重視のナンバーなのだ。

さらに第2区は脳筋。

恐らくは力もかなり強いだろう。


俺達がどれだけ早くナッツとの戦闘を終わらせられるか ということが肝になってくる。


後ろを見ると、黒子の鷹がきちんとこちらを向いていた。

どの位リーヴに怒られたんだろうか……。


「メル、今ナッツとじゅんは中央の建物にいるんだよね?どっちか…多分じゅんだと思うけど、もし動いたらすぐに教えて?」

「アイサ!」


戦場の完全把握……。

やっぱりメルの存在は、持つ人によってはこの世界のパワーバランスが崩壊してしまう。


「メル。俺か、ノア、久遠、凪ちゃん。絶にこの4人からは離れない事。いい?」

「アイサ!!!」

「メル、なんかあったら、あの鳴き声やで。アンドロイドには聞こえへんけど、聞こえたら俺がすぐに飛んでくけぇな!!」

「アイサ!!」


メルは、17キロヘクトの、超高音波を使った鳴き声を出す事が出来るらしい。

久遠と莉音ちゃんには聞こえる。

もし何かあっても、きっとこの二人が駆けつける。


きっと大丈夫だ。


丘の上から、原尾コロニーや正門前で、睨み合っているシュカさん達を見つめるノアは、不安そうな顔をしたままだった。


フードコートが風でパタパタと後ろになびいている。


「……うまく、行くよね?」

「…行かせなきゃ、だな。」


二人でシュカさんを見つめていると、シュカさんと他のBランカーが昨日よりも大きめの銃を地面に向けて、まるで大砲のように地面に撃ちつけた。


地面から出た鎖は、昨日正門に巻き付いた鎖とは比べ物にならない程の太くて大きな鎖。


それらが6匹のダイヤモンドキメラの足元の地面から飛び出し、ダイヤモンドキメラを拘束した。



「ー……始まっったで。」


俺達は丘から駆け降り、外壁の影からシュカさん達の様子を眺める。


大丈夫だ。

ダイヤモンドキメラは、あのデカい鎖で拘束出来てる。

この隙に、チビキメラと兵士に飛びかかる第4区の兵士達。


それを見届け、俺は外壁の側面を観察した。


「外壁登ったら見つかるし……外壁に穴開けるしかないよね?」

「私が一発ぶん殴るわよ。」

「あのね、ノア。見つからないように侵入したいの。昨日話したでしょ?話は聞きましょうね。」


俺がノアに説教している横で、久遠が(サナギ)を抜刀し、左下から左上へ

右下から右上へ。そして地面に近い下の部分を真横に。

見事に何の音もなく、外壁に綺麗な三角形の切れ目が入り、そのまま三角形に切れた外壁は中の土の上にゴトリと外れた。


「………ダイヤモンド斬れるんだから、そりゃ石の壁は斬れるよね…」


三角形に出来た穴を確認し、再び正門前を見ると

チビキメラや兵士達を物凄いスピードで次々にと倒していくシュカさんと目が合った。


シュカさんは俺を見てニコリと笑った。


うーん…合図を待て という笑顔でいいのかな?


戦いながら余裕だなぁ。


わかってるよ。

合図を受けるまで、何があっても動かずに堪える。


でも絶対に、無事でいてもらう。

全て終わらせて、話を聞くんだ。



俺達は、外壁の影に身を潜めながら、中に入る合図をひたすら待った。

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