表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/226

第43話.ギンとシュカ(2)

シュカさんは、呆然と俺の顔を見つめたまま黙り込んでしまった。


俺の顔が……なんだ?


「…あの、シュカさん?俺…実は記憶…」


『いちさん。黙って下さい。』


「ギン……」


でも、こいつ俺の事知ってるんじゃ……


すると、シュカさんは目を閉じて大きく息を吐いてから俺を見て言った。


「私が持っているカードとは、“第2区の援軍は来ない”という情報です。」


『援軍は来ない?』


「はい。どうやら、首都のほうで何か大きな問題が起こった様でして。リーダーのネオが、その問題に対して酷くご乱心しているとか。

ですので、原尾コロニーに援軍なんか送る余裕はないみたいなんですよ。」


『なるほど。それならば挟み撃ちのリスクはないという事になりますね。』


「ええ。ですから、安心して私達と共に原尾コロニーの第2区の人達と戦ってもらえるのではないかと。」


『そーゆう事なら。乗るべきかもしれませんね。』


「ありがとうございます。」


『配置は、どのようにお考えで?』


「それは、相談したいのですが…。そちらは、すでにあのナンバー2人と戦闘経験がおありなんですよね?」


「…うーん…、ダイヤモンドキメラが、あと8匹いるでしょ?あれは久遠の(サナギ)か、赤金(アカガネ)でしか斬れないんだよねぇ。」

「せやけど、ナッツと5番の男もおるやろ?俺と姉ちゃんでダイヤモンドキメラについてまうと、そのナンバー2人はどないすんねん?」


『シュカさん、戦闘の方はどんな感じなんです?』


「おやおや?知ってらっしゃるんじゃないのですか?ブレイカーギンさんならば。」


『……………』


「おっしゃっても構いませんよ?どうぞどうぞ。」


おいおい…ギンを挑発してらっしゃる。

頭脳派というものは、負けず嫌いが多いのか?

ギンの情報盗人レベルを確かめようとでもしてるのか?


『…失礼。共闘なのですよ?僕だけが知っていても意味が無いでしょう?情報共有という言葉はご存知で?僕と貴方だけで話している訳ではないのですが?』


「…あぁっ。そうですね。これは失礼致しました。

そう言う事に致しましょう。僕の戦闘面に関してでしたね」


『ちょっと待って下さい。

そう言う事に致しましょう、とは一体?

僕がその情報に関しては盗めてませんでしたーっ!!て、事に致しましょうと!?

第4区のナンバー3シュカ、戦闘面は主に道具を使っての戦闘を得意とする。銃や飛び道具が主。

しかし実は近接戦闘に関しては、Bランクレベルを遥かに越える力と速さを持つ。こちらの方がレベルは高く、まさにAランカー。

それを隠す為に道具を使っての攻撃を主としている。…姑息。


知能ランクは、そこそこ。』


「ちっ…知能ランクが、そこそこ!?

それに何ですか!?こっ……姑息ですと!?」


『顔は良いので、女性受けは良いはずなのだがナルシストな一面が表に出過ぎていて足を引っ張っている。

なので、モテない。

風呂に1日9回入るとかマジキモイ。

最高16回入ったとか自分で言ってたマジキモイ。

この話は、第4区の女性の間でよく笑い話のネタにされている。』


「……んなっ!?」



個人情報ダダ漏れにも程があるな。


「…ちょっ…皆さん!?なぜ誰も止めないのです!?個人情報ダダ漏れにも程がありますよ!?」


まさに、その通り。


シュカさんが、助けを求める目を俺に向けて来た。


「その通りです。シュカさん…すいません。この子には個人情報ダダ漏れなんです。喧嘩売る相手を間違えたとしか言えません。」

「えぇぇっ!?」


バッテリー勿体無いんだけど…ごめんねシュカさん。

ぶっちゃけ面白いんだわ。


横を見ると、笑いを必死に堪えているノア。

久遠も莉音ちゃんも、口に手を当てて笑いを堪えている。

凪ちゃんはポカンとしているが、その胸の中にいるメルだけは「フキャキャ!!」と遠慮なしに笑っていた。


『ナンバーになる前は密かに歌手を夢見ていたが

音痴である事に、最近やっと気付いた。』


「ぎゃあああああああ!!!」



『シュカさぁん。これはいけませんねぇ。

第4区のリーダーに黙って、何度も第1区にお出掛けしているのは何故なんですー?』


真っ赤になって顔を両手で抑えていたシュカさんが、ピタリとその動きを止めた。


「……その足跡は…念入りに消していたはずですが……?」


『僕に見えない足跡はありません。何故なんです?と聞きましたが、すいません。知っていますその理由。

これも言いますか?どうせなら、第4区のリーダーに。』


「やめて下さい!!!!」


シュカさんは真っ青になり、その場にしゃがみ込んだ。


「…すみませんでした…。……貴方の知能ランクを……舐めてました……っ……」


そのまま、シュカさんはケータイに土下座しようとした。


「ちょ、ちょっと待ってシュカさん!!もういいですから!!ね?ギン。」


『え?』


ああ、そうか。

シュカさんが土下座しようとしてる姿は、ケータイごしのギンには見えないんだ…。


しかし、シュカさんは真っ青になったまま震えている。

よほどリーダーには知られたくない事なのか…。


「…ギン、ここまで。君の勝ち。ね?」


『…いちさんが、そう言うなら構いませんが…。』


俺がシュカさんの右肩をポンと叩くと、シュカさんが泣きそうな顔で俺を見た。


「…えぇっと、ギンがちょっとやり過ぎました。すいません。……明日の話の続きをしましょうか。」

「……いちさん…と、いうのですか?貴方は…」

「え?あ、はい。」


本当の名前は知らないけど…。

皆が付けてくれた名前だ。

これが、俺の名前。


「いちさん……」

「はい?」


シュカさんは、キッと真面目な顔をして俺を真っ直ぐ見つめながら言った。


「ちょっと、抱きしめてもいいですか?」

「嫌です。」

「…………」


ガックリと肩を落とすシュカさん。


ちょっと。何この人。怖い怖い怖い。


「…えっと、では明日の話を………………って、聞いてますか?シュカさん?」

「…………はい…」


なんか、すっげぇ見てくるんだけど。

ガン見されてると、話しづらいんだけど……。



「……うわっ……!?」


ふいに、シュカさんがビクッとして顔をそむけた。


「……?」

「……おぉーー、怖いのぅ怖いのぅ。」


首を傾げる俺に、久遠がケラケラと笑った。


「気ぃつけやぁーシュカはん。

この姉ちゃんの殺気は痛いやろぉww?

俺も喰らった事あるんやわぁww

マジで刺さんねんww」

「……ほ、本当に何者なのですか?その方……。

あのっ…違います、違いますよ?いちさんを見ていたのは確かですが、いちさんではありませんよ!?いちさんの顔を見ていただけでっ…決していちさんではありません。だからやめて下さい痛いです…」


何言ってんのこの人…。


…って、ノアかよ!!!

何コイツ!?殺気でチクチクやってんの!?


慌ててノアに向かって繋いでない方の手を上下に揺らす。


どうどう。


すると、ノアはプイッとあっちを向いてしまった。


うーん……。

後でこっそり褒めてやろう。


「えっと……いや、あの…顔って……。シュカさん…俺そっちの趣味ないんですけど。」

「は?僕もありませんけど。」


『あーっと……いちさん、大丈夫ですよ?その人ノンケです。』


「ギン君……後でちょっと話そうか。」


『??はい。』


どこのどいつだよ!!

ギンに変な言葉教えたのは!?

そんな言葉は情報処理には関係ないだろ!?

どう考えても、あの地下コロニーで読んだ本から得た知識だろ!?

マジふざけんなよ!?

全部燃やしてやるからな!!!



……燃やして……



「………あっ……」


良く考えたら、こんな時間だ。


俺は立ち上がって、東の方角を見た。

俺が立ち上がったからか、手を引っ張られる形になったノアが「わっ…!?」と小さな声を上げながら共に立ち上がる。


大きな木が茂っていて、空はあまり見えない。

だが、確かに細い一本の煙が柱の様に伸びているのは見えた。


「………久遠……」


立ち上がった俺の後ろには、同じく立ち上がってその煙を見つめる久遠がいた。


「………今更やで?いちはん。」


久遠が、悲しそうに笑ってそう言った。


すでに数時間前。


地下コロニーは自爆により爆発し、そのまま炎上。


今では細い煙が一本登っているだけとなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ