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第39話.ネオが欲しいもの

ひとまず、丘の近くの草むらに身を隠した俺達。


そこで、俺から2区が探しているのはメルではないか?という事実を、聞いた皆は あまりの事に混乱し、動揺していた。


『確かに…メルがいれば、戦場はあきらかに有利になる。身を隠したってメルの探知機能で見つかってしまう訳だし、戦場の状況だって全てを把握出来てしまうんだ。戦場の完全把握……これは欲しがる訳だ。』


電話口のリーヴの声のトーンが低い。

とんでもない者が自分達の手元にあるのだから、仕方が無いのかもしれない。

けど……


「そこまでしてメルが欲しいのにさぁ…。なんでスクラップしようとしたんだろ?ネオって馬鹿なの?」

「…ぶはっ!!」


俺の素朴な疑問に、ノアが吹き出した。


「ふっ…くく…。アイツを馬鹿呼ばわりするアンドロイドって、なかなかいないわよ?」

「まぁ…、この地区のリーダーだしなぁ。…つーか、その人を“アイツ”呼ばわりするお前も相当だぞ?」


すると、俺達の会話をケータイで聞いていたのか、黒子が暴露話を始めた。


『ノア様は、ネオ様本人に対して“お前”発言をして周りを凍りつかせたという伝説がございます。』


一番偉い人に「お前」って…


「すげぇな……見事に誰に対しても態度でかいのな。」

「…え。…へへへ。」


褒めてねぇよ?


『あ、それ僕も聞きましたー。でも……』


続いてギンも暴露話を始めた。


それは、とんでもない爆弾だった。



『その後ですよねぇ?リーダーが、ノアさんを嫁にするって言い出したの。』



……………ん?



「…は!?嫁 ! ?」



リーヴも続いた。


『しかも、ナンバーの2番を与えるとか発表までする溺愛ぶりだったなぁ。』



ー……メキッ…



「…んぁ!?ちょぉ!!姉ちゃんケータイ握り締めたらアカン!!今変な音したやんか!!いちはんっ止めてぇな!!」

「情緒不安定なんじゃないかな。」

「何意味分からんこと言うとんねん!!壊れたらどないすんねや!!」


「落ち着いてぇや、にぃ。それよりも、だったらなおさらおかしいやん。

そこまでして溺愛しとったんに…ノアさんかてスクラップにしようとしたんやろ?なんでや?なぁ、いちさん。」

「情緒不安定だったんじゃないですかね。」

「お前が情緒不安定になっとるわ!!」


まさかの莉音ちゃんに突っ込まれた。


…いや、だって


嫁って………。


チラリとノアを見た瞬間、目が合ってしまったのだが …思わず目を逸らしてしまった。



だって、嫁って。



そんな時、メルが俺の膝の上にちょこんと座って喋り始めた。


「メル、ツカマテ、ナスデスヨ」


そして、クリクリとした目でジィッと俺を見る。


ああ、うん。通訳して欲しいんだね。

癒し……俺の癒しよ。


抱きしめてフワモコをスリスリして癒されていると


「キャ!!キャ!!メル、ツカマテ…キャー!!……ムキャ!!」


一生懸命に訴えられ、しまいには爪を立てられた。


「……ん?

メル、捕まってないって……え!?コンテナにいなかったの!?ずっと凪ちゃんのリュックの中にいたのかと思ってたよ!?」

「コロニー襲ワレタントキ、カクレナサイテ。ハカセ、ニ、箱、ツメラリタデスヨ」


えーと……箱?

詰められた!?

いやいやいや、入れられたって事か。


「襲われた時、博士に箱に入れられて隠されてたみたい。」

「なら、なんで今ここにおるん?」

「メル、イパイナイテ、ナイタデス。

アバレテ、箱デタデスヨ。ナギ、サガシニシュパツー。」

「泣きながら暴れて箱から脱出して、凪ちゃん探しに出発……あ、首都には来てたの!?」

「アンドロド……イパイ…。メル、ハイレナス…デ……モリノンナカ、ウンロウロ、シナガラ…ナイテタデスヨ」

「森の中に……。そっか。そこに脱出した俺達が走って来たのかぁ。」

「アイサ!!ウレシデ、ナギノリュックートビコンダーデ、ス!!」


『……いちさん、言ってる事が全然わからないんですけど。』


ギンが電話口でイラついていた。


「アゥ……」

「大丈夫ですよー。ギン君は頭がいいのに短気ですねー。よしよし。」


『で?』


こえぇよ。


「首都にはアンドロイドがいっぱいいて入れなくて泣いてたんだって。

泣きながら森の中ウロウロしてたら俺達が走って来たから、嬉しくて凪ちゃんのリュックの中に飛び込んだんだって。」


『あぁ、なるほど…』


うん。正しい判断だぞメル。

しかし、よく森で待っててくれたよ…。


メルの頭を撫でると、メルはウキューッと鳴きながら頭を手に すり寄せてきた。

幸……せ………です!!!


なんか、さっき一瞬モワッとした感覚に襲われた気がしたんだけど、まぁこれで浄化された感じ。うん。


「しかし、メルは分かったんやけど…、姉ちゃんは分からんなぁ。嫁な上にナンバーの2番まで与える程溺愛されとったのに、なんで……」

「情緒不安定だったんじゃないですかね。」

「いちはん、ヤキモチは後でやってーな。」

「………なんと?ヤキモチだと!?

ちっげぇよ、なんかモワッとすんだよ!!」

「ヤキモチやん。」

「知らないもんそんな感情。俺記憶ないもん。そんな感情知らないもん。」


『ハイ出ました記憶喪失頼み』


「うるさいよギン君!?つか記憶喪失頼みって何だよ頼んでねーし!!」


「やかまっしゃあ!!!!!」

「すいません。」


あれ、怒られたの俺だけ?


チラリとノアを見ると、ノアはふてくされたまま俯いていた。


「………えーと、ノア?」

「…断ったもん。」

「ん?嫁?2番?」

「どっちも断ったもん!!!」


ノアが、手を握り締めながら叫んだ。


「踊り子続けたいからって断ったもん。ナンバーなんてずっと戦場になるし、嫁だって冗談じゃないし。」


ノアは握り締めた手を緩め、自分の目に手を当てて

そして目をつぶった。



「……そしたら、目を潰された。」

「はぁ!?」

「すぐ修復されたけどね、色彩感覚は戻らなくて。

そしたら、さぁ、踊り子は無理だね?嫁になってナンバー2として僕の隣にいる道しか、君にはないね。って当たり前の様に言われたから、もうプチッと来ちゃって。」

「……それは、頭に来て当然なのでは。」

「でしょ!?だから、“嫁もナンバーもやるぐらいなら死んだ方がマシだボケ!!死ね!!”ってブチ切れたら、アイツも切れちゃって。部屋に閉じ込められちゃった。」


死んだ方がマシだと言いながら、相手に死ねって…凄い事言うなオイ…。

よく監禁で済んだな…。


「でも、閉じ込められてたのはコンテナじゃないから。誰かが食事に薬でも入れて眠らされたんだと思う。そのままスリープモードにされてコンテナに放り込まれたんじゃないかな。」


『ノア様は、他の踊り子達から随分と敵視されてましたからねぇ。嫉妬に狂った女は怖いです。私も、何度リーヴ様に近付く女を近くの川に流して来たか。』


流したの!?

消すとかじゃなくて、流したの!?



ショボンとするノアだったが、良く考えたらこうして選んだ道を進む事が出来たんだ。

コンテナに放り込まれたのも、悪い事だけだったって訳じゃ………ないんじゃないかな………。

なんてのは、俺の都合いい考え方すぎるけどさ。


どう言ったらいいのかな…


ノアは顔を上げて考え込んでいる俺をジイッと見ると


ニヒッ と笑った。


「まぁ、今こうしていられるから、結果良かった!!」


ノアの笑顔を見て、ホッとしてしまった。

どう言うか なんて考える必要さえなかった事が、心底嬉しかった。


「ノア……」



『あの、もういいですか?バッテリーが勿体無いんですけど。』



クソガキの台詞を聞いた瞬間に電源を切りそうになった俺は、本当に大人気ないと思う。

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