第37話.心理戦(1)
『いち!!』
ふいに、ケータイからリーヴの声が聞こえてきた。
『4区の隊が、2小隊程こっちに向かって来ているみたいだ。』
「そっちにも!?」
4区が……?
『戦闘員と、俺、きぃ、黒子で迎撃する!!』
「お願い!!ギン!!出来るだけ多くのデータ取ってね!!」
『もちろんですとも!!』
4区も人間のコロニーに…
なんでみんな、そんなに人間コロニーに……?
ここまで来ると、ただの狩りだとは思えない…。
地下のコロニーに来てた6区だって、もしかして狩りじゃなかったんじゃないか……?
だとしたら、2区が人間のコロニー潰して何かを探してるっていう情報を掴んだのか?4区も6区も、それを手に入れたい……?
随分と他地区が来すぎだよ!!って思ってたけど…
もしかしてそれなりの理由があってこれだけ集まって来てるのか?
だったら、今ナッツと4区のナンバーが話してるのは同盟や交渉じゃない。
きっと探り合いだ。
「いち」
考え込んでいると、俺の隣にノアがスタンッと着地した。
うおおお!?上の木をつたって来たのか!?すげぇなサルか!!
「お待たせ。4区の腕章2つ。これでいい?」
「………血まみれなんですけど…
また首ちょんパしたなお前…。」
「声上げられると見つかっちゃうもの。」
ケロッとした顔で言うノアよりも、首ちょんパに少しずつ慣れてきている自分にショックだわ。
「久遠と莉音ちゃんは、人間だってバレそうだから隠れてて?凪ちゃんとメルも、1回あいつと戦ってるんだよね?」
凪ちゃんがコクリと頷き、メルも真似してペコリとお辞儀した。
か……っ…可愛いやつめっ!!
「だとしたら、バレちゃうかもしれないね。久遠と莉音ちゃんと一緒に隠れてて?」
「いちはん、何するつもりなん?」
俺はノアが取ってきた腕章の血を丁寧に拭き、腕につけた。
そして、もう一つの腕章をノアの腕につける。
「俺とノアが、4区のアンドロイドに成りすまして5番の男と話すよ。」
「私も?」
「5番の男はナンバーだし、ノアの実力にはすぐ気付くと思う。ノアが4区の実力者だと思ってくれる可能性は高いと思うんだ。」
「殺気出しとけばいい訳ね。」
簡単に出し入れ出来るものじゃないはずなんだけどね…。
どんだけ裏仕事で鍛えられて来たんだ…。
「で、ギンのペーパー使う事になると思うからさ。ケータイ繋げといてね?」
『わかりました。』
「俺が使うって感じで相手に見せるから、俺の言葉に合わせてギンもペーパーに命令して?」
『了解です。前後の会話などでタイミングは測ります。』
なんて出来る子だ。
「メル、5番の男はココからまっすぐこっちに来るんだよね?」
「アイサ。」
「オッケ。じゃあ、俺とノアはここで待とう。皆は隠れて?」
「…分かった。けど、いちはん。もしヤバそうやったら、出るで?
全員でかかれば、5番だけならなんとかなるかもしれん。」
「…うん。」
久遠、莉音ちゃん、凪ちゃん、メルが草むらの中に身を隠した。
一気に周りが静まり返る。
5番はスピード重視のタイプだって言ってたから、恐らく足音はほとんどしないだろう。
どんな戦い方をするのかは、残念ながらハッキリとはしていない。
サクのサポートがあったとはいえ、ほとんど戦っていたのは莉音ちゃん1人だったしな…。
その後はサクの機転で凪ちゃんが逃げの活路を開いた………か。
随分な谷底に落としたらしいけど、もう追い付いて来ちゃうんだ。
相当ヤバそうだ。
「ノア……、もしあいつがスピードで一気に俺を殺しに来たら…助け…」
「わかってる。大丈夫。いちは絶対私が守るから。」
助けてと言おうとした自分が恥ずかしい。
これが男女逆だったら、どんなにかっこいい事か……。
ー…ガサッ…
左側の草むらが、僅かに動いた。
右側の草むらから見つからない様に顔を出しているメルが、ペコリとお辞儀した。
頷いたんだね?来たって事かな?
案の定、左側の草むらから姿を表した男は、その正面に立っているフードコートを着た男女を見て、眉をしかめた。
『……その腕の腕章…。あんた達は4区の兵士かなぁ?』
「ええ。他にも、原尾コロニーにて我々のナンバーとそちらのナンバーの方がお話をさせて頂いております。」
『………』
こっからは、もう心理戦だ。
『ナッツは、あんたんトコのナンバーと何話してんのー?』
知らん。聞こえねーもん。
すると、男はおもむろに会話を変えてきた。
『……こっちに、人間が来なかったか?女と、子ども型と、ドラゴンロボット、あと少年。』
「…ええ。来ましたけど…」
『来た!?どこに行った!!?』
「…………」
『おい。どこにいる!?』
なんだ…?
他地区のナンバーと自分の所のナンバーが話してんだぞ?
追いかけ回してる人間どころじゃねーんじゃねぇの普通…?
この2区も、4区も、何かを探してる可能性が高い。
一触即発にする為のネタは、あきらかにその探してる“何か”だ。
「……どうやら、そちらの第2区さんも例の[アレ]まだ見つけていらっしゃらない様ですね?」
ハッタリとカンで探るしかない……!!
『まさか、あんたらもそれ狙ってるのぉ?』
「それはもちろん。」
男が、ギリッと歯を食いしばった。
おっと……。早くもコレだけで4区を敵視させる事ができちゃったっぽいぞ?
『…なるほど。さすがは頭脳派集団の第4区だ。ある程度の目安はすでにつけていたって事か…』
男が親指の爪をガリガリ噛じる。
ずいぶんと精神的に子供なのだね?
つーか、なんの目安もついてませんけど。
それとも、何かすでにヒントがあったのか?
“ここに来た人間はどこにいる?”
これ、この時は随分態度違ったな。
余裕がなかったというか……
もしかして、莉音ちゃん達は探している“もの”に、何か関係してるのか…?
賭けてみるか……。
「こちらに来た人間共でしたら、既に何人から殺してしまいましたけど。」
『……なん…だと?』
男の顔がこわばる。
やべえ…。ビンゴか……!?
『全員……殺したのか?』
「全員、とは?」
『少年が情報を持っていたはずだ。何か聞き出したのか?』
サクが情報を…!?
サクはこいつとぶつかってる。
その時に偶然、情報を掴んだんだ…!!
『おい。答えろ。』
「……どうでしたか……よく覚えておりませんで。」
『ふざけるな!!少年は殺したのか!?まさか、アレも殺したんだじゃないだろうな!?』
………はぁ!?
アレも殺す……!?
探してるのは
物じゃないのか…!?




