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第34話.原尾コロニー到着

「え!?凪ちゃんって、戦えるの!?」

「シッ!!いちはん、声のトーン落としてや?」

「あ、ごめん。」


原尾コロニーに向かう道を走りながら、久遠との会話で思わず叫んでしまった。


だって、まさかあの凪ちゃんが…


いや、確かにコンテナ脱出する時に大人3人が掴んだワイヤーを1人で引っ張った訳だから、かなり力はあるんだろうけど……。


「想像つかないなぁ…」

「凪ちゃん、結構強いわよ?」

「ノア!?」


起きたのか!!!


「身体はどうだ?大丈夫そう?」

「うんっ!!もうスッキリ!!」

「それは良かった。じゃあ、降りて歩こうか。」

「………………」


ん?


「ねぇねぇ、久遠。久遠はどう思う?凪ちゃんが戦ってるの、見た事ないの?」


おい。ちょっと待て。

何シレッと話続けてんの?


「うーん……。稽古で相手してもらった事はあるんやけどなぁ。身軽やし、ヒョイヒョイかわされて終わってもーてん。」


あれ?久遠も俺の話についてはスルーする方向なんですね。

乗せたまま喋らせろと。


「じゃあ、やっぱり偵察とかそっち系なのかなぁ?どう思う?いち。」

「俺はお前の、その図太さに対してどう思ってるのか聞きたい。」

「別になんとも思わない。」


…くっそ…っ……落としたいぃぃっ……!!


よくリーヴは容赦なく黒子落とせたな……。

俺今ノア落としたら、仕返しで軽く死ねそうなんだけど。



「ああー……せやけどな、実はこれはサクに聞いたんやけど…。」


ああ、うん。もういいよ。好きなだけ背中で話してくれたまえよ。

帰りおんぶしてもらおう。絶対おんぶしてもらう。


「中野博士がアンドロイド作ったのはな、コロニー防衛の為やったんやって。」

「防衛の為に…凪ちゃんを?」

「……せやけど、やっぱり中野博士も人間やってんなぁ……。姿を、あの凪ちゃんにしてもーたんや。」

「どーゆうこと?」


久遠は、原尾コロニーが近くなって来たのか 、少し歩くスピードを緩めて周りを警戒しながら話を続けた。


「凪ちゃんの見た目ってな……博士の孫と同じ姿やねんて。」


自分の孫と……同じ姿のアンドロイドを作ったのか……。


「この世の中、孫まで生きとる事自体が珍しいねん。博士の娘と婿は殺されてもーたからな。もう、博士には孫しか残っとらんかった。けどな、その孫も……殺されてもうたんや。」


家族が殺されるのが当たり前のこの世の中……。

辛い経験をしていない人間はきっと1人もいない……。


「ある日な、博士のコロニーにBランカー持ちの1小隊が来てもうたらしいんや。」

「見つかったのか…」

「俺はそん時はまだコロニーにはおらんかったんやけど。コロニーを守る為、凪ちゃんが戦ったって聞いたんよ。相手の返り血で血まみれになりながら殺したらしいで。」

「はぁ!?Bランカーも!?」


それって……相当強いじゃん凪ちゃん………。


「でもな、倒した後、凪ちゃん泣いたんやって。こんなの博士の孫じゃないってな。」


凪ちゃんは、博士の孫として生きたかったんだ。戦闘アンドロイドとしてじゃなく、死んでしまった博士の孫の様に、博士に寄り添い共に人間として生きたかったんだ。


「コロニーの人々も、それを見とった。中野博士が泣く姿を見たのは初めてやったってサクも言っとったな。

なるべく戦わせたくない。普通の女の子として、博士の孫として育てたいと、コロニーの皆が思ったそうや。」


「だから久遠が凪ちゃん保護しに来た時、最後の望みって言ってたんだ……」

「最低やな。望みでもなんでも、戦いたくない奴を巻き込むなんて…あかんよな。」


久遠が寂しそうに笑った。


「でも、莉音ちゃんのピンチだったんでしょ?親友のピンチだもん。戦いたくないから莉音ちゃん死んでも知りません。

凪ちゃんは、そーゆう子じゃないよ。」


「そう言ってもらえると、ありがたいなぁ……」


久遠だって、戦わせたい訳じゃないんだ。コロニーを守るという責任を持つ人間として、色んな葛藤があるんだろうな…。


ふいに、久遠が足を止めた。


「…ここの丘や。莉音が原尾コロニーの中の様子を見とったっちゅー丘やな」

「コロニーの中の様子見える?」

「ひとまず、身体は低くしてな。出来ればうつ伏せになってくれると助かるわ」

「ん。わかっ……」


俺は丘の上で身をかがめようとはしたものの……


「ノア背負ってると、身をかがめられないんですけど?」

「ちぇー。」


口を尖らせて、渋々ノアは背中から降りた。


俺とノアと久遠は、丘の先まで身を低くして進み、うつ伏せになって原尾コロニーの中の様子を見下ろす。


………ほんとに、建物が6つしかありませんな。

それ以外は、見事な更地だ。


「どうする?これ、近付いたら速攻で見つかるよね?」


キョロキョロと周りを見回してみると、ふと木に止まっている鷹が目に付いた。

黒子の鷹だ!!!


「あいつ、ちゃんと仕事してんじゃん!!電話して、中の様子を黒子に聞いてもらう?ここから見るより高くから見てるし」

「え、でも待って?いち。」

「ん?」

「あの鷹、変な方向見てるけど。」

「は?」


よく見ると、鷹ははるか遠くの中野博士のコロニーの方角に顔を向けている。


「何あいつ!?あそこからリーヴ見るつもりな訳!?つーか、いる意味ねーんだけど!!!」

「こっち向かへんなぁ……。」

「やだちょっと。なんか頭クネクネしてるわ。」


本体の黒子がリーヴと何か話しているのだと言うことが安易に想像出来る。

まさかの、鷹まで浮かれポンチ。


「いつまであっち向いてんねん。首折ってこっち向けたろか。」

「あぁ、それいいわね。そこまですれば、どれだけ私達の怒りを買っているか気付くかもしれないわね。」

「鷹に罪はないんだ。電話してリーヴにチクろう。それが一番効くと思うんだけど。」


おい。ほんとにあの鷹、一回もこっち見ねぇぞ?


ケータイを握り締めたその時、久遠が肘で俺をつついて来た。


「ん?」

「いちはん、あの赤い建物見えるか?あれ備蓄倉庫や。」

「武器とかいっぱい入ってるのかな?」

「原尾コロニーは、かなりの武器溜め込んどってたからなぁ。さすがに、壊す建物は選んどるわぁ…」


あのきぃちゃんが選んで建物を破壊したとは思えないんだけど……。

10番の女がリンクして壊したのかな?


「備蓄倉庫なら、私達が使える武器もいっぱいあるんじゃない?ちょっと貰いましょうよ」

「どうやってあそこまで行くんだよ…」

「あ。」


久遠が、自分のボディーバッグをゴソゴソと漁り出した。

すると、取り出したのは小さめの消しゴム。


「何?お絵かきでもするの?今の状況わかってる?私達は戦いに来てるのよ?趣味なら他でやってちょうだい。」

「いい加減にしなさいノア。消しゴムだけで絵が描ける訳ないでしょう。何かを消したいんだよ。わかるでしょ?

あ、久遠。ギンの地図は消しゴムじゃ消えないよ?」

「二人とも全く違うんやけど…。」


あきれ果てた顔をする久遠。

その顔、よく見るわ。ギンがするやつだ。


「じゃあ、その消しゴムどうするのよ?」

「これな、リーヴのあんちゃんから預かったんやけど。」


そう言って、久遠はボディーバッグからパチンコを取り出す。

そう。俺達が初めての戦いで使った、リーヴと凪ちゃんが作ったパチンコだ。


「玉はどうする?一応リュックに非常食として豚は入ってるってリーヴ言ってたけど。」

「非常食なら、俺のリュックにも入っとるで。飴玉サイズの栄養食が。」

「何それ。食べてみたいわね。興味あるわ。それに飴玉ですって!?飴玉自体、舐めた事ないんだけれど。」

「いや、どこに食いつくねん…」

「久遠、飴玉1つ頂戴。そしたら、このじゃじゃ馬とりあえず大人しくなるから。」


俺は久遠から貰った飴玉を、ノアの口の中に放り込んだ。

爆睡したとは言っても、まだ回復しきれてないかもしれない。

この飴玉はエネルギー回復にもなるだろうし、ちょうどいいか。


「で、その消しゴムどうするの?消しゴムを玉に使うの?ダメージ与える所か、見つかるだけだと思うよ?授業中じゃあるまいし。」

「授業?……いや、この消しゴムは小型の爆弾やねんけど。サクが作ってん。」

「爆弾!?」


何それ!?いたずらじゃ済まないレベル!!

なんで見た目消しゴムにした?いや、確かに消えるけども。あたり一面ね。文字や絵どころか、全て消えるけども。


「これを玉にして、あの備蓄倉庫狙えんかな?って思ってんけど……。やっぱり武器系を破壊するのはやめた方がええかな?」

「……うーん……。俺らの手持ちの武器が底をついた時を考えると、悩むね…。」

「はと、ひゃれかに見られたら斜線で今居るここの場所が割れるわよ?」

「鳩?つーかお前モノ食いながら喋んな。何味なの?そーゆう飴って。」

「ラングドシャ。」


こいつ、ラングドシャ知らねーんじゃねーか?

ラングドシャは、ある意味クッキーだぞ?


「…あら?」

「なんだ?本来なら挟まってるクリームが飴の中から出て来たか?」

「もう飲んじゃったわよ!!」


飴飲むなよ!!喉につかえたらどーすんだ!!


「あっち。コロネの東側…私達から、コロネ挟んで向こう側。」


ノアが、俺達とは反対の方角を指さした。

コロネじゃないけどね……。コロニーね。

食い物脳になってんのかコイツ。


「東?何も見えへんで?」

「なんか、土埃が立ってるのよ。何かが近付いてると思う。」

「こーゆう時こそ鷹の出番じゃね……」


鷹は、博士のコロニーがある西側をガン見していた。

俺は即座にケータイの通話ボタンを押す。


『いちさん!!』

『おお!!無事に着いたか?』


どうやら、コロニーの人達がスピーカーにしてくれてる様だ。


「あのさ。黒子いる?」

『俺のすぐ横にいるが…』

「黒子の鷹が、全く俺達を見ないんだけど。こっち着いてから一回も。」


ガンッ!!


『ひゃん!!!』


威勢のいい音と黒子の声が聞こえた。

リーヴに頭でも殴られたか。


「それでね、俺達コロニー入り口付近の丘の上から見てるんだけど、東側の方から土埃が立ってるんだ。

何かが来てるみたい。黒子の鷹でわからないかな?って思って。」


そこで、ようやく俺達の頭上付近の枝に止まっている鷹の頭が、コロニーの向こう側に向いた。


ケータイの、向こう側から黒子の声がする。


『うーん……随分な人数がそちらのコロニーに向かってますねぇ。』


「人なの!?アンドロイドだよね?」


『アンドロイドです。腕章から見るに……あれは、第4区の隊ですね。』



「第4区!!?」


ちょ、ちょっと待て!!

地下コロニーに第2区と第6区の隊が進行してるんだよな?

こっちには4区の隊が来てんの!?


ここの2区に4区6区が……!?


つーか皆、他地区に来すぎじゃね!?



「……なら、セオリーで行った方がええかなぁ。」


セオリー?


すると、電話の向こう側からリーヴの声が聞こえて来た。


『4区の隊は、6小隊だそうだ。1小隊8人だ。』

「多っ!!だいたい48人前後?」

『4区は頭脳派集団だからなぁ。数がいないとキツイんじゃないのか?』

「原尾コロニーにナンバーがいるっちゅーのは、分かっとんのやろなぁ。」

『だからこその6小隊なんだろうな。』


10番には、大型キメラが後8匹。ちびキメラもいる。

地下コロニーの入り口で襲ってきた数を考えると、かなりのちびキメラが用意されているんだろう。

でもそうじゃなかったら…


地下コロニーに来たちびキメラ達のほとんどが地下コロニーに来ていたとしたら、10番の女は大型キメラ8匹と少しのちびキメラだけになる??


さすがに、部下もいるか…。

最初に莉音ちゃんがここから様子を見た時に兵士いたって言ってたもんな。



『まずは、セオリーで行くべきだな。』

「せやんな。」


セオリー……?


ポカンとしている俺に、ノアが淡々と説明してくれた。


「三つ巴のセオリーはね。相手同士を潰させる事よ。ラッキーな事に、今私達は居場所も存在も知られてないからね。」


なるほど……!!

お互いにぶつけさせれば、数を減らせるんだ。

しかも、俺達はどっちの戦い方も見れる。ギンがいたら、大喜びでデータ取りそうな状況だなぁ。


そう思った瞬間、予想通りにギンの声が電話口から聞こえて来た。


『いちさん!!いちさん!!4区の部隊がどのような武器や道具を使うのか、非常に興味があります!!僕が持っているデータと比べたいです!!!ぜひ比べたい!!』

「いや、比べるも何も…ギンの中にあるデータがどーゆうデータなのか、俺知らないよ…?」

『当たり前じゃないですか。僕のデータをいちさんがどうやって見るんです?おっと、盗むおつもりで?』

「は?」

『僕からデータを盗もうとは、これはなかなか面白い。盗めるのならばやってもらいましょうか。この僕のセキュリティを突破出来るのならば突破して見せて下さいな!!さぁ、どう……………いった!!!痛い痛いリーヴさん、痛いです!!いった!!痛い!!!痛いーーー!!!』


リーヴ………

だんだんとお仕置きキャラになって来た…。



とにかく、出来るだけ戦闘スタイルや使う武器の種類、兵士の種類も把握しておこう。


俺はゴクリと唾を飲んで、北側から土埃を巻き上げながら原尾コロニーに近付いてくる4区の敵の集団を見つめた。

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