表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/226

第33話.三筋道~サクside~

「右側へ!!!!」


俺の合図に合わせ、凪ちゃんは男の左側の顔に思いっ切り回し蹴りを食らわして吹き飛ばした。


吹き飛ばされた男は、かろうじて倒れはしなかったものの、身体をかがめたまま数メートル後ろに壊れた家のガラクタを撒き散らしながら押しやられた。



『……何だ…?お前…』


男がガラクタを足で蹴りながら、口元の血を拭い、凪ちゃんを見た。


すかさず俺は、カバンの中に入れていた煙幕の玉を素早く投げ付ける。


煙幕の玉が地面に当たった瞬間、黒い煙があたりを覆った。


あたり一面は、真っ暗。

もちろん、敵を前にして視界を奪われるのは危険が大きい。

男は少しずつ場所を移動していた。

視界のない場所で1ヶ所に留まるのは危険。

流石に戦い慣れている。



「メル!!!!!」


俺の声がメルに届くと同時に、メルが叫んだ。


「14時13分デスヨ!!」



その声の通りに、凪ちゃんは煙幕の中に突っ込んで行き、中からは5番の男の声しか、聞こえなくなった。


「………ぐっ……え…ああああああぁぁぁっ……」


次第に、男の声が小さくなっていく。


俺はホッとして、煙幕の煙の中からトコトコと歩いて出て来た凪ちゃんを見つめた。


「凪ちゃん………来てくれたんだ…」


凪ちゃんは、俺を見てニッコリと笑った。


「莉音ちゃんの怪我、見てあげてくれる??腹部を蹴られたんだ。」



慌てて莉音ちゃんの腹部を調べ始める凪ちゃん。


「まちぃ……サクのほうヤバイんちゃうん!?手がっ……」


凪ちゃんはすかさず俺の手をとり、息を飲み込んだ。


「シャクー、ナンデコンナ……」


メルが目に涙を溜めた。

2人の反応を見て、ほんの少し不安にもなったけれど…。

時間がない。


俺は先程手に入れたタオルを莉音ちゃんから受け取り、それを右手に巻いた。


「莉音ちゃん、とりあえず服着て来なよ。」

「あ!!せやった!」


莉音ちゃんが、慌ててシャツを取りに行き、ボタンを締め始める。

俺は、5番の男が落ちた谷底を見つめた。

さっき、家の中を捜索した時に、あそこに谷底があるのには気付いてた。

こんな場所で、よくこの家は残ってたと思う。

おかげで助かった…。


「…死んだかな…」

「シンデニャス」


横をパタパタと飛んでいたメルがハッキリと言った。

死んだら探知機能には映らない。

メルの探知機能に映ってるって事は、生きてるんだ。

やっぱり、これだけじゃ死なないか……。



俺はしゃがみこみ、凪ちゃんを達と目線を合わせると、祈るように言った。


「凪ちゃん、メル、莉音ちゃんを頼むね。」

「……………」

「ナンゼ?シャクハ一イッショ、チガウノデ…?」

「俺は、行かなくちゃ行けない所があるんだ。」

「ドンコ?ナンゼ?」


「俺が、博士の弟子だからだよ」


凪ちゃんは何か言いたそうだったけど、下を向いて俯き、メルもそれ以上は何も聞かないでくれた。


「…ほな、行こか」


「莉音ちゃん。俺は中野博士のコロニーに行くよ。」

「……え?」

「このまま一緒にいても、足引っ張るだけだしさ。メル、ここから博士のコロニーまで、アンドロイドと接触する可能性は?」

「ニシガワ、アンノミチ、アンドロドハ、イマイニャス」

「…そっか。わかった。」

「ほんまに一人で行くん?凪に付いてって貰った方がええんちゃう?」


「大丈夫だよ。博士のコロニーには、きっとノアさんかリーヴさんがいるし。……それより、莉音ちゃんこれ。」


俺はカバンから痛み止めの注射器と作りたての短剣を差し出した。


「俺はもう打ったから、腹部が痛くなったら莉音ちゃんこれ使ってね。

あと、この短剣……。1回使っちゃったけど……」

「ちょ、ちょい待ちぃ!!サクの痛み止めが切れたらどないするんよ!?

「痛み止めが切れるまでにはコロニーに着くよ。」

「…せやけど…」


「その短剣ね、ここの柄の所にボタンあるでしょ?

これ押したら、反対側からも刃が出るの。」


莉音ちゃんがボタンを押すと、反対側の先から刃が飛び出し、莉音ちゃんの顔が輝いた。


「……凄い……!!凄い凄い凄いやん!!!嬉しい!!ありがとうサク!!!」


大喜びで飛び付いて来た莉音ちゃん。


「……ふふっ。そーゆうの、好きだもんね莉音ちゃん。」

「好き!!めっちゃ好き!!」


作って良かった。

莉音ちゃんは、いつもそう思わせてくれるぐらい喜んでくれる。

俺に、自信をくれるのはいつも莉音ちゃん。


初めて会ったあの日から、莉音ちゃんと久遠さんを支えて行きたいって いつも思ってたよ。

戦闘が苦手な俺に出来る事といったら物を作る事だった。


だから、莉音ちゃんがくれる自信はいつも俺にとって一番の宝物だったんだ。


「…サク、アルミホイルやけど……」


莉音ちゃんが、言いづらそうにアルミホイルを持って下を向いた。


「…うん。まだ使わないんだね?」

「…今、追跡装置を使えんごとなったら、5番の男はどこ行くか わからへん。中野博士のコロニーの方に行ってまったら、避難してる皆とぶつかってしまうかもしれん……」

「うん……」

「せやから、このまま原尾コロニーに行ってからな、あの男が原尾コロニーに来たのを確認してから使う事にしてもええ??」

「もちろん。」


莉音ちゃんらしいな。

いつだって、莉音ちゃんはコロニーの皆が優先。

久遠さんの妹だからってだけじゃないよね。



「じゃあ、サクはあっちの道やな?」

「うん。気を付けてね?」

「サクもな?中野博士のコロニーで待っててや?にぃ達連れて、すぐに戻るけぇな?」

「うん。」


そして、俺は不安そうな顔をしている凪ちゃんに小指を出した。


「凪ちゃん。絶対に莉音ちゃんの傍を離れないって約束してくれる?」

「………」

「…俺に、何があっても。」

「……っ…」

「お願い。凪ちゃん。」


人間探知を持っている凪ちゃんには、恐らくバレてしまうだろう。

なのに俺は、とても残酷な約束をさせようとしてる。


涙が溢れた。


「ごめんね、凪ちゃん。ごめんね。お願い。」


俺の小指に、凪ちゃんの小指が絡んだ。

顔を上げると、凪ちゃんの目にも涙が溜まっている。

俺は凪ちゃんを抱きしめて、何度もごめんを繰り返した。


そんな俺達を見て、莉音ちゃんとメルが首を傾げる。


「……さ、行って?」

「………」


凪ちゃんは、袖で涙を拭うと コクンと頷くて莉音ちゃんとメルがいる道へと走って行った。


莉音ちゃんが何度も振り返って手を振る。

その度に、俺も手を振る。


遂には、莉音ちゃん達は見えなくなってしまった。



莉音ちゃん。

嘘ついてごめんね。


痛み止めの注射、打ってないんだ。


もう、痛みを感じないんだ。

痛みも、何の感覚も感じない。


こんな手じゃ、もうリーヴさんの腕を新しく作る事なんて出来ないよ。

今作ってた、あの完成間近のあの義手を失う訳にはいかないんだ。


西側を見て、大きく深呼吸する。

こっちに行けば中野博士のコロニー。


博士。

博士なら、きっと同じ事しますよね?


俺は東側に足を向けて、走り出した。


コロニー自爆まで、あと45分。

俺の足だと、どんなに急いでも30分はかかる。

工房はうるさいから、すこし離れた場所に作ってる。出入り口から約5分…往復で10分か…

義手を取って必要な道具を詰め込むのは5分しかない。


「…急ごう。」


俺は自分の腕時計を確認し、走るスピードを上げた。


途中で、5番の男が落ちた谷底の横道を通る。


どうか、深手を負っています様に。莉音ちゃん達にすぐ追いつく事がありません様に…。


必死に祈りながら通り過ぎた。




一方谷では、突き出した枝に捕まって5番の男が1人笑っていた。


『びっくりしたなぁ……あの子ども型…普通の子ども型じゃないよなぁぁ。………….中野博士の遺作か…?処分に失敗して逃げたってのは本当だったのかぁー?…くくく………。それに、あのちびドラゴン……俺の位置を正確に教えたなぁ……くっふふふ……やってくれるねぇ……中野博士ぇえええ』


5番の男の笑い声が、谷底に響きわたる。


俺はとにかく必死に走っていた。

莉音ちゃんも、凪ちゃんも、メルも。


きっと久遠さん達だって必死に走っているんだろう。


だけど俺達は、1つ、ミスをしていた。

それは絶対してはいけないミスだったんだ。


今の俺達は、誰もその事を知らない。


さらに言えば、俺は地下コロニーに2区と6区の隊が来ている事さえ知らないんだ。



二つに別れた道。

俺以外の皆は、そう思ってるだろう。


でも、本当は……


三つに別れた道だったんだ。


この先のお話からは、いちside側の話に戻ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ