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第31話.守る人に~サクside~

「さっきのやつ、煙幕やろ?凄かったなぁ!!」

「外に出る時は、いつも持ち歩いてるからね。」

「自分で作ったん??」

「うん。昔博士のコロニーで読んだ本に出て来たんだ。」

「「忍者の本」」


「え!?莉音ちゃんも読んだんだ!?」

「読んだ読んだ!!かっこえかったなぁーー!!ウチあれ読んで、くのいちに憧れてんもん!!」

「あはははっ!!だから莉音ちゃん、飛び道具欲しがるんだ…」

「えー、だってカッコええやん飛び…道…具………」


莉音ちゃんの顔つきが変わった。

来たんだ……。


「5番……?」

「いや、足音が重い…違うな。人数は……1人や」


莉音ちゃんが短剣を構えて身を低くした。

右側の木をチラリと見て、首を右へ少し傾ける。


『右側の木の陰へ』


その合図に従って、俺は右側の木の陰に身を隠した。


短剣を構えて身を低くし、目の前の茂みをジッと見つめる莉音ちゃん。


何度この光景を見てきただろう。

俺が材料を取りに上へ行く時、しょっちゅうついて来ては 必ず俺の前を歩く。


襲われた原尾コロニーに40人で救出に行くと言ってコロニーを出て行った時も、彼女は一番前を歩いていた。


一番前なんか歩かれたら、行って欲しくない なんて、口が裂けても言えなかったよ。


一緒に行けない俺が、絶対言っちゃいけない言葉だって事も…分かってる。



俺に出来る事は、祈る事と作る事。

この2つだけだ。


肩から下げたカバンのベルトを握り締めて、俺は目だけを懸命に動かした。


この辺は…確か俺が産まれる前に潰れた合田コロニーの跡地だ。

まだ土に刺さっている家の柱が何本もある。ボロボロのまま、放置されている家っぽいものも、中にはいくつかあった。


ー……あるかもしれない。



そう思った時、莉音ちゃんが身を低くしたまま 茂みに向かって突っ込んで行った。

それと同時に、そこから兵士が顔を出したのだ。


ー…ドンピシャ!!


莉音ちゃんは、素早く短剣で兵士の目を突き刺すと 、よろめいたその兵士の目から短剣を抜き取り、そのまま兵士の心臓に突き刺した。



「………お見事。」

「ふぅ…。早めにここから離れよか。」

「あっ…!!待って待って。」


俺は急いでボロボロのまま放置されている家の中に入り、棚という棚を開けて調べた。


「何探しとん??食べ物なら、ないと思うで?ここ、元コロニーやろ?潰された時に…ほとんど持ってかれとるやろ……」


莉音ちゃんが、荒らされた家の中を見て眉を寄せた。


「食べ物じゃないんだ。莉音ちゃん、台所探して?」

「…台所?……こうぐちゃぐちゃやとなぁ……壁ももうほとんどないし………………あれっ!?これ鍋やない!?」


莉音ちゃんの声の方に、俺はガレキや家具に足を取られながらも進む。


「…えっと………あ!!莉音ちゃん、何か綺麗な布探して来てくれる??出来るだけ薄い布がいいな。……包帯は、一応俺も持ってるけど…あったら助かるな。」

「わかった!!薄い布と、救急箱やな!!」


救急箱……確かに助かる…。


俺達人間にとっては、いくらあっても困らない物だ。


俺達のコロニーにはお医者さんはいないけど……お医者さんだった両親から医学を学んでいた楓ちゃんという女の子がいる。

救急箱があれば、医薬品の補給も少しだけど出来る。


俺は鍋があったという場所の家具を懸命にどかして、ある物を探し続けた。


「……あった!!!」


長方形の箱。少し潰れてるけど…中身は……。

うん。大丈夫だ。


それをカバンの中に入れ、俺は莉音ちゃんの方へ向かった。


途中、ボロボロの壁に写真が飾ってあった。

両親と2人の子どもが笑って写っている。

今度、カメラってやつを作ってみようか。

コロニーの皆と、いちさん達と、皆で写すんだ。笑って。


こんな時だっていうのに、思わず笑みがこぼれた。


ギシギシと老朽化している廊下を歩いていると、もう窓ガラスがないただの窓枠となった窓がある。

そこから外を見て

少し驚いた。

よくこんな危ない場所で家が残ってたなぁ……。


「サク!!サク!!」


莉音ちゃんの声に、急いで廊下を渡って部屋に入ると、そこはおそらく寝室。

ベッドの上には、白骨化した人間が4人寝ていた。


「……この家の人なんかな…」

「…多分。子ども2人に、大人2人だし…。さっき、廊下に写真があったから。」

「………さよか。」


莉音ちゃんは立ち上がり、戸棚を開けてゴソゴソと中の服やタオルを取り出した。


「タオルは厚いやんな?」

「うん。もう少し薄めで……出来れば下の方にあるのがいいな。……ほこり、凄いから。」

「ん。これは?」


下の方にある子ども用のワンピース。

俺はチラリと子どもの骨を見て、いただきますと心の中で呟くと

それを短剣で丁寧に破った。


「…よし。まずは外に出よう??家の中だと死角が多過ぎるよね?」

「せやな。

下の方の、誇り付いてないタオルも何枚か貰っとこ。」


莉音ちゃんも、白骨化している人にペコリとお辞儀すると、タオルやハンカチを腰に巻いたボディーバッグに入れた。



周りを確認してから外に出た俺達は、家の裏側に回って腰をおろす。


「莉音ちゃん。追跡装置って、どこらへんに埋め込めれたかわかる??」

「んー…多分、ごっつちいさいねん。でも少し違和感するけぇ、多分ここら辺や。」


そう言って、莉音ちゃんは左腕の二の腕あたりを指さした。限りなく肩に近い上の方だ。


「わかった。そこ、ちょっと服から出してくれる??」

「ん。」


俺はゴソゴソとカバンの中からハサミを取り出そうとしたが、ハサミはもって来てない。代わりに大事に包んでいた短剣がカバンの一番奥から出てきた。


俺は丁寧に包みを開けて、その短剣で莉音ちゃんが見つけてきた布を細長く切っていく。


「その短剣、カッコええなぁ……」


俺の手元を見ながら、莉音ちゃんがキラキラした目で見つめた。

はは。それ見るの、もう少し後だと思ってたんだけどなぁ。


「使っちゃってごめんね。これ、莉音ちゃんの誕生日プレゼントにしようと思って作ってたんだ。」

「ほんまなん!!!!!?」

「うん……………って………ええええええ!?」


顔をあげた俺は驚愕した。

確かに左腕を出してとは言ったけども!!!

シャツまで脱ぐとは思わなかった!!


莉音ちゃんは、スポーツブラにショーパンという、露出度高めの姿になっている。

心臓止まるかと思った………。


「…ん??どないしたん??」

「……いえ。作業を始めます……。う、後ろを向いて?」

「なんで?」

「……やりづらいです。」


莉音ちゃんはキョトンとしていたが、すぐに後ろを向いてくれた。


こんな所を久遠さんに見られたら、俺は間違いなく殺される……。


切った布を莉音ちゃんの左腕にくるくると巻き、しっかりと下の方で結ぶ。


「布で、なんかなるん??」

「ううん。これは、かぶれない様にするためだよ。下地みたいな。

本命はコレだよ。」


俺は台所から探し出して来た長方形の箱を莉音ちゃんに見せた。


「…え?……そ、それ……」

「アルミホイルだよ。」

「そんなん、どーすんの??」


驚く莉音ちゃんに、俺はもう一枚布を細めに切りながら笑って答えた。


「アルミホイルはね、電波を遮断する事が出来るんだ。

大昔は、盗聴器とかGPSとかにアルミホイルを巻いて電波障害を起こさせたりしてたんだよ。」

「へええ……!?」

「よし!!アルミホイルの上に巻く布も出来た!!じゃあ、アルミホイル巻こうか」



そう言って、地面に置いておいたアルミホイルの箱に手を伸ばした瞬間


右手に激痛が走った。


「ー………!!?」



何が起こったのか分からなかったけど、今…何がどうなっているのかは分かる。


俺の右手に、剣が突き刺さっているからだ。

串刺しの様に。



『ねぇ、君ぃ。なぁに余計な事してるのー?』


機械みたいな、篭もった低い声。


直接聞いたことはないけれど、これが誰の声なのかは すぐにわかった。


そして、そいつが俺のすぐ後ろに立っていることも。



ナンバー5番の男だ。

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